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特集 膵炎診療のControversy 鑑別診断をめぐる問題点
Q & A
著者: 中沢三郎1
所属機関: 1名古屋大学医学部第2内科
ページ範囲:P.1523 - P.1527
文献購入ページに移動 Q.急性膵炎の確定診断はいかにして下せるか? 急性膵炎は上腹部激痛,発熱,嘔吐などを訴えて来院することが多く,その診断は比較的容易であるが実際には腹膜炎,胆嚢炎,虫垂炎や心筋梗塞などと誤認されることもあり鑑別は時に難渋する.しかも,一刻を争つて治療を開始せねばならない重篤な症例が多いことから本症の確診は急を要する.本症の診断に必須なのは短時間に実施される血清アミラーゼの測定である.アミラーゼは膵炎による実質障害や膵管閉塞が起こると門脈系およびリンパ管を通じて血流中に出現する.膵炎発生後,2〜3時間で血清アミラーゼは上昇し始めるが3〜4日で正常化し,これに代わつて尿中にアミラーゼが出現し,しかも長期にわたつて異常高値が持続する.また白血球数,血沈,CRPなどとも相関するので経過観察にも利用される.尿中単位時間排泄量測定が信頼性があり筆者らは一週間連続法を行なてついる.しかし,アミラーゼの上昇は病状の程度と一致しないことがあり,また,膵癌,胃穿孔,腸閉塞,子宮外妊娠破裂,肝炎,巨大アミラーゼ血症さらには多飲時にも上昇することがあるので各々の鑑別を必要とするが具体的には他書を参考にされたい.また重篤な場合には却つて低下することもあるのでやはり,一般臨床症状や血液生化学的検査,ECG,胸腹部X線撮影などの諸検査成績を参考にすべきである.以上,血清や尿アミラーゼは急性膵炎の特異的診断法ではないがスクリーニング,経過観察の判断には有用である.
腎障害時にはアミラーゼ排泄も不良となり血清で高値を尿中で低値を示すことがあるが,血液,尿と腎との関連を表わしたのがACCRである.正常値は2〜3%で急性膵炎になると5〜6%にも上昇するので高アミラーゼ血症の鑑別に応用される.自験例100例の検討では明らかに臨床症状からも膵炎発作と考えた5例では4.9〜6.4%と異常高値を呈したが,軽症と考えられた膵炎例では3%前後が多い.また,胃潰瘍例,肝障害例でも2.5〜6.9%,1.6〜7.1%と異常値を示す例もあり,やはり本法のみでは急性膵炎の確診が得られない.
腎障害時にはアミラーゼ排泄も不良となり血清で高値を尿中で低値を示すことがあるが,血液,尿と腎との関連を表わしたのがACCRである.正常値は2〜3%で急性膵炎になると5〜6%にも上昇するので高アミラーゼ血症の鑑別に応用される.自験例100例の検討では明らかに臨床症状からも膵炎発作と考えた5例では4.9〜6.4%と異常高値を呈したが,軽症と考えられた膵炎例では3%前後が多い.また,胃潰瘍例,肝障害例でも2.5〜6.9%,1.6〜7.1%と異常値を示す例もあり,やはり本法のみでは急性膵炎の確診が得られない.
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