icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科34巻2号

1979年02月発行

雑誌目次

特集 外科とエコー

超音波診断—歴史と展望

著者: 岡益尚

ページ範囲:P.157 - P.160

はじめに
 超音波診断法が臨床医学のなかに根をひろげはじめたようである.研究がはじめられてから既に30年に近い.ここに超音波画像とX線CT画像との鮮やかな腹部断面像をかかげてみる.
 超音波断層像は,並列にならべた8個の,7cm直径の,3MHz振動子による約10秒自働的複合扇形操作で得られたものであるが,正常人上腹部のこの像(図1,腹部横断像,図2,腹部縦断像)の中に肝内の脈管構造,胆嚢と胆道,明らかな膵全体の輪郭などが,腎の横断像とともに映しだされている.呼吸運動その他によるボケは殆どみられないことは,適切な画像診断情報としてよい評価を与えることができる.

超音波診断—理論と実際

著者: 竹原靖明

ページ範囲:P.161 - P.171

はじめに
 近年超音波診断法は高分解能を有する電子スキャンの開発・実用化により急速に臨床の場に普及し高い評価を受けている.それは侵襲がほとんどなく,苦痛を伴わないという利点の上に画像が鮮明かつ緻密になつたこと,なんら熟練を要さないで実時間で画像が観察できるようになつたことによるものである.このような装置の急速な進歩および臨床への普及は長年この道の研究にたずさわつてきたものにとつては無上の喜びであるが,一方一抹の不安がないわけではない.それは現在,臨床診断に利用されている超音波の宿命的ともいえる性質を無視したような過度の評価や期待が見られるからである,したがつて,ここでは復習の意味から診断に用いられる 「超音波」に限定し,とくに断層法の実技・読影に必要とする事項に力点をおいて解説した.超音波画像に対する正しい認識に役立てば幸いである.

乳腺疾患

著者: 小川博康 ,   河村哲雄 ,   竹原靖明

ページ範囲:P.175 - P.181

はじめに
 超音波という一種の音波を利用した超音波診断法は,超音波が生体の軟部組織の分解能力に優れ被検者に何ら苦痛や障害を与えない文字通りの非侵襲的検査法であり,特に乳腺は皮膚表面に近い部分に存在し,形態が単純であるため,分解能の向上に有利な高い周波数(現用5MHz)を用いることができる点,最近この領域の診断にも広く普及しつつある.
 乳腺領域に於ける超音波診断の試みは,Wild1)らに始まり,本邦に於ては,林,和賀井2)らによつて初めて報告された.その後,装置の精度向上及び感度断層法によるエコーパターンの定量的解析法3)の導入,カラー表示法等画像処理面の検討4),コンピューターの導入等により,数多くの研究者により優れた業績が報告され,その臨床的評価が漸次確立しつつある.今回われわれは,乳腺疾患の超音波診断に関し,文献的考察をも含めて,最近の本診断法の現況を紹介する.

心臓—成人の心疾患,特に弁膜症

著者: 尾本良三 ,   横手祐二

ページ範囲:P.183 - P.193

はじめに
 外科における心エコー図(Echocardiography)の臨床的意義は近来ますます大きくなつてきた.従来のシングルビーム心エコー図(いわゆるUCG)に加えてこの1〜2年間のリアルタイム心臓断層の技術的進歩が,このような事情の背景である.リアルタイム映像法の開発された当初は,リアルタイム心臓断層の映像としての画質が著しく劣つていた.その頃にはリアルタイム心臓断層法はシングルビーム・心エコー図のビーム方向のチェックに有用な補助手段として評価されたに過ぎない.リアルタイム映像法の画質の著しく向上した現在では,リアルタイム映像法そのものが重要な診断的意義を持つようになつた.この時,一番問題となるのは心臓カテーテル検査,X線心臓血管撮影法との関係である.今日,すでに明らかになつたことは,一部の疾患ではリアルタイム映像法が心臓カテーテルやアンジオグラフィーをほとんど無用のものとし,またある疾患ではリアルタイム映像を抜かしては正確な診断をつけられないという事実である.本稿では,著者自身が手術的に手がけた症例を中心に"外科的に心エコー図がどのように役立つているか"について心臓外科と心エコー図とのかかわり合いを述べ,この領域の現況の報告とさせて戴くこととする.内容は成人の疾患のうちでも特に弁膜症が中心となつている.なお,先天性の小児心疾患について,また,心エコー図一般1-7)に関しても他を参照して戴きたい.

