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文献詳細

雑誌文献

臨床外科33巻7号

1978年07月発行

文献概要

特集 臓器大量切除と栄養 巻頭言

一般大手術と栄養

著者: 葛西森夫1

所属機関: 1東北大学医学部第2外科

ページ範囲:P.946 - P.947

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 生体は組織に損傷をうけた場合に,その修復を何よりも優先させる.自然界の動物はほんの小さい負傷でもきびしい生存競争の中で大きなハンディキャップとなり,餌を得ることが困難になるだけでなく,自らが天敵に喰われる立場にたたされる.天敵から身をかくすのが生命をつなぐ唯一の方法であり,回復するまでは餌はおろか水を飲むことも困難な状況に置かれる.このような状態で生命を維持する為に必要な水分とカロリーは,体内に貯蔵されていた蓄えか,あるいは身体を構成している材料を以つて補給するしかない.その上に創の修復に要するすべての素材も,身体の中で損傷をうけていない組織から供給される.このような絶対飢餓においてさえ創傷治癒機転が進行することは,創傷が治癒しない限り生命の維持が困難な自然界に生きている動物の驚くべき適応反応ということが出来る.
 このことは人間においても同じである.30年前までは,外科患者に輸血も補液も殆んど行なわれず,せいぜい手術前に生理食塩水1,000mlを大腿皮下に注射するぐらいで,手術後には経口摂取が許される迄患者は絶対飢餓に近い状態に置かれていたのである.しかし,このような情況下でも,胃切除患者の過半数は治つていたのである.即ち患者は数日間栄養をとらなくても創傷治癒を完成する力を持つている.このことはしかし,手術患者の栄養補給をいい加減にしてよいことを示すものではない.このような患者では,回復までに10kgもの体重減少があり,健常組織の大きな犠牲によつて,やつと創傷治癒が行なわれていたのである.当時,胃切除死亡率は高く,全身状態のよい若い人でないとその侵襲になかなか耐え難かつたのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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