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文献詳細

雑誌文献

臨床外科35巻7号

1980年07月発行

特集 大腸癌根治手術の再検討—ポリペクトミーから拡大郭清まで

直腸癌における拡大郭清の意義

骨盤内臓器全摘術

著者: 小山靖夫1 北條慶一1 森谷宜皓1

所属機関: 1国立がんセンター外科

ページ範囲:P.1020 - P.1026

文献概要

はじめに
 骨盤内臓器には,肛門管,直腸とこれに近いS状結腸の一部,すなわち骨盤内結腸からなる腸管の末端部,および骨盤内尿管・膀胱・尿道からなる泌尿器系,ならびに子宮・付属器・腟,あるいは精管・精嚢・前立腺等で構成される内性器の3系統がある.これらのうち,生命維持に欠かせない機能を持つのは,泌尿器系と腸管であるが,これらは何れも排泄物の一時的貯蔵と排泄という,比較的単純な機能を分担している.そして,それぞれ人工肛門の造設,あるいは尿路変更術といつた手段を用いることにより,他の代用臓器に較べると安全で確実かつ恒久的な機能の代行が可能である.骨盤内臓全摘術は,このような理由によつて約30年前から,特定の病態にある骨盤内臓器悪性疾患の治療に応用されて来た.
 ところで,直腸癌は第一に狭い骨盤腔のなかで,内性器や泌尿器に接しているという解剖学的な特徴から,しばしばこれら隣接臓器に直接浸潤を営なむ.第二に,直腸癌の多くは,分化型の腺癌で,ビマン性浸潤を示すことは少なく,また,早期に広範な血行性,リンパ行性転移を起こすことも稀であつて,隣接臓器まで浸潤していてもなお局所性疾患に留まつているものがあるという生物学的な特性がある.このようなわけで,進行直者癌の手術ではしばしば隣接臓器の合併切除が行なわれる.合併切除の対象が泌尿器の場合は,物理的には部分切除で治癒が期待出来る状況であつても,そのために著しい機能障害が惹き起こされるか,または機能の廃絶が予測される場合は,尿路の再建術または変更術を同時に考慮しないと手術が成立しないという特殊性がある.さらにこれらの場合,浸潤を認める臓器のリンパ系をもen blockに郭清しなければ,根治手術としては不十分であるとの立場も成立しうる.また数は多くないが,膀胱,女性器などの癌と直腸癌が同時性または異時性に重複して発生し,それぞれに根治的手術を行なつた結果,骨盤内臓全摘術となる場合がある.このようなわけで,私どもは過去18年間に23例のS状結腸・直腸・肛門の癌に対し,骨盤内臓全摘を行なつて来た.今回それら症例の遠隔成績と臨床病理について検討したので,結果を報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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