肝・胆道—手動接触複合走査による

著者: 北村次男

ページ範囲:P.195 - P.204

はじめに
 超音波断層法は最近の装置の改良により面目を一新し,非常に良い画像が安定して得られるようになつた.本項の肝・胆道の診断においても,従来の装置による画像に比し分解能が著明に向上したので6,9,10),これまでのスクリーニングとしての用い方はいうに及ばず,いわゆる精密検査にも応用できるようになつた.さて,初心者にも安定して良質の画像が得られるという点では,この領域でも種々の電子スキャンを始めとする高速走査の装置が盛んに用いられている.本特集でも,この肝・胆道に関しての高速断層像は次項に掲げられている.
 実際には,手動走査型のものと高速走査型のものとのそれぞれに,いくつかの長短が認められるが,諸般の事情は,この領域でも,リニア型電子スキャンを中心とする高速走査の普及が,今や手動型のそれをはるかにしのぎつつある傾向である.しかし,手動接触複合走査型は,より広い領域をカバーできるので臓器相互の関係を一目瞭然にできるため,X線CTとの対比も行なえ,また,より微細な画像を理論上からも,実際にも得ることができる6,9,10).だから,その最新の装置による画像は電子走査や機械的走査の高速装置が如何に今後隆盛を極めようとも,その価値を失わないものである.今回は,編者のご注文により,最新のこれらの装置による画像を紹介しながら,手動接触複合走査超音波診断装置によるこの領域での診断についてのべる.

肝・胆道—高速断層像

著者: 坂口正剛 ,   尾崎俊彦 ,   市田文弘

ページ範囲:P.205 - P.213

はじめに
 超音波の医学的応用は1942年,脳疾患への適応をDussikが報告1)したことにその端を発している.胆石診断は1949年Leudwigにより始められたと言われており,肝疾患への応用は1952年Howry & Blissにより報告2)された.このように比較的その歴史の浅い超音波検査法は,装置の改良,ことにここ2〜3年来のリニア電子走査方式の開発3)により,医学的応用が加速的に促進されている.
 電子走査方式は高速走査方式の一種であり,接触複合走査法の静止画像と異なり,実時間表示すなわち活動画像が得られるところに特徴がある.

膵臓

著者: 福田守道

ページ範囲:P.215 - P.225

はじめに
 超音波断層法1-6),CTスキャンなど躯幹の断層面を直接映像化して観察する手法の発達により,膵疾患の診断学も大きな転換期を迎えつつあるように感じられる.とくに超音波診断法に関しては,膵の断層面についての形態的な診断情報のみならず,組織特性についてエコーパターン解析の面で質的差異が捉えられることから,膵の局在性病変,とくに膵癌の診断法として有望視され,さらに実時間表示装置の出現は本診断法の普及に拍車をかける気運にある.
 以下最近の新しい超音波断層法,greyscale ec—hographyおよび実時間表示装置による膵疾患診断の実際につき,われわれの最近の検討成績を中心に述べ,ご批判を仰ぎたい.

腎臓

著者: 渡辺泱 ,   大江宏 ,   斉藤雅人 ,   三品輝男

ページ範囲:P.227 - P.235

はじめに
 われわれは生体深部に奥深く位置する腎に対する形態的診断法として,早くから開発されたIVP,腎動脈撮影法などのX線検査法や腎シンチグラフィーを主とする核医学検査法などの秀れた検査手技をもつており,腎疾患に関する詳細な情報を得る恩恵に浴してきた.
 一方,ここ数年間の超音波医学の進歩は,とくに断層診断装置の分野においてまことにめざましく,当初のダイナミックレンジの狭いon-off型の診断装置(Simple B mode echography)から,最近ではスキャンコンバーターによるいわゆる階調性表示(scan converter gray scale echogra—phy)をほどこしたダイナミックレンジの広い診断装置,さらには実時間表示(real time display)を可能ならしめた電子式あるいは機械式高速走査装置の開発にいたるまで驚異的なスピードで発展しつつあり,腎疾患の診断分野においても既存の検査法ではカバーできなかつた欠点を補い,さらに一層,具体性のある多くの情報を提供し得るようになつた.

