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文献詳細

雑誌文献

臨床外科36巻10号

1981年10月発行

文献概要

特集 膵炎診療のControversy 慢性膵炎の手術適応と術式の選択

Q & A

著者: 佐藤寿雄1

所属機関: 1東北大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1577 - P.1582

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Q.手術のタイミングは?
 慢性膵炎の手術適応に関する諸家の見解は,内科的治療の無効なもの,および種々の合併症を有するものということに要約される.内科的治療の無効なものにはじまり,腫瘤や嚢胞形成のみられるもの,黄疸や胆道疾患を合併するもの,膵管閉塞および癌が疑われる場合などのほか上部消化管出血,重症糖尿病,脾静脈の狭窄,十二指腸狭窄あるいは前回手術の失敗例などがあげられている.著者らは,(1)疼痛が著しく内科的治療の無効なもの,(2)膵嚢胞,膵膿瘍や膵瘻を合併するもの,(3)胆管狭窄や胆道疾患を伴うもの,および(4)膵癌合併あるいはその疑いがあるもの,を手術適応と考えている.
 一方,内科的治療との関連,すなわち手術の時期が問題となる.外科の立場では形態学的,機能的に障害の少ないものでは手術後に膵機能の改善がみられるものがあることから,早期の手術を主張するものが多い.しかし内科側の見解としては,疼痛が消失,軽快したり,終始無痛のものは約80%にみられることから,合併症のない慢性膵炎のほぼ80%は内科的管理が可能であり,早期に発見して適切な治療を行なえば膵炎の進展を阻止することが可能であるとの報告もある.外科側のいう早期とは膵管の拡張も高度でなく,機能障害も軽度のものと考えたいが,内科側ではこの段階では内科的管理が可能であるという.内科的治療の限界をどの時点に求めるかは極めてむずかしい問題であるが,現在の段階では内科的治療の無効なものを手術適応の一つとして提示している以上,ある程度進展したものを対象とせざるを得まい.著者は頑固な疼痛が反復し,体重が減少しはじめた場合には,糖尿病や石灰化がみられる以前に外科的治療の対象とすべきものと考えている.但し,この場合,膵管が拡張しているという前提がある.しからば膵管の拡張がみられない場合にはどうするか.このような場合,左内臓神経切除術兼腹腔神経節切除術を行なつて疼痛を寛解させ,膵管の拡張を待つとするものもいるが,著者も内科的管理のもとに膵管が拡張するまで手術を延期した方がよいと考えている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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