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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科33巻6号

1978年06月発行

雑誌目次

特集 T-tubeと胆道鏡

T-tube挿入の適応—私はこう考える

著者: 水本龍二 ,   日高直昭

ページ範囲:P.785 - P.790

はじめに
 近年,胆石症における診断技術の向上や術中胆道造影の普及により,結石の遺残あるいは再発の頻度は減少の傾向にあるが,いまだに再手術例中の結石の遺残あるいは再発の頻度は少なくない1).すなわち初回手術時における原疾患や合併病変の認識や,さらに手術術式の選択が問題となり,T-tubeの適応も重要な問題のひとつである.
 T-tubeはまた胆道系悪性腫瘍に際しても胆管空腸吻合のsplint drainageや切除不能例に対する腫瘍貫通法としても利用され,また急性化膿性胆管炎や重症型急性膵炎などに対する急性期の胆道減圧法として,あるいはLemmel症候群やsphincteroplastyなどの付加手術としても使用されている.そこで日常われわれの行なつている胆石症やその他良性疾患における総胆管切開およびT-tube挿入の適応について述べ,さらに肝門部腫瘍における黄疸軽減法としてのT-tube,U—tubeの応用などについて自験例を中心に述べてみたい.

T-tube挿入の適応—私はこう考える

著者: 葛西洋一 ,   佐々木英制 ,   柿田章 ,   近藤博

ページ範囲:P.791 - P.796

はじめに
 胆道系は炎症,損傷,結石,腫瘍などによつて容易に狭窄ないし閉塞をきたしやすい.また,総胆管切開を必要とする症例の大部分は,胆道内圧調整機能を有する胆嚢がすでに摘出されていて,術後の胆道内圧亢進によつて胆管縫合部の不全を惹起する可能性がある.したがつてT-tubeはこれらの病態の予防および治療の手段として繁用され,その有用性の評価はほとんど定着している.しかしT-tubeの構造や材質にも変遷があり,T-tube挿入による合併症も皆無ではない.こうした背景をもとにT-tube挿入の適応について現在の見解をのべる.

T-tube挿入の適応—私はこう考える

著者: 岡島邦雄 ,   木林速雄

ページ範囲:P.797 - P.804

はじめに
 総胆管切開およびT-tube誘導術はKummell(1884),Kehr(1898)が初めて報告して以来(Hess1)),主として総胆管結石症に対する安全,確実な術式のひとつとして広く施行されてきた.しかし,一方ではT-tube誘導が多く用いられるようになるにつれ,それによる合併症も皆無でないことも知られるようになつた.ただし,現在の胆道外科において総胆管切開の有用性にたいしては異論のないこところであるが,不必要な,また安易な考えによる総胆管切開は避けるべきであることは勿論である.総胆管切開の適応は後に詳述するが,適応決定の一助としての術中胆道X線検査は非常に大切な検査法である.
 本論文では,胆石症手術自験例308例を検討対象として,総胆管切開の適応,T-tube誘導術の問題,術中X線検査等について考察を加え,また,著者らが行なつている実際の総胆管切開術についても述べ諸賢のご批判を仰ぎたい.

T-tube挿入の適応—私はこう考える

著者: 宮崎逸夫 ,   永川宅和

ページ範囲:P.805 - P.811

はじめに
 総胆管切開後総胆管ドレナージを行なう場合,種々の方法が報告されているが1-5)それらのうち,T-tubeによる総胆管誘導術は感染胆汁の体外誘導と胆道の減圧をかねて古くから行なわれ,現在なお広く使用されている方法である.
 しかし,胆石症その他で総胆管を切開した場合,その切開創を1次的に縫合閉鎖するか,T—tubeに代表される誘導管を設置した総胆管誘導術を施行するかについては,すでに多くの議論がなされているものの6-8),今なお挿入の適応,手技,方法,抜去時期など種々の問題が残つている.

T-tubeの留置と抜去—私はこうしている

著者: 石山和夫 ,   岡本哲彦 ,   固武健二郎

ページ範囲:P.813 - P.817

はじめに
 Kehr (1909)1)によつてその有用性が提唱されたT-tubeによる胆汁誘導の手段は,胆道外科領域において,胆管内減圧,胆管内容のドレナージ,胆管Splintなどに応用されるのみならず,胆道直接造影や胆道鏡などの胆道検索の経路設置の面からもその臨床的価値は無視できないものがある.しかしT-tube設置の適用,誘導方法および型式や材質などに関しての問題も少なくない.これらの点について,総胆管に対するT-tube誘導術の設置と抜去を中心にわれわれの行なつている方法と見解を述べてみた.
 対象とした症例はわれわわれの施設において過去7年間にT-tube誘導術を行なつた120例である(表1).