カラーグラフ 内視鏡的色素シリーズ・1【新連載】

食道癌

著者: 佐野元哉 ,   奥田茂 ,   谷口健三 ,   谷口春生

ページ範囲:P.146 - P.147

 食道扁平上皮癌には主病変に連続して,時には離れて上皮内癌・異型上皮が存在する.食道癌治療のためには,術前にその存在と拡がりを正確に診断することが要求される.醋化法併用ルゴール染色と生検の併用はそのために最も有力な方法である.
 症例1はImの隆起を主体とする病変で(図1—a)その境界は一部不明瞭である(図1—b).染色にてその境界は明瞭となり病巣がほぼ全周性に存在することを示している(図1—c,d).新鮮切除材料でも追試可能で単なる肉眼所見で(図2—a)主病変に接してみられる表面粗な部分は0.2M,pH4の醋酸緩衝液を噴霧すると,colposcopyでいうleukoplakiaの状態が出現しその境界は明瞭となる(図2—b).更に市販のルゴール液を倍に稀釈して噴霧するとその部は染色されず黄色を呈する(図2—c).その他醋酸加工では変化なくルゴール液でやや染色不良な部分もみられる.これらの部分の組織変化をみるため生検鉗子で採取して検討すると,肉眼では識別困難で醋酸加工,ルゴール染色で異常を示す部分(図2—c,①②)は上皮内癌で(図3—a,b),醋酸加工で変化なく,ルゴール染色でやや染色不良な部分(図2—c,③)は悪性所見を認めなかつた(図3—c).症例2は表層型の早期癌で通常内視鏡でびらんと壁の硬さが認められるが病巣の拡がりは不明で(図4—a)染色するとその境界は明瞭となつた(図4—b).症例3は隆起の側方に上皮内癌が存在した例で,やや褪色する部分がみられる(図4-c).染色でその境界は明瞭となり,染色所見から上皮内癌の可能性が高いことが分かる(図4-d).最も問題となるのは主病変と離れて存在する病巣である.症例5(図5-a)のように主病変の近くに存在する例もあり,又症例6(図5-b)のように遠く離れて存在する例もある.後者は頸部食道の近くに認めることが多く特に注意する必要がある.これらの病巣は内視鏡下の染色にて,その存在と拡がりが正確に把握されている(図6-a,b).この部の生検所見は扁平上皮癌で,後者は上皮内癌の像を示し(図7-a,b),切除材料の検討でもこの部は上皮内癌であつた.また症例7,8のような主病変と離れて存在する小さい染色不良部(図6-c,d)も存在する.このような病巣は多くは異型上皮でその異型度は多彩であるが(図7-c,d)その染色像から癌との鑑別がある程度推定可能である.注目すべきは通常内視鏡で識別困難で,染色にて初めてその存在を知り得た病巣が存在する事である.症例9(図8-a,b)は広い範囲に染色異常部を認め,大部分は異型上皮で一部に癌を認めた(図9-a).切除材料での検討でも,異型上皮巣の一部にmicroinvasionをもつた上皮内癌が存在する早期癌であつた.症例10(図8-c,d)のように上皮内癌(図9-b)も存在した.また症例11(図10-a,b),症例12(図10-c,d)のような癌巣が主として上皮下に存在する症例でも,染色にてその上皮の状態を知る事ができ診断がより正確となる.

グラフ 外科医のためのX線診断学・12

経皮経肝性胆管造影法

著者: 兵頭春夫 ,   江里口健次郎

ページ範囲:P.149 - P.156

はじめに
 PTCは穿刺による出血,あるいは胆汁の漏出から胆汁性腹膜炎を惹起する危険があるとして,直ちに開腹しうる外科的準備を必要とされてきた.しかしこの10年間にその考え方も変わり,外径0.7〜0.8mm針を使用して内科的にもルーチンに行なわれるようになつている.減黄の必要を認める症例には,PTCに続いてドレナージも行なわれている.PTCにて肝内胆管の刺入が成功しない場合とか,肝内〜肝外胆管が造影されても胆嚢が造影されない場合には,PTCを応用して胆嚢を穿刺造影する手技もルーチンに行なわれている.

