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臨床研究
脳神経外科領域における高浸透圧性非ケトン性糖尿病について
著者: 篠原明1 上野日出男1 渡辺学1 石井昌三1
所属機関: 1順天堂大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.749 - P.753
文献購入ページに移動1925年,Warberg29)がケトン体の検出を伴わない糖尿病の例を報告したが,1951年,SametとSchmarztら22)が,血糖値1,568mg/dlもありながら,尿中ケトン体をほとんど検出されない症例を報告するまで,高浸透圧性非ケトン性糖尿病の臨床的重要性は注目されることなく経過した.本症の概念は比較的新しく,しかもその発生機序は十分に解明されておらず,また本邦での報告例は100余例にすぎない.特に中枢神経疾患の経過中に本症が併発した例は佐々木21),津田28)の他に数例11,29)あるのみで,脳外科的疾患の併発例として報告されたものは少ない.
最近われわれは重篤な経過をたどつた,脳神経外科的疾患に高浸透圧性非ケトン性糖尿病を併発した4例を経験した.本症が脳神経外科的疾患の管理上,発生頻度は比較的高いにもかかわらず,併発症として重要視されることが少なく,発見されずに経過する症例も少なくないのではないかと老えられる.本症が高い死亡率を有していること,意識障害のある患者においてその発見が遅れがちなこと,本症の治療と脳浮腫の治療は相反する点のあること,適切な治療により比較的予後の良いこと,また発生機序は不明ながら,その仮説として,視床下部および下垂体機能不全が推測されることなどから,本法は脳神経外科的疾患の併発症として,より重要視される必要があると思われる.
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