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特集 最近の呼吸管理法をめぐるQ&A
術後の予防的人工呼吸
著者: 勝屋弘忠12 岡元和文12 八田泰彦12
所属機関: 1熊本大学医学部救急部 2熊本大学医学部集中治療部
ページ範囲:P.849 - P.855
文献購入ページに移動上腹部手術後に,肺炎などの明らかな肺合併症がなくとも低酸素血症が起こり,回復するのに数日から1週間かかることは昔からよく知られている.このいわゆる術後低酸素血症が起こるメカニズムについてはいくつかの考え方がある.この中でも,術後には表1に示すような機能的残気量(FRC)減少あるいはclosing volume(CV)増加を来す病態がしばしばみられ,そのため正常のFRC>CC〔Closing Capacity(closing volumeと残気量の和)〕の関係が逆転してPO2低下を来すメカニズムが重要と考えられる.
近年,手術手技,麻酔学の進歩などで,従来は手術適応とならなかつたような症例にも手術が行なわれるようになつた.その結果,肺合併症を含む術後合併症の頻度は相変らず決して低いとはいえない状況にある.特に術前より心肺機能に異常を有する高齢者とか,あるいはリスクの良い患者でも長時間の開胸・開腹術など侵襲の大きな手術後は,かなり高率に無気肺や肺炎などの肺合併症を起こしやすい.これは当然低酸素血症をさらに増悪させる.
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