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文献詳細

雑誌文献

臨床外科34巻3号

1979年03月発行

文献概要

特集 成分輸血

成分輸血の理論と現状

著者: 遠山博1

所属機関: 1東京大学医学部付属病院輸血部

ページ範囲:P.319 - P.323

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はじめに
 第2次世界大戦後の昭和20年代に本邦においては心臓・血管外科,肺外科等の胸部外科また脳神経外科等が急速に発展した.また30年代になつて診断法の新展開をふまえて消化器を中心とする腹部外科も大いに発展した.これらをゴトクの3本足のごとく下からささえたものが麻酔学の画期的な進歩,抗生物質の開発と並んで輸血・輸液の普及化および安全化であつたことに疑念を持つ人はあるまい.
 往年の輸血は患者と供血者のABO式血液型だけを合わせ,供血者血清の梅毒検査のみをするだけで,供血者から5mlの10%クエン酸ナトリウムを入れた100ml注射器で採血した血液を直ちに患者に輸注するところの,所謂「枕元輸血」が到るところで施行されていた.しかしすぐに壜に採つた保存血がこれにとつて代り,昭和20年代後半から30年代前半にかけて「大量輸血時代」が全盛で,電話一本で容易に配達される,時としては数万mlにも達する保存血をバックに,多くの外科医が未開の困難な大手術の領域に挑戦しこれを征服して来た.しかし昭和32年頃より輸血後肝炎の多発の現状が明るみに出され,売血の供血源となつた人々の悲惨な実情が世に訴えられ,厳しい世論の批判を受けた.それを受けて昭和30年代の終り頃より日本赤十字社を中心とする献血に転換されると同じ頃に,研究面では免疫学の発展には目をみはらせるものがあつた.即ちABO式血液型のほかにRh式その他数十種もあるところの溶血性副作用の原因となりうる血液型の解明から始まつて,白血球型,血小板型,血清型まで適合するような血液を要求される時代にすらなつて来た.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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