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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科36巻2号

1981年02月発行

雑誌目次

特集 胃癌のAdjuvant Chemotherapy

局所化学療法:進行胃癌の動脈内注入化学療法

著者: 中野陽典

ページ範囲:P.205 - P.211

はじめに
 制癌剤の動脈内投与は,限局した悪性腫瘍の局所療法の一つとして頻用されている.その狙いとするところは薬剤注入領域の薬剤濃度を高めることと,同時に全身への薬剤の分布を減ずることにある.言いかえれば注入領域での薬剤の抗腫瘍効果を高めることと,全身での副作用を減少せしめることを狙つている.
 進行消化器癌では,原発性,転移性を問わず肝癌の治療に本治療法がすぐれた効果をあげている1-5)

局所化学療法:胃癌の腹膜播種に対する制癌剤腹腔内投与

著者: 中島聰總 ,   小鍛治明照 ,   野浪敏明 ,   梶谷鐶

ページ範囲:P.213 - P.219

はじめに
 胃癌が原発巣から周辺に向つて進展していく経路として直接浸潤,リンパ行性転移,血行性転移および腹腔内播種の4つを挙げることができる.前二者はある程度まで手術的に切除が可能であるが,後二者は一般に手術の対象となることが少ない.胃癌の非治癒手術の理由として腹膜播種の頻度が最も高いのは周知の事実である.また肉眼的に治癒手術とされた場合でも,腹腔中遊離癌細胞は13〜16%にみとめられ,腹膜再発の原因をなしている1,2).こうした遊離癌細胞は高い生物活性を有し3),また細胞診陽性症例は陰性症例に比し明らかに予後が不良であり4),治療上特別な配慮が払われる必要がある.このような腹膜播種のある症例あるいは潜在的前段階にある症例に対して如何なる治療方針でのぞむべきであろうか.
 まず腹膜播種のある症例で胃切除を施行すべきか否かが問題となるが,未だ意見の一致を見るに到つていない.著者らは技術的に可能であるなら,reduction surgeryとしての胃切除の意義はあると考えているが,この点については別稿にゆずることとする.

3つのprospective controlled study

その1

著者: 今永一 ,   中里博昭

ページ範囲:P.175 - P.183

はじめに
 胃癌のadjuvant chemotherapyにおける確率化比較対照試験(randomized controlled trial)は1957年アメリカのMoore1)およびHiggins2)が多施設による協同研究を実施したのが最初である.それらの研究とあい前後して,わが国においてもこの問題が厚生省がん研究の一課題としてとり挙げられ,国立病院グループによる小山班と,全国主要大学および専門病院グループからなる今永班の2大研究班が結成され,年余にわたる研究が続けられている.これらのグループにおける詳細な研究成績に関しては逐年的に報告されているので3-8),それらの文献を参考にされたい.
 これらの研究を契機として,近年,prospective randomized controlled clinical trialsは欧米をはじめわが国でも多数実施されるようになり,最近では世界の各国における癌治療プロトコール総括集(724頁におよぶ)も毎年編集されている9).本稿ではまずこのような前向きの臨床試験が何故必要とされたか,そしてその研究の狙いについて述べ,ついで今永班で検討された4つの確率化比較対照試験から導かれた胃癌治癒切除後のadjuvant chemotherapyの効果について評価する.さらに,このように長期化せざるをえなく,かつ中途打ち切りデータの付き纒う臨床試験の効果判定の問題点とその対策について言及する.

その2

著者: 木村正 ,   小山善之

ページ範囲:P.185 - P.195

はじめに
 胃癌の手術成績を向上させるために,手術に抗癌剤治療を併用する試みは昭和20年代から行なわれていたが,症例数の不足や薬剤投与法の不一致などから正確な評価が出来なかつた.そこで多数の施設が参加したrandomized therapeutic trialの試みが米国では1957年G. E. Moore1)のグループなどで開始され,わが国でも厚生省の熱心な援助によつて昭和34年7月(1959年)に国立病院癌化学療法共同研究班が結成され,治療研究を開始した.この共同研究班ははじめ胃癌,肺癌,乳癌,子宮癌,造血器腫瘍の委員会から成り,胃癌委員会には仙台,千葉,東京第一(現医療センター),東京第二,名古屋,金沢,京都,大阪,福岡中央の9国立病院が参加した.爾来2年2カ月ないし3年2ヵ月を1研究単位としてプロトコールを改めつつ継続し,札幌,栃木,大蔵,相模原,甲府,泉北,岡山,呉,岩国,浜田,松山,長崎中央の各国立病院および国立がんセンターの参加を得て,現在は第8次研究を20施設で行なつている.本共同研究は抗癌剤を全く投与しない対照群または既に評価された効果既知の対照群(第8次研究)と新しい薬剤またはそれらの併用療法との比較を行なうPhaseⅢstudyである.第7次研究までに集積された症例は3,352例で,mitomycin C(MMC)と5-FUが良い効果をあげている.

