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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科33巻10号

1978年10月発行

雑誌目次

特集 今日の癌免疫療法

癌免疫療法と診断パラメーター—現状における批判と考察

著者: 螺良英郎

ページ範囲:P.1365 - P.1371

はじめに—癌免疫療法に対する考え方—
 ここ10年余りの間に癌研究のみならず医学全般を通じて臨床での癌免疫療法が最大のトピックともなつてきた.癌疾患に限らず他の疾患分野にあつても免疫療法といわれる分野が注目を浴びてきているが,何といつても癌における新しい治療法の登場はマスコミまでを巻き込んでややオーバーヒート気味でもある.しかしここで大切なことは癌免疫療法に関しては冷静に判断してかからねば本治療法の発展もやがては誤つた方向に移つていく可能性がある.
 人癌免疫療法を考える上でまず大切なことは動物腫瘍を用いてこれまで積み重ねられてきた腫瘍免疫学の墓礎的知識を十分把握しておくことにある.

免疫学的モニター—最近の話題—SCMテスト

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.1373 - P.1378

はじめに
 細胞質の物理化学的状態を細胞構築structuredness of cytoplasmic matrix(SCM)と呼び,このSCMは蛋白などの高分子と水,イオン,ATP,cyclic AMPなどの低分子物質との相互作用によつて規制されると考えられている1).CercekらはこのSCMを螢光の偏光度によつて測定することが可能であること,正常ならびに癌患者のリンパ球が各々PHAあるいは癌塩基性蛋白cancer basic protein(CaBP)に反応してSCMすなわち螢光の偏光度の低下を示し,しかも正常リンパ球と癌患者のリンパ球とはPHA,ならびに癌抗原に対する反応が全く正反対であることから,その反応の比をとることによつて癌患者と正常者とを非常に高い正確度でもつて区別することが可能であることを明らかにし,このリンパ球の螢光偏光を測定する検査法をSCM testと称した2).われわれもCercekらの仕事に興味を持ち,彼らの結果を確認すると共に,胃癌特に早期胃癌の患者のリンパ球も同様にSCM testが陽性に出ることを明らかにして報告してきた3)
 本文ではSCM testの原理および測定方法を簡単に説明するとともに,この方法を用いて現在までにわれわれれが得た結果およびCercekらの検索の結果をのべる.引き続いてSCM testに関する最近の動向を紹介し,最後にSCM testの臨床的な癌診断への有用性についての著者の考えを述べてみたい.

免疫学的モニター—最近の話題—MEMテスト—細胞性免疫指標として

著者: 中島聰總 ,   小鍛治明照

ページ範囲:P.1379 - P.1387

はじめに
 近年疾患に対する免疫学的認識が急速に深まりつつある.これは外来抗原に対するアレルギー疾患や自家組織を抗原とした自家免疫疾患にとどまらず,悪性疾患においても腫瘍抗原の認識や,発癌過程における免疫監視機構の破綻など,広い範囲に及んでいる.これに伴い臨床医も患者の免疫機能の把握の必要に迫られているが,免疫機能とくに細胞性免疫機能の検査法の多くはルーチンに施行しがたい.
 マクロファージ,または白血球遊走阻止試験(Macrophage or Leakocyte Migration Inhibi—tionTest,MMI or LMI)は数少ない臨床応用可能な検査法であるが,再現性を得るには高度の熟練を必要とする.1970年イギリスのField &Casparyはマクロファージ電気泳動テスト(Ma—crophage Electrophoretic Mobility Test,MEM)と呼ばれる新しい検査法を考案した1).この検査法は短時間で結果が得られ,再現性も良好であるためにMMI法よりさらに臨床応用が容易であろうと思われる.この方法は主としてイギリスにおいて検討が加えられてきたが,最近は東ドイツ,日本,アメリカでも施行されるようになつてきた.我が国へは杉崎ら2),岩口ら3)によつて紹介され,著者らも1974年より岩口,桜井との共同研究によりMEMテストの臨床応用を試みた.今回はMEMテストの原理,操作法およびその応用面について文献的に紹介し,あわせて著者らの成績の一端を報告したい.

