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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科35巻2号

1980年02月発行

雑誌目次

特集 外科医のための麻酔

最近の麻酔薬と麻酔関連薬

著者: 小川龍

ページ範囲:P.167 - P.172

はじめに
 今なお理想的な麻酔薬は存在しないので,新しい多数の薬剤の開発が試みられている.それらの中には有望な薬もあるが,大部分は既存の麻酔薬を凌駕しない.揮発性麻酔薬であるエンフルレンは臨床治験も進み,今秋にはエトレンRの名で発売が予定されている.一方,それ自体は古くとも用法を変えることによつて麻酔薬として再評価されている薬もある.その代表がモルヒネである.本稿においては成書に記載の少ない新薬とともに,用法や他薬との組合せによつて新しい展開を示す薬や,その長所が未だ十分理解されず,外科医に浸透していない薬を取上げて記述することにする.

局所麻酔・全身麻酔の使い分け—外科医に必要な局所麻酔の知識

著者: 美濃部嶢

ページ範囲:P.173 - P.180

はじめに
 一般に,麻酔科が設置されている総合病院では,全手術症例の50〜75%は全身麻酔下で実施されており,残りが脊髄麻酔,硬膜外麻酔,各種神経ブロック,局所浸潤麻酔などで行なわれている現状である.しかし麻酔方法の選択の基準は必ずしも画一的なものではなく,手術の対象となる疾患,術式および手術部位,年齢,患者の全身状態,患者の希望などの患者側の麻酔方法選択の因子の他に,手術を行なう外科医の力量と,麻酔を実施する麻酔科医の知識,手腕や,好みによつて麻酔方法が左右されることが多い.
 最終的には,術者の希望,意見をもとに合議の上で麻酔科医が麻酔方法を決定すべきである.したがつて本稿では,一般的な麻酔方法選択の基準となる諸因子について説明すると同時に,局麻か全麻かの選択の基準ともなる局所麻酔の基礎知識,外科医にとつて有用な2・3の局所麻酔法について述べてみたい.

小児外来患者の麻酔

著者: 鈴木玄一

ページ範囲:P.181 - P.185

はじめに
 協調性に乏しい小児では,成人と異なり小手術や検査でも全身麻酔下で行なわなければならず,手術部位や検査の種類によつては当然だが,たとえ20〜30分以内の全身麻酔でも日本では入院下に行なうことが多い.
 ところが欧米では小児の外来全身麻酔の歴史は古く,1938年,年少児において環境を急に変えることは良くないとのことで,鼠径ヘルニア1,000例の発表1)があり,麻酔はエーテルのオープンドロップ法,その後も小児外科領域では鼠径ヘルニアを中心に発展して来ている2).トロント小児病院では外来用の手術室や回復室を別に設けて,表1の如き症例を年間3,000例以上扱つており3),フェニックスsurgicenterでは外来手術,検査のみを扱う施設で表2の如き症例を月間約400例を扱つている4)

救急患者の麻酔—最少限必要なチェックから導入まで

著者: 茅稽二

ページ範囲:P.187 - P.190

はじめに
 救急手術患者の麻酔でも特に予定手術患者の麻酔と異なるわけではなく,患者の全身状態を十分に把握して,その患者に最も適当と思われる麻酔を行なうのが原則である.ただ救急手術ではその救急度に応じて,色々なデーターを集めるためにどれだけの時間的余裕が許されるか,また夜間,休日等ではその医療機関の検査体制の如何が問題となる.外傷等による大量出血,また呼吸,循環に重大な障害をおよぼしている外科的疾患で,入院後直ちに手術をしなければならず,殆んどデータなしで麻酔を行なわなければならないこともある.しかしこのようなケースはそれ程多いものではなく,一般的にいつて救急手術といえども外科医が患者に接触してから,全身状態のチェックに必要な最少限度のデータを収集する時間的余裕はあるはずである.手術に必要なデータ,輸血の準備等があると同様に,麻酔に必要なデータもあるが,しかし両者は必ずしも明瞭に区別されているわけではなく,全身状態の把握という意味で麻酔医の要求するデータは外科医も必要とするもののはずである.頭部外傷の救急手術で頭部のX線写真は何枚も取つてあるのに,胸部写真がなかつたたり,血液型はチェックしているが血算のデータがなかつたりすることがあり,結局その時の外科医の医療に対する考え方がポイントである.また病院の救急体制については,休日,夜間には外科,麻酔医はいても検査,X線技師等のパラメディカルの人員が不在で,たとえ時間的余裕はあつても殆んどデータが得られないこともあり,救急医療行政の不備が問題となる.救急指定病院の条件については詳かではないが,少なくとも手術・麻酔に必要なデータが得られる体制作りが大切である.

