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特集 手術と抗生物質
術後感染予防と抗生物質
著者: 由良二郎1 品川長夫1 石川周1 高岡哲郎1 花井拓美1 松垣啓司1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部第1外科
ページ範囲:P.1349 - P.1354
文献購入ページに移動術後合併症には種々のものが見られるが,いずれも万全を期して手術を施行した外科医にとつては不快なものである.なかでも感染性合併症は古くより外科医を悩ませ続けた問題であり,創感染一つにしても患者に与える心理的影響は大きく,他の術後感染,例えば肺炎,腹膜炎,尿路感染などの重篤なものに比べて比較的軽度な合併症ではあるものの,十分なる配慮がなされねばならない問題である.
近年における優秀な化学療法剤や消毒剤の開発使用は,術前術後の患者管理および麻酔技術の進歩,さらに手術術式の進歩等と相俟つてこれら術後感染合併症を著しく減少させたことは事実ではあるが,その反面,一旦発症した感染症は以前までのものと比べて難治性となる場合も多い.その原因としては,手術手技や患者管理の向上に伴い手術適応が拡大され,高齢者や新生児・小児,また全身状態の低下した患者,更には重篤な基礎疾患を有する患者に対しても過大な手術侵襲が加えられるようになつてきたことであり,また感染起炎菌そのものも各種の優れた抗生物質の使用により様相を一変し,弱毒菌と呼ばれるopportunistic pathogenや,耐性菌の増加などが大きな背景因子となつている.
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