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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科34巻5号

1979年05月発行

雑誌目次

特集 外科と血管造影—〈読影のポイント,鑑別のコツ〉

腫瘤性病変と血管造影

著者: 平松京一 ,   成松芳明

ページ範囲:P.593 - P.610

はじめに
 腫瘤性病変に対する診断技術は,種々の新しい検査法の開発に伴って年々大きな発達をとげ,とくにnon-invasiveな検査として出現したCTスキャンや超音波断層の普及により,腫瘤の局在ならびにその性質をかなり明確に診断することも可能となりつつある.
 しかし腫瘤の最終的な質的診断,栄養血管の同定,血管解剖における変異の有無,周囲への浸潤度,転移巣の有無などの検索には血管造影が不可欠であることは明らかであり,これらが外科的治療におけるアプローチつまり手術適応の決定や切除範囲ならびに血管処理の検討を容易ならしめるものであろう.

炎症性病変と血管造影

著者: 打田日出夫 ,   黒田知純 ,   中村仁信 ,   吉岡寛康 ,   徳永仰 ,   佐藤正之 ,   岡村純 ,   中尾量保

ページ範囲:P.611 - P.622

はじめに
 炎症性疾患を診断する目的で血管造影を施行することは非常に少ない.通常は他の理由で血管造影が行なわれた際に,腫瘍と炎症性疾患との鑑別や,腫瘍病変に合併した炎症性変化を判定するために,炎症性変化の血管造影像を認識しておくことが必要となる.勿論,臨床的に炎症性疾患が疑われ,他の検査で確定診断ができない場合や,手術適応となる炎症性疾患での切除範囲や手術方法の判定のためには血管造影が適応となる.従つて炎症性疾患における血管造影の適応と血管造影像を把握しておくことが重要となる.本稿では腹部炎症性疾患における血管造影の手技上の注意点,適応と血管造影像について症例を呈示して解説する.

血管病変と血管造影

著者: 隈崎達夫 ,   本多一義 ,   西川博

ページ範囲:P.623 - P.635

はじめに
 血管病変における血管造影の歴史は古く,Rö—ntgenがX線を発見した3カ月後にHascheckとLindenthal1)によって試みられたTeichman注入による切断肢血管の造影を初めとする.生体においてはDos Santos2)やLeriche3,4),Villar5)らによる先駆的な業績やその後のHulten6),Staple7),あるいはErtugrul8)らの検討を経て現在では極めて多くの研究報告や専門書9,10)がみられている.しかしながら,これら研究のうちで初期のものはおおむね手技的に経腰的大動脈造影法や上下肢あるいは頸動脈の直接穿刺法によつて行なわれたものであり,従つて対象疾患も大血管を中心とした硬化性病変や,ある種の慢性炎症による血管の変化などに限られているようであつた.これに対しカテーテルによる選択造影が普遍化した昨今では上述の手技はあまり利用されることがなくなり,更に連続撮影装置や高速映画法,VTRなどの開発改良により血管病変の対象も大血管のみならず末梢における動静脈疾患や複雑心奇形など多彩となり,これらの解剖生理学的異常を解明する1手段として,また治療法の決定に不可欠な方法として重要視されるに至つている.すなわち換言するならば,Seldinger11)法以前の所謂古典的な血管造影の歴史は大血管及びその主分枝の血管病変を解明する手段として進歩したとしても過言ではなく,更にSeldingerによる近代的な血管造影法の開発以後も現在に至るまで血管病変は他臓器の疾患とともに常に重要な対象と見なされていると言えよう.
 ところで,記述が前後するが,今回の表題である「血管病変」についてはその定義づけは容易でない.もし仮に「血管病変」を広く血管の病的な変化と考えるならば,その対象は極めて広範囲に亘り,それらを限られた紙面で述べることは困難である.また広義の血管病変の中には他稿にて論ぜられるであろう項目も少なくないと思われる.従つて,本稿で扱う「血管病変」は血管外の要因であるところの臓器の炎症,腫瘍,外傷などに際して出現する血管病変を除いたものとし,これらのうちで日常遭遇しゃすい症例を示し,併せて若干の文献的考察を加えながら表題の概念について述べることとする.