その3

著者: 井口潔 ,   玉田隆一郎

ページ範囲:P.197 - P.204

はじめに
 近年,胃癌手術の治療成績は,その手術手技の向上とともに進歩の跡がみられるが,さらに一段の向上をもたらすための補助化学療法に関しては,遠隔成績で論ずる立場で,万人に推奨できる方法が把み得ているとは言い難い現状にある.胃癌手術の補助化学療法研究会では,この立場から多数施設の共同研究体制を組織し,胃癌手術に対する評価を行なつてきた.第一次研究は,厚生省今永班の研究により,すでに有効性と安全性が確かめられたマイトマイシン(MMC)をactive controlにおきFutraful(N1-(2'-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil)による維持療法の有効性を検討することを目的に,1975年5月から全国研究を開始し,1976年7月に開封,この15ヵ月間の集積症例2,834例について解析を行ない,現在4年遠隔成績を観る時期となつている.

座談会

胃癌の術後化学療法—私はこうしている

著者: 中島聰總 ,   新本稔 ,   粟根康行 ,   近藤達平

ページ範囲:P.220 - P.229

 近藤(司会) 今日はお忙しいところお集まりいただきまして,まことにありがとうございました.今日の座談会のテーマですが,「胃癌の術後化学療法—私はこうしている」ということで,日ごろ先生方が実際にやつておられる術後の化学療法につきまして,practicalな面から話し合つていただこうというわけで,お集まり願つたわけでございます.
 今日のテーマは術後化学療法でございますが,最近,癌の集学的治療ということが盛んにいわれまして,これはいろいろな手段を駆使して相互に補い合いながら効果を上げるというのがこの趣旨でありましようが,そのはしりがこの胃癌のadjuvant chemotherapyではないかと思うんです.

グラフ Conference 総合画像診断のすすめ方・2

黄疸—膵癌

著者: 徳田政道 ,   佐藤豊

ページ範囲:P.169 - P.174

 〔症例〕74歳,女性.生来健康であつたが,約1週間前より家族に黄疸を指摘されて,入院した.腹部所見で,肋骨下縁に肝を二横指触知する.主な検査所見としては総ビリルビン値14.7 mg/dl,直接ビリルビン11.5 mg/dl,SGOT 95 mU/ml,SGPT 112 mU/ml,血清アミラーゼ212 SUであつた.

わが教室自慢の手術器具・15

肝内結石截石器具

著者: 日笠頼則

ページ範囲:P.234 - P.235

 肝内結石症は,現在のところその成因が解明されておらず,また治療法も確立されていないといつても過言ではなく,その治療に困難を感ずることがしばしばである.肝内に充満するような胆石を術中に全て摘出することは不可能に近く,この問題に対して各施設より種々の手術術式が報告されている.われわれは,この肝内結石症に対して,術中の截石は1時間以内に止め,肝管空腸吻合(端側)術兼外瘻術を行ない,この外瘻孔を利用して術後に截石する方針をとつており,肝切除等の侵襲を加えることはできるだけ避けている.このわれわれの方法によれば,肝内胆管に狭窄を持ち,その末梢が拡張した型の肝内結石症に対しても,容易に截石が行ないうる.その方法とわれわれが使用している器具及び考案した器具を説明する.

Spot

生存率をめぐる問題点—取扱い方,計算法,検定法

著者: 中島聰總

ページ範囲:P.237 - P.243

はじめに
 生存率を指標とした治療効果の判定はごく日常的な研究手段であるが,二つ以上の治療方法の優劣を生存率から判定しようとする場合には患者の背景要因,censored caseの取扱い方,除外症例の取扱い方,および有意差検定の方法など,かなりの問題点がある.ここでは生存率による効果判定をめぐる問題点について概略を述べ,ご参考に供したい.

