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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科35巻8号

1980年08月発行

雑誌目次

特集 閉塞性黄疸—最近の診断法の進歩

生化学的データでどこまでわかるか

著者: 鎌田武信 ,   斉藤光則

ページ範囲:P.1097 - P.1101

はじめに
 ビリルビンは肝細胞に摂取されてミクロソームで主としてグルクロン酸抱合をうけ水溶性となり胆汁に排泄される.この経路のどこかでブロックがあると黄疸が出現するため,増加している血中ビリルビンが抱合(直接)型か非抱合(間接)型かを知ることが鑑別の第一段階となる.
 日常臨床で遭遇する黄疸症例はその多くが抱合型ビリルビン優位の胆汁うつ滞であり,従つて胆汁うつ滞が肝内性か肝外性かを早急に決定することが,治療法の選択に関連して当面の課題となる.この鑑別の第一歩はルーチン検査としての肝機能検査の解析であろう.

超音波診断法でどこまでわかるか

著者: 幕内雅敏 ,   長谷川博 ,   山崎晋 ,   万代恭嗣 ,   伊藤徹 ,   渡辺五朗

ページ範囲:P.1103 - P.1111

はじめに
 超音波は,無侵襲な検査法のなかで最も脈管の描出能に優れている.超音波検査の目的は結石の描出,脈管の描出,腫瘤の描出などにあるが,とりわけ,胆嚢内結石や脈管構造の描出において確実である.特に,実時間表示装置(リアルタイム装置)の開発によつて,脈管の同定が正確になり手動装置より短時間にしかも技術を要さずに,情報が得られるようになつた.
 実時間表示装置には,機械式セクター装置,リニア型電子スキャン装置,セクター型電子スキャン装置,大きな水槽と反射板を内蔵した装置などがある.現在,日本で多用されている装置は,前2者である.機械式セクター装置は,最も安価で分解能も良好であり,腹部の外来検査用として,推奨できる装置である1).欠点はセクター装置の常として,近距離の雑音の多いことがあげられる.リニア型電子スキャン装置は,初期のものでは分解能が悪く,虚像も多かつたが,微小角セクターと電子フォーカスの導入により,画像の向上をみた2).さらに,最近使用可能になつたダイナミックフォーカス付きの装置は,分解能も極めて向上し,グレースケール装置に比して,遜色のないものになつている.

CT Scanでどこまでわかるか

著者: 板井悠二

ページ範囲:P.1113 - P.1118

はじめに
 Computed tomography(CT)が腹部の臨床に応用されてから数年の歳月が経つた.この間機器の改良,普及に伴い本法はかなり重要な検査法となり,相当の臨床経験が蓄積されてきた.しかし,臓器,疾患により本法の意義は大きく異なる.
 内科的黄疸との鑑別,閉塞部位・起因疾患の診断,副所見の把握等より,CTが閉塞性黄疸に果す役割を記し,多彩な検査法を有する胆道系の診断でどのような位置を占めるのか,過去3年間の経験に基づき解説を加えたい.

RI検査でどこまでわかるか

著者: 油野民雄 ,   桑島章 ,   一柳健次 ,   多田明

ページ範囲:P.1119 - P.1125

はじめに
 131I-ローズベンガルや131I-BSPの放射性色素を体内へ投与し,シンチカメラにより経時的に観察すると,RIの肝臓への摂取ならびに胆道・腸管への排出の一連の経路を,イメージ上連続的に評価することが可能となる.かかる原理の応用により,閉塞性黄疸が内科的因子によるか外科的因子によるかの鑑別手段として,RI肝胆道シンチグラフィーは従来より施行されてきた1,2).さらに近年,短半減期核種である種々の99mTc標識化合物が容易に入手可能となつた結果,被験者への被曝が著しく軽減され,従来より鮮明な肝胆道系の画像が得られるようになり,肝胆道疾患における診断能が著しく向上した3,4)
 かかる肝胆道シンチグラフィーを含めた核医学検査の一般的特徴は,患者に苦痛をあたえることなく,非侵襲的に肝胆道系の形態的ならびに機能的情報が供与されることにあるが,他の非侵襲的画像診断法であるCTや超音波が著しく普及した現在では,従来のX線検査に核医学,CT,超音波を包括した総合画像診断(Body Imaging)5)の枠組みのなかで,核医学検査の診断的有用性を論じる必要が生じてきた.