Poor risk患者の麻酔—どう考えどう準備するか

著者: 土谷晃子

ページ範囲:P.191 - P.194

はじめに
 最近は10年前には余り手術の対象とならなかつた非常にリスクの悪い患者に対して開胸,開腹などの大手術が行なわれるようになり,しかも成功例が多い.リスクの悪い患者の麻酔は術前準備も含めて術中術後ともに問題が多いので,それらの諸問題への対処の仕方を中心に述べるが,ここでは独特の問題を抱えた未熟児,乳児,高齢者については省く.また救急患者も救急であること自体がリスクの悪さにつながるが,救急患者の麻酔については別項を設けてあるのでここでは言及しない.

術後の疼痛対策

著者: 百瀬隆

ページ範囲:P.195 - P.202

はじめに
 術後の疼痛は個人差が大きいのと,従来これに著効を有する麻薬の副作用と,これの管理施行上の繁雑さなどのため,当然予想される疼痛を,手術をやつたのだから痛むのは当然と,患者も医師も考え,これへの対策は消極的であつたが,近年,非麻薬性鎮痛剤Pentazocineが登場して以来,この様相は一変し,これへの関心は高まり,数多くの研究がなされる様になつて来た.
 術後痛の発生の様相を開腹術を例にとつて見ると,便宜上3期に分けられ1,2),第1期は術後の24時間で,創部痛,内部痛等で,所謂術後痛であり,耐え難い疼痛のための不眠,疲労,更に胸廓,横隔膜運動の抑制が誘因となつて起こる肺合併症や心循環不全などの術後合併症の防止のためにも,積極的な除痛対策が要求される.第2期は排ガスまでの2〜3日で,創部痛,内部痛の消褪と共に,胃ゾンデの苦痛がclose-upしてき,腸ガスの貯溜,腸蠕動による腹部膨満の苦痛が始まり,臥床体位による四肢躯幹痛,全身倦退感が増え,術前の患者への説得,鎮痛剤に代り,鎮静催眠剤の投与,体位変換が効を奏する.この時期に存続突発する異常に激烈な痛みは,腸間膜動脈血栓症,栓塞症,急性胃拡張,絞扼性イレウスの発生を疑い,対処が必要となる.第3期は,その後から抜糸までで,創部の異和感ぐらいになる.この時期の激しい痛みも重篤な合併症即ち,胆汁性,細菌性腹膜炎による縫合不全,癒着性イレウスなどの発生を考慮し,鎮痛剤,鎮静剤のむやみな使用は慎重でなければならない.

麻酔に伴う法律問題—麻酔医の立場より

著者: 森川定雄

ページ範囲:P.203 - P.208

はじめに
 麻酔による事故が全医療過誤中のかなりの部分をしめている.1971年(昭和46年)兵庫県医師会の医療紛争100例中の12例(12%)1),1972年(昭和47年)日本医師会の医事紛争1,640例中107例(6.5%)2)(局麻21,腰麻47,全麻39)治療に関係した紛争1,128例中では107例は9.5%に相当する.最高裁民事局が1975年(昭和50年)12月現在一審で係争中の民事関係を中心とした医事関係の全訴訟757例では,麻酔関係は35(4.6%)であり,原告勝訴率は60%と高い3).また麻酔過誤は一度起こると重篤で死亡につながりやすい.四方によると4),1966年〜1975年の10年間の医療事故の死亡例,解剖例442例中180例(40.7%)が麻酔によるもので,最も多い順から,妊娠中絶33,虫垂切除32,脱臼骨折21,帝王切開10,扁摘10であつた.ゆえに若年者,健康人が突然死亡するため医事紛争に非常になりやすい.
 現在日本麻酔学会では学会が斡旋して医療事故保険に加入している.麻酔専従をしている医師のほぼ100%は勤務医であり,1976年では865名で,878名がこの保険に加入した(専従医以外の加入もあるため).1978年では595名が加入している.(ちなみに1979年度の麻酔学会会員は2,420名で麻酔医以外の会員が非常に多い).保険金はここ数年のうちに約2.8倍になつている.(5,000万円保障で15,200円→42,910円)しかしこの保険は毎年無事故による優良払戻しを受けている.新聞などで報道される麻酔事故は麻酔専門医によるものはほとんどなくて,外科,産婦人科,整形外科,歯科医などによるもの,しかも開業医に多いのが特長である.麻酔に伴う医療過誤と法律問題につき,以下の項目を麻酔医の立場より論じることとする.

