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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科36巻5号

1981年05月発行

雑誌目次

特集 Multiple Organ Failure

Multiple Organ Failureの病態

著者: 望月英隆 ,   斉藤英昭 ,   玉熊正悦

ページ範囲:P.753 - P.758

はじめに
 重篤な外傷患者の予後を左右する因子は時代とともに変遷してきた.1930年代から1940年代前半には,外傷の急性期におけるショックそのものからの救命が最も重要な課題であつたが,循環管理の進歩によつてショックからの離脱が可能となつて以来,その後に生じた重要臓器障害が患者の最終的転帰にかかわる因子として注目され,朝鮮戦争時代には腎が,そしてヴェトナム戦争時代には肺がそれぞれ焦点となつた1,2).その後の医学の進歩によつて,このような個々の臓器障害についてはその管理維持が不十分ながらも可能となり,単発の臓器障害による死亡率が減少しつつあると言われる今日3,4),重篤な外傷患者の救命を妨げるものとして新たに注目されつつあるのは,心,肺,肝,腎,消化管,中枢神経系などの重要臓器が同時にあるいは連続的に機能障害に陥る病態である.これはmultiple organ failure2,5,6)(MOFと略す),あるいはmultiple,progressive,or sequential systems failure1,3)と呼ばれている.悪性腫瘍に対する手術が拡大の一途をたどり,また以前には行ない得なかつたような高齢者やpoor riskの患者にも手術適応が広げられつつある今日では,手術後の臓器障害発生の可能性が増加している.さらに,ICUやCCUに代表されるような近年のaggressiveな補助治療の進歩に伴つて,以前ではとうに死亡したような患者でも延命し続けることが多くなつており,こうした患者の全身状態を恩地7)は侵襲・治療相関関係病(new diseases created by an interaction between trauma and treatment)と呼んでいるが,これも一種のMOF類似の病態である.従つてMOFは外傷やショックの後だけではなく一般消化器外科領域でもしばしば遭遇される病態となり,外科医にとつてより身近でしかも重要な問題となりつつある.
 一方,Virchowの細胞病理学から発し臓器単位の発想が主流を占めた従来の病因論により,医学は近年に至るまで細分化の道を歩んできた.しかし当然のことながら,実際の生体は個々の臓器や組織がさまざまの刺激に対して反応し,互いに影響を及ぼし合いながらhomeostasisを維持しているのであり,現在臨床家が治療に苦しむ病態の多くは,MOFのような複数の組織・臓器の平衡が破綻し複雑に関連している事態である8).従つてMOFという複雑な病態は,近年急速に進んだ医学の細分化・専門化に対する警鐘と受けとめられなくもない.これらの意味において,今回MOFが本特集のテーマにとり挙げられたことは誠に時機を得たものと考えている.

Editorial

Multiple Organ Failure—概念と臨床的意義

著者: 阿部令彦

ページ範囲:P.750 - P.752

 近年,重要臓器の機能障害の病態に関する理解がすすみ,集中治療技術が進歩するとともに,重症患者の治療成績にめざましい向上がみられるようになつたが,他方,種々の精力的な治療法に反応せずに病像が進行して死亡するもののなかに,複数の臓器が同時,あるいは連続的に機能不全をおこしてくる状態があることが注目されて来ており,multiple organ failureその他いろいろな呼称で知られるようになつた.
 このような病態が関心を持たれるようになつたのは最近のことで,文献的には,Tilneyら1)が1973年に腹部大動脈瘤破裂症例の術後管理上の問題として,sequential system failureを記載したことに始まる.腹部大動脈瘤破裂の術後に急性腎不全を合併し,血液透析を要した患者では,死亡率は18例中17例と極めて高く,その死因は,腎不全の経過中に発症してくる肺,肝,心,中枢神経系,肝,消化管などの臓器の機能不全によるものであることが指摘された.

治療の実際

術後合併症としてのMultiple Organ Failure

著者: 林四郎 ,   市川英幸 ,   津久井敏郎

ページ範囲:P.759 - P.764

はじめに
 手術手技,麻酔技術の向上,術前から術後にかけての管理技術の進歩のために,poor risk患者や高齢者などに対する手術成績は飛躍的にたかまり1),また重症ショックからの離脱に成功する症例数が増してきた.しかし手術適応が拡大されたことにも関連して,術後合併症の発生はなお少なからずあり,さらにショック離脱後に,以前には問題にならなかつたような異常な病態,たとえばショック肺,ARDSなどが出現し,新しい臨床上の課題となつている.また単一臓器の合併症,機能不全に対する治療成績は向上したが,本稿の主題,multiple organ failure(多臓器機能不全,以下,MOF)という,今日なお予後不良な病態もわれわれの眼前に躍り出てきた.