血管造影でどこまでわかるか

著者: 有山襄 ,   池延東男 ,   炭田正孝 ,   白田一誠 ,   島口晴耕 ,   白壁彦夫

ページ範囲:P.1126 - P.1131

はじめに
 閉塞性黄疸の診断にもつとも有効な検査法は直接胆道造影である.黄疽例にPTCあるいはERCPを施行すれば,肝内胆汁うつ滞か肝外閉塞性黄疸か容易に鑑別できる.肝外閉塞性黄疸ならば,胆管閉塞部位と病変の質的診断までできる.血管造影の閉塞性黄疸の診断における役割は,直接胆道造影によつて悪性腫瘍による肝外閉塞性黄疸と診断された症例で,腫瘍の大きさ,原発部位,壁外伸展,切除可否の決定を行なうことにある1).血管造影を行なう肝外閉塞性黄疸は悪性腫瘍の症例に限られるので,胆道癌および膵頭部領域癌の血管造影と直接胆道造影の診断能を対比してのべる.

PTCの適応—X-ray controlled PTC,PTCDとUS guided PTC,PTCDについて

著者: 高田忠敬

ページ範囲:P.1132 - P.1140

はじめに
 胆道系疾患の診断は,これまでほとんどが排泄性胆道造影法あるいはPTC,ERCPなど直接胆道造影法に依存していたと言つて過言ではなかろう.しかしながら,近年,非侵襲的検査法の1つである超音波検査法が大きく進歩し,これまで胆道造影法の大きな役割であつた"胆石のみつけだし"や"黄疸の鑑別"は,超音波検査法が主役をなすところとなつた.
 また,PTCそのものの手技も,これまでのX線透視下での穿刺法に加え,超音波誘導下での穿刺も工夫され実用される時代となつてきた1-6).このような背景において,PTCの適応がいかがなるものであるかが今回与えられた課題である.

PTCとERCPの使い分け

著者: 尾形佳郎 ,   諸角強英 ,   雨宮哲 ,   小林健二 ,   小島正夫 ,   都築俊治 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1141 - P.1145

はじめに
 閉塞性黄疸の治療にあたつては,速やかな減黄処置と正確な閉塞部位及びその原因疾患の診断が治療成績を直接左右する.閉塞性黄疸に対する減黄処置と診断にはPTC及びERCPの使いわけがとりわけ重要であり,われわれの日常臨床に於ける,その使いわけの基本的な考え方を述べ,これらを使用した臨床例を供覧する.

カラーグラフ トピックス・4

食道鏡下の造影法

著者: 小泉博義 ,   今田敏夫 ,   小原博 ,   藤本泰則 ,   金正出 ,   鈴木元久 ,   天野富薫 ,   井出研 ,   五島英迪

ページ範囲:P.1094 - P.1095

 食道鏡下造影法は,食道ファイバースコープ鉗子孔より,筆者の考案せる穿刺用針(図①)で,食道壁を穿刺し造影剤を注入する方法である,食道癌の他臓器浸潤を知る目的で,1969年に本法を開発した.
 手技は,癌腫の口側で食道壁を穿刺し,炭酸ガス300〜500ccを注入後60%ウログラフィン10〜20mlを追加する.体位変換後に食道4方向造影を施行し,癌腫の外側に造影剤が移行するかどうかで周囲臓器の浸潤を判断する.本法を経食道性後縦隔造影と命名した.