免疫学的モニター—最近の話題—MLTRテスト

著者: 西平哲郎

ページ範囲:P.1389 - P.1395

はじめに
 癌細胞に正常細胞抗原と異なる腫瘍特異抗原が存在すると,たとえ自己の癌細胞であつても,混合培養をすると,リンパ球はそれに対して幼若化反応を惹起する(Mixed lymphocyte-tumor cell culture reaction,MLTR).幼若化反応がおこるとリンパ球内DNA合成が高まる.DNA合成の促進を,アイソトープで標識した核酸前駆物質—3H—サイミジンの摂取の摂進により判定すれば,MLTRの反応の程度を知ることができる.この反応の程度は,担癌生体の自家癌に対する反応性の指標となり得る.
 これまで本邦および欧米1-31)において,その基礎実験より臨床例にいたるまで報告されてはいるが,リンパ球の調整や細胞培養などの手技が複雑なため,実施法も各施設で異なり,確立した検査法とは言えない.著者は,ラット腫瘍を用いた基礎実験7,22)ののち,6年余にわたり,各種人癌におけるMLTRを施行し検討を加えてきた.本稿は,MLTRの施行法について,標準的と思われる方法を詳しくのべ,新しくMLTRを施行せんとする研究者の参考とするのを目的とする,そして将来関連学問の進歩と共に,MLTRがより普遍的な癌特異的免疫反応検査法として改良されれば幸いである.また,最近本反応が免疫学的パラメーターとして32),臨床上,免疫化学療法に用いられる機運にあるのでこの際,当教室で施行されたMLTRと癌の進行度,予後との関連について検討してみる.

—免疫学的モニター—最近の話題—皮膚反応テスト

著者: 細川真澄男 ,   水島豊

ページ範囲:P.1397 - P.1402

はじめに
 癌患者の免疫反応状態を知ることの重要性については改めて述べるまでもない.癌細胞に対する免疫は遅延型過敏反応に代表される細胞性免疫が主要な役割を演じていると考えられている.この細胞性免疫能を測定する免疫パラメーターの1つとして皮膚反応が最近試みられ,その有用性について検討されている.本稿ではこの皮膚反応のもつ意味とその具体的方法,更に実際の成績などを述べ諸家の参考にしたい.

癌免疫・化学療法の実際—薬剤選択から成績まで—私の処方

著者: 折田薫三 ,   小長英二 ,   万波徹也 ,   三輪恕昭

ページ範囲:P.1403 - P.1409

はじめに
 癌の免疫療法は,癌細胞や癌抗原をワクチンとする特異的免疫療法と,BCGをはじめとする免疫療法剤(immunopotentiator, immunomodu—lator)を用いてリンパ球のクローン全体の活性を高める非特異的免疫療法とに大別される.しかしその作用機作に関しては未だ不明な点が多く,臨床上効果のみられるものはBCGを用いた非特異的療法に限られている,NIHの癌免疫療法登録機構への登録1)をみてもBCG生菌が最もよく使用され,近年は嫌気性コリネ・バクテリヤ,BCG菌体成分を用いるグループが増加し,さらにレバミゾールを用いるものを散見するようになつた.今回の企画によつて各薬剤の効果は諸家によつて紹介されるので,われわれの行なつている胃癌患者に対するBCGあるいはBCG-CWSによる免疫療法,さらに手術侵襲に伴う免疫能の急速な低下を防止するため術前,術後を通じて胃癌,大腸癌を主とする消化器患者にlevamisoleの投与を行なつているのでこれらの成績について紹介したい.

癌免疫・化学療法の実際—薬剤選択から成績まで—私の処方;特に特異的免疫療法を中心として

著者: 福島松郎

ページ範囲:P.1411 - P.1418

はじめに
 今回の特集は現時点における癌の免疫,化学療法について,実際的かつ具体的に記述するようにとの編集者の要望なので,文献的考察等は削除し,現在,われわれの教室で行なわれている癌の免疫,化学療法,特に他施設では余り報告されていない特異的免疫療法の実際について述べる.
 外科領域における癌の免疫,化学療法の多くは外科治療に併用するadujuvant療法であり,当然の事ながら,対象となる癌の種類,進行度等で異なる.われわれの教室でも種々の癌患者の治療にあたつているが,患者の癌の種類,施行された手術が治癒切除か,非治癒切除か,あるいは切除不能かにより,その併用療法は異なつている.今回は入院症例の比較的多い胃癌,食道癌,肺癌症例を中心に,癌進行程度で分類し,それぞれの併用療法について述べる.