Editorial

術前検討における外科医・麻酔医間のコミュニケーション

著者: 諏訪邦夫

ページ範囲:P.164 - P.165

 本特集「外科医のための麻酔」は,医療の高度化・細分化に伴つて分科せざるを得ない外科と麻酔科との間のコミュニケーションを計るために企画したものである.内容は,一方では現在の趨勢である「麻酔は麻酔科に」という方式の下で,外科医に知つておいてほしいこと,知つておくと便利なことを述べ,一方では現在も行なわれ今後も当分は継続していくであろう「外科医自身が麻酔を施行していく」方式の方々にも役立つようにアレンジした.
 個々の学術的・技術的問題は各々の論文にゆずるとして,ここでは,手術にもちこむに至るまでの術前状況における外科医と麻酔医との(そして勿論患者との)コミュニケーションの大切なことを強調したい.鈴木氏・茅氏・土谷氏・森川氏の各論文につよく表現されていることであるが,近年の麻酔診療は患者の術前状態をきびしくチェックする方向にむいてきている.これは血算さえも施行せずに手術を行なつていた10年,20年前でも「特にトラブルはなかつた」と言いたがり勝ちな経験豊かな外科医からみると,手術を「なるべく行なわない」方向へと逆行しているようにみえるかも知れない.

カラーグラフ 癌の典型的内視鏡パターン・5

大腸癌の典型的パターン

著者: 武藤徹一郎 ,   上谷潤二郎 ,   沢田俊夫

ページ範囲:P.154 - P.155

 大腸癌の内視鏡所見は早期癌と進行癌,隆起型と潰瘍型という2つの相対するカテゴリーに分けて把握しておくのが,臨床的に便利である.早期癌とはここでは粘膜内(m癌),粘膜下層に浸潤する癌(sm癌)を指すことにする.
 1.早期癌:大腸の早期癌のほとんどすべては隆起型で,内視鏡的には良性腺腫との区別はつかない(図①〜④).癌が腺腫の1部に認められることが多いので鑑別できないのは当然であろう.癌の一部に腺腫の遺残が共存しているような場合(adenoma in carcinoma)には,ポリープは全体として混濁色調を呈しており,表面がノッペリしている(図③,④).内視鏡的所見,生検の結果がどうであれ,癌の有無とその粘膜下浸潤の有無に関する正しい情報を得るためには,内視鏡的ポリペクトミーによる摘除生検が不可欠である.ポリープ状癌の大きなものは内腔を塞いでしまうため,その全貌を握ることが不可能である(図5)このタイプの癌で進行癌はほとんどないと考えておいてよい.

グラフ 外科医のためのX線診断学・21

膵血管造影

著者: 成松芳明 ,   平松京一

ページ範囲:P.157 - P.162

□膵の血管解剖(図1)
腹腔動脈と上腸間膜動脈からの複雑な血管支配を受ける.
①背側膵動脈→横行膵動脈(膵体部・尾部)
  ↑
 大膵動脈・膵尾動脈
 *背側膵動脈の分岐部
  脾動脈41%,総肝動脈23%,腹腔動脈本幹12%,上腸間膜動脈18%
②膵十二指腸アーケード(膵頭部)前,後上膵十二指腸動 ⇔下膵十二指腸動脈
③吻合枝prepancreatic arterial arcade 背側膵動脈⇔前上膵十二指腸動脈

histoire de la chirurgie アンブロアズ・パレの世界—400年前の大外科医をめぐつて・2

パレの後半生

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.209 - P.212

□Paré時代の外科を進歩させた要因
 医学全体について,それを進歩させる要因をあげろといわれると難かしいのだが,ルネッサンス期の,特に外科が急激に進歩した理由として2つのことが考えられる.1つは医学的な,いわば内的な要因ともいえるが,16世紀が別名「解剖の世紀」といわれるように,外科のうらづけになる解剖学が大きな発展をとげた.Leonardo da Vinci(レオナルド・ダ・ビンチ1452〜1519)もそうだが,有名なAndreas Vesalius(アンドレアス・ベザリウス1514〜1564)の"Fabrica"はその代表的なものといえる。
 VesaliusとParéは立場こそ異なつて,一方は医学部医として,他方は床屋外科医としてではあるが,共通の師Sylvius(シルビウス1478〜1555)について解剖を学んだ.Vesaliusはブラッセル生れで,本名はAndré Vésale(アンドレ・ベザール)なのだが,論文はラテン語で発表した為に,名前もラテン語風に呼ばれ,その師もSylviusとラテン語名で紹介されているが,Paréの方は論文がフランス語の為に,その師の名前もJacques Dubois(ジャック・デュボア)とSylviusのフランス語の本名で紹介されている.わが国の本では,この2つの名前から別人のようにあつかつているものさえあるが,これは同一人物で,ラテン語医学とフランス語医学の別れ目に立つ人物ということが出来る.