座談会

外科認定医制度を考える

著者: 葛西洋一 ,   長尾房大 ,   牧野永城 ,   和田達雄

ページ範囲:P.236 - P.249

 日本外科学会認定医制度は,昨1978年の第78回総会(井口潔会長)にて本則は成立したものの,その具体的内容に関しては全て,現在検討中の細則に委ねられた形になっております.本則にうたわれた理念を如何に実際に即して現実化するか,和田先生を中心とした検討委員会の方々がご苦心されているところと思われます.
 そこで,本座談会ではこの認定医制度をめぐつて,これまで各方面からだされている論議を集約する意味でも,制度自体の問題点から将来の外科卒後教育全般に亘るあり方の問題まで,ご出席の先生方それぞれのお立場からの忌憚のないご意見を伺いました.本制度の理解と実施に際しての指針としていただけたら幸甚です.

Practical Postgraduate Seminar・18

急性腹症—腹部単純X線による診断〈その2〉

著者: 山本修三 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.250 - P.255

主な内容
4.イレウスの単純X線診断5.腹腔内出血をきたす急性腹症 のX線診断6.その他の急性腹症とX線診断

Topics

肝腫瘍に対する凍結療法

著者: 蔵本新太郎

ページ範囲:P.261 - P.264

はじめに
 肝腫瘍または肝転移というと,一昔前は半分あきらめの境地であつた.しかし今日では一応は積極的な対策処置を考慮する段階に変つてきたのではなかろうか.ここに至るまでに色々な手技,手段の開発と普及をあげることが出来る.その一つに広範囲肝切除術の成功と,術後代謝面の解明が徐々になされてきたことがあげられると思う.現在なお多くの問題点を残しながらも,長谷川らも述べている如く,広範囲肝切除術も数年後には胃全摘術と同じようにroutineな手術になると期待されているし,事実,手術手技そのものは安全な手術の中に入れられてよいようにも考えられる.しかし一方,現実としては他の消化器の手術に比べ出血量も多く,これに伴う手術侵襲も大きい.著者らはこの出血量を如何に少なく抑え,侵襲を少なくするかという点から出発し,数年前より肝組織は凍結感受性が高く,凍結手術そのものは生体全体への侵襲が少ないことに着目し,肝広範囲凍結の実験を行なつてきた.実験上からは右葉全体の範囲容積ので,では生体に対してほぼ安全であるとの確信を得たの凍結従来は手術時に対症的に肝の部分的凍結を行なつていたのを,肝切除術の代りとして術前より計画し,肝転移のある末期癌患者に肝右葉凍結を試みた.今回は現在7症例に実施したが,一応安全に施行し得ているのでその手技を中心に述べてみたい.冷却剤はすべて液体窒素を用いた.

臨床研究

術後急性胆嚢炎—本邦報告42例の検討

著者: 劉崇正 ,   田紀克 ,   奥山和明 ,   田辺政裕 ,   山崎義和 ,   林良輔 ,   陳文夫 ,   吉永雅俊 ,   佐々木守

ページ範囲:P.265 - P.268

はじめに
 術後急性胆嚢炎はその頻度は少ないが,しばしば重篤な経過をとり予後不良となる例が多く,注意すべき術後合併症として最近注目されてきている.しかもこの胆嚢炎は無石の事が多く進行が速く,壊疽性から穿孔性となり,また手術時胆嚢に異常がないため,かえつて手術時期を失し予後不良となる例が多い.一般の胆石症に伴う胆嚢炎とは異なる性質を持つものである.著者らは3例の術後急性胆嚢炎を経験したので,本症の特長について報告する.