T-tubeの留置と抜去—私はこうしている

著者: 中山和道 ,   池田明生

ページ範囲:P.819 - P.822

はじめに
 T-tubeは胆石症手術時の総胆管切開後の総胆管ドレナージとして使用され,また胆道癌手術の胆道再建術,胆管損傷手術時にSplintと胆道ドレナージをかねてよく使用される.今回は胆石症手術時の総胆管ドレナージにおけるT-tubeの問題について述べる.

T-tubeの留置と抜去—私はこうしている

著者: 田中紀男 ,   角田司 ,   吉野奈三 ,   土屋凉一

ページ範囲:P.825 - P.829

はじめに
 今日,肝胆道系の手術の中で総胆管切開術は胆嚢摘出術についで普遍的な術式となつている.総胆管切開術の適応は施設によつて多少異なるが,PTCまたはERCPにて術前より適応が決定していたり,また術中胆道造影がルチーンに行なわれ,造影所見から適応が決定されることが多くなつた.総胆管切開がなされた症例では普通T-tube外瘻が造設される.

T-tubeの留置と抜去—私はこうしている

著者: 相馬智 ,   松田博青

ページ範囲:P.831 - P.836

はじめに
 胆石症に対する手術成績は最近著しく向上したが,今日なお10〜20%1)の術後の不満足例が見られ,胆摘後症候群2,3)などと総称されている.このような胆石症手術の術後愁訴や再手術例4-6)をなくして手術成績を向上させるためには,術前・術中の全胆道系の病変の的確な把握と機能を知ること,それに伴う適切な術式の選択が重要である.本項のT-tube挿入の問題も,それによつて起こる合併症が皆無でない7)ことから,挿入の適応,手技,抜去時期など種々の問題9-11)が残されていることも事実である.本項では胆石症手術に際し,胆道切開後T-tubeを設置した自験例の経験を中心に,教室でおこなつている総胆管切開術,T—tube挿入術式,T-tube挿入後の術中・術後の造影法,T-tube誘導術に関する種々の問題について筆者らの考え方をのべることにする.

T-tubeの留置と抜去—私はこうしている

著者: 小野慶一 ,   中田一郎

ページ範囲:P.837 - P.840

はじめに
 胆道手術とくに総胆管切開の際のT-tube留置は最も基本的な手術術式である.すなわち術前の胆道造影,術中胆道造影,術中の触診所見などで総胆管結石が明らかに認められる場合,経十二指腸的にこれを摘出することもあるが,まず,総胆管切開を行なう必要にせまられる.また特に総胆管の拡張,肥厚など総胆管自体に変化が認められる時,胆嚢内または胆嚢管切断端に小結石,胆泥があつて総胆管内にこれらが落ち込んでいる可能性が否定できない時,そして現在および既往に黄疸がある時なども総胆管切開術の適応とされる.われわれは総胆管切開による結石の除去および総胆管内の探索を終了した後,原則として一次的縫合閉鎖を行なわず,T-tube留置による総胆管ドレナージを施行している1)
 ここで,われわれが考えているT-tube留置の目的,実際の留置法,抜去法,そして経十二指腸的括約筋形成術transduodenal sphincteroplasty(以下TSP)を行なつた際の留意点などについて記してみたい.

ネラトンカテーテルの留置—私はT-tubeを使用しない

著者: 久次武晴

ページ範囲:P.841 - P.847

はじめに
 総胆管切開術(choledochotomy)と総胆管ドレナージは胆嚢摘出術とともに胆道手術の最も基本的な術式である.胆汁を体外に排除せしめる術式または処置として総胆管ドレナージのほかにも外胆嚢瘻造設術,開腹後に肝表面より刺入して肝内胆管に細管を挿入する肝内胆管ドレナージなどがありさらに最近では経皮経肝胆道ドレナージの処置が盛んに行なわれるようになつた.
 1,600例の九大第1外科での胆石症手術例を分析してみると総胆管ドレナージは総胆管・腸管吻合の一部例を除き総胆管切開例の殆んど全例に行なわれるので総胆管切開の適応を決定することがおのずから総胆管ドレナージの適応を決定することになる.ここではドレナージ術式にあたり使用するカテーテルを中心に検討を加えて報告する.

