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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科34巻7号

1979年07月発行

雑誌目次

特集 Crohn病とその辺縁疾患 鑑別の問題点

臨床の立場から―X線検査

著者: 西沢護 ,   狩谷淳 ,   小林茂雄

ページ範囲:P.1069 - P.1080

はじめに
 最近クローン病およびその周辺にある炎症性腸疾患の確定診断の決め手として,組織所見だけに頼ることができないため,それぞれの疾患単位のスペクトラムを求めようとする努力がなされている1-8)
 たとえば,クローン病を例にとれば,組織所見でもクローン病と確診できるものから色々の程度に疑えるものまでかなりの幅があり,それも診断をする人によつてその幅が異なることである.

臨床の立場から―大腸Crohn病の内視鏡診断

著者: 長廻紘 ,   佐々木宏晃 ,   三輪洋子 ,   長谷川かをり ,   谷口友章

ページ範囲:P.1081 - P.1088

はじめに
 Crohn病の内視鏡による診断の有用性とその限界について検討した.Crohn病は非特異性炎症であり,臨床所見や各種検査成績を総合して診断すべきであることはいうまでもなく,内視鏡だけによる診断学はありえない.しかし,大腸のCrohn病は特徴的な所見を内視鏡でよく捉えることができ,生検でsarcoid肉芽腫を採取できることもあり,内視鏡検査は大腸Crohn病の診断に非常に有用な検査法といえる.

臨床の立場から―血管造影

著者: 甲田英一 ,   平松京一

ページ範囲:P.1089 - P.1097

はじめに
 クローンらが1932年にregional ileitisという疾患概念を提唱して以来1),数多くの研究者の努力によつて彼等の提唱した疾患は消化管のどの部位にも起こりうる肉芽腫性炎症であることが判明してきた.1976年に日本消化器病学会クローン病検討委員会できめられたクローン病診断基準2)によれば,①非連続性または区域性病変,②cobblestone appearanceまたは縦走潰瘍,③全層性炎症性病変(腫瘤または狭窄),④サルコイド様非乾酪性肉芽腫,⑤裂溝または瘻孔,⑥肛門部病変(難治性潰瘍,非定型的痔瘻または裂肛)が臨床及び病理所見とされている.今回はこれらの変化によつてひきおこされる血管像,及び除外診断としてあげられている腸結核,潰瘍性大腸炎,虚血性(大)腸炎,放射線照射性(大)腸炎,腸型ベーチェット,単純性(非特異性)腸潰瘍,"非特異性多発性小腸潰瘍症",および急性回腸末端炎のうち特に前二者を中心にその鑑別点を考察した.

病理の立場から

著者: 喜納勇

ページ範囲:P.1099 - P.1109

はじめに
 くり返し強調されていることであるが,クローン病は原因不明の炎症性疾患であるので,その診断はあくまで臨床的ならびに病理形態学的特徴を捕えてなされるべきであつて,病理学的所見のみから決定することはしばしば危険である.換言すれば,斉藤も強調している如く,clinicopathologicalの疾患単位であるので1),臨床経過,X線所見,内視鏡所見は病理所見と同等に重要である.
 クローン病の正しい診断は臨床家の深い知識と周到な検査によつてなされ,病理側はその最後の締めくくりをすることになる.とくに最近クローン病の手術適応が減じつつある時,生検材料のみからの組織診断は単なる補助的役割を果すにすぎない.

経過からみた治療の選択

内科の立場から

著者: 井上幹夫

ページ範囲:P.1111 - P.1115

はじめに
 クローン病の内科的治療法には特効的なものはなく,その効果は必ずしも良好ではない.また症例の多くは経過中に手術が必要となる.しかし病変部の切除を行なつても症例の約50%は5年以内に再発を来すことが知られており,また早期に手術を行なつても再発率の低下にはならないことなどから,クローン病の治療においては,外科手術を要する合併症(狭窄,出血,膿瘍形成,瘻孔形成など)がある場合を除いては内科的療法を行なうのが原則とされている.内科的療法の目的は活動性病変の軽快や進行の抑制,合併した感染や過敏反応の抑制,栄養状態の改善,精神状態の安定,症状の軽減などであるが,治療の内容は病変の活動性,栄養状態などによつて異なる.
 以下現在行なわれているクローン病の内科的治療法と効果を述べたいと思う.

