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文献詳細

雑誌文献

臨床外科36巻3号

1981年03月発行

文献概要

特集 晩期癌患者のcare

免疫化学療法に対する考方

著者: 服部孝雄1 新本稔1 峠哲哉1 柳川悦朗1 折出光敏1 西廻和春1

所属機関: 1広島大学原爆放射能医学研究所外科

ページ範囲:P.313 - P.318

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はじめに
--晩期癌患者に免疫療法の適応があるのか--
 晩期癌患者の免疫化学療法に対する考え方というテーマを与えられて,まず頭に思いつくことは,晩期癌患者に果して免疫療法の適応があるのかという基本的な問題であろう.あるレベル以上の免疫能が患者に残されていることが,免疫療法の対象となるための前提条件であることは論をまたない.ツ反応陽性者の方が,陰性者に比べて免疫療法に高率に反応することは広く知られている事実である.そして,恐らく晩期癌患者(この定義にも問題はあるが)という言葉のニュアンスからすると,大部分の患者ではッ反応は陰性と思われる.従つて晩期癌患者には免疫療法の適応がないという考えも,あながち間違いとはいえない.しかしこの考えをおしすすめると,制癌化学療法も恐らく効果を期待することがむつかしく,何をやつても駄目ということで,治療の対象にならないという,弱者切捨ての考え方にもつながりかねない.実際にはツ反応が陰性の者でも時に免疫療法あるいは制癌化学療法が劇的に奏効することが経験されているので,簡単に治療をあきらめるわけにはいかない.一般論としては,たしかに晩期癌患者の免疫能は著しく低下しているので,このような患者を対象にして上段にふりかぶつた強力な制癌化学療法のinductionは,好ましくないといえよう.むしろ非特異的な免疫賦活剤でじつくりと患者の免疫能の改善をはかりながら,時期をみて時にはゆるやかに,あるいはときにはやや強力な制癌化学療法を併用していくような考え方が,基本的に要求されるであろう.こう考えて見ると,晩期癌患者にこそ,免疫賦活剤による免疫療法がfirst choiceとして考えられるべきであるともいえそうである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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