癌免疫・化学療法の実際—薬剤選択から成績まで—私の処方;BCG生菌による免疫療法の実際

著者: 鳥巣要道 ,   藤原博 ,   宮原哲郎 ,   原田素彦

ページ範囲:P.1419 - P.1425

はじめに
 癌の免疫療法は,癌が生体にとつて非自己であり,生体が癌を異物として認識するという根本理念の上に成り立つたものである.本療法には大きく分けて特異的免疫療法と非特異的免疫療法とがあり,前者が上記の理念にかなつたもので,後者は免疫学的にも文字通り非特異的な療法である.癌研究に携わる多くの研究者が心血を注いでいるにもかかわらず,日常臨床において特異的免疫療法を推し進めるには,もうしばらくの時が必要であろう.
 最近の免疫学の進歩により,担癌患者が現在どのような免疫応答能力を保持しているかを,いろいろな非特異的マーカーでほぼ把握することができるようになつた.その研究成果によれば,担癌患者は癌の進行とともに免疫応答能力を低下させ,ついには免疫応答能力の崩壊をきたし,いろいろな外来抗原にも反応しなくなることがわかつてきた.そこでこの低下した担癌患者の免疫応答能力を免疫賦活剤で高めることにより,進行してくる癌の発育を抑制しようとするのが非特異的免疫療法である.

癌免疫・化学療法の実際—薬剤選択から成績まで—私の処方;悪性脳腫瘍の総合的治療

著者: 高倉公朋 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.1427 - P.1431

はじめに
 悪性脳腫瘍の治療は1930年代Cushingにより幕明けされて以来,約半世紀近い歴史を持つているが,今日依然としてその治療は難かしい.Cushingの活躍した当時すでにほぼ完成された手術技術だけではglioblastomaの術後の生存期間は最高でも1年未満であつた.1940年代より放射線治療が併用されるようになり,はじめてわずかながら2年生存者が出てくるようになつてきた.1950年代の初期の化学療法では延命はもたらされず,1960年代後半になり,放射線増感物質であるBUdR(bromo-uridine)の併用により,悪性gliomaの治療成績が向上した.同時に化学療法の併用が単純放射治療よりも優れていることが明らかにされた.今日glioblastomaの治療成績でもつとも優れた効果をあげている薬剤としては,BCNU,Vincristine Procarbazineの併用による米国脳腫瘍study groupの処方があるが,これによる術後の平均生存期間は52週程度である.すなわち,術後生存期間約1年が,この疾患に対する現在の治療法の限界ということになる.脳腫瘍に対する免疫療法は1960年代後半より補助療法としてスタートしてきた.さて悪性gliomaの本質的な治療は開頭手術後に始まると考えても誤りではない.手術は腫瘍の量をできる限り減量して減圧し,次の治療への橋渡しをするわけで,第二段階の化学,放射線治療と合わせて寛解導入療法の手段の一部になつている.その後,第三段階の維持療法として定期的な化学療法を行なっているが,この第二,第三段階に免疫療法を加えると治療成績の向上が期待できる.
 ここでは,今日私共が扱う腫瘍の中で一番悪性なglioblastomaと転移性脳腫瘍の治療方針と採用している薬剤の使い方,ならびに治療成績についてまとめ,検討したい.

癌免疫・化学療法の実際—薬剤選択から成績まで—私の処方;OK−432腫瘍内大量投与

著者: 服部孝雄 ,   新本稔 ,   山県司政 ,   谷忠憲 ,   峠哲哉 ,   原田達司

ページ範囲:P.1433 - P.1440

はじめに
 近年腫瘍免疫学の急速な進歩により,がんの免疫療法の可能性が明らかにされ,一方では直接的な殺細胞的効果をねらつた制がん化学療法の効果ののびなやみもあつて,がんに対する免疫療法は一躍大きな注目をあびるようになり,過大な期待さえもたれている.しかしながら,現在臨床に用いられている免疫賦活療法は,あくまでも非特異的なもので,これは将来の特異的な免疫療法への一つのステップにすぎない.がんの免疫療法はまだそのような初歩的な段階にあることを認識すべきであろう.現在わが国で実際に用いられているものとしては,溶連菌製剤(OK-432,ピシバニール),さるのこしかけから得られた植物多糖体PS-K(クレスチン),しいたけから得られた植物多糖体レンチナン,などのほかに,細菌製剤としてBCGまたはBCG-CWSや,嫌気性コリネがあげられよう.本稿ではその中でわれわれが独自に開発をすすめてきたOK-432の腫瘍内大量投与について,実験的ならびに臨床的成績をのべたい.

