icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科35巻5号

1980年05月発行

文献概要

特集 癌のリンパ節郭清をどうするか 胃

基調論文—胃

著者: 岡島邦雄1

所属機関: 1大阪医科大学消化器一般外科

ページ範囲:P.635 - P.642

文献購入ページに移動
 胃癌のリンパ節郭清についての問題点
 癌手術の原則の1つにリンパ節の拡大郭清がある.これは広範囲の胃所属リンパ節を根こそぎ取り除くことを目的とするが,リンパ節除去の手技にはリンパ節を周囲組織とともに一塊として除くen bloc法とリンパ節を1つづつ拾い出す方法がある.癌の手術には前者が適当であるといわれている.この理由は,en bloc法では腫大したリンパ節のみならず周囲の脂肪織中に埋れた小さなリンパ節もまとめて一塊にして除くことができるという意味と,リンパ系を総括して取り除くことによりリンパ路の分断による癌細胞の撒布を少なくするということで優れた方法とされている.
 厳重な意味で郭清とは定められた範囲のリンパ節を残さずに除去することであるが,リンパ節の完全除去という点からみると隣接臓器の合併切除をしなくては完全に除くことのできない部位もある.手術の実際でみると第3群リンパ節ではen blocな郭清は他臓器合併切除なしでは不可能であるため,この部の郭清は1個1個拾い出す方法をとらざるを得ない.もし第3群リンパ節の完全除去を望むならAppleby法による腹腔動脈根部切断は勿論のこと膵全摘,十二指腸切除,摘脾を含む胃全摘が少なくとも必須条件となる.これでは実地臨床上不可能に近いので他臓器合併切除をしなくても第3群リンパ節を周囲脂肪織とともに十分に除去しえたと判断された場合にはR3切除と習慣的に処理しているのが現状である.この場合,R3切除とするには腹腔動脈,脾動・静脈とその分枝,総肝動脈,肝十二指腸間膜内の門脈,胆管,肝固有動脈は露出,遊離された状態となる.上腸間膜静脈周囲は容易に郭清できるが,上腸間膜動脈はその根部の郭清は容易でない.郭清についての判断には術者による差があるためRナンバーの表現には問題が残されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?