外傷とMultiple Organ Failure

著者: 寒川昌明

ページ範囲:P.765 - P.772

はじめに
 MOF(Multiple Organ Failure)あるいはMSOF(Multiple System Organ Failure)は,重度外傷や大手術後の合併症として最近注目を集めている.その定義は未だ一定してはいないようであるが,ARDS(Adult Respiratory Distress Syndrome),ARF(Acute Renal Failure),Hepatic FailureおよびStress Gastrointestinal Tract Bleedingはだいたい包括されているようである.その他にCoagulopathyを含めるものもみられ,さらにはCNS(Central Nerveous System)の障害をも含む報告もみられる.
 今回は,肺,腎,肝,消化器に加え,凝固機転の障害をも含めたMultiple Organ Failure(以下,MOF)の治療の実際について書き進めてゆきたい.

熱傷とMultiple Organ Failure

著者: 難波雄哉 ,   中村孝正

ページ範囲:P.773 - P.776

はじめに
 熱傷には軽症のものから重症のものまで各段階があるが,ショックの危険がある成人で20%体表面積(小児,高齢者では10%)以上の熱傷では,受傷直後より適切な治療が十分に行なわれなかつた場合,ショックによる致命的危険にさらされることになり,たとえ,かろうじてショックを脱することができたしとても,各臓器に種々の程度の障害をのこすことになる.
 広範囲熱傷にともなう内臓器障害のほとんどは,熱傷によつてひきおこされる循環障害の結果としておこるもので,循環器系をはじめとして中枢神経,内分泌系,心臓,肺臓,腎臓,肝臓,消化器系,脾臓,膵臓,副腎など,程度の差こそあれ全身全臓器におよぶといつてよい.

ショックとMultiple Organ Failure

著者: 安藤暢敏 ,   篠沢洋太郎 ,   相川直樹 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.779 - P.784

はじめに
 ショック治療の成否は急性期循環動態の改善はもちろんのこと,ショックに続発する主要臓器の急性臓器不全,いわゆるショック臓器の治療が左右するといつても過言ではない.歴史的にも戦時医学の発達のなかからショック腎,ショック肺1)の病態が明らかにされてきた.ある臓器不全の治療中にあるいは回復期に他の重要臓器が機能不全に陥り,同時に複数の臓器不全が生じ連鎖的に多彩かつ重篤な病態を呈する多臓器不全Multiple Organ Failure(以下,MOF)が,数年前より一つのSyndrome2)としてとらえられるようになつた.単独臓器不全の管理法の開発進歩には目覚しいものがある昨今,MOFは今なおショック治療の成績向上の前に大きく立ちはだかつており,本邦でも1980年第7回日本集中治療医学会総会会長講演にもとりあげられ,その認識が高まりつつある.
 そこで消化器外科領域においてショックの後に生ずる臓器不全およびMOFに検討を加え,まずその予後を悪くしている因子を探り,それらの中より更にMOF治療に際し留意すべき要点にふれたい.

重症感染症とMultiple Organ Failure

著者: 馬場英昭 ,   野池博文 ,   斉藤徹

ページ範囲:P.785 - P.790

はじめに
 重症患者の管理技術の進歩は目ざましい.すなわち,呼吸不全,循環不全,腎不全などの個々の臓器不全は,それがかなり重症のものであつても,数日から二週間程度,単一の臓器不全にとどまつているかぎり,その治療成績は著しく向上してきた.しかし,重症患者管理中に引き続き発生して来る別の各種臓器が,次々と機能不全を来たすMultiple Organ Failure(以下,MOF)1-4)に対しては,現在のところ打つ手もなく5),死の転帰をとるものが増加している.ここでは,MOFと重症感染症との関連から,われわれの患者管理の要点につき述べる.