特別寄稿

アメリカにおける癌免疫療法

著者: 入江礼子 ,   樋口正臣

ページ範囲:P.1441 - P.1449

はじめに
 今世紀の初頭,齧歯類の腫瘍移植実験で,強度の移植免疫が成立し,移植片の拒絶が起こるとの報告がなされて以来,担癌生体の悪性腫瘍に対する拒絶反応を期待して基礎及び臨床医学の面から数多くの人癌に対する免疫療法が試みられた.
 しかし,その後,動物腫瘍に成立した腫瘍免疫は癌特異抗原に対してではなく,組織適合抗原に対するものであつた事が明らかになつた事,また悪性腫瘍の自然退縮例が臨床上みとめられるが,アジュバント療法としての自家癌ワクチンの臨床応用は期待した程効果がなかつた事,手術,放射線,化学療法の飛躍的進歩により癌治療成績が向上した事などにより,免疫療法に対する臨床的関心は一時期,薄らいだかにみえた1)

カラーグラフ 消化器内視鏡シリーズ・39

レンメル症候群

著者: 宮城伸二

ページ範囲:P.1362 - P.1363

 十二指腸の憩室は消化管の憩室のなかで一番発見頻度が多いにもかかわらず,臨床上,メッケル憩室や結腸憩室ほど問題視されなかつた.しかし十二指腸憩室のうら,とくに旁乳頭部の憩室の存在が総胆管の乳頭開口部を圧迫することにより胆汁や膵液の排出を妨げ,これが原因となって胆管や膵管のうつ滞をきたし二次的に炎症や黄疸を起こすことが注目されるようになつてきた.この事実はすでにLemmelによつて1937年にPapillen syndromeとして報告されており,最近本邦ではLemmel症候群といいならされているようである.
 図①の旁乳頭の憩室が総胆管を圧迫したため胆管の拡張がみられ,疼痛と軽度黄疸があつたが胆石や他の疾患は証明されなかつた例であつた.この憩室は外科的に十二指腸腔内に内飜し,憩室が突出した十二指腸壁の穴を縫合しただけで黄疸は消失し,Al-Pも正常に復した.

Spot

免疫化学療法における新しい実験的モデル

著者: 片岡達治

ページ範囲:P.1453 - P.1458

はじめに
 癌の免疫化学療法に我々が期待するものは化学療法と免疫療法の併用による,相加的あるいは相乗的な治療効果である.そのためには各々単独での治療的有効性とその特徴が明らかにされる必要がある.特に重要なことは一方の治療法が他方の治療法に及ぼす影響,中でもその副作用を十分に把握することである。場合によつては免疫療法と化学療法との併用によつて瘍の増殖が促進されることがあり得るからである(図1).
 化学療法に関しては実験的にも臨床的にも治療上の有効性はすでに示されており,各々の化学療法剤についての薬効的特徴もかなり明らかにされている.

講座 皮膚縫合の基本・8

ケロイドと肥厚性瘢痕

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.1461 - P.1467

 日常の診療にあつて,ケロイド(keloid)という用語は,醜い瘢痕を総称して用いられていることが多い(図1).書これらは真性のケロイドの他にも肥厚性瘢痕さらには正常の治癒過程にある発赤した瘢痕までを含んでおり,しばしば治療に混乱をきたしている.ヶロイドのタイプを診断することは,ケロイドを正しく治療する第一歩であるが,数多くの研究にもかかわらず,その本態は究明されているとは言えない.

臨床研究

原発性肝癌の治療成績—切除不能肝癌に対する門脈枝結紮例を中心として

著者: 吉岡一典 ,   𠮷田奎介 ,   清水武昭 ,   金沢信三 ,   高野征雄 ,   阿部要一 ,   本間憲治 ,   武藤輝一 ,   伊藤博

ページ範囲:P.1469 - P.1476

はじめに
 最近における原発性肝癌の診断はAFP,肝シンチグラム,血管造影などの診断技術の進歩に伴い早期診断の可能性が増してきた.しかしこれら診断法や手術手技の進歩にもかかわらず,第11回日本肝癌研究会の追跡調査1)では切除率19.1%,腫瘍径5cm以下の細小肝癌切除例22例の報告がなされているにすぎず,必ずしも満足すべき成績ではなかつた.したがつて,数多い切除不能肝癌に対する治療に関心を払わざるを得ず,現在血行遮断術,放射線療法,抗癌剤投与などが検討されている.
 教室では1968年以降,切除不能の原発性肝癌に対し姑息的療法として症例を選び門脈枝結紮を施行してきた.そこで教室における成人原発性肝癌の概要を述べ,続いて門脈枝結紮症例についてその成績を中心に報告する.