T-tubeによる合併症

著者: 佐藤寿雄 ,   高橋渉 ,   植松郁之進 ,   木村晴茂

ページ範囲:P.849 - P.856

はじめに
 T-tubeの功罪については,今日でもなお,必ずしも一定の見解に達したとはいえない.T-tubeはさほど有用なものではなく魔除けにすぎないとする極端な見解1)は別として,胆管の一次縫合を支持する主な理由はT-tubeによる合併症が決して少なくないためとされている1-4).T-tubeによる合併症の経験の差によつてT-tubeの印象は全く異なつてくるのであろう.
 著者らは胆管一次縫合を全く否定するわけではないが,胆管切開例には以下に述べるような理由から原則としてT-tubeが設置している.すなわち,胆管切開を必要とする症例では胆汁の汚染がみられ,胆管内圧が上昇しているものが多い.このような症例にはT-tubeを設置して術後早期に汚染胆汁を排除し,胆管内圧上昇による肝の負担を軽減させることは極めて意義のあることと考える.さらに,乳頭ブジールングや截石操作後の胆道内圧が異常高値を示すことは,術中胆道精査時によく経験する.また,福島ら5)の犬による動物実験でも,ファーター乳頭部にネラトンを留置するとその後1週間にわたつて胆道内圧は高値を示すことが知られている.したがつて胆道精査は胆道系の局所的な損傷や一過性の浮腫のため術後胆汁うつ滞を惹起する危険が憂慮される.このような観点から胆道精査を伴う胆管切開例にはT-tubeを留置すべきものと考えている.

術中胆道鏡の実際

著者: 新井健之

ページ範囲:P.857 - P.862

はじめに
 近年,術中胆道内精査法の発達普及はめざましく特に胆道造影法はいろいろと工夫され,その普及も著しい.胆道内視鏡も胆道内圧測定法と共に急速に普及しつつあるが胆汁汚染の危険性や操作の面倒な事等を考えて未だ行なつていない施設も多い.
 私は1968年より術中胆道検査として胆道内視をとり入れ,はじめはACMI製胆道鏡を使用し,1971年より国産の胆道鏡の開発に努力してきた.現在までに前者で60例,後者で約120例合計約180例の術中胆道内視を行なつてきたのでここに術中胆道鏡の実際面を記述してこれから術中胆道内視を行なおうとされる方々の参考に供したいと考える.

術後胆道鏡の実際

著者: 後町浩二 ,   平塚秀雄

ページ範囲:P.863 - P.867

はじめに
 胆管結石症においては一回の手術で全ての結石を除去することが理想的であることはいうまでもない.しかし,総胆管結石症では全ての結石を除去しえたと思つても,ときには術後T-tube造影で結石陰影を認めることもあり,また肝内結石症ではいかなる手術手技を用いても全ての結石を除去するのはきわめて困難なことである.
 そこでわれわれは術後胆道鏡検査法を開発し胆道遺残結石の除去を行ない1)好結果を得ているので,その手技および本法が有効であつた症例を紹介する.

Editorial

胆道の精査

著者: 佐藤寿雄

ページ範囲:P.782 - P.783

 胆石症の手術に際しての総胆管切開術の適応として,Glennは,(1)総胆管結石,(2)上腹部痛または発熱を伴つた黄疸の既往があるとき,(3)総胆管の拡張と壁の肥厚のあるとき,(4)萎縮胆嚢で,その中に結石があるとき,(5)胆嚢管の拡張のあるとき,(6)膵頭部に硬結があるとき,および(7)60歳以上で,胆道疾患の経過が長い場合,などをあげている.その他,胆嚢内に多数の結石のあるとき,頑固な胆汁瘻がある場合などもあげられる.要するに,総胆管の拡張や壁肥厚は炎症や結石,腫瘍または胆道の機能異常に由来する胆汁流出障害があつたことを示すものであり,このような場合には例外なく総胆管切開術を行なうべきものである.これが遺残結石や胆嚢摘出後遺症の発生を最少限度にとどめるための第一歩である.
 さて,総胆管切開を行なつた場合,胆管を一期的に閉鎖するか,排胆T-tubeを設置すべきかについては従来より種々論議されている.T-tubeの設置に反対するものは胆管壁の損傷や出血,体液の喪失,創治癒の遅延などを主な理由としている.しかし総胆管切開を必要とする症例では程度の差こそあれ,胆汁のうつ滞や感染が存在するので,ある一定期間汚染胆汁を体外に排除し胆道内圧を低下させて肝負荷を軽減させてやる必要がある.また肝内結石は胆石症全体の5〜10%にみられるが,肝内結石の手術後には結石遺残や肝内胆管の状態を観察する必要がある.このような肝内結石を含めて胆石症手術後の遺残結石や胆泥の排除にはT-tubeよりの洗浄が行なわれる.その他,術後胆管造影,胆道内圧測定なども可能である.一方,T-tube挿入による胆管損傷のための狭窄や出血は極めて少なく,注意すれば避けられるものであり,また胆管下部に通過障害さえなければT-tube抜去後数日以内に創は閉鎖するので,創傷治癒を遅延させるものではない.以上のような理由から総胆管切開後にはT-tubeを設置するものが多い.著者はT-tube設置の適応として,(1)黄疸のある場合,(2)胆道系に炎症があり,胆汁が汚染されている場合,(3)胆管内,とくに肝内胆管内に多数の結石,とくにビリルビン石灰石がある場合,と考えている.その他,手術後に胆道系の病態を観察する必要がある場合にも挿入することがある.以上,胆石症手術の場合のT-tubeについて述べてきたが,胆管損傷の場合,あるいは胆道再建術の場合にもT-tubeがしばしば用いられることは周知の如くである.

