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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科33巻3号

1978年03月発行

雑誌目次

特集 CTスキャン

コンピュータ断層撮影の特徴

著者: 田坂晧

ページ範囲:P.323 - P.331

はじめに
 コンピュータ断層撮影(以下CTと略す)は,X線を多数の角度から照射し,減弱して被写体を透過してくるX線を検出器でまず正確に測定する.これに続いて,被写体の薄層の中の一定の容積単位毎のX線吸収を計算により数値とする.コンピュータでこの数値に対応する画像を再構成して描出するというものである.すでに脳のX線診断の中では定着して使用されるようになつた.装置の改良が急速に進められ,一桁の秒数で撮影が終るようになり,全身のX線診断への応用も活発となつている.CTを使用して診断をするのに知つておくことが必要な,CTの画像構成の特徴とCT値についてとくに述べることとする.

コンピュータ断層撮影(CT)と人体横断解剖

著者: 木村和衛 ,   奥秋興寿 ,   片倉俊彦 ,   佐藤善二 ,   鈴木憲二 ,   伊藤正巳 ,   新妻一直 ,   松川明

ページ範囲:P.333 - P.339

はじめに
 形態診断を主に,性状診断を従として期待出来るCTの臨床的応用価値を発揮するには正常人体の横断解剖が基礎となる.ここでCTの撮り方の一般的なことにふれ,更に代表的な截面についてCT像を解説する.使用装置はEMI社CT 5000及び5005型である.

CTスキャンの適応

著者: 玉木正男 ,   村野寿昭 ,   井上佑一 ,   梅川智三郎 ,   芝切一平

ページ範囲:P.341 - P.346

はじめに
 Computed tomography(以下CT)はX線を透過させた物体について,各部分のX線吸収度の分布を断層像(基本的には「CT値」の大小)として表示するものであるが,在来のtomographyと全くちがう点として,(1)検査目標の層だけにX線をしぼつてスキャンすること(従つて,得られる情報は他の層からの妨害なしにその層にかぎられ,映像としては当然「断層像」になる),(2)そのX線を受けとめるのにX線フィルム,螢光板以外のsensitiveな検出器を用いたこと,(3)その検出器の示す情報の処理をcomputerにゆだねたことの3点をあげることができる.これらのために,CTがその層内の各部分がもつX線吸収度のわずかな差異をも鋭敏に検出できることは,人体に使われて来た多くのX線検査法では及びもよらないすぐれた性能であり(1971年の臨床応用第1例で造影剤なしに脳室腔と嚢腫状脳腫瘍を描出できたことは驚異のまととなつた),CTのもつ意義(従つて臨床上の適応)は細長い人体の横断断層法の単なる一新法というだけでは決してないことを強調せねばならない.CTの臨床上の実施適応について,臓器別,部位別の解説が別になされるから,本稿では主として一般的,原理的に述べることとしたい.
 X線の吸収の程度を支配する3つの因子として,(1)物質の密度(比重),(2)それを構成する化学元素の原子番号,(3)X線の波長(吸収はおよそ波長の3乗に比例)がある.

CTスキャン像の読み方—頭部疾患;腫瘍

著者: 志賀逸夫

ページ範囲:P.347 - P.360

はじめに
 CTによる脳腫瘍の検出率は98%と言われ1),従来のどの検査法よりも優れている.
 CTによる頭蓋内疾患の診断は正常脳との濃度差,正常頭蓋内構造(脳室,脳槽,大脳鎌,天幕,松果体,脈絡糸球の石灰化など)の偏位・変形,頭蓋骨の肥厚・破壊などの変化および造影剤静注後の濃度増加の有無と程度による.頭蓋内病変の濃度は正常脳との比較で,低濃度(low de—nsity),同濃度(iso-density),高濃度(high de—nsity)と記述される.もちろんこの中には全体として高濃度でも低濃度部が混在して斑点状の陰影を呈することもある.脳腫瘍の場合に高濃度を呈する要因としては石灰化,血腫の存在や腫瘍細胞の密度などが関係しているようである.低濃度は嚢胞・壊死の存在や,脂肪・コレステロールの存在によると言われている.多くの脳腫瘍は脳浮腫による低濃度域に囲まれており,この場合には水分量の増加が低濃度の原因ということになる.この随伴する脳浮腫により,腫瘍自体は同濃度であつても相対的に高濃度となつて同定できることもあるし,脳浮腫の存在自体が腫瘍の存在を知る手掛りになる.脳腫瘍に伴う脳浮腫はCT上白質に認められ2),シルビウス裂付近では複雑な形をとる.

