文献詳細
文献概要
臨床研究
術中出血にたいする全血輸血と赤血球濃厚液輸血の検討
著者: 石川正昭1 西田貞之1 小林進1 竹村隆夫1 綿貫喆1 益子健康2 山崎順啓3
所属機関: 1東京慈恵会医科大学第1外科 2東京慈恵会医科大学麻酔学教室 3東京慈恵会医科大学輸血部
ページ範囲:P.1753 - P.1759
文献購入ページに移動輸血は日常の診療においてひろく用いられているが,従来,輸血というと全血輸血により貧血を改善することのように考えられ,手術時の出血にたいしても全血輸血が行なわれてきた.しかし,最近では患者が必要とする血液成分のみを与える成分輸血の意義がみとめられ,術中の出血にたいしても赤血球製剤が用いられるようになつてきた.成分輸血の利点として,ⅰ)必要な血液成分を大量に投与することができる.ⅱ)不必要な成分の輸血によりおこりうる副作用の予防が可能である.ⅲ)血液を有効に利用できることなどをあげることができる.現在用いられている主な赤血球製剤には赤血球濃厚液のほかに,洗滌赤血球浮遊液,解凍赤血球浮遊液などがある.赤血球濃厚液と全血を比べてみると赤血球とヘモグロビンの量は同じであるが,赤血球濃厚液では電解質,アンモニア,乳酸や抗凝固剤などの量が少ないことより副作用を軽減することができるという利点がある(表1).しかし赤血球輸血をうけた患者の血液成分,循環動態の変化や手術時出血にたいし赤血球輸血を行なう時の限界などについては十分に解明されているとはいえない.
著者らは手術患者を対象として,術中の出血にたいし全血または赤血球濃厚液の輸血を行ない,術前,術中,術後における血液成分,血清電解質の変化および循環動態の変動を観察し比較検討を行なつた.また,赤血球濃厚液のみの輸血で可能な手術,出血量の限界について検討を加え,さらに手術時出血にたいし全血輸血をうけた患者,赤血球濃厚液を輸血された患者,輸血をうけなかった患者の3群の術後の状態についても検索したので報告する.
掲載誌情報