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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科36巻12号

1981年12月発行

雑誌目次

特集 インスリン併用の高カロリー栄養法

糖尿病合併患者の高カロリー輸液

著者: 田村洋一郎 ,   遠藤昌夫 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1837 - P.1844

はじめに
 脂肪乳剤を主熱源とする末梢静脈栄養法1)が欧州を中心に開発されてから約20年,またDudrickらの報告2)を起点として中心静脈栄養法が普及して以来14年が経過し,その間完全静脈栄養Total Parénteral Nutrition(TPN)は臨床治療上定着した.同時に外科領域では高齢者を扱う機会が増え,その中に占める成人型糖尿病患者の症例が増加し,術前術後管理の向上にともない糖尿病患者における手術適応も拡大されてきた.以上のような背景から近年糖尿病を有する外科患者のTPN症例が増加してきている.本稿では糖尿病患者のTPN管理についてわれわれの教室の成績を中心にその実際について報告する.

術直後のインスリン投与と高カロリー栄養法

著者: 丸山明則 ,   松原要一 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.1845 - P.1850

はじめに
 消化器外科領域において高カロリー輸液(以下IVH)は多岐の目的で施行されているが,中でも胸部食道癌根治術,胃全摘,膵頭十二指腸切除術などmajor surgeryの術後の積極的な栄養補給を目的として施行される場合が多い1).しかしこれらの症例のIVH施行時には高血糖と尿糖排泄のみられることが少なくなく,特に膵頭十二指腸切除術(以下PD)や胃全摘膵体尾部・脾合併切除術(以下PST)では,インスリンの投与を必要とする症例がしばしばみられる.
 著者らは最近4年間に術後IVHを施行したPD,PST,胸部食道癌根治術,単純胃全摘の症例で,術式別にIVH施行中の耐糖能と,耐糖能へ影響を及ぼす要因について検討してきた2).本稿ではこの自験例をもとに,術直後のIVH施行法とインスリン投与法について,術後に耐糖能の低下がしばしば認められるPDとPST症例を中心に述べたいと思う.

膵切除後のインスリン投与と高カロリー栄養法

著者: 碓井貞仁 ,   小越章平 ,   山崎一馬 ,   佐藤博

ページ範囲:P.1853 - P.1858

はじめに
 近年,エコー,CTスキャン,血管造影など診断法の著しい進歩により肝胆膵疾患の正確な術前診断が可能となり,門脈,上腸間動脈の再建を含む拡大手術が積極的に施行されるようになつた.一方,診断法,手術手技のみでなく,高カロリー輸液法(IVH),成分栄養法(ED)の導入による術前術後管理の進歩が肝胆膵外科領域の治療成績向上に大きな役割りを果していることはいうまでもなく,とくにIVHは単なる栄養法の枠を越えて一種の治療法となつており,IVHなしに肝胆膵の外科を考えることは出来ないといつても過言ではない.
 膵切除術式には膵頭十二指腸切除術,膵体尾部切除術および膵全摘術があるが,いずれの術式にせよ術後はIVHで管理することがきわめて多い.膵切除後のIVHといえども必ずインスリンを必要とするとは限らないがインスリンを必要とする例は比較的多く,とくに糖尿病合併例,耐糖能低下例,膵大量切除例,膵全摘例においてはインスリン併用による血糖調節,合併症対策など厳密な術後管理が要求される7,8,10,11,15,17)

肝切除後のインスリン投与と高カロリー栄養法

著者: 玉置久雄 ,   横井一 ,   水本龍二

ページ範囲:P.1859 - P.1864

はじめに
 肝は生体内で最大の実質臓器であり,生命に必需の物質の生合成,解毒,造血,血液凝固に関与し,循環系,網内系機能においても重要な位置を占めており,多大の機能的予備力と旺盛な再生能を備えた臓器として知られている.
 肝切除の対象となる症例には病巣以外の肝が正常なものから,黄疸や慢性肝炎,肝硬変等の肝障害を合併するものまであり,特に主たる対象である原発性肝癌では高率に肝硬変の合併がみられ外科的治療に大きな制約を与えている.術後の残存肝機能の障害は肝不全を招来して予後を不良とするため,教室では術前一般血液生化学的検査の他にICG・Rmax,hepaplastin test や lipid emul—sion testを行なつて肝予備力や網内系機能を測定し適切な術式の選択につとめている1)