CTスキャン像の読み方—頭部疾患;出血

著者: 上村和夫 ,   後藤勝弥 ,   石井清 ,   井須豊彦 ,   山口昂一

ページ範囲:P.361 - P.368

はじめに
 Computed Tomography(以下CT)は,頭蓋内病変の形態学的診断に大きな影響をおよぼしたことは周知の通りである1-3).その中でも,頭蓋内出血巣の広がりの診断には,CTは特に偉力を発揮する.新鮮な出血巣は,CTでは高X線吸収域として描画されるが,出血後ある程度時間が経過したものでは必ずしも診断が容易でない場合もある.私共は過去1年半の間に,秋田脳研にて脳卒中を中心とした多数のCTを経験した6).本稿ではその経験を基に,脳出血とクモ膜下出血のCT所見について,実例を示しながら読影の基本をのべたい.

CTスキャン像の読み方—腹部疾患;肝,胆道及び膵

著者: 蜂屋順一 ,   是永建雄 ,   斎藤礼子 ,   板井悠二

ページ範囲:P.369 - P.379

はじめに
 頭部のCTにくらべると,格段に厳しい条件下で装置の開発につとめ,また診断基準を模索しなければならなかつたため,全身用CT装置の臨床応用はかなり遅れてはじまつた.肝,胆道,膵を含む腹部臓器のCTが本格的な臨床研究の対象となり出したのは1975年頃からである.
 まだ幾多の問題を残してはいるが,この領域のCTの診断能について部分的にはかなり明確な見通しも可能になつてきたので,現在までに得られた知見を整理し紹介することにしたい.

CTスキャン像の読み方—腹部疾患;泌尿器系

著者: 平松慶博

ページ範囲:P.381 - P.386

はじめに
 ここでは腎,尿管,副腎について述べる.尿路は経静脈性尿路造影(IVP)というすぐれた検査法があり,一般にX線診断のしやすい臓器である.しかしながら,かなり大きな病変がIVPで見逃されることもしばしばある.これは腎,その他の臓器を平面的にとらえているためで,ここにCTという検査が新たに加わつたことにより,病変を立体的に診断することが可能になつた(図1).もちろんCTが従来のX線検査にとつて代わるということはまず考えられないし,CTと共に評価されるべき超音波検査も,これからは腎などの後腹膜臓器の診断には重要なものとなろう.腹部単純,及びIVPは血管造影,核医学検査,超音波検査などとお互いに補う検査としてのCTの適応と読影法について,EMI 5005の使用経験にもとづいて述べる.

骨盤内腫瘍のコンピュータ断層撮影

著者: 高橋睦正 ,   鈴木正行

ページ範囲:P.387 - P.396

はじめに
 コンピュータ断層撮影法(Computed Tomog—raphy, Computerized Tomography略してCT)がはじめて臨床の場に登場したのは1972年であるが,当初は頭蓋内疾患への臨床応用について検討が行なわれた.1974年には全身用のCT装置が開発され,全身の各種疾患に広く応用されるようになつた.特に,過去2年問に第2世代,第3世代と称せられる短時間に撮影できる装置が開発されるにおよんで,腹部,骨盤部に対するCTの臨床的価値が確立されつつある7-9,12)
 CTの特徴は,(1)患者の負担が少なく,(2)横断断層像が得られ,(3)組織のX線吸収値の差を診断に供しうることであり,このような長所を生かした臨床応用が今後望まれる.本稿ではCTの骨盤内腫瘍への応用,特に質的診断,鑑別診断に関していかなる情報が得られるかを検討する.