腹部外傷と血管造影

著者: 山本修三 ,   茂木正寿 ,   相川直樹 ,   須藤政彦 ,   平松京一 ,   井戸邦雄

ページ範囲:P.637 - P.649

はじめに
 腹部外傷の診断に腹部血管造影法を初めて導入したのは1957年,Norrell1)で,1953年Seldin—ger2)が動脈造影を目的とした経皮的カテーテル挿入法を発表してからわずか4年後のことである.その後,交通災害,労働災害などによる閉鎖性腹部外傷が増加するにつれ,1960年代の後半から1970年代にかけて腹部外傷に対する腹部血管造影の報告3-6)が相次ぎ,本邦でも最近に至り藤瀬7),福住8),福田9)らの報告がみられる.腹部外傷に対する腹部血管造影の診断的意義は,損傷臓器や損傷の程度の診断,即ち損傷の質的診断がどこまでできるかにある.そこで今回われわれは自験例を示しながら,腹部外傷に対する血管造影の意義と限界について述べてみたい.

出血と血管造影

著者: 石川徹 ,   遠藤賢 ,   徳田政道 ,   芦田浩 ,   大山行雄 ,   築根吉彦

ページ範囲:P.651 - P.660

 はじめに
 出血と血管撮影と言つても急性出血と慢性の出血とは全く趣を異にしている.後者においては,血管撮影の前に種々の検査を行ない,それでもその原因が不明のときにのみ血管撮影が適応になるのが普通である.しかるに,急性の場合は出血そのものを血管撮影上描出しなければならず,そのためには,撮影時に患者は十分に出血していなければならない.そのためには撮影は昼夜を問わず行なわれなければならず,患者の状態は重篤である場合が多く,緊急血管撮影の大部分はこれによつて占められると言つてよい.わが国の血管撮影は世界の先端を行くものであるが,この緊急血管撮影の実用という点では,欧米に比して遅れをとつていると言わざるを得ない.その原因として考えられることは,緊急血管撮影を行なうシステムが確立されていないところが多いことであろうと考えられる.即ち,緊急血管撮影には臨床家と放射線診断医との密接な協力の上で血管撮影の適応を決定し,夜中でもangiographer,看護婦および血管撮影に十分慣れたX線技師が30分以内に出頭できるような体制が必要であり,このような完全なシステムは,住宅事情,労働条件,放射線診断医の不足などの祉会的条件によつて不可能と思われる点が多い.
 出血に血管撮影が極めて有用であることは1963年NusbaumおよびBaum1)が急性消化管出血を実験的に血管撮影上に描出して以来,急速に認識されるようになつたといつてよい.今回,出血の血管撮影全領域にわたつて網羅することは不可能であるので,消化管出血を中心に電要と思われるもののみについて言及するつもりである.外傷は出血と関係が深いが,本特集の他のセクションで述べられるし,頭頸部は専門分野が異なることから両者は省略することにする.

カラーグラフ 内視鏡的色素シリーズ・4

腸上皮化生

著者: 川井啓市 ,   井川和徳 ,   奥田順一

ページ範囲:P.590 - P.591

 腸上皮化生とは胃の粘膜に出現する腸型上皮をいい,形態的には小腸上皮と同様の組織像を呈する.現在,慢性胃炎の終末像として,また胃の前癌性病変として注目されている病変である.
 従来,腸上皮化生の診断は切除胃組織の検索が主であり,内視鏡的には一部の特殊型を除いて診断の対象とならなかつた.しかし,私どもが生体染色色素剤であるmethylene blue(以下MB)が腸上皮化生粘膜に特異的に吸収されることを発見して以来,内視鏡的にあらゆる型の腸上皮化生が診断可能となつて来た.この腸上皮化生を診断するMB染色法は表に示すように,簡便かつ確実で再現性もよい.内視鏡下の観察ではMBを吸収した腸上皮化生粘膜は青変して赤色調を示す胃粘膜から容易に識別され,青染部が腸上皮化生部,非染部が非腸上皮化生部である.