臨床研究

肝門部胆管癌切除例の検討

著者: 川原田嘉文 ,   水本龍二

ページ範囲:P.245 - P.250

はじめに
 肝外胆管癌は一般に下部胆管に発生する頻度が多いと報告されているが,最近percutaneous transhepatic cholangiography(PTC)やendoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)の普及により,閉塞性黄疸の診断が容易になり,さらにPTC drainage(PTCD)により予め黄疸を軽減し,術前状態を改善せしめて積極的に肝門部や上部胆管癌に対しても手術が行なわれるようになつており,摘除成功例の報告も増加している.
 われわれは過去3年半に肝門部胆管癌7例を手術し(表1),うち肝切除合併を含めて4例(57%)の切除に成功しており,肝管空腸吻合により再建しているのでこれらの症例を紹介し,あわせて肝外胆管癌の占拠部位からみた分類とその治療法について検討した.

胃蜂窩織炎—症例報告と本邦報告例の分析

著者: 丸野要 ,   上田和毅 ,   梅北信孝 ,   笹子三津留 ,   山岡郁雄 ,   松峯敬夫 ,   佐々木仁也

ページ範囲:P.253 - P.256

はじめに
 胃蜂窩織炎は比較的稀な疾患で,本邦では1911年,多田の報告1)以来,1978年までに77例の報告2-7)がある.最近われわれは本症の1例を経験したので,その概要を報告するとともに,本邦症例に関し若干の検討を加える.

臨床報告

食道と甲状腺の重複癌の2例

著者: 吉中平次 ,   末永豊邦 ,   田辺元 ,   馬場政道 ,   門松民夫 ,   福元俊孝 ,   四本紘一 ,   松野正宏 ,   八木俊一 ,   加治佐隆 ,   西満正

ページ範囲:P.257 - P.262

はじめに
 近年,癌に対する診断技術および治療成績の向上に伴い,重複癌に関する報告が増加している.しかし,食道と甲状腺の重複癌の報告は未だ少なく,文献的には過去4例を認めるに過ぎない.今回,食道,甲状腺の重複癌2例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

胆嚢癌を合併した先天性胆管拡張症の1例

著者: 広瀬和郎 ,   米村豊 ,   ソンディバンバング ,   島弘三 ,   北村徳治

ページ範囲:P.263 - P.266

はじめに
 先天性胆管拡張症と胆管癌の合併例については,既に50例を越す報告があるが,胆嚢癌合併例の報告は極めて少ない.われわれは,最近,膵管胆道合流異常を伴なう先天性胆管拡張症に胆嚢癌を合併した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腸回転異常を伴つた先天性不完全幽門膜様閉鎖症の1例

著者: 大崎俊英 ,   細羽俊男 ,   香川茂雄 ,   高倉範尚 ,   石川純 ,   成末允勇 ,   坂本昌士 ,   田中早苗 ,   林洋光 ,   岡崎富男 ,   松本靖代 ,   大朏祐治

ページ範囲:P.267 - P.270

はじめに
 先天性腸閉鎖症は,小児外科,ことに新生児外科の発達した今日では,さほど珍しいものではないが,幽門閉鎖症の発生は極めて稀である.われわれは腸回転異常を伴つた幽門膜様閉鎖症の1例を経験したので,本邦報告11例に自験例を加えて検討し報告する.

形質細胞乳腺炎の1例

著者: 野口昌邦 ,   木下元 ,   片山寛治 ,   木南義男 ,   宮崎逸夫 ,   松原藤継

ページ範囲:P.271 - P.274

はじめに
 形質細胞乳腺炎は,1931年,Cheatle & Cutler1)によつて初めて記載され,その後Adair2)がその概念を確立した疾患であるが,本邦では1952年,著者の一人である松原3)が報告して以来,1972年の渡辺ら4)の集計で14例を数えるにすぎず,比較的まれな乳腺疾患である.
 本症は,臨床的に急性期には他の乳腺炎と異ならないが,慢性期になると乳癌に類似し誤診されることがあり,病理学的には他の慢性乳腺炎と比較して多数の形質細胞が浸潤し,乳管上皮細胞の増殖,異物巨細胞の出現をみるのが特徴である.

線維腺腫内に発生した乳癌の1例

著者: 矢永勝彦 ,   上尾裕昭 ,   杉町圭蔵 ,   井口潔 ,   豊島里志 ,   遠城寺宗知

ページ範囲:P.275 - P.278

はじめに
 乳腺の線維腺腫は若年女性に好発し,触診で特徴的な硬度を示すために診断が比較的容易な良性腫瘍であるが,極めてまれにこの中に乳癌が発生することがある.最近,われわれはかかる1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.233 - P.233

SURGERY—Contents, Januany 1981 Vol.89, No.1 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は,施設\22,100,個人\15,600です。雑誌は,ST. LouisのMosby社より,直送いたします。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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