血液透析用A-V Fistula作製法の評価

著者: 蒲谷堯 ,   高興弼 ,   芳賀陽子 ,   芳賀駿介 ,   遠藤久人 ,   梶原哲郎 ,   坪井重雄 ,   小坂実 ,   月田修二

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに
 慢性血液透析患者は近年著しい増加を示し,わが国では1977年6月30日現在で患者数は21,140人との報告が人工透析研究会よりなされている.これら患者の全例になんらかのblood accessが必要とされ,1966年Brescia,Cimino1)らにより報告されたA-V fistulaが現在もなお内シャントとして,多くの患者に作製利用されている.そのシャントの良,不良は長期血液透析に大きな影響をあたえ,その作製にあたつては十分な配慮が要求される.そこで,われわれは1972年3月より1977年5月までにA-V fistulaを作製した慢性血液透析患者61例と他施設にて作製された数例のうち,現在観察可能な症例につき,心機能に与える影響,抹梢血液循環に与える影響,外見等をUCG計,指尖脈波計,サーモカメラ,血流計等を用いて検討し,A-V fistulaの作製部位,吻合法等の評価検討を試みた.

臨床報告

Gardner症候群の1治験例

著者: 飛鋪修二 ,   斉藤英夫 ,   中村達 ,   小林武夫 ,   菅家透 ,   野本信之助 ,   梅園明

ページ範囲:P.275 - P.279

はじめに
 1950年から1953年にGardnerは家族性大腸ポリポージス(以下FPC)の一家系に,骨腫・軟部組織腫瘤の発生を認め,ポリポージスと同様に優性遺伝することを明らかにした.1958年Smithが三徴候に対してGardner症候群の名を与えて以来,独立した疾患として認められるに至った.FPCとの異同については従来より議論の多いところであり,最近ではFPCに含める傾向が強く,多発性腫瘍素因を有する全身性疾患として注目をあびつつある.
 最近われわれは,結腸多発癌を合併した大腸ポリポージス・骨腫・軟部組織腫瘤・歯牙形成異常(埋伏歯)をそなえた定型的Gardner症候群を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

純型肺動脈閉鎖症の1経験例

著者: 土屋幸治 ,   保浦賢三 ,   副島健市 ,   飯田良直 ,   金田吉男

ページ範囲:P.281 - P.283

はじめに
 心室中隔欠損症を伴わない肺動脈閉鎖症(pure pul—monary atresia:以下PPAと略す)は,非常に稀な先天性心疾患であり,大部分の症例は低酸素血症あるいは心不全のために新生児期,乳児期内に死亡する.本症患児が生存するためには,卵円孔及び動脈管の開存が不可欠であるが,両者共生直後より閉鎖傾向を示すため早期に何らかの外科的処置を施さないかぎり症状は急速に悪化し,死亡するに至る.
 われわれは最近,4カ月乳児のPPAに対し,肺動脈弁切開術を施行したが,術後急速に血圧の低下をきたし死亡した1例を経験したので本症の外科治療に考察を加えて報告する.

原発性腸間膜血管肉腫の1例

著者: 山本誠己 ,   勝部宥二 ,   奥勝次 ,   浦伸三 ,   勝見正治 ,   宇多弘次

ページ範囲:P.285 - P.290

はじめに
 腸間膜腫瘍は後腹膜腫瘍と共に比較的まれな疾患であり,ことに腸間膜血管肉腫は極めて稀であって,その報告例は非常に少ない.われわれは最近その1例を経験し,これを摘出し得たので,腸間膜腫瘍一般について若干の文献的考察を加えて報告する.

両側頸動脈分岐部動脈瘤の1例

著者: 酒井圭輔 ,   久保田宏 ,   黒田広 ,   村上忠司 ,   相川久志 ,   真銅良吉 ,   伊藤直樹 ,   青木幸範 ,   佐藤英俊

ページ範囲:P.291 - P.294

はじめに
 頸動脈瘤は比較的稀な疾患と考えられているが,最近の血管外科の進歩と共に,その外科治療例の報告も増加してきた1)
 頸動脈瘤は進行性のものが多く,放置すると破裂あるいは脳栓塞等の重篤な合併症をきたす事が多く,その予後は不良である.積極的根治手術が必要であるが,術前に神経症状の無い場合が多く,手術に際しては,一時的血行遮断による脳の阻血性障害の発生防止に留意する事が必要である2,3)

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?