Emergency Care—Principles & Practice・2

救急医療に必要な基本的技能と知識—その1 採血と注射

著者: 川嶋望 ,   前田滋 ,   井川智仁

ページ範囲:P.666 - P.672

 ここに示す"救急医療に必要な基本的技能と知識"は,救急医療にたずさわる医師が等しく習熟しておくべき《minimum requirement》であつて,いずれが優先すると言うものではない.

Practical Postgraduate Seminar・21

基本的手術手技—メスと鋏の使い方

著者: 樋上駿 ,   池永達雄

ページ範囲:P.674 - P.684

主な内容
メスの使い方 種類,持ち方,受け取り方・返し 方,切り方,counter traction
鋏(剪刀)の使い方 種類,持ち方,受け取り方・返 し方,切り方,剥離,添え手, その他の使い方

手術手技

経回結腸静脈胃・食道静脈瘤閉塞術

著者: 植田俊夫 ,   磯部義憲 ,   筒井竹人 ,   青木幸範 ,   安藤正英 ,   石橋武彦

ページ範囲:P.685 - P.694

はじめに
 門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤の治療法としてLunderquist & Vangにより新しい方法が1974年に報告された1).彼らは経皮経肝胆管造影に際して行なわれるのと同様の手技を用いて,門脈内へカテーテルを挿入し,更に胃・食道静脈瘤への側副路となつている左胃静脈,短胃静脈へとカテーテルを選択的に挿入の上,それらの静脈を閉塞させたのである.多くの研究家達がこの手技を採用し,胃・食道静脈瘤の治療を志している2,3,5-7).われわれの経験では経皮経肝胃・食道静脈瘤閉塞術は,行なうに常に易く,且つ期待したカテーテルの操作性が得られるとは言い難い.
 1978年6月以来,われわれは佐久総合病院において,新しい手技による胃・食道静脈瘤閉塞術を5症例に施行した.われわれは虫垂切除術に似た開腹術を施行し,回結腸静脈からカテーテルを体内へ挿入し,上腸間膜静脈を経由して,カテーテル先端を門脈あるいは脾静脈内へ導き,更に胃・食道静脈瘤への側副路へ選択的にカテーテルを挿入した上,そのカテーテルを通して塞栓物質を注入し静脈瘤を消失せしめた.

食道再建用胃の作製規準

著者: 秋山洋 ,   宮薗光 ,   鶴丸昌彦 ,   川村武

ページ範囲:P.695 - P.702

はじめに
 食道再建に際して用いられる腹腔内臓器は,胃,結腸,小腸の順に普遍的である.それぞれに一長一短はあるが,とくに胃と結腸については,長い間論議が続けられている.胃を用いる場合には,吻合が1ヵ所で単純であるとか,結腸の場合は,吻合が数ヵ所で複雑であるが,食物の貯溜槽としての胃が腹腔内にあつて摂取量が保たれるというような,耳慣れた利点が強調される.
 ここではその論議はさておいて,一応胃を用いる理由として,普通に順蠕動性に用いられる場合,さきに述べたように最も簡単であるという利点のもとに,胃利用の際の用い方についてわれわれが考えている原則とその根拠について述べてみたい.

臨床研究

胆嚢造影陰性(陽性)例におけるPharmacoangiography(Prostaglandin E1使用)および同時拡大撮影の検討

著者: 三好敦生 ,   野田哲文 ,   内藤寿則 ,   笠原卓 ,   内野良彦 ,   草場盛雄 ,   植木敏幸 ,   友清明 ,   間野正衛 ,   山名一有 ,   中山和道 ,   古賀道弘

