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文献詳細

雑誌文献

臨床外科35巻12号

1980年12月発行

文献概要

臨床研究

甲状腺の結節性病変

著者: 野口志郎1 村上信夫1 野口秋人1

所属機関: 1野口病院

ページ範囲:P.1749 - P.1751

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はじめに
 甲状腺の結節性病変が良性と考えられる場合にどのような処置を取るべきであるかという点については専門家の間にも意見の一致を見出せない.最も保存的な処置としては,良性と考えられる場合は経過を見るのみに止めるか甲状腺ホルモン剤によつて内因性のTSHの分泌抑制を計るのみでよいとするものがあり1,2),最も積極的な処置としては腫瘍であれば良性悪性の別なく全て切除すべきであるとするものがある3,4).それらの中間的な意見として腫瘍の大きさ,機能,患者の年齢などを考慮して手術症例を選択すべきであるとするものもある.保存的方法を主張する根拠としては一般人口における甲状腺腫を有するものの頻度が比較的高いにもかかわらず,甲状腺癌による死亡率が低いこと,経過観察中にはつきりと癌と分るような変化する症例に出合うことが非常に稀であること,さらに手術の合併症,特に反廻神経麻痺や醜い瘢痕形成の可能性などを考慮して,出来るだけ手術を避けたいとしている.一方,積極的に手術を奨める側の主な根拠は一見良性と思われるものの内に癌の占める割合が比較的高いこと,甲状腺癌は比較的早期にリンパ節および遠隔臓器への転移を来たす可能性があること,良性腫瘍といえども小さい方が大きいものより手術が容易であることなどによつている.しかし甲状腺の結節性病変に占める癌の割合は報告者によつてまちまちであり,4%から30%位にまで及んでいる.ことに良性と思われる症例に占める癌の割合についてはほとんど信頼出来る報告がない.その理由は手術患者の選択の問題と医師の甲状腺癌に対する関心の程度の問題とが関係しているからである.そこでわれわれは甲状腺の結節性の病変を全例手術をする方針で臨み,その結果,手術前に良性と診断した症例の内,どの程度に癌が見出されるかを調査した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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