内科の立場から

著者: 渡辺晃 ,   樋渡信夫

ページ範囲:P.1117 - P.1125

はじめに
 クローン病の経過に応じての治療の選択について述べるにあたつて,ここでは最初に最近の知見を中心にクローン病の内科的療法,外科的療法の適応,および経過と予後について要約し,つぎに自験例2例を呈示しながら若干の考察を加えることにする.なお,腸結核との鑑別が困難な患者に対してはあらかじめ2〜3カ月間抗結核療法を施行して,それが無効であることを確認しておくだけの配慮が必要であろう.これは,欧米とは異なり,わが国にはクローン病との鑑別の困難な腸結核症例がなおかなり存在すると考えられるからである.

外科の立場から

著者: 村上哲之 ,   久保園善堂 ,   渡部修一 ,   大久保英宇 ,   今充 ,   大内清太

ページ範囲:P.1127 - P.1133

はじめに
 Crohn病は1932年Crohnら1)によつてregio—nal ileitisとして報告されて以来注目され,以後Crohn病の概念は諸家の知見の集積とあいまつて修正や補充が加えられてきている.現在では口から肛門管にいたる腸管のいかなる部位にも発症する1つのentityとして認められている.
 欧米においてはCrohn病の発生頻度が高く,良性疾患にもかかわらず合併症は多岐にわたつて発生し,治療は困難で,しかも外科的に病巣を切除しても術後再発が多く,多方面にわたつて検討がなされている.しかしながら病因は不明で,確固たる治療方針が確立されていないのが現状といえよう.

外科の立場から;教室手術症例の検討

著者: 吉雄敏文 ,   柳田謙蔵 ,   大谷忠久 ,   片山圭男 ,   伊藤三則

ページ範囲:P.1135 - P.1142

はじめに
 消化器疾患の中でもまだ未解決な問題点の多いCrohn病に対する関心が高まり,最近数年間,本疾患の臨床像に関する報告が増加してきた.それらによりわが国における本症の特徴が欧米例などと比較検討され,次第に明らかにされつつある.
 しかしなお実際の症例の診断,治療に当面すると,迷うことばかりが多いというのが現在の実情ではなかろうかと想像される.当教室症例は多くはないが,各症例それぞれに問題点があり,ふり返つて検討してみると反省すべき点を多く見出し得る.治療の選択を述べるような症例の経験も少なく,その資格はないと思うが,今後の治療方針のたて方の参考のために,ご批判を覚悟して記述してみたい.

カラーグラフ 内視鏡的色素シリーズ・5

大腸ポリープ・大腸癌

著者: 多田正大 ,   川井啓市

ページ範囲:P.1058 - P.1059

 大腸癌のうち進行癌の内視鏡診断については差程問題はないが,早期癌についてはその形態の類似性から腺腫との鑑別が問題になる.そこで大腸ポリープに対しては発見次第に内視鏡的ポリペクトミーを行なうことが,今日の普遍的な手順である.しかし最近,大腸隆起性病変に対して色素内視鏡検査法と拡大大腸fiberscopeによる観察を併用した内視鏡的拡大観察法(Endoscopical Magnifying Observation Method)を試みることによつて,内視鏡検査法の質的診断能は飛躍的に向上してきている.
 その方法は拡大大腸fiberscope(CF-MB-M,CF-HM,Olympus)の生検鉗子孔よりテフロンチューブを挿入し,内視鏡直視下にポリープに0.2〜1.0%の濃度のMethylene blue液を数ml散布する(直接散布法)という簡単な手技である.数分後にポリープから色素液が吸収され,その表面が青く染色されるのをまつて,至適倍率下に拡大観察することによつて,ポリープの表面の微細構造を内視鏡観察することができる.