ページ範囲:P.703 - P.715

はじめに
 間接・直接的胆道造影における胆嚢陰性例の検査には種々の検査法1)があるが,いずれも一長一短があり,その質的診断とりわけ比較的早期の胆嚢癌の検索には有効なる検査法とは言いがたいのが現状である.
 血管造影の面においては,近年,目的血管および,より近い支配血管へcatheterを挿入し造影能の向上をはかる超選択的血管造影法2),薬剤使用により目的血管を拡張させ,より多くの造影剤の流入をはかり造影能の向上を目的とするpharmacoangiography3,4),目的血管における末梢分枝の微細病変観察の為の直接拡大撮影法5)等が行なわれ診断能の向上をみている.最近,著者らは胆嚢陰性例にProstaglandin E1(小野薬品)使用によるpharmacoangiographyと同時直接2倍拡大撮影法を適用し,好成績をおさめているので報告する.

大動脈弓分枝疾患の外科的療法—とくに頸動脈遮断時の内短絡法について

著者: 多羅尾信 ,   冨田良照 ,   滝谷博志 ,   村瀬恭一 ,   広瀬光男 ,   稲田潔

ページ範囲:P.717 - P.721

はじめに
 大動脈弓分枝の疾患に対する外科的治療は,血管外科の発展・普及により近年急速に増加しつつあり,欧米ではすでに日常的となつているが本邦では少なく,またその報告例は大動脈炎症候群に関するものが多く,動脈瘤,閉塞性動脈硬化症例はまれである.教室においても最近,総頸動脈瘤,鎖骨下動脈および頸動脈の閉塞性動脈硬化症各1例,計3例の手術を行ない,全例に総頸動脈血行遮断にさいし内シャントを利用し好結果をえたので報告する.

最近の自然気胸—第一線病院における7年間56例の検討

著者: 坪田紀明 ,   大山正 ,   窪田秀夫 ,   白川勝 ,   岡本光人 ,   吉江哲夫 ,   渡部洋三

ページ範囲:P.723 - P.725

はじめに
 自然気胸は症例に応じて安静,持続吸引,及び手術にて対処され,治療法は一応確立されてはいるものの1),その定義,手術などにいまだ解決されていないところがある.そこで最近7年間に本院で入院治療をうけた症例を検討し,自然気胸の第一線病院における臨床像の把握を試みた.呼吸器疾患,手術症例が集りやすい胸部疾患専門施設とは若干異なる部分もあるように思われる.

大腸穿孔症例—特発性大腸穿孔とdiastatic perforationについて

著者: 鈴木定雄 ,   伊勢重男 ,   川口吉洋 ,   枡一彦 ,   有壁譲 ,   渡辺岩雄 ,   荻野博史 ,   三浦正則

ページ範囲:P.727 - P.731

はじめに
 急性腹症で最も重要で一般的なものは消化管穿孔である.近年の医療意識の向上,抗生物質,医療技術の進歩にともない上部消化管穿孔の予後は満足できる結果に着実に近づいてきていると考えられる.
 一方,下部消化管(大腸)穿孔は頻度も少ないこともあり,その緊急性や予後の重篤さに比してイレウスや上部消化管穿孔ほど注目されていないのが現状のようである.

臨床報告

残胃にみられた早期癌

著者: 三輪晃一 ,   山岸満 ,   石黒信彦 ,   山崎軍治 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.733 - P.738

はじめに
 胃十二指腸良性疾患手術後の胃に癌が発見されることがあり,胃部分切除後の残胃であることが多いことより,一般に残胃癌と呼称されている.かかる残胃癌の発生は胃良性疾患手術の遅発合併症の問題として,またヒト胃癌発生の解明の上でも重要な手がかりを与えてくれるものと考えられる.
 私どもは胃潰瘍で胃切除後,11年と17年で発見された残胃にみられた早期癌を2例経験したので,本邦での報告例を集計し,残胃早期癌症例について検討を加えた.