がん患者におけるインスリン投与と高カロリー栄養法

著者: 中西幸造 ,   多幾山渉 ,   野宗義博 ,   峠哲哉 ,   服部孝雄

ページ範囲:P.1865 - P.1871

はじめに
 経中心静脈高カロリー輸液(Total Parénteral Nutrition以下TPNと略す)は1967年,Dudrick1)の報告以後,急速に進歩し普及してきている.またTPNをがん患者に積極的に導入することもSchwartzら2)にはじまり,本邦でも小野寺3),岡田ら4)により試みられ,数々の利点が報告されている.がん患者に対するTPNの適応は一般に,
 (1)術前の栄養状態の改善及び管理
 (2)術後の栄養補給,合併症対策
 (3)進行がん症例に対するがん化学療法との併用・副作用対策及び栄養管理
があげられる.われわれは1978年1月以来,TPNを積極的にがん患者に導入し,年々TPN症例の増加を経験し,その有効性を臨床的に認めている5).今回,われわれの行なつているTPNを中心にして,がん患者におけるインスリン投与と高カロリー輸液法についてのべる.

術後感染症におけるインスリン投与と高カロリー栄養法

著者: 谷村弘 ,   小林展章 ,   日笠頼則

ページ範囲:P.1873 - P.1878

はじめに
 高カロリー輸液では,熱源として大量のグルコースを高濃度で静脈内投与を行なうのであるが,術前の耐糖能に異常がなければ,大抵の場合,術後にインスリンの併用は必要としない.しかし,術後ひとたび感染症を合併した場合には,創傷治癒のためにインスリンの消費量が増加し,さらには内因性インスリンの分泌も抑制されて,耐糖能が低下し,しばしばインスリン併用を要することになる.最近われわれが経験した術後高カロリー輸液施行症例のうち,術後感染症発症に伴い大量のインスリン併用を要し,しかもその改善とともにインスリンを要しなくなつた症例を中心に,インスリン併用高カロリー輸液施行症例における問題点について考えてみたい.

グラフ Conference 総合画像診断のすすめ方・11

腹部外傷

著者: 佐藤豊 ,   芦田浩

ページ範囲:P.1827 - P.1835

 症例1 18歳,男.オートバイにて転倒事故を起こし,腹部を打撲した.受傷直後は左上腹部に限局した痛みがあつたが,約2時間後には腹部全体に拡がり,またBlumberg徴候も出現したため,本院救命センターに来院した.血液検査ではWBCが32×103と上昇している以外,Hb,Ht等は正常範囲であつた.

クリニカル・カンファレンス

インスリン併用の高カロリー栄養法をどうするか

著者: 豊田統夫 ,   板倉丈夫 ,   藤田秀春 ,   大熊利忠 ,   小越章平

ページ範囲:P.1880 - P.1894

 TPN や EDの開発と普及は,術前・術後の患者管理の概念を大きく変え,poor risk症例の手術適応の拡大を容易にした.
 一番の恩恵を蒙つたのは勿論患者さんであるが,手術適応の拡大によつて思わぬ合併症も生じ,さらにきめの細かい対応が要求されるようにもなつた.

わが教室自慢の手術器具・24

新製品としての持針器と肛門鏡

著者: 小金澤滋 ,   荒川広太郎

ページ範囲:P.1896 - P.1897

 外科医である限り,少しでもよい手術が出来るならば,それが外科医の幸福というものであろう.それならば,少しでもより便利で,使い易く,使つていて楽しくなるような器械で手術したいものである.診断用器械についても同様である.
 今回そのような発想から得られた新製品を紹介する.

外科医の工夫

良・悪性胆管閉塞ならびに狭窄に対するendoprosthesisの試み

著者: 山川達郎 ,   大石信美

ページ範囲:P.1901 - P.1904

はじめに
 手術不能胆管癌に対するendoprosthesisは,殊にヨーロッパにおいて盛んに行なわれているが1-3),狭窄部に留置されるtubeの閉塞や逸脱など各種の合併症が問題となつている3)
 著者らは,切除不能悪性腫瘍による閉塞性黄疸患者や,胆道鏡検査を繰り返し行なわなければならない肝内結石症の患者などが,常に外胆汁瘻と胆汁貯溜用バッグをもつて生活しなければならない制約に着目し,特殊なendoprosthesis用tubeをオリンパス光学株式会社の協力を得て作製し臨床に応用している.この小論文は,このtubeの紹介をかね,その臨床経験につき報告するものである.