カラーグラフ 消化器内視鏡シリーズ・32

阻血性大腸炎

著者: 武藤徹一郎 ,   上谷潤二郎 ,   堀江良秋 ,   山城守也 ,   日野恭徳

ページ範囲:P.310 - P.311

 阻血性大腸炎は心臓血管系に異常を有する高齢者によくみられる疾患で,低下圧発作の前駆症状に引き続いて突然発症することが多い.症状は突然の下血で,軽度または激烈な腹痛を伴う.病変部位はS状結腸,下行結腸,脾曲部が多い.発症後短時間で潰瘍化から治癒に向うものが多いが,比較的長期間にわたつて治癒が遷延するものもある.
 侵された腸管の障害の程度により3つの型に分けられる.(1)一過性のものは障害の程度も軽く,ほとんど瘢痕も残さずに治癒する.(2)潰瘍狭窄型は腸壁の障害が深層にまで及んだもので,潰瘍を形成した後に瘢痕による狭窄が生じる.(3)壊死穿孔型は腸壁の壊死が深層にまで及び穿孔を起こしたものである.一過性のものには外科的治療を必要としないが.狭窄型のものは狭窄が著しい場合には切除を必要とする,壊死穿孔型のものは速かに診断して救急手術を行なう必要があるが,予後は良くない.

グラフ 外科医のためのX線診断学・3

腹部単純X線像—外傷

著者: 山本修三

ページ範囲:P.313 - P.322

□はじめに
 腹腔内出血,腸管破裂および後腹膜血腫など,腹部外傷の腹部単純X線像について,とくに腹腔内出血のX線所見を中心に,X線像読影のポイントを解説してみたい.

座談会

CTスキャン—外科医のために

著者: 蜂屋順一 ,   平松慶博 ,   多田信平 ,   菅原克彦 ,   田坂晧

ページ範囲:P.398 - P.406

 コンピュータ断層撮影(CT)が初めて報告されて以来僅か5年の間に,その普及と装置の改良は目覚しく,特に日本における状況はまさに"ブーム"といつた様相を呈しております.大学,大病院はもとより100床以下の中小病院にも続々導入されつつあり,その数は全ヨーロッパを凌ぐといわれております.
 今回,より早くよりCTに関するご研究に着手しておられた放射線医の方々にお集りいただき,特に一般外科で日常取扱う領域におけるCTの現状とその意義から将来像に亘るお話し会いをしていただきました.

Spot

アメリカにおけるCAT scanningの現状

著者: 松元輝夫 ,   貝原信明

ページ範囲:P.409 - P.412

囗はじめに
 Computerized Axial Tomography(CAT)はイギリスで開発され,1972年4月,Ambroseら1)によって最初の臨床報告がなされた.CAT scannerがアメリカに導入されたのは1973年6月,Mayo Clinicに設置されたのがはじまりである.衆知のように,最初のCATscannerは頭部,特に頭蓋内病変の診断に限られていたが,1974年2月,Ledleyら2)によつて全身の各臓器に応用可能なbody scannerが開発されて以来アメリカ国内に急速に普及し,1974年10月には本法の臨床効果に関する第1回会議がPresbyterian St. Luke's Hospitalにて開かれ,翌年3月には第1回国際会議が開催されるにいたつた.その間,多くの人材と多大の努力と巨費を投じて数多くのすぐれた臨床成果が報告されてきたが,scanner自体も改良に改良が加えられ,次々に新しい機種が登場するので,CAT scanningをいかなる疾患にどのように応用し,どのような基準にもとついて診断するかを未だ決めることが出来ないのが現状である.
 脳神経科領域におけるCAT scanningの診断的価値は十分に認められ,それについては本特集にてくわしくのべられると思うので,本稿では,主としてbody scanningに関するアメリカの現況並びに問題点についてのべてみたい.

講座 皮膚縫合の基本・3

皮膚縫合の基本手技

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.418 - P.427

 皮膚縫合は,最も基本的な外科手技の一つにもかかわらず,日常の外科手技においてはとかく軽視されがちな手技であろう.
 しかし,最近では外科手術後の創痕の治療を望む患者が増加し,形成外科医を訪れるようになつている.創痕の良否には種々の因子がからんでくるので,単純にこれらの症例の縫合技術を批判するものではないが,最初の手術の際,より慎重に皮膚縫合が行なわれていれば,後日,創痕が問題にならなかつた場合も少なくない,今や皮膚縫合にも細心の注意が払われねばならない時代となつたことを痛感するのである.

