icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科36巻1号

1981年01月発行

雑誌目次

特集 RI診断の進歩

序論—RIで何ができるか

著者: 久田欣一

ページ範囲:P.23 - P.29

はじめに
 RIを用いて行なう診断学とくにin vivo核医学診断学の特徴は,少ない人手で,前処置,準備も余り必要とせず直ちに検査に着手でき,non—invasiveで患者の苦痛や副作用がなく,その割に比較的詳細な情報を得,正確な診断に達することができる点にある.最近X線CTや超音波にお株をうばわれた領域もあるとは言え,依然として広範な外科的疾患にその適応がある.RIの専門家は外科医の抱く問題点,ニードが奈辺にあるか知らないことがある.外科医は現代の核医学で何が出来るかを十分に御存知ないかも知れない.
 外科臨床上必要な問題の中,RIを用いると何が解決できるか,核医学の現状を紹介したい.

肝,胆道,消化管の診断

著者: 油野民雄

ページ範囲:P.31 - P.38

肝のRI診断
 RIによるイメージング,すなわち肝シンチグラフィーが,外科的領域のなかで臨床的有用性を主に発揮しうるのは,肝内限局性病変の評価に関してである.原発性肝癌や転移性肝癌の悪性疾患,膿瘍や肉芽腫の炎症性疾患,嚢胞や外傷後の肝損傷など,肝内限局性病変を検出する手段として一般に施行される他,かかる病変の経過観察手段としても用いられる.
 肝シンチグラムの読図を行なう場合は,X線診断の場合と同様,撮像されたシンチグラム像が一定条件を満たした質の良いイメージであることを先ず確認した後に,肝シンチグラム上の主要観察点(図1,図2)に留意しながら読図を行なう.

骨腫瘍の診断

著者: 高木八重子

ページ範囲:P.39 - P.44

はじめに
 骨腫瘍の診断領域におけるRI診断の主なものは骨シンチグラフィであるので,ここでは骨シンチグラフィの最近の進歩を中心に述べる.骨シンチグラフィは骨腫瘍の病変部が健常部よりRI集積の多い陽性像として描出されるため,検出能の高い診断法と評価されており,よりすぐれた放射性医薬品の開発,実用化と検出器としてのシンチカメラの高解像力化における進歩により,外科領域でも重要な検査法となつている.
 慶応病院で最近行なわれた500件の骨シンチグラフィのうち,外科系診療科からの依頼によるものは66%と半数以上であつた.外科での骨シンチグラフィの利用をみると,その約90%が悪性腫瘍の骨転移検索の目的で行なわれており,疾患としては乳癌が最も多く(57.8%),肺癌,消化器癌と続いている.いずれの疾患においても一般撮影で骨病変が明かに指摘できない早期に,骨シンチグラフィで転移巣の検出が可能であることや,全身のbone surveyとして患者に対する負担が少なく,くり返し行なえることなどの利点が活用されているものと思われる.

腎・副腎疾患の診断

著者: 山崎統四郎 ,   日下部きよ子 ,   牧正子 ,   奈良成子 ,   徳安良紀 ,   山田隆之 ,   原沢有美

ページ範囲:P.45 - P.51

はじめに
 腎と副腎疾患のRI検査としては,ホルモン定量に代表されるIn vitro検査とイメージングに代表されるIn vivo検査に大別されるが,本項ではイメージングを中心にその進歩について述べる.
 RIによるイメージングはシンチグラフィとよばれ,従来形態診断法の一つとして考えられていたが,これはむしろ局所の機態を反映したイメージである.またイメージングに際して,特定の放射性医薬品の臓器への摂取率の測定を行なつたり,経時的且つ連続的にイメージを撮り,同時にコンピュータなどで臓器局所の時間放射能曲線を作製して,その動態の診断をすることもできる.

