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臨床報告
32年経過した外傷性浅大腿動静脈瘻の1例
著者: 中村宏1 竹下公矢1 山田武男1 岩井武尚1 畑野良待1 毛受松寿1 滝沢登一郎2
所属機関: 1東京医科歯科大学第1外科 2東京医科歯科大学中検病理
ページ範囲:P.391 - P.396
文献購入ページに移動外傷性動静脈瘻は,鋭的損傷,なかでも銃弾などによる穿通性血管外傷に合併して生じることが多いが,わが国における発生頻度は少ない1).しかしながら欧米,特に米国においては,朝鮮,ベトナム戦争を通じて血管外傷学が発展するとともに,多くの症例が集計されてきた2,3).さらに一般市民の銃砲所持が認められていることから,市内での血管損傷も多く報告されている2).にもかかわらず,長い年月を経た外傷性動静脈瘻の治療経験についての報告は多くない4-10).本邦においては,幸いなことに穿通性外傷が少ないために報告は少なく11),20年以上経過した症例は,文献上わずか4例である1).
われわれは,第二次大戦直後の1948年,不発弾破裂により右大腿部に動静脈瘻を生じたが,32年間にわたり放置されてきた症例に対し,今回,外科的治療を行なつた.術後経過は順調であるが,術式,術後の問題点を示すととも,文献的考察を加えて報告する.
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