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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科36巻8号

1981年08月発行

雑誌目次

特集 手指の外傷—初期診療の実際

新鮮外傷の創処置

著者: 吉津孝衛

ページ範囲:P.1201 - P.1212

はじめに
 第一次,第二次世界大戦における手の戦傷患者の機能回復の成績が極めて不良であることを契機にして,戦後整形外科領域の一分野として「手の外科」が急速に発達し,その治療および成績は飛躍的に発展した.さらに近年,微小外科すなわちmicrosurgeryの導入により切断肢指再接着が可能となり,またその技術を応用した組織移植が外傷後遺症,先天奇形あるいは種々の原因による神経,筋麻痺例などに行なわれるようになり,再建外科としてさらに高度な発展を遂げた.
 しかしながらその一方で,手の外傷は日常頻度が高く,かつ生命に支障を来さないためか不適切な初期治療が安易に行なわれ,既にその治療時期を逸し,如何なる治療を行なつても使用しうる手に再建し難い状態となつている患者に多数遭遇することは残念なことである.

腱損傷

著者: 伊藤恵康

ページ範囲:P.1213 - P.1220

はじめに
 腱損傷を伴なう手指の外傷を前にした時,その部位,程度により治療法の選択に迷うことがある.ここでは,腱損傷の診断と治療の実際について述べてみたい.

手指の骨折・脱臼

著者: 須藤容章

ページ範囲:P.1221 - P.1228

はじめに
 指骨の骨折や指関節の脱臼は小さな外傷として軽視される傾向にあるが,一本の指の障害は肘や肩の障害よりも大きな不自由をもたらすことがある.指一本の障害が腕全体の障害となり得るのである.指の骨折・脱臼の治療原則は先づ手全体を考え,次に指のことを考えて治療することである1).手の外科では皮膚,筋腱,神経,血管,骨・関節を取り扱うが,なかでも骨・関節は手の運動の支柱であり,初期治療では皮膚に次いで修復すべきものとなつている4).骨折・脱臼には開放性のものと閉鎖性のものとがあり,両者は全く別のものと考えて治療すべきである7)とさえ言われているが,適切な処置を行なえば開放性骨折・脱臼も閉鎖性骨折・脱臼と同様に治療をすることができる1,5)

手指の切断

著者: 奥津一郎

ページ範囲:P.1229 - P.1234

はじめに
 繊細な機能を有する手指が損傷された場合,適切な初期治療を行なつて機能障害を最小限にとどめる必要がある.この初期治療の最低限の目標は適確なdébridementによる創感染防止であり,第一線で患者を治療する医師はこのために最大限の努力をはらわなくてはならない.来院時,大部分の患者は上腕や前腕を手ぬぐいなどで緊縛し,末梢部分がチアノーゼとなつたり,あるいはかえつてうつ血させて静脈断端からの出血を増していることが多い.通常,多数指の切断または手関節部の切断で橈骨・尺骨動脈が損傷されていても,局所の圧迫止血と患部の高挙を行なえぼ致死的な出血をみることはない.したがつて余裕があれば,清浄な流水で創を洗浄し,手ぬぐいやガーゼを用いた局所の圧迫止血を行ない,手を高挙しつつ来院するように指導する.さらに現在では微小外科(マイクロサージェリー)の発達により大学病院や市中の一般病院で再接着手術が行なえるようになつた.したがつて鋭的な切断例で再接着の可能性がある場合には,完全に切断された末梢部分はビニール袋に入れ,これを密封した状態で氷(約4℃)につけ,不全切断例では血行の途絶した部分をアイスパックなどで冷却しつつ来院させるのがよい.各種条件から再接着の適応がなく,やむ得ず行なう最終的な救済処置の切断術や断端形成術は,他の方法と比べて疼痛の持続・治癒・リハビリテーション期間が短く早期の社会復帰を可能にするなどの利点があるが,身体の一部を永久的に失うという大きな欠点を有している.
 従来,一次的切断術の適応は6つの組織(皮膚,腱,血管,神経,骨,関節)のうち,3つ以上の組織が損傷され,このために特別の治療が必要な場合と考えられてきた.このような重度損傷手指の治療を行なうに当つては,損傷部の組織たとえば皮膚,腱,骨などを有効に利用し,残存部分の機能をできるかぎり引き出して有用な手指に再建するように努力することが大切である.