肺疾患と肺機能

著者: 川上憲司

ページ範囲:P.53 - P.59

はじめに
 肺の機能は,言うまでもなく,生体の代謝に必要な酸素をとり入れ,不要となつた炭酸ガスを体外に排出することにある.これらの機能を営むための主たる構造は,気道系,循環系および両者を介在する拡散系がある.これら機構のいずれかに障害が起こつたとき,生体には種々の変化が生ずる.
 口腔部におけるガスの量,組成から肺機能を観察する従来の呼吸機能検査や,カテーテルを使つて肺循環動態を測定する方法と比較した場合,核医学検査の特徴は非観血的に,ほとんど無侵襲的に検査できること,およびこれらの機能を局所的に把握できる点にある.特に外科領域においては,肺機能を局所的に把握することが必要である.

心・血管系への応用

著者: 鈴木豊 ,   杉原政美 ,   友田春夫 ,   川田志明

ページ範囲:P.61 - P.67

はじめに
 ラジオアイソトープ(RI)を利用した心臓検査法は,近年,急速な進歩を遂げた.その背景として201Tl(タリウム)に代表される新しい核種の開発と核医学データ処理装置の普及があげられる.今回は,臨床的評価の定まつた検査法を取り上げ,われわれの施設での経験を中心にして紹介することにする.

腫瘍・膿瘍の診断

著者: 利波紀久

ページ範囲:P.69 - P.75

はじめに
 腫瘍や膿瘍にラジオアイソトープ(RI)を集績させて病巣を陽性像として描出し存在部位や進展範囲を診断するシンチグラフィは他の検査法では得難い情報を非侵襲的に提供するユニークな検査法である.
 最近では撮像装置の改良と放射性医薬品の開発に伴つてその臨床的価値は高く評価されるようになり検査件数は増加の一途をたどつている.本稿ではこの領域に用いられている67Ga-citrateと201Tl-chlorideによるシンチグラフィの現状について症例を供覧し解説する.

グラフ Conference 総合画像診断のすすめ方・1【新連載】

胆嚢癌の合併が疑われた有石慢性胆嚢炎

著者: 兵頭春夫 ,   岩崎尚弥 ,   宮本正道 ,   手島泰明 ,   原田尚 ,   前原操 ,   杉田敏夫 ,   田島芳雄 ,   石川宏 ,   佐藤直毅

ページ範囲:P.13 - P.21

〔症例〕76歳男性,肥満体
〔主訴〕上腹部痛,発熱
〔現病歴〕生来健康であつた.①1年前急に腹痛あり,鎮痙剤の投与を受けた.②6ヵ月前より腹部の膨満感.③1ヵ月前より食後腹痛あり,発熱のため近医へ入院.④1週間加療にても効なく腹痛は右悸肋部に比較的限局す.胆石症の疑いで転院す.

わが教室自慢の手術器具・14

私の愛用している手術器具—ピンセット,鋏など

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.78 - P.79

 私には,現在のところ自慢できるような独特な手術器具はない.
 一般外科の手術にさいして,心臓血管外科,脳神経外科,小児外科,形成外科などの分野で普通に用いられている器具を流用すれば,特別な工夫をこらした器具を用いなくてもほとんど支障がないと考えている.

Emergency care—Principles & Practice・16

脳卒中の初療—特に外科系の立場より

著者: 寺本成美

ページ範囲:P.81 - P.93

はじめに
 脳卒中は虚血性心疾患,外傷とともに救急疾患の1つとして重要な位置を占め,本邦における最大死因疾患である.またEmergency careの中でも意識障害を来たす疾患として内科系のみならず外科系医師も遭遇する機会も多い.従つて本シリーズ前回の「意識障害へのアプローチ」が本項の基礎となり,初療の立場からすれば脳卒中の初療は意識障害の鑑別と対策がポイントとなる.