グラフ Conference 総合画像診断のすすめ方・4

左上腹部腫瘤

著者: 畠山信逸 ,   平敷淳子 ,   都築靖

ページ範囲:P.741 - P.747

〔症 例〕67歳,男性
〔主 訴〕悪心,倦怠感

わが教室自慢の手術器具・17

シーベル・フリック型固定摂子

著者: 辻泰邦 ,   三浦敏夫 ,   石川喜久

ページ範囲:P.794 - P.795

 近年,各領域において各種の器械・器具が考案され使用されているが,外科手術の基本手技は,組織の剥離,鉗子把持,切離,結紮または剥離,結紮,切離の繰り返し操作に基づいており,如何に簡略に手数少なくするかで手術の優劣が決まるといえる.最近普及してきた消化性潰瘍に対する迷走神経切離術は,これら基本手技のみで完了できるものの1つであるが,教室で選近迷切術の際に愛用している固定摂子を紹介する(図1).この摂子は,シーベル・フリック氏摂子を改良したもので,元来兎唇手術に把持した位置での固定を目的として用いられたものであるが,われわれは,摂子先端の間隔を1〜1.5cmの状態で固定できるように作製した.迷切においても,特別な器具を必要とするものではないが,ここに示す摂子は小彎前葉のHis角に至る剥離操作に際して,摂子の自然開大のばねを利用してトンネリングし(図1上,図2),次いで固定子を先端方向ヘスライドさせ固定した状態で,fundic branchの結紮,切離(電気メス,剥離鉗子操作)を容易にし,切断後の摂子のばねの開大による組織,血管の損傷が防止できる利点をもつ(図1上,図3,4).
 現在,長さ20,23cmの2種を試作し使用しており,摂子先端幅は固定位でそれぞれ0.9,1.3cmで,開大時間隔(剥離範囲)はおおよそ3.5cmである.

座談会

Multiple Organ Failureの対策

著者: 野本信之助 ,   望月英隆 ,   公文啓二 ,   小関一英 ,   相川直樹

ページ範囲:P.798 - P.811

 日本ではMOF(Multiple Organ Failure)の論議が最近の学会などでも少しずつされるようになつてきてはいるが,まだその言葉自体目新しい感じがする.
 しかし,外傷,熱傷あるいは一般消化器外科手術などで,いくつかの臓器が機能不全をおこし,重篤な状態になることはしばしば遭遇する.その場合,従来の単独臓器不全の治療技術でMOFを治療しているのが実状ではないだろうか.

外科医のための臨床MEの知識・1【新連載】

病室における心電図モニタの実際—きれいな心電図をとるために

著者: 小野哲章 ,   尾本良三

ページ範囲:P.813 - P.819

○本シリーズ連載にあたつて
 特に強調するまでもなく,今日の外科診療において"ME"は必須のものとなつていることはよく知られている通りである."ME"が,あまりに身近なものになつているだけに,逆にそれに対する正しい知識をうる機会は乏しいものである.例えば病室で"きれいなECG"を記録する方法を,わざわざ学ぼうとする外科レジデントはいないだろう.そんなことをしなくても,なんとかかんとかごまかしながら日常これらの業務を行なつているというのが実態であろう.また,医学部の卒前教育をみるとMEのカリキュラムがどの医大でもとり入れられているが,色々の事情から医学部2〜3年生の未だ臨床に対する知識のあまりない時期に講義を聴いたり,実習をやつている場合が多い.このような状況の下で,外科レジデントのトレーニングを開始することになる.私共は,以前より外科レジデントが臨床MEに関してもつと正確な知識を持つべきであると考えてきた.そのひとつが,以前に出した『ベッドサイドME入門=基礎技術と安全対策』の小著である.その後,色々な社会的な背景もあつて1つには医療過誤に対することなどますます臨床MEの知識は"安全"という点からもその重要性が増してきたと言える.
 さて,ここで"ME"の意味を考えておきたい.今日"ME"という言葉はきわめて広く使用されているが,医用電子(Medical Electronics)というやや狭い意味ではなく,むしろ医用工学(Medical Engi-neering)という広い意味にとつてもらつたほうが良いと筆者らは考えている."ME"は単にME機器を指すのみでなく,広くME技術をも指すと考えたい.