今日の問題

「エホバの証人」信者の麻酔とその対策

著者: 花岡一雄 ,   諏訪邦夫 ,   山村秀夫

ページ範囲:P.215 - P.217

はじめに
 「エホバの証人」信者は,約30か国にわたり,200万以上が存在し,現在わが国でも数万人の信者がいると言われている.血を含んだ肉などを食することを認めていないこの宗教は,医学上でもその適応にかかわらず,血液やアルブミンどの血液製剤を一切拒否している.しかし,生理食塩水,代用血漿剤,ハルトマン液,ブドウ糖液,デキストラン液などの輸液剤の使用は認められている.
 「エホバの証人」信者にとつては,生命は一時の流れであり,神の教えを守り抜くことが天国での生活を楽しめるという考えから輸血を受けることは,まさに重大な危機であるといえる1)

シリーズ対談《死を看取る》・1【新連載】

医者観・医療観がCondenseされた臨終の看取り

著者: 斉藤淏 ,   相馬智

ページ範囲:P.221 - P.233

 患者,家族の側から,その死生観を綴つた達意の文章は多い.一方,好むと好まざるとにかかわらず医師・ナースが《生命》の終焉に直面することが多いことはその職責がゆえに致し方ないとはいえ,如何に《死》に思いを廻らし,生命の絶えなんとする時に関わつてゆけば良いか介護者としての視点からこれらを分析したものは余りにも少ない.
 《死》を考えることは《生》を考えることだという.この論でゆくなら《死》に直面した患者さんの《生》に思いを馳せなければならない.病院死の増加した現在,宗教が介在することが少ないわが国の風土の中でテクノラートとしての医療従事者が時間単位での延命策にのみ汲々とすることは是か,否か.

Practical Postgraduate Seminar・26【最終回】

外科医事紛争と医師の責任

著者: 松浦鉄也

ページ範囲:P.234 - P.241

主な内容
医師の法的責任
説明と承諾
問診と記録
外科医療事故の問題点
外科医による民事,刑事,行政の処分を受けた事例

わが教室自慢の手術器具・1【新連載】

食道再建術における大彎側胃管形成鉗子

著者: 佐々木公一 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.243 - P.244

 本邦では胸部食道全摘後の食道再建に手術手技が比較的容易なことから胃を用いることが多い.胃を頸部まで挙上して食道胃吻合を完遂させるには良好な血行を保つた十分な長さの胃管を作成することが必須の条件であるが,この課題に対して井口ら1)は胃小彎側切除部の漿筋層と粘膜・粘膜下層とを別々に縫合する胃管延長法を考案した.われわれも1975年以後,この術式を追試し,ほぼ同様の延長効果を認めているが,2本の曲腸鉗子などを用いて小彎側の各層別手縫い結節縫合をすすめる際に胃内容の漏出や前後壁での相対位置のずれ,筋層の薄くなる胃体部での粘膜損傷,切離縁の不整などはある程度避けられず,胃管作成中の出血量も予想以上に多いことに気付いた.これらの障害が直接手術成績を左右するほどのものとは考え難いが,手技上の2,3の問題点をいささかでも解決するために大彎側胃管形成鉗子を開発し,これまで使用した50例以上の症例に好結果を得ている.

臨床研究

手術と下垂体—性腺系—特にLH-Testosterone系の反応とその機序について

著者: 中島篤巳 ,   田中英之 ,   越山健二郎 ,   魚住徹 ,   門田康正 ,   青野敏博 ,   水谷修太郎 ,   松本圭史

ページ範囲:P.245 - P.251

はじめに
 近年における術中術後の患者管理の進歩にはめざましいものがみられるが,まだ消極的な面も多々存在する.これは手術時の病態,特に生化学的アプローチに未開拓な点が多いことも大きな原因の一つである.内分泌腺の手術時における反応は,一般に性腺以外は分泌量の増加傾向を示すが,この手術侵襲には種々のファクターが複雑に入り組んでおり,その解明は困難を極めている.いずれにせよ,術中術後における内分泌腺の反応は患者の正常な回復にとつて非常に重要な役割を演じているということは疑いもない事実である.本稿では下垂体—性腺系,特にLuteinizing hormone(LH)-Testosterone系の手術時における反応とそのメカニズムについて一つの結論を得たので紹介する.