外科医の工夫

心臓血管造影用カテーテルの改良

著者: 隈崎達夫 ,   本多一義 ,   飛田義信 ,   細井盛一 ,   鈴木次夫 ,   澤野誠志 ,   野本宏 ,   小坂真一

ページ範囲:P.97 - P.101

はじめに
 現在,心臓大血管造影用カテーテルとして使用されているものには先端閉鎖型,開口直型および曲型があり,これに側孔の有無,数,位置,大きさとカテーテルの直径や全長などが組合わされ1-14),適宜選択されている.これらの中では先端がループ状であるいわゆるpig tail型が比較的安全性が高く,われわれも日常使用する機会が少なくない.しかしながら時にはpig tailカテーテルを用いても満足な造影像を得られない症例に遭遇することもあり,その原因の一つが側孔の位置にあると考えられていた.
 そこで,われわれは本稿に述べるようなカテーテルを試作し使用してみたところ,心臓肺血管造影や胸部・腹部大動脈造影のみならずaortocervical angiographyあるいはrenal aortography,pelvic angiographyなどに際しても臨床的にほぼ満足する結果を得ることができたので報告する.

臨床研究

骨盤内臓器全摘術の成績と経験

著者: 森武生 ,   富永健 ,   伊藤一二

ページ範囲:P.103 - P.110

はじめに
 近年日本では大腸癌は増加の傾向にあり,進行度により骨盤腔内の臓器を合併切除する機会も多い.骨盤腔内は泌尿器系,生殖器系,S状結腸直腸等が膜一重で隣接しており,大腸癌のみならず泌尿生殖器系の悪性腫瘍でも隣接臓器に対する解剖学的理解と術式の習熟が必要である.従来この区域の広範囲局所浸潤癌は姑息的な隣接臓器ギリギリの切除を行なうことが多く必然的に局所再発により予後不良となつたり,切除不能とされる傾向が強かつた.1960年Bricker1),Brunschwig6)等は骨盤内臓器全摘術について大きなシリーズで優秀な成績を発表したが,未だに十分にこの術式は流布していないようである.われわれは進行骨盤内悪性腫瘍に対し適応を拡大し良好な結果を得てきた.本稿においては,術式の詳細を述べ,適応に関する新しい考え方とその成績についても述べる.

Chilaiditi症候群—1手術例と文献的考察

著者: 高橋日出雄 ,   東郷実元 ,   穴沢貞夫 ,   面野静男 ,   河井啓三 ,   鈴木正弥 ,   綿貫喆

ページ範囲:P.111 - P.114

はじめに
 Chilaiditi症候群は右横隔膜と肝との間に結腸が陥入している状態をいう1).本症候群は稀なもので,胸腹部または消化管X線検査などにより偶然発見されることが多い様である.
 最近われわれは本症候群の1例を経験し,手術により確認し得たので若干の文献的考察を加えて報告する.

肝内結石症の治療—とくに肝左葉切除について

著者: 斉藤敏明 ,   新井健之 ,   東條慧 ,   横山勲 ,   横山茂樹 ,   堺泉

ページ範囲:P.117 - P.122

はじめに
 近年,胆石症に対する診断学の進歩に伴い,肝内結石が多く発見されるようになつた.胆石症に対する治療成績は麻酔をはじめとして各種薬剤,手技などの進歩により高齢者あるいはpoor riskの患者においても極めて向上しつつあるが,肝内結石症はなおその治療に難渋する場合が多く,医師も患者も長期間の忍耐を余儀なくされる.
 肝内結石が肝左葉に限局している場合は左葉切除を行なえば遺残結石もなく良い結果が得られるはずである.肝切除に対する可否の論議は多く行なわれているが,適応を選べば勝れた治療法と考える.われわれも肝内結石症に対し若干の肝切除を行なつたので報告する.

