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特集 迷切後の諸問題 術後の愁訴および障害
ダンピング症候群
著者: 池内準次1 秋元博1 青木照明1 山口吉康1 長尾房大1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学第2外科
ページ範囲:P.1709 - P.1714
文献購入ページに移動胃手術後(切除術)の術後愁訴のうちの大きな問題点の1つにダンピング症候群がある.本症候群は原疾患が悪性疾患のときは余り大きな問題とはされていない.しかし,良性疾患として,消化性潰瘍のごとき場合の本症候群の発現は,術後愁訴として大きくとりあげられる.これらの考え方は原疾患よりみて当然といえよう.
良性疾患,消化性潰瘍の術式の選択の規準として,術後の死亡率,潰瘍再発の問題,術後愁訴など総合的に判断して,術式を求めるべきことは極めて当然である.少なくとも本邦においては胃潰瘍の場合の術式は,幽門側胃部分切除術(広範囲切除術)が標準的なものとされている.しかし,十二指腸潰瘍においては,胃切除術か迷走神経切離術か,いずれがbetterか論議が多い.ここで両術式の優劣を論ずる必要もないが,十二指腸潰瘍において,迷切術式が胃切除術より優るという論拠は,胃分泌機構の動態,消化管ホルモンの研究よりみて,酸分泌抑制作用が,胃切除術より生理学的に理論的であるという考え方から成り立つているようである.また迷切術は胃切除術より術後障害の面でも,とくにダンピングの発生頻度が低いという利点が迷切術支持者から強調されている.
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