胆道系手術における吸収性縫合材料の検討

著者: 夏田康則 ,   上尾裕昭 ,   八板朗 ,   杉町圭蔵 ,   中村輝久 ,   井口潔

ページ範囲:P.1477 - P.1481

はじめに
 理想的な縫合材料とは,創傷治癒の早期には縫合部を把持するに十分な強さを維持し,組織の修復が完了する際には強い組織反応を伴わず完全に吸収されるものである1,2).さらに,取扱いが容易で結紮部のほぐれる心配のないことも必要な条件であろう.Polyglycolic acid(Dexon)やPolyglatin 910(Vicryl)などのすぐれた吸収性の合成縫合材料が開発されたが,それまではcatgutが唯一の吸収性縫合材料として広く用いられていた.
 catgutは蛋白分解酵素によつて溶解吸収されるが,合成ポリエステルは加水分解によつて溶解される.したがつて,合成ポリエステルはcatgutにくらべ生体における抗張力が長く維持され,かつ感染に対する抵抗力が強いといわれている3-5).これまでの吸収性縫合材料の研究は,胃小腸吻合に関するものが多く,胆汁や膵液の存在下に比較検討されたものは乏しい.そこで,われわれは実験的に胆道系手術における吸収性縫合材料の比較をおこなつた.

細胞診・組織診の立場からみた肺癌診断に関する検討

著者: 白日高歩 ,   重松信昭 ,   嘉多山直人 ,   吉田猛朗

ページ範囲:P.1483 - P.1488

はじめに
 近年,肺癌死亡率の増加が注目されるようになつたが,肺癌の診断法に関しては,未だ十分に開発され尽したとはいえない状態であり,早期診断の為に多くの診断法が試みられている現状である1-7).例えば,肺野型肺癌に対しては,従来からの喀痰および,経気管支鏡的手法による細胞診,生検組織診に加えて,最近では経皮的アプローチによる細胞採取法が多く実施される傾向となつた2,5).今回,著者は最近の肺癌症例のうち,細胞診,組織診で確診を得た症例を中心に,その診断法の内訳を検討し,更に肺門型,肺野型別に診断率の傾向を観察した.また喀痰細胞診上,しばしば悪性細胞としての判断に困難な経験を覚える肺胞上皮癌をとりあげ,光顕的,電顕的に検討を加え,その細胞像観察の際,注意すべき点について若干の検討,考察を加えた.

臨床報告

誤嚥魚骨による結腸異物性肉芽腫2例の検討—特にその特徴ある注腸所見について

著者: 草島義徳 ,   宮崎逸夫 ,   尾島敏夫 ,   高柳尹立

ページ範囲:P.1489 - P.1492

はじめに
 大腸に肉芽腫を形成する疾患には,数多くのものがあるが7),誤嚥魚骨によるものは,比較的稀で,外科的診断の盲点となることが多い.私共は過去に誤嚥魚骨による大腸異物性肉芽腫の2例を経験し,それらの注腸所見が特徴的であり,術前診断に,非常に有意義ではないかと思われたので,若干の考察を加えて報告する.

原発性胆嚢管癌と思われた1例

著者: 山口晋 ,   生田目公夫 ,   山田洋介 ,   河野彰文 ,   出月康夫 ,   渡辺弘 ,   柏田和子 ,   佐々木康人

ページ範囲:P.1493 - P.1496

はじめに
 原発性胆嚢管癌は胆嚢癌や胆管癌に比べ極めて稀である.胆嚢管は解剖学的に数cmの部分を占めるにすぎず,また,たとえ胆嚢管に原発したものであつても,胆嚢や胆管に拡がり,その原発部位が不明で胆管癌や胆嚢癌として一括されるためと思われる.本邦では1975年西村ら1)が原発性胆嚢管癌に関するFarrar2)の規準を満足させる第1例目の症例を報告し,その後は山脇ら3)の報告例をみるにすぎない.
 われわれは,原発性胆嚢管癌と思われる症例を経験したが,術前および初回手術時に確定診断を下し得なかたので,その診断上の問題点を含め文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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