Spot 閉塞性黄疸の診断法

とくに最近の進歩と改革

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.1146 - P.1148

はじめに
 最近の超音波診断法あるいはCT scanの開発により,閉塞性黄疸の診断法についての考え方に画期的な改革がもたらされ,迅速かつ正確な診断と同時に,適切な治療方針がたて得るようになつた.最近の諸外国の雑誌にもこれに関連した論文が数多くみられ,また去る2月,ニュージーランドのオークランド市で行なわれた第5回アジア・太平洋消化器病学会でも,「閉塞性黄疸診断法の最近の進歩とその治療」と題するシンポジゥムが,英国のProf.Blumgartを招き行なわれている.ニュージーランドのProf.NansonとシンガポールのProf.Cohenを座長として開かれたこのシンポジゥムは,この他香港のProf.Ong,マレーシアのProf.Balaseg—aram他7人をsupporting speakerとして行なわれた.
 今回医学雑誌「臨床外科」で「閉塞性黄疸の診断」に関する特集が企画されたことは,実に時期を得た試みであり,前記したシンポジゥムのシンポジストの一人として,その内容の一部とこの方面の最近の動向をこの機会を利用して報告したいと考える.

わが教室自慢の手術器具・9

外来手術と小手術のための直腸・肛門用簡易診察手術台

著者: 江崎治夫 ,   田村泰三

ページ範囲:P.1150 - P.1151

 手術器具という条件からは少し離れるかと思われるが,私どもが直腸・肛門の外来診察や小手術に愛用している診察台を紹介したい.
 一般に直腸・肛門の診察体位としては,砕石位,Simsの体位,膝胸位などがとられるが,体位が不安定であつたり,視野が狭くて診察や処置がやりにくくなることがしばしばある.最近は直腸・肛門専用の診察台が市販されるようになつているが,大変高価であり外来診察室に備えることはなかなか困難である.

Emergency Care—Principles & Practice・13

腹部外傷

著者: 川嶋望

ページ範囲:P.1153 - P.1158

 改めて分類するまでもないが,腹部外傷にはその損傷の原因となつた「鋭的外傷」と「鈍的外傷」,その病態から「出血」と「腹膜炎」に大別される.そして腹部外傷に対する初療も,他の外傷や救急疾患と同様に,すみやかにバイタルサインを把握して,必要があれば初期呼吸器管理・循環器管理を行なつて,必要な臨床検査を行なつて手術の要否を判断し,早急に治療体制を整えることが重要である.また,多発損傷においては治療の優先順位を定め,損傷の程度によつてはそれぞれの損傷に対する応急処置が必要になることもあろう.

臨床研究

ストレス潰瘍および出血性消化性潰瘍に対する治療—胃微小循環および病理組織像を中心に

著者: 北島政樹 ,   検見崎博樹 ,   上田光久 ,   相馬智

ページ範囲:P.1161 - P.1167

はじめに
 上部消化管出血は吐下血を伴う顕性出血と便潜血反応陽性の潜性出血があり,その原因疾患もさまざまである.その中でも特に胃出血は頻度も高く,また従来の消化性潰瘍とストレス潰瘍からの出血に分類することが出来,これらの二群に対しそれぞれの病態生理を把握し治療法を検討することが重要である.
 特にストレス潰瘍は潰瘍発生の背景に多くの重篤な全身的要因が存在し,治療上極めて厄介なものであり,保存的治療あるいは外科的治療のいずれによつても成績が不良であることは周知の事実である.今回,これらの二群の胃潰瘍に対し緊急内視鏡検査による診断の重要性,病理組織学的特長,微細血管構築像などを検討し,併せ実験的にストレス潰瘍の成因を追究し,その治療法について述べる.

