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文献詳細

雑誌文献

臨床外科36巻3号

1981年03月発行

文献概要

特集 晩期癌患者のcare

精神的・心理的ケア

著者: 河野博臣1

所属機関: 1河野胃腸科外科医院

ページ範囲:P.345 - P.348

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はじめに
 晩期癌患者はすでに手術,化学療法,放射線療法などを行なつてきて,その効果が認められず早晩死の転機をとる患者である.すなわち治療の絶対的対象ではないのである.治療者側が患者の予後がわかつていても,患者は死に至るまで,癌であることが知らされていても,生に対する希望は捨てないものであり,科学では容認されない奇跡を望んでいるものである.癌患者に限らず,あらゆる病気を持つた患者は,生理学的・心理学的・社会学的のニードを持つた存在であり,特に癌患者に対しては,治療的配慮が必要になつてくるものである.医学は科学的処理を中心に行なうものであり,治療はそれによつて目的を達するものである,しかし,死1)を目前にした晩期癌患者はcureよりはcareを求めるものであり,人間的な配慮が必要になる.医学的技術が必要とした論理性はこの時期にはあまり効果を期待できなくなり,むしろ精神的・心理的なアプローチが効果を発するようになる.本来医学は科学的処置が中心であるので,非論理的な心理・精神的な配慮は看護がその中心的役割を果してきたと思えるのである.そこで,晩期癌患者に対するアプローチには,患者,医学,看護,家族を含めた医療チームを結成することの意味が大切になるのである.日本においては,欧米におけるような宗教的なニードに対する援助はチャプレン(病院付牧師)がやるような役割さえも期待されているのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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