カラーグラフ 消化器内視鏡シリーズ・35

食道カルチノザルコーム

著者: 遠藤光夫 ,   井手博子 ,   林恒男

ページ範囲:P.778 - P.779

 食道の肉腫は稀で,悪性腫瘍の0.1〜1%にすぎない.ひとつの腫瘍において,癌腫と肉腫と2つの組織像をもつものを癌肉腫と名付けられたが(Virchow 1864),食道の癌肉腫についてLin (1971)は,欧米文献上39例を報告,また本邦文献上では,僅か10数例にすぎない.
 症例 60歳,男性,約1ヵ月前より嚥下障害に気付く.全身状態は良好で,全粥の摂取が可能である. 食道造影所見(図①)では,中部食道(lm),左側壁に有茎性の約6.5Clnの腫瘤様陰影をみる,腫瘍の表面は,わずかに凹凸があり,粗糖を示すが,潰瘍はみとめない.内視鏡所見(図②a)では,上切歯列より28cmに表面平滑な腫瘤を認めた.有茎性で体位の変換により容易に移動し,深達度の浅いことが推定された.内視鏡を腫瘍の肛門側まで挿入したが,腫瘍の口側と肛門側とでその性状をやや異にし,後者に表面の凹凸の程度が増していた.腫瘍の右側後壁には,びらん性の癌浸潤がみられた(図2丿b).生検では中分化型扁平上皮癌と壊死組織しかえられず,腫瘤型+びらん型の表在型食道癌と診断し,右開胸胸部食道亜全摘,胸壁前食道胃吻合術を施行した.なお,肉眼的に転移リンパ節と思われるものは認めなかつた。切除標本では(図④),腫瘍は5.Ox2.6×1.Ocmの大きさで,基底部に1.5×2.5cmの茎をみ,その周囲に,2.5×3.5cmのびらん状上皮内癌様の変化をみた.腫瘤は緊満,充実性,表面はほぼ平滑,口側の半分はやや暗赤色で,表面に苔の付着もみた一病理組織所見では,ポリープ状腫瘤のほぼ口側の半分は肉腫状,肛門側半分は扁平上皮癌の所見である(図⑤).肉腫部分の表面には,壊死,出血,白血球の浸潤など炎症性変化もみられた.癌腫は分化した扁平上皮癌で,中心には角化もみられ(図⑥),癌の深達度は粘膜下層までである.周辺びらん状にみえたところは上皮門癌の状態で,間質に肉腫様変化はなく,リンパ球,形質細胞,好酸球などがみられ,また一部に,扁平上皮癌のリンパ管内侵襲がみられた(図⑦)一肉腫部分は,紡錘型細胞肉腫というべき所が大部分で,一部に多型細胞肉腫がみられた(図⑧).肉腫部分の鍍銀染色では(図⑨),格子線維が細胞内にこまかく入りこんでいて,線維に乏しい癌巣とは全く異なり,この腫瘍細胞が上皮性とは考えられない所見である.図⑩に癌腫部分と肉腫部分の移行部付近を示す.

座談会

胆道鏡のすべて—その歴史,適応と実際,そして将来

著者: 中村光司 ,   安藤博 ,   新井健之 ,   山川達郎 ,   相馬智

ページ範囲:P.868 - P.884

 内視鏡が有用な診断武器から治療面での先鋭的な武器へ移行しつつある事実はそう古いことではない.その意味で本座談会の司会を担われた相馬智氏らによる第20回日本消化器内視鏡学会でのR.T.ディスカッション"治療内視鏡学"は—logyとしての確立を斯界に宣言したものといえよう.本座談会は胆道鏡の有用性を日常臨床にScopeを駆使されている先生方によつて浮き彫りにしていただいたのと同時に,論文には尽くせぬ,手術場での生の声をvividな形でお話しいただいた,相馬先生には読者にかわつてその手技の実際を微に入り細に亘つてお聞きいただいた.明日からの臨床にお役に立てば幸甚である.