グラフ Conference 総合画像診断のすすめ方・7

右上腹部腫瘤

著者: 高橋美貴子 ,   平敷淳子 ,   中村卓次

ページ範囲:P.1191 - P.1198

〔症 例〕76歳,男性
〔主 訴〕特になし

座談会 手の新鮮外傷の処置

外科医のための"Do"s & "Don't"s

著者: 松井猛 ,   内西兼一郎 ,   池谷正之 ,   米満弘之 ,   二ノ宮節夫

ページ範囲:P.1238 - P.1253

 手の外傷患者は専門医へまわる前に一般外科に来院する場合が多く,一般外科での初期治療の仕方に,その予後が大きく左右される.
 今回は"手指外傷患者が一般外科に来たとき,まず最初にやるべきこと,やつてはいけないこと"を中心に手の外科専門の整形外科医にディスカッションしていただいた.

わが教室自慢の手術器具・20

心筋保護用の心筋温度針の開発と改良

著者: 安倍十三夫 ,   小松作蔵

ページ範囲:P.1256 - P.1257

 現在,開心術も診断法,手術手技の確立,術後管理の進歩によつて,手術成績も向上してきているが,手術成績を左右する因子として,術中の心筋をいかに非生理的条件下で保護を行なうかである.
 著者らもこの問題に対して,実験的にも肥大心を使用し1,2)て冷却液による心筋保護効果について検討し良好な実験結果が得られ,この方法を臨床例に応用して満足すべき手術成績が得られている3)

対談

「長崎の外科史」をめぐつて

著者: 中西啓 ,   大村敏郎

ページ範囲:P.1259 - P.1269

□医学史への入り口
 大村 第17回消化器外科学会で長崎に参りました.前もつて会長の土屋涼一教授(長崎大学)から参加した会員には「長崎外科史」という本をお土産に配るというお話をきいておりましたので,それをいただく楽しみも大きかつたわけです.
 長崎ならではの企画と感心も感謝もしているのですが,この機会に「長崎外科史」の著者の中西先生から本が出来るまでの苦心とか,お書きにならなかつた面白いお話がうかがえるかもしれないと,大変欲張つたことを考えております.どうぞ,よろしくお願いします.

外科医のための臨床MEの知識・4

末梢血流検知のためのドプラテクニック

著者: 鰐渕康彦 ,   加納隆

ページ範囲:P.1271 - P.1279

まえがき
 現在,臨床で使用されている血流計には大別して,観血的なものと非観血的なものがある.前者の代表は電磁血流計であり,後者の代表は超音波ドプラ血流計である.
 超音波ドプラ血流計には連続波(continuous wave)を使用するいわゆるCWドプラ血流計が一般的であるが,その他に変調波を使用する変調ドプラ血流計がある.これはCWドプラ血流計では深部の血流情報を得ることができないという欠点を克服するために開発された距離分解能を有したものである.その代表的なものはパルスドプラ血流計とM系列ドプラ血流計である.簡単に言うと,パルスドプラ血流計は目的とする部位にパルスゲートをかけ,その血流情報のみを得る装置であり,M系列ドプラ血流計はパルス列のかわりにM系列信号を利用したものである.これらの詳細については他の文献を参照されたい.