食道裂孔ヘルニアの臨床的考察—とくに滑脱型と短食道型について

著者: 小林克 ,   池田裕 ,   飯田太 ,   草間次郎

ページ範囲:P.1169 - P.1172

はじめに
 近年,消化管X線検査の進歩ならびに集団検診,老人検診などの普及にともない,胃病変とともに食道裂孔ヘルニアが発見される機会が多くなつた.食道裂孔ヘルニアの中でも短食道はまれなもので,Harrington1)の報告以来,一種の先天性奇形と考えられ,真性ヘルニアとは区別して取り扱われてきた.しかしながら臨床的にはX線上,一見短食道型の裂孔ヘルニアを思わせる症例が少なくなく,また他の型の食道裂孔ヘルニア,とくに滑脱型との間に何らかの関連があることが推定されたので,本論文においては,食道裂孔ヘルニアの中でもとくに滑脱型ヘルニアと短食道型ヘルニアとの関係について検索を行なつた.

臨床報告

拡大肝右葉切除を行なつた胃肉腫肝転移の1例

著者: 安田秀喜 ,   鈴木茂 ,   井手博子 ,   荻野知己 ,   今泉俊秀 ,   増山克 ,   三浦修 ,   今西定一 ,   三神俊史 ,   武藤晴臣 ,   高崎健 ,   鈴木博孝 ,   榊原宣 ,   小林誠一郎

ページ範囲:P.1173 - P.1176

はじめに
 胃肉腫は比較的まれな疾患であり,かつ術後肝転移をきたすものはさらに頻度が少ない.今回胃肉腫にて胃全摘術後3年目に肝転移再発をきたし,拡大肝右葉切除を行ない治癒せしめた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

種々の奇形を伴つたWindsock型十二指腸膜様狭窄の成人例

著者: 加藤俊夫 ,   森孝郎 ,   竹中巧 ,   入山圭二 ,   鈴木宏志 ,   倉田正 ,   林友信

ページ範囲:P.1177 - P.1180

はじめに
 Windsock型十二指腸膜様閉鎖(狭窄)は,その特異な形状,治療上の問題点から注目されているまれな病態であり,報告例の大部分は乳児期以前に発見され手術を受けている.われわれは最近,成人においてPreduo—denal Portal Vein等種々の奇形を伴つたWindsock型十二指腸膜様狭窄の1例を経験し,手術を施行したので若干の文献的考察を加えて報告する.

術後肺塞栓症の1治験例

著者: 田中公晴 ,   飯塚保夫 ,   西土井英昭 ,   木村修 ,   竹田力三 ,   小立寿成 ,   岸本宏之

ページ範囲:P.1181 - P.1184

はじめに
 術後肺塞栓症は欧米に於いてはしばしば見受けられる術後合併症であるが,本邦では,従来,比較的稀な疾患とされていた.しかし,近年,手術症例の老齢化,肥満化とともに,増加傾向にある.われわれは直腸癌術後に起こつた肺塞栓症の1治験例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

成人の肥厚性幽門狭窄症の1例

著者: 稲田正男 ,   望月英隆 ,   小堀鷗一郎 ,   野村和成 ,   富山次郎 ,   島津久明 ,   草間悟 ,   斉藤泰弘

ページ範囲:P.1185 - P.1188

はじめに
 先天性疾患の1つとして乳幼児に比較的高頻度にみられる肥厚性幽門狭窄症が成人にもみられることは以前より知られているが,本邦における報告例は少なく,稀な疾患とされている.著者らは最近その1例を経験したので,これについて報告するとともに若干の文献的考察を加えることにしたい.

脳血栓症を合併した出血性脾嚢腫の1例

著者: 須藤峻章 ,   陳世澤 ,   吉田泰夫 ,   鈴木敞 ,   戸部降吉

ページ範囲:P.1189 - P.1192

はじめに
 最近われわれは脳血栓症を合併し,脾嚢腫内に出血を来し,脾摘除術にて治癒せしめえた1例を経験したので報告し,若干の文献的考察を試みた.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1149 - P.1149

SURGERY—Contents, July 1980 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。また,この雑誌"Surgery"御購読の場合,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は施設\18,000,個人\12,600です。雑誌はMosby社より,直送いたします。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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