手術手技

閉塞性動脈硬化症に対する血栓内膜摘除術について—主として大腿膝窩動脈領域の経験

著者: 花上仁 ,   永井研治 ,   杉本辰雄 ,   坂野哲哉 ,   北山太朗 ,   瀬戸明 ,   野本信之助 ,   吉崎聰

ページ範囲:P.821 - P.825

はじめに
 わが国においても,社会の高齢化,食生活の西欧化がすすむにつれ,動脈硬化症の増加がいちじるしい.それに伴ない,末梢血管外科においてもBuerger病に対する閉塞性動脈硬化症の比率が増加して来ている.それらの治療の面では,Buerger病が非常に末梢性病変のために直達療法が奏功しないことが多いのに比し,閉塞性動脈硬化症では血栓内膜摘除術(Thrombendarteriek—tomie,以下TEA)でも,人工血管,自家静脈移植でも,直達療法が有効であるが,閉塞性動脈硬化症は患者の年齢も高く,種々の合併症を伴なう場合が多いので,外科的治療を行なうにあたつては侵襲が少なく,かつ合併症の少ない術式がのぞましい.現在そけい靭帯より中枢側の病変には,主としてTEAと人工血管移植が行なわれ,いずれもよい成績1,2)をあげているが,末梢側の大腿膝窩動脈領域の病変においては,本邦では症例があまり多くないため,どのような術式が適しているかについての定説はない3-5).しかしわれわれはなるべく生体にあるものを利用し,より生理的な血行を得ようとする立場から,数年前よりワイヤーリングストリッパーによる血栓内膜摘除術について報告して来たが6,7),今回は主として大腿膝窩動脈領域の開放的TEAおよびVollmer型Ringstripperによる半閉鎖的TEA8)の方法について述べ,併せて最長4年と観察期間は短いが,その成績についても簡単に記載する.

臨床研究

吸収性,非吸収性縫合糸の比較

著者: 岩佐博 ,   三村一夫 ,   平出星夫 ,   溝口修身 ,   加辺純雄 ,   大崎裕子

ページ範囲:P.827 - P.832

はじめに
 外科手術に縫合糸は欠くことの出来ないものである.近年縫合糸の種類も非常に増加しているが,著者らの1980年の調査では,絹糸が90%前後を占めている12).絹糸は非吸収性縫合糸の代表的なもので,ほぼ半永久的に組織内に残存している.事実著者らも,手術後十数年経つてから縫合糸膿瘍として膿瘍を形成して来た症例を経験したが,外科医としてそのような症例を経験された方は少くないと思考される.しかし,小膿瘍では抜糸により簡単に治癒するので,外科臨床では余り問題にならない.たしかに非吸収性なるが故に種々の障害が報告されており,中には再度手術をし,絹糸を抜去したとの報告もある1)
 絹糸のヒト組織中における長期間の観察をした報告は多くない.

結腸癌根治手術後患者の予後からみた術前血清ポリアミン及びCEA値の検討

著者: 高見博 ,   小平進 ,   石引久弥 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.833 - P.837

はじめに
 1965年GoldとFreedman1)によりcarcinoembryonic antsgen(CEA)の存在が報告されて以来,早くも15年の歳月がたつた.著者の一人,高見が学んだベイラー医科大学薬理学教室のLaneら2)は,「CEAの意義は腫瘍関連抗原の発見のための道を築いたことである.」と述べている如く,CEAの発見以後数多くの腫瘍マーカーが世に現われてきている.
 ポリアミンは3個以上のアミンを有する腫瘍マーカーであり,オルニチンよりオルニチン脱炭酸酵素によつて代謝されたプトレシンと,さらにS-アデノシールメチオニンにより代謝されたスパミジン,スパミンの総称である,このポリアミンはRNAの転写の活性化,DNA・RNA・蛋白の細胞内合成と密接に相関し,細胞の成長・増殖の調節機能を有している.

Littre HerniaとRichter Herni—本邦報告例についての考察

著者: 後藤明彦 ,   鬼束惇義 ,   山内一 ,   岡部功

ページ範囲:P.839 - P.843

はじめに
 腸壁の一部が嵌頓するヘルニアはまれなもので,腸壁ヘルニア,Littreヘルニア,Richterヘルニアなどと呼ばれているが,その用語にはかなりの混乱がみられる.これらのヘルニアについては欧米ではTreves(1887)1)はじめ多くの詳細な報告があるが2),本邦では木村(1943)3),Kanazawa(1972)4)の集計があるにすぎない.そこで自験例ならびに本邦報告例について検討し,LittreヘルニアとRichterヘルニアとの異同について考察を加えた.

