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文献詳細

雑誌文献

臨床外科33巻2号

1978年02月発行

文献概要

特集 消化性潰瘍と迷切術

迷切術の適応

著者: 榊原幸雄1

所属機関: 1愛媛県立中央病院外科

ページ範囲:P.193 - P.200

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はじめに
 消化性潰瘍の外科的治療として,胃酸分泌を抑制し減酸効果を得る方法としては, 1.胃酸分泌領域の切除 2.迷走神経切離術(以下,迷切と略す)による 胃酸分泌機序の抑制が挙げられる.
 すなわち,前者では胃酸分泌に対して促進的に働くガストリン産生領域である幽門洞ならびに直接胃酸分泌を行なう壁細胞の稠密分布領域を含む広範囲の胃切除(約2/3胃切除)を必要とする.このような広範囲の臓器欠損にもとづく代謝や機能異常は,術後の小胃症状やそれに伴う体重減少,また鉄欠乏性貧血,牛乳不耐症,ダンピング症状などの原因としての問題が残されている.さらに,広範囲胃切除後の再建にあたり,残胃の壁細胞領域と十二指腸の吻合を行なう場合には,幽門洞という緩衝部位を欠如するため十二指腸は術前にくらべ相対的抵抗減弱部位となり,術後代謝障害の一因になるともみなされている.しかし,広範胃切除後の減酸効果は永久的であり,かつ,容易な術式として胃潰瘍,十二指腸潰瘍を問わず,一律に標準術式として広く用いられてきた.他方,最も基本的な問題である必要にして十分な減酸効果を得るための壁細胞領域のdenervationは,幽門洞gastrin分泌能を正常に温存する以上,TV,SVの場合よりもさらに十分注意深く完全を期す必要がある.すなわち,噴門部・腹部食道周辺(upper limits of denervation)さらには,His角周辺,高位後壁,大彎側など,TV,SVの標準手技とされていた手法よりはるかにextensiveなdenervationが必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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