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文献詳細

雑誌文献

臨床外科35巻5号

1980年05月発行

文献概要

わが自慢の手術器具・6

私の考案した剥離止血鉗子

著者: 三村久1

所属機関: 1岡山大学医学部第1外科

ページ範囲:P.719 - P.720

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 ペアン鉗子(無鉤止血鉗子をわれわれはこう呼んでいる)は手術に際して不可欠に有用な器具であるが,胃切除で大網をはずしたりするような操作では,従来のペアン鉗子で全く不自由を感じない.しかし肝切除に際しての肝門部の剥離,短肝静脈の剥離,肝内血管の処理やPD時の膵頭部の剥離などの細かい操作に際しては従来のペアン鉗子ではやや不便である.ペアン鉗子の使用目的を考えてみるとこれには3つあつて,①血管などをはさむこと(閉じる操作),②組織を剝離すること(開く操作),③くぐらせること(閉じたまま,あるいは開きながら通す操作)である.①の操作に際しては,従来のペアン鉗子は溝が横溝であることと,1段嚙んだだけでは先は()のように中間がまだ開いている(全長に亘つて閉じるためには3段まで嚙んでしまう必要がある)ために鉗子が逸脱しやすい.②の目的のためには支点ががつちりしていて(はずれる構造のものはよくない),脚はある程度細く,組織の抵抗がよく手に伝わる必要がある.次に②,③の目的のためには先端は適当に細く(細すぎるとかえつて血管をつき破る可能性がある),また彎曲の程度は先の方だけ適当に強い必要がある.従来のペアン鉗子の彎曲はゆるすぎて,組織中の血管をすくうときなどに他の余分の組織を損傷する.彎曲が強すぎると一般にはまた扱いにくい.
 これらのことから私は1965年にペアン鉗子に小改良を加えた剥離止血鉗子(図)を作製した.従来のペアン鉗子と比較すると表のような特長を有している.すなわち,従来のペアン鉗子より全体に細身で,関節より先端まではやや短く,先の方がやや強く彎曲しており,先端は細く,溝は縦溝である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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