肝外胆管癌の血管・胆管造影診断—病巣の進展度と切除適応判定を中心に

著者: 森田穣 ,   篠原正裕 ,   入江五朗 ,   柿田章 ,   佐々木英制 ,   葛西洋一

ページ範囲:P.845 - P.850

はじめに
 肝外胆管癌(以下,胆管癌と略す)の血管造影診断は,動脈造影像が乏血性変化を主体とし,腫瘍陰影像として描記されることが稀であること,胆道の支配動脈が複雑,多岐にわたることなどから直接胆道造影に比較して病巣の局在ならびに質的診断価値には疑問がもたれている.しかしながら胆管癌の進展形式は,粘膜面を這走する縦軸方向のみならず,漿膜面より周囲に拡がる横軸方向への進展もあり,このような病巣進展範囲を術前に診断することが切除可否を決定する大きな因子である.
 今回われわれは,胆管壁の分布動脈であるEpichol—edocal arterial plexus,Marginal anastomotic arteryを主体とする胆道周囲動脈,門脈の造影所見を検討し,胆管癌の発生部位別にみた動脈,門脈所見と切除可否,胆道閉塞部位と門脈間の距離による切除適応の判定を行ない,特に胆管癌の病巣進展度診断における胆道—経動脈性門脈同時造影法の有用性について考察を加えて報告する.

臨床報告

Unilateral multicystic kidneyの1例

著者: 鮫島伸二 ,   池田恵一 ,   久米一弘 ,   飯田典子

ページ範囲:P.851 - P.854

はじめに
 腎には,種々の先天性嚢胞性疾患が見られるが,その中でCongenital unilateral multicystic kidneyは,Polycystic kidneyやMultilocular cyst of the kidney等と区別されるべき独立した一つの疾患として関心が持たれている.この疾患は,以前は種々の名称で呼ばれており,その報告例も少なかつたが,1936年Schwartz1)によりこの名称がつけられて以来,報告が増加してきている.しかし,定義や病因論に於てまだ不明な点が多く残されているのが現状である.最近,われわれは本症と思われる疾患を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

先天性胆道拡張症2例の経験—膵管胆道合流異常を中心に

著者: 中島祥介 ,   中野博重 ,   仲川恵三 ,   瀬川雅数 ,   深井泰俊 ,   白鳥常男 ,   今川敦史 ,   八倉万之助

ページ範囲:P.855 - P.859

はじめに
 先天性胆道拡張症の成因には,古くから四柳説1)をはじめとして種々の説があるが,1969年,Babbit2)により膵管胆道合流異常が本症の発生に重要な意義を持つことが示されて以来,本邦においても古味3)らにより,膵管胆道系の合流異常について詳細な検討がなされており,最近では本症の100%に膵管胆道合流異常を認めるとの報告もみられる4)
 最近,著者らは膵管胆道合流異常を示す例と合流異常を認めない興味ある例との2例の先天性胆道拡張症を経験したので,膵管胆道合流異常を中心に若干の文献的考察を加えて報告する.

虫垂粘液嚢腫の重積症を合併した1例

著者: 高橋日出雄 ,   町田崇 ,   町田杲二

ページ範囲:P.861 - P.864

はじめに
 虫垂に起り得る疾患のうち,急性あるいは慢性の虫垂炎は極く一般的にみられるが,良悪性にかかわらず,虫垂に腫瘍が発生する事は非常に稀とされている.また虫垂粘液嚢腫も比較的稀な疾患で,特に重積症を併発した症例は少なく,本邦では現在まで10例内外の報告をみるにすぎない1)
 最近われわれは巨大な虫垂粘液嚢腫が盲腸に重積していた1例を経験したので報告する.

小腸原発悪性黒色腫の1例

著者: 大久保英宇 ,   遠藤正章 ,   佐藤新一 ,   山名保則 ,   伊藤隆夫 ,   村上哲之 ,   熊谷達夫

ページ範囲:P.865 - P.868

はじめに
 悪性黒色腫の原発巣は大半が皮膚で,消化管に原発することは少ないとされている.最近われわれはまれな小腸の悪性黒色腫の1例を経験したので,若干の文献考察を加え報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.793 - P.793

SURGERY—Contents, Apirl 1981 Vol.89, No.4 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は,施設\22,100,個人¥15,600です。雑誌は,ST. LouisのMosby社より,直送いたします。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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