グラフ 外科医のためのX線診断学・15

心・大血管造影

著者: 松山正也 ,   鈴木豊 ,   渡部恒也 ,   栗林幸夫 ,   杉原政美

ページ範囲:P.1061 - P.1067

右心室造影 正常像
 右心室は正面ではほぼ三角形をなしていて肉柱の比較的よく発達した内腔の広い洞部(流入路)と,内腔の狭い漏斗部(流出路)に分けられる.側面では三尖弁輪のやや上方に両者の境界をなす室上稜が認められる.肺動脈弁は右・前・左半月弁の三弁よりなり肺動脈洞を形成するが,収縮期には弁尖をはつきり認めることはできない.

Emergency Care—Principles & Practice・3

救急医療に必要な基本的技能と知識—その2 各種穿刺・初期呼吸管理

著者: 川嶋望 ,   馬場尚道 ,   米倉正大

ページ範囲:P.1150 - P.1157

各種穿刺
 各種穿刺にあたつては,目的・適応・実施上の注意・起こりうる障害とそれに対処する知識を有し,各部位の穿刺に必要な用具を用いてこれを実施し,穿刺後の処置を正しく行なう.

臨床研究

乳癌に対する卵巣摘出と副腎皮質ホルモン,甲状腺ホルモンの併用療法(OCTホルモン療法)

著者: 中村泰也

ページ範囲:P.1159 - P.1164

はじめに
 乳癌の内分泌治療は,Beatson1)(1896)により始められたが,その後標的臓器が副腎や下垂体へと広がり,副腎摘出術はHuggins2)(1951)により試みられ,下垂体摘出術はLuft & Olivecrona3)(1952)により開拓された.
 また,内科的ホルモン療法としては,男性ホルモンがCutlerら4)(1948)により,卵胞ホルモンがHaddowら5)(1944)により,黄体ホルモンがTaylorら6)(1951)により,また副腎皮質ホルモンがHuggins6)(1952)により臨床的応用が試みられてきた.

臨床報告

直腸狭窄を伴つた直腸クローン病

著者: 谷村晃 ,   山口達夫 ,   吉田正樹 ,   溝部正夫

ページ範囲:P.1165 - P.1168

はじめに
 限局性腸炎は1932年クローンらによつて報告され,小腸の疾患と考えられていたが,1960年Lockhart—Mummery and Morson4),1961年Wolf and Marshak7)により大腸のクローン病が報告され,その後本邦で稀であるが2〜3の報告がある.
 最近,高度の潰瘍性病変を伴つた直腸クローン病の1例を経験したので報告する.

腹壁腫瘤を形成したアニサキス症の1例

著者: 松木伸夫 ,   有賀藤一郎 ,   土原一弘 ,   古川信 ,   小坂進

ページ範囲:P.1169 - P.1171

はじめに
 海産魚類を中間宿主とするアニサキス幼虫の経口感染により,急性腹症あるいは消化管好酸球性肉芽腫の形成など,特異な消化管症状を呈することが知られ,アニサキス症として注目されるようになつて久しい.
 最近,われわれは腹壁腫瘤を形成した,きわめて稀なアニサキス症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

平滑筋肉腫により空腸・回腸間に内瘻を生じた1例

著者: 宮野陽介 ,   竹田力三 ,   木村修 ,   川口広樹 ,   田中公晴 ,   安達秀雄 ,   岸本宏之

ページ範囲:P.1173 - P.1176

はじめに
 通常,臨床で経験する腸瘻の多くは外腸瘻で,内腸瘻に遭遇する機会は少なく,ことに悪性腫瘍に起因した内腸瘻は稀である.最近,私どもは小腸に発生した平滑筋肉腫により,空腸と回腸の間に内瘻を形成した1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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