臨床研究

乳腺原発悪性リンパ腫の1例と予後に関する文献的考察

著者: 小坂健夫 ,   広野禎介 ,   石黒信彦 ,   高柳尹立 ,   野口昌邦 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1905 - P.1912

はじめに
 乳腺原発の悪性腫瘍のうち肉腫の占める割合は約1%と言われ,なかでも悪性リンパ腫となると稀である.最近われわれは,乳腺に原発したリンパ肉腫の1例を経験したので報告し,本邦例を集計し,予後を左右する因子と治療法について文献的考察を行なつた.

感染症に合併するMultiple Organ Failure

著者: 後藤平明 ,   岩井顕 ,   大熊利忠

ページ範囲:P.1913 - P.1916

はじめに
 外傷や大きな手術を契機として,しばしば肺,肝,腎,上部消化管などの複数の臓器の機能不全がおこる.このような複合の臓器の機能不全が患者の予後を左右する重要な病態であるとしてMultiple Organ Failureと呼ばれ,最近注目されている.
 今回,われわれは当教室における感染症患者に合併したMultiple Organ Failure(以下MOFと略す)の臨床上の問題点について,若干の考察を加えて検討したので報告する.

臨床報告

子宮癌の放射線治療後に発生した直腸癌の1例

著者: 宮野陽介 ,   川角博規 ,   万木英一 ,   岡本恒之 ,   木村修 ,   西土井英昭 ,   田村英明 ,   貝原信明

ページ範囲:P.1917 - P.1919

はじめに
 近年,子宮癌に対する放射線療法は著しく進歩し,その成績も向上している.この放射線療法の副作用として,よく知られているのは放射線直腸炎であるが,長期観察により放射線照射野に第2癌が発生する事も知られている.従つて,子宮癌の長期生存例が増加するに従つて,これが問題になつて来るものと思われる.われわれは,子宮癌放射線治療後18年経過して発生した直腸癌の1治験例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

放射線治療後に発生した頸部食道癌の1例

著者: 小林建仁 ,   杉原英男 ,   三田三郎 ,   日比道昭 ,   北村宏 ,   内田晃亘 ,   二村雄次 ,   弥政洋太郎 ,   服部龍夫 ,   高勝義

ページ範囲:P.1921 - P.1924

はじめに
 放射線治療後の発癌は重要な問題であり,古くは医用放射線被曝による皮膚癌,白血病がある.その後頭頸部の良性疾患に対する放射線治療後に発癌した例が報告されるようになり,最近では放射線治療の進歩に伴い悪性腫瘍治療後に発癌した例も報告されている.今回われわれは,頸部結核性リンパ節炎に対して放射線照射を受け,51年後に発生した頸部食道癌の1例を経験したので報告する.

胆管内ドレナージと放射線療法にて9年間生存した肝門部胆管癌の1例

著者: 高橋寿久 ,   斎藤慶一 ,   若林利重

ページ範囲:P.1925 - P.1929

はじめに
 胆管癌のうちで,肝門部胆管癌は,外科的治療が最も困難なものであるが,最近では経皮的胆道造影(PTC)1),内視鏡的胆管造影(ERC)2),その他形態学的検査法3,4)の進歩により診断が容易になり,積極的に根治手術がおこなわれるようになつた5-7).しかしながら,本症は黄疸が増強してから発見されることが多く,その時期には癌が進行していて周囲への浸潤,あるいは遠隔転移により,切除不能となる例もきわめて多い.このような例には,試験開腹,肝内胆管ドレナージ,経皮的胆管ドレナージ8)などの姑息的手術となつてしまう場合が多い.進行の早い癌が多いが,一方ではKlatskin9)や他の報告者が述べているごとく,いわゆるslow growingの癌もある.われわれも肝門部胆管癌で,胆管内ドレナージと放射線療法にて9年間生存した1例を経験したので,slow growingの肝門部胆管癌として,貴重な症例と考え,若干の文献的考察を加えて報告する.

胃出血性潰瘍を続発した特発性胆嚢穿孔の1例

著者: 小林進 ,   小沢弘侑 ,   鈴木昭一 ,   唐司則元 ,   谷田健郎

ページ範囲:P.1931 - P.1935

はじめに
 胆嚢穿孔は,ほとんど,胆石症胆嚢炎を原因として発症し,原因不明の特発性胆嚢穿孔の報告例は非常に少ない.今回,われわれは,結石がなく,細菌も検出されず,さらに,術後9日目に,胃出血性潰瘍を続発した特発性胆嚢穿孔の一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1895 - P.1895

SURGERY—Contents, November 1981 Vol.90, No.5 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,堤供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は,施設\22,100,個人\15,600です。雑誌は,ST. LouisのMosby社より,直送いたします。

「臨床外科」第36巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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