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特集 乳幼児急性腹症—診断のポイントとfirst aid
緊急手術の適応—腸重積症
著者: 飯島勝一1 青木克彦1 伊藤正幸1
所属機関: 1聖路加国際病院小児外科
ページ範囲:P.681 - P.691
文献購入ページに移動腸重積症とは,腸管のあるセグメントが他の腸管に望遠鏡様に嵌入し,腸閉塞を起こすことであり,通常回腸が盲腸に嵌入し,さらに大腸にまでおよぶ.いわゆるileo-colic typeのものが多いことはよく知られている.この疾患の歴史は古く,300年も前から医学的記載がみられるとのことであるが78),発生機序は未だ解明されておらず,ポリープ,メッケル憩室,重複腸管,リンパ腫,紫斑病などのleading pointと呼ばれる器質的原因となる疾患は数パーセントにみとめられるのみで2,4,8,10,20,28),残りの大部分は原因不明であり特発性と称せられている所以である.
新生児に本症を経験することはまずなく,新生児腸重積症は全腸重積症例の0.3%を占めるに過ぎないと報告39)されている位稀であるが,それ以後の乳幼児にみられるイレウスを呈する疾患の中にあつては最も頻度の高い疾患であり,小児専門病院や大学病院を問わず,一般医家や市中病院でもしばしば経験されている.もし24〜48時間見逃されて放置されれば致命的となることはいうまでもないが,本症が緊急の外科的イレウス疾患であるにも拘らず,大部分の症例は非観血的療法にて奏効し,手術を必要とすることが比較的少ないということは臨床的に大変興味ある点である.このようにポピュラーな病気であり,そして小児科と外科との関連領域にある疾患であるだけに,こどもの診療に携わる小児科医も外科医もともに,本症の診断および治療には精通せねばならないと思つている.このような観点から,教科書的な事項や記載は避け,実際的な診断と治療について,われわれの経験を主体として述べることとする.
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