胃グロームス腫瘍の1手術例—本邦報告例の統計的観察

著者: 木村修 ,   田中公晴 ,   井上淳 ,   竹田力三 ,   川口広樹 ,   藤井卓 ,   岸本宏之 ,   安達秀雄

ページ範囲:P.739 - P.743

はじめに
 胃グロームス腫瘍は,まれな疾患であり,1951年Kayら1)によつて最初に報告されており,本邦では,1962年庄司ら2)の報告にはじまり,私どもの調べ得た範囲内では,現在まで21例が報告されている.私どもは胃前庭部前壁の粘膜下腫瘍の診断で胃切除術を施行し,病理組織学的に,胃グロームス腫瘍であつた症例を経験したので報告するとともに,本邦報告例についての統計的観察を行なつた.

結腸エンドメトリオージスで腸閉塞をきたした1例

著者: 石原歳久 ,   大原敬二 ,   山崎東 ,   翁伯東 ,   富田一郎 ,   綿貫喆

ページ範囲:P.745 - P.748

はじめに
 子宮内膜が異所性に発育し増殖する状態を子宮内膜症(エンドメトリオージス)という.この疾患の特徴は,組織学的には良性疾患でありながら,腫瘍に類似した性格を有し女性の内外性器はもとより,腹腔内臓器をはじめ全身のあらゆる部位に播種または転移をする.またエストロゲンの関与を受け月経周期に同調して発生局所の出血と続発する癒着,硬結,浸潤,瘢痕を起こす.
 最近,私たちは,イレウスをきたした直腸エンドメトリオージスを経験したので,ここに若干の文献的考察を加えて報告する.

長期生存をみた直腸細網肉腫の1例

著者: 成末允勇 ,   大崎俊英 ,   香川茂雄 ,   高倉範尚 ,   石川純 ,   坂本昌士 ,   田中早苗 ,   湊宏司 ,   中川潤

ページ範囲:P.749 - P.752

 はじめに
 消化管に発生する細網肉腫は稀な疾患であり,なかでも直腸の細網肉腫は極めて少ない.われわれは,直腸細網肉腫の術後長期生存例を経験したので,本邦集計例とともに報告する.

左総腸骨動脈閉塞手術に伴う前脊髄動脈症候群の1例と文献的考察

著者: 古田凱亮 ,   折井正博 ,   島津元秀 ,   小谷野憲一 ,   亀田正 ,   阪口周吉

ページ範囲:P.753 - P.758

はじめに
 胸部大動脈手術に伴う合併症としての対麻痺は一般に知られているが,腎動脈分岐部以下の腹部大動脈手術,とくに閉塞性動脈疾患手術に伴うものは極めて稀である.本邦には,まだそれらの報告例をみない.最近われわれは,左腸骨動脈閉塞手術後,前脊髄動脈症候群と思われる対麻痺をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

ペースメーカー植込み後の皮膚の圧迫壊死により生じた敗血症—経右房的にカテーテル電極を除去し,敗血症を根治せしめた1症例

著者: 小野寺栄司 ,   鈴木隆三 ,   城田裕 ,   鈴木章夫 ,   中田八洲郎

ページ範囲:P.759 - P.763

はじめに
 1950年代後半より臨床応用されだした心臓ペーシングはペースメーカ(以下P.M.と略す)本体および電極の改良により徐脈性不整脈のみならず頻脈性不整脈の治療にもその適応は拡がり,本邦においてもその数は近年著しく増加している.最近ではエレクトロニクスの進歩によりP.M.本体に起因するトラブルは少なくなつてきているが,電極に関した合併症としてカテーテル電極の離脱,移動,あるいは断線等があり,外科的合併症として局所の圧迫壊死,感染,さらには敗血症が重大な合併症となつてくる.P.M.植込み患者の感染症は発生頻度は少ないがひとたび敗血症の状態となると難治性でありほとんどの場合P.M.システムの除去を余儀なくされる.最近われわれは経静脈性ペーシングカテーテル直上に発生した皮膚の圧迫壊死創を侵入門戸とした敗血症の症例を経験した.種々の抗生剤投与にても敗血症を根治できず,結局人工心肺待期下,胸骨正中切開,経右房的にP.M.電極を除去し敗血症を根治せしめた.この症例をふまえ,経静脈性ペーシング患者の感染の原因,治療,および予防について論じてみたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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