グラフ 外科医のためのX線診断学・6

上部消化管造影—食道<その1>

著者: 中山隆市

ページ範囲:P.889 - P.899

食道のX線解剖
 食道のX線読影にあたつては食道の解剖を十分に理解しておくことが大切である(表1).食道には生理的な狭窄部が3つあるが第1狭窄部と第3狭窄部付近の食道X線像は周囲臓器が固定され動きの少ないため比較的読み易い.しかし胸部食道は肺,気管支,及び摶動性の心,大血管また読影上大いに邪魔ともなる鎖骨,胸骨,脊柱骨等の影響をうけるため撮影にあたつては第1斜位,第2斜位,schatzki体位等を駆使して食道を浮きだすようにする努力が必要である.読影にあたつては,①食道全長の型,②食道壁(外膜を中心に),③食道の粘膜像の順にその変化をよみ,それらの記載にあたつては食道癌取り扱い規約のX線分類に従い1),a)占居部位,b)壁在性,c)長径,d)型(表在型,腫瘤型,鋸歯型,漏斗型,らせん型等),e)境界の性状(明瞭,不明瞭)等の順によむ習慣をつけておくとよい.(細目については食道癌取り扱い規約参照).

Practical Postgraduate Seminar・13

Surgical Oncology—癌治療の総合的併用療法の基礎と臨床

著者: 中島聰總 ,   梶谷鐶

ページ範囲:P.900 - P.910

はじめに
 癌治療の一環としての外科手術の重要性は今日でも不変であるが,それ自体として完結した治療法ではない.たとえば外科医が治癒手術を施行しえたと判断した進行胃癌の術後5年生存率は41.8%にすぎず,症例の半数は再発死亡しているのが現状である.手術後の遺残腫瘍を生体が拒絶しうる限界は106とも6×108個(0.6gr)ともいわれている1,2).これらの腫瘍量は驚くほど少量であり,肉眼的治癒手術と判定しても,この限界を越えて腫瘍が残存することはしばしはあるであろうと思れわる.今日,これ以上手術手技の改善が望めないならば,術後の残存腫瘍に対する治療は他の補助的手段に求めざるをえない.Johnson3)は従来の治療法が何故有効でなかつたかを解析した上で,現在応用可能な治療法を総合的に併用する事(lntegrated cancer therapy)が重要であると指摘している.
 以下手術に併用する補助療法の理論的根拠と適応,ならびに有効と思われる補助療法の実際について概説する.

臨床研究

石灰乳胆汁13例における考察—上とくにその診断について

著者: 大口善郎 ,   韓憲男 ,   伊藤篤

ページ範囲:P.913 - P.916

はじめに
 石灰乳胆汁は1911年Churchmann1)が最初に報告して以来,欧米ではしばしばみられる疾患である.本邦でも1926年瀬木2)が報告して以来比較的まれな疾患とされていたが,最近は報告例が増加してきた.当院においても,最近5年間に13例の石灰乳胆汁を経験したのでこれを報告し,とくにその診断面を中心にして考察を加えてみたい.

膵体尾部癌患者に対する注腸造影検査の意義について

著者: 別府真琴 ,   藤本憲一 ,   疋田邦彦 ,   栗田清 ,   平井健清 ,   村井紳浩 ,   谷口積三 ,   吉本信次郎 ,   土居幸子

ページ範囲:P.917 - P.921

はじめに
 近年血管造影,逆行性膵管造影等の普及により,膵癌診断技術の向上がみられるが,膵のなかでも特に体尾部は解剖的位置の特殊性のため,これらの部の癌においては症状発現が遅れ,比較的早期に診断される場合が少ないようである.膵体尾部癌は周辺臓器に浸潤転移を起こし,それによつてはじめて症状が出現する場合が多いようである.膵体尾部癌による胃および十二指腸の二次的変化は,X線的に割合知られているが1,2),大腸に及ぼす二次的変化については,Wigh3),Khilnani4),Zbor—alske5v,Meyers6)等により検討されているが,本邦においては未だ報告例は少ない.われわれは最近3年間に膵体尾部癌10例を経験し,そのうち注腸造影を施行しえた7例全例に異常所見をえたので,X線所見を提示し,文献的に考察を行ない,膵体尾部癌における注腸検査の意義につき述べる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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