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臨床報告
隣接臓器へ高度に浸潤した頸動脈球腫瘍の1治験例
著者: 板野恒之1 岡田幸司1 板垣文夫1 内田發三1 関洲二1 田中聰1 寺本滋1 田口孝爾2
所属機関: 1岡山大学医学部第2外科 2岡山大学医学部第2病理
ページ範囲:P.755 - P.758
文献購入ページに移動頸動脈球腫瘍(Carotid body tumor)は比較的まれな疾患であり,本邦においては現在までに約50例の報告をみるのみである1,2).一般的に腫瘍の発育は緩慢であり,症状としては頸部腫瘤の触知により気づくものが最も多く,巨大になつてくると頸部の神経や血管の圧迫症状を呈するものもある.その治療法は腫瘍の完全摘出が最良の方法であるとされているが,腫瘍は総頸動脈の内・外頸動脈の分岐部に存在し,腫瘍が大きくなるに従い迷走神経,舌下神経,舌咽神経などの隣接臓器に浸潤することがあり,手術にはとくに慎重な操作が要求される.
われわれは生検にて頸動脈球腫瘍と診断し,その後約3年を経て右側頸部拍動性腫瘤を主訴として来院し,頸動脈造影にて頸動脈球腫瘍と診断し,腫瘍および隣接臓器の摘出とともに自家静脈による総頸動脈・内頸動脈間の血行再建を行なつた症例を経験したので報告し,若干の考察を加えたい.
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