外科医の工夫

ガイドワイヤーを用いた経皮経肝胆道造影(PTCD)法の追試

著者: 岡村進介 ,   平松聡 ,   池田隆浩 ,   笹辺潔 ,   古本福市 ,   小林直広 ,   佐久間隆 ,   朝倉晃 ,   畠山哲朗

ページ範囲:P.253 - P.255

はじめに
 近年,PTCおよびPTCDが広くおこなわれるようになり,胆道系疾患の診断や治療に著しい効果をあげている.PTCDの手技については,諸家の報告があり1-8),それぞれ工夫がなされ特徴をもつている.しかし,PTCDには手技上の偶発症も全く無いわけではない9,10).安全確実でしかも容易に実施できる方法が要求されてくる.平形5)は,この目的にそつた方法を考案し,ガイドワイヤーを用いて,良好な成績を得ている.著者は,このガイドワイヤーの量産化に成功し,著者の考案した先端にわずかな彎曲をつけたPTC針を用いて,平形の方法5)を追試し,良好な成績を得たので報告する.

臨床報告

特発性胆嚢穿孔の1例

著者: 太田陽一 ,   木元春生 ,   泊康男 ,   瀬尾廸夫 ,   熊沢年泰 ,   北川正信 ,   村田敏夫

ページ範囲:P.257 - P.260

はじめに
 成人の胆嚢穿孔は急性胆嚢炎,外傷性損傷,人為的な手術や検査による穿刺・損傷によつておこるものが大多数であり,特発的に胆嚢が穿孔することは極めて稀である.われわれは成人の特発性胆嚢穿孔の症例に遭遇し,その原因が胆嚢壁の筋層の形成不全と考えられる1例を経験したので報告する.

多中心性に発生したと思われる胸腹部myxoid liposarcomaの1例

著者: 井斉偉矢 ,   佐藤直樹 ,   勝木良雄 ,   川村明夫 ,   西田修 ,   河西紀夫 ,   玉置明 ,   内野純一 ,   葛西洋一 ,   吉川隆志

ページ範囲:P.261 - P.264

はじめに
 胸腔内に発生する脂肪肉腫は非常に稀とされ,本邦では現在までに少なくとも5例の報告があるにすぎない.最近われわれは,胸腹部にわたる,多中心性に発生したと考えられる巨大な脂肪肉腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

4年4ヵ月を経過した超遅発性脾破裂の1例

著者: 中文彦 ,   山田靖幸

ページ範囲:P.265 - P.267

はじめに
 外傷後の遅発性脾破裂の本邦報告例は本例を入れて24例を数えるのみで1-3)欧米におけると同様に4,5)非常に珍しいが,一旦本症と診断されれば緊急手術を要することはいうまでもなく6),腹部外傷直後から本症を念頭におき積極的な検索が必要とされている4,5).多くの場合には受傷から破裂までの期間は長くても100日程度であるが,今回われわれは受傷後4年4ヵ月という長期間の後にほぼ自然に破裂した特に珍しい症例を経験したので報告する.

反回神経麻痺を来たした迷走神経鞘腫の1治験例

著者: 関口忠司 ,   若杉尋 ,   細井順 ,   村山英樹 ,   森岡恭彦 ,   長谷川嗣夫 ,   田原一二 ,   小林誠一

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに
 縦隔腫瘍の症状のうちで,頸静脈怒張や嗄声は,呼吸困難,顔面浮腫,嚥下障害と並んで悪性症状とされ,良性腫瘍では稀である3,4).一般に縦隔腫瘍としての神経鞘腫は後縦隔に多くみられ,さらに神経鞘腫により神経麻痺のみられる事は一般に少ない.また神経鞘腫では,切除により,かえつて麻痺を来たすこともあり,その手術適応に関しても問題が多いといえる.
 われわれは最近,嗄声を呈し,反回神経麻痺を認めた縦隔内迷走神経鞘腫の1例を経験したので報告し,あわせて文献的考察を加えた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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