Practical Postgraduate Seminar・11

輸液療法の実践的方法

著者: 古屋清一

ページ範囲:P.428 - P.432

主な内容
輸液手技の原則的事項
投与経路,投与速度,検査,計算値と患者の状態経口摂取不能
急性不足症
慢性不足症
混合型不足症
術中

臨床研究

遺伝性球状赤血球症に併発せる胆石症に関する考察

著者: 青木豊明 ,   曹桂植 ,   山下隆史 ,   鎌谷正博 ,   梅山馨 ,   三島衛 ,   竹村史 ,   三島紘一 ,   中村義尚

ページ範囲:P.433 - P.437

はじめに
 遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis,以下H.S.と略す)は家族性に発生し,とくに性別及び各人種間には差がみられないが,やや北欧系に多いといわれている.本疾患は貧血,黄疸,脾腫を主症状とし,とくに血液所見では球状赤血球の出現,網状赤血球数の増加,赤血球浸透圧抵抗の減弱,赤血球寿命の短縮,クームス試験陰性などが特徴である.本疾患の原因は骨髄の機能障害1),脾の赤血球破壊亢進2),および脾の血管異常3)などの説がなされていたが,1931年Nageri4)が赤血球の球状化が原因であるとし,その契機を先天的,遺伝的な面に求め,Jacob5,6)らの研究により赤血球膜の異常が指摘された.彼らによると赤血球膜のNaの透過性が亢進し,それとともに赤血球内に水分が入り球状化する.この時Naを赤血球外に排泄するためsodium pumpの働きが活発となり,エネルギー源としてATPが消費される.ATPの産生を高めるため膜に存在する燐脂質が消費され,膜形成物質の喪失をきたして膜面積が減少しmicrospherocyteといわれ,現在ではJacob5)らの説が一般に受けいれられている.これらの異常赤血球は脾で捕足,破壊されるために本症は摘脾によって100%臨床症状が改善される疾患である.本疾患では貧血とともに間接ビリルビンの上昇による黄疸がほぼ90%に認められ,長期にわたる過ビリルビン血症の持続は高頻度に胆石を合併しやすく,胆石の発見から逆に本疾患がみつかることも経験されているところである.今回われわれは教室並びに関連病院で経験したH.S.症例17例のうち胆石を合併した7例について検討を加えるとともに若干の文献的考察を加えて報告する.

大腸憩室疾患・大腸癌併存例の検討

著者: 伊東恭悟 ,   村上哲之 ,   稲本純三 ,   熊倉啓夫 ,   高屋誠章 ,   松浦喜美夫 ,   松田恵司 ,   町田純一郎 ,   遠藤正章 ,   今充

ページ範囲:P.439 - P.444

はじめに
 大腸憩室疾患は欧米においてはすでに1920年代より症例が急に増加の傾向を示し,現在本疾患は大腸疾患の重要な位置を占めている.しかし,本邦においては1970年頃までまれな疾患とされてきたが,最近では増加のきざしがみられ,わが国での発生頻度は2.2〜9.2%1)とされている.一方,アフリカ原住民には極めてまれとされ,600人のバリウム検査,2,367人の剖検例にて本症を1例も見いだせなかつたとの報告2)もみられるほどである.しかし欧米への移住アフリカ人子孫からは大腸憩室疾患が高頻度にみられること,また高齢者に多くみられることも考えあわせるとき本症の発生には後天性ないし環境因子が関与しているものと思われる.
 一方,大腸癌にも地域別発生頻度に大腸憩室疾患と同様な傾向がうかがわれ,食生活様式が大腸癌発生の重要因子の1つとして挙げられ,食生活においても欧米化しつつあるわが国においても両疾患は増加することが予想される.

臨床報告

Fecal impactionに起因したObstructive colitisの1例

著者: 金児千秋 ,   冨田隆 ,   日高直昭 ,   北村紘彦 ,   鈴木聰

ページ範囲:P.445 - P.448

はじめに
 大腸の閉塞部の口側に生ずる非特異性潰瘍ないし壊死の存在が最近注目され,obstructive colitisないしnecrotizing colitisと呼ばれている.これは大腸癌による狭窄ないし部分的閉塞がある場合に多いが,これとは別に便栓塞やヒルシュスプルング病など非癌性疾患による通過障害によつても,その口側の腸管にこのようなcohtisが発生することがある.
 私たちはバリウムイレウスによるS状結腸のfecalimpactionによって発生した上行結腸のmassive gan—grenの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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