経静脈栄養法の院内システム化について

著者: 松末智 ,   柏原貞夫

ページ範囲:P.123 - P.127

はじめに
 経中心静脈栄養法(以下静脈栄養とする)はDudrick等の発表1)以来広く普及し応用されるようになつた.とりわけ消化器外科医にとつては術前術後の管理面で最大の武器になつた感が深い.しかしながら未解決の問題も多く,今後さらに新たな問題の発生も十分あり得るのも事実である.今後は未解決な点を解決する様努力する一方,現在までに明らかになつているような問題点,特に合併症の発生を極力減少させるのが,この療法を患者に行なう者に課せられた責務であろう.特にカテーテル管理に起因するような合併症(カテーテルの自然抜去,汚染,菌血症等)は"life line"であるカテーテルの抜去とか,静脈栄養の一時中断とかをひき起こす場合が多く患者の不利益になる事,この上ない.さらに,日常的なブドウ糖利用に関する代謝性合併症も時には短時間のうちに致命的になる場合も多い.
 こういつた種々の危険を孕んだ,しかし,非常に魅力的な治療法は,最早,看護婦,薬剤師等の直接的な関与無くして,医師だけで行なうのは無理と言える.特に医師の員数が制限されている市中病院では,その感が強い.故に,この治療法を安全に長期にわたつて行なうには一定のシステムを確立すべきものと思われる.しかしながら現状では各病院の事情もあろうが,2,3の病院を除いて2),一定のシステムになつていない場合が多いように思える.

異物に合併した乳癌

著者: 内田賢 ,   深見敦夫 ,   堀雅晴 ,   徳田均 ,   久野敬二郎 ,   梶谷鐶 ,   坂元吾偉 ,   菅野晴夫

ページ範囲:P.129 - P.132

はじめに
 乳房腫瘤を主訴に外来を受診する患者のなかに,時に過去に豊胸術を受けたため正確な診断を下すのに困難を感ずることがある.ことに悪性腫瘍を合併した場合は,診断・治療の上で種々の問題点を有していると考えられる.われわれの外科で扱つた乳房異物に悪性腫瘍を合併した症例を臨床的に考察し,あわせて病理学的な検討を加えた.

臨床報告

下行結腸Hemangiopericytomaの1例—本邦腹部症例の統計的観察

著者: 石黒信彦 ,   上野桂一 ,   東野義信 ,   小西一郎 ,   山口明夫 ,   広野禎介 ,   高柳尹立

ページ範囲:P.133 - P.137

はじめに
 Hemangiopericytomaは1942年Stout & Mu—rray1)により命名されたことに始まり,主に皮膚・皮下に発生する稀な腫瘍である.腹部発生例は,Binderら2)によれば胃・子宮以外では54例,本邦では鈴木ら3)によれば後腹膜腔10例・胃9例・腎3例・大網2例・盲腸1例計25例と頻度ははなはだ低い.われわれは下行結腸に発生した稀な本症を経験したので報告する.

胆道系と交通を有する特異な重複胃の1治験例

著者: 軍司祥雄 ,   竜崇正 ,   石川達雄 ,   小高通夫 ,   佐藤博 ,   長尾孝一

ページ範囲:P.139 - P.145

はじめに
 消化管重複症は,enteric cysts,enterogenous cy—sts,giant deverticula,inclusion cystsなど種々の名称で呼ばれていたが,1940年Ladd & Gross1)が,duplication of alimentary tractと提唱して以来この名称が好んで用いられている.この疾患は,舌根より肛門に至る全ての消化管に発生しうる比較的稀な先天性疾患である.消化管重複症の内でも重複胃の頻度は少なく,本邦では梅野2)が26例を報告しているにすぎない.しかしその大部分は,胃壁となんらかの関係を有する症例である.最近われわれは,本来の胃と離れた部位にあり,胆管と交通を有する極めて稀な重複胃の1例を経験したので本邦集計33例の検討を合わせて若干の文献的考察を加えて報告する.

--------------------

雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.77 - P.77

SURGERY—Contents, December 1980 Vol.88, No.6 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にフアツクスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?