icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科34巻6号

1979年06月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい手術の適応とタイミング—注意したい疾患45

胃潰瘍

著者: 武藤輝一1

所属機関: 1新潟大学医学部第1外科

ページ範囲:P.805 - P.809

文献購入ページに移動
■なぜ内科治療とのControversyになるか
 衆知のように消化性潰瘍の1つである胃潰瘍は瘢痕を作りながら治癒し易いものであるが,一方大変再発を繰返し易いものでもある.
 近年,診断技術の著しい進歩により胃潰瘍と胃癌の鑑別が容易かつ確実となり,胃潰瘍を胃癌と思つて手術することは極めて稀となつて来た.そのため,治癒しても一たび再発のみられた胃潰瘍にはその後の経過の中でほとんど再々発を繰返すことが知られているにも拘らず,出血,穿孔,狭窄などという合併症のない限り内科側では手術を奨めないのが一般的傾向である.当然患者も合併症のない限り,よほどひどい症状の持続でもなければ手術を希望しない.
 内科的治療が長期に亘り施行されるようになつた結果,胃潰瘍の手術例数は20年前の1/2〜1/4に減少して来た.これは大変結構なことであるが,出血や穿孔のため運びこまれ緊急手術を施行しなければならない患者数はそう減少していない.極端な例であるが,再発潰瘍のため内科病棟に入院加療中,それまで潰瘍合併症をみたことがなかつたのに,急に穿孔し外科に転科,緊急手術をうけたという症例もある,ところで現在,他の疾患を合併していない限り,胃潰瘍で待期手術を行なつた場合の手術死亡はほとんどない.手術死亡が見られるとすれば緊急手術を必要としたり潰瘍合併症の起きたときである(もつとも緊急手術例だけに限つてみても手術死亡は2.0%以下という低率ではあるが).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?