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臨床研究
早期胃癌の統計的観察よりみた検討
著者: 林正泰1 横山伸二1 曽我浩之1 三好恵一1 野口敦1 高嶋成光1 松浦久明1 三木直二1
所属機関: 1国立松山病院外科
ページ範囲:P.1439 - P.1444
文献購入ページに移動早期胃癌の大綱が1963年に定められてから,早くも16年の年月を経過し,その間に種々の報告がなされてきた.早期胃癌は手術によりその成績はきわめて良好で,ほとんど100%に近い遠隔生存率がえられるものと考えられていたが,本症の研究が系統的に行なわれるようになつてきて,必ずしも完全治癒するとは限らず,進行癌同様に再発もある程度ありうるし,さらに再発の可能性の強いものにもそれなりの特徴があることもわかつてきた.そうなると本症の再発予防の問題は大いに重要なポイントとなつてくるし,重点的な対策もたてられるわけである.
最近早期胃癌の発見が多くなつたのは胃集団検診の普及とともに,X線検査,内視鏡検査,細胞診,生検などの診断法の進歩と向上によるものである.しかし症状を訴えて病院を訪れる人のみを対象としていては,おのずから発見に限度があるため,今後はすすんで健康者とみえる人を検査する胃集検が必要となつてくる.早期胃癌の歴史をみるとき全国集計による報告をはじめ,種々の検討,遠隔成績の報告があり,その実態も次第に解明されつつある.しかしまだ僅かではあるが数%の再発死亡例がみられる.早期胃癌の治癒率をより高く100%近く治癒せしめることが可能であるという希望からすれば,もつとも外科療法の適応にかなつた癌であるといえる.早期癌は胃癌,子宮癌,乳癌,肺癌などにおいては集団検診によるその成果がみられるが,食道,肝・胆・膵系,結腸の早期癌はきわめて稀であり,早期癌を目標とした診断,治療が今後望まれる課題であると思う.今回早期胃癌319例の自験例について述べてみたい.
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