臨床研究

最小乳癌の臨床病理学的検討—非浸潤癌について

著者: 高嶋成光 ,   横山伸二 ,   平井隆二 ,   和田豊治 ,   森脇昭介

ページ範囲:P.1281 - P.1284

はじめに
 乳癌の治療成績向上のためには早期発見が最も重要な因子の一つであることはいうまでもない.他臓器癌と同様に早期乳癌の定義を確立,普及させ,これを目標に早期症例の発見に努めることが成績向上につながるものと思われる.本邦でもこれに関する検討は行なわれているが,いまだ一般化するまでには至つていない1,2)
 最小乳癌(Minimal Breast Cancer)は非浸潤乳管癌,非浸潤小葉癌,長径0.5cm以下の浸潤癌を包括したものと提唱され,確実に治癒が期待できることから3,4),最も狭い意味での早期乳癌といえ,これを基準として臨床並びに病理組織学的見地より早期乳癌の定義を確立すべきであろう.

豊胸術後のマンモグラフィー

著者: 峯博子 ,   前田学 ,   鈴木宗治 ,   井上善弘

ページ範囲:P.1285 - P.1293

はじめに
 形成の目的で乳房に異物を挿入あるいは注入する豊胸術の歴史は古く,特にわが国ではその症例数も非常に多数にのぼつている.豊胸術のX線所見について,山崎ら1)および小出ら2)は注入物質がradiolucentである群とradiopaqueである群とにわけて記載しており,典型例については見誤まることはない.しかし井上ら3)の報告にもみられるように,豊胸術後乳房には複雑なX線所見を呈するものも決して少なくない.われわれは1975年4月から1980年11月までに東京医科歯科大学および三井記念病院において46例の豊胸術後のマンモグラフィーを経験し,興味ある知見を得たので報告する.

臨床報告

乳癌再発後長期生存例の1例と本邦文献集計

著者: 野口昌邦 ,   広沢久史 ,   松葉明 ,   木下元 ,   三輪晃一 ,   木南義男 ,   宮崎逸夫 ,   松原藤継 ,   島村浩二 ,   藤森仁行

ページ範囲:P.1295 - P.1299

はじめに
 乳癌は予後の比較的良好な癌の一つであり,再発しても長期に生存する症例が少なからず存在することが知られている.第16回乳癌研究会においても乳癌再発後長期生存症例が主題として取り上げられ,さらに全国57施設よりアンケート調査を行ない乳癌再発例2,405例の再発後生存率を検討し,再発後3年で22.0%,5年で12.3%とかなりの症例が再発後生存していることを明らかにしている1).しかし再発後10年以上の長期生存例は非常に少ないと考えられる.
 私どもは乳房切断術後約5年で再発し,その後,約10年間に局所再発,骨転移などを来たし,現在なお加療中の1症例を経験しているので,本邦文献における再発後10年以上生存した乳癌症例を集計し検討を加え報告する.

小児の卵巣顆粒膜細胞腫の1例

著者: 細谷亮 ,   大沢二郎 ,   矢田貝凱 ,   滝吉郎 ,   大塩学而 ,   篠田正昭

ページ範囲:P.1301 - P.1305

はじめに
 小児の悪性卵巣腫瘍は比較的稀であるが,臨床症状や病理像が多彩で興味深い.最近われわれは小児の卵巣顆粒膜細胞腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

最近経験した胆道拡張症の1例—Alonso-Lej Ⅱ型本邦15報告例の分析

著者: 梅本光明 ,   洲崎兵一 ,   衛藤俊二 ,   北川正明 ,   諏訪寛 ,   細井英雄 ,   新明紘一郎 ,   広瀬誠

ページ範囲:P.1307 - P.1310

はじめに
 胆道拡張症は外科的療法によつてのみ治療が可能であることから,本邦小児外科領域における重要疾患の一つとなつている.本邦の症例は,世界の報告例の2/3以上を占め,日常時折遭遇する疾患である.本邦では,1905年佐久間1)の報告以来,小林2)(1965年)が244例集計しており,田所3)らの1,209例(1966〜1978年)を加えると,1,453例になる.1,209例のうち,Ⅱ型は22例(1.8%)であつた.われわれは最近,胆道拡張症(Alonso-Lej Ⅱ型)の一症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

プロプラノロール単独投与による術前準備に難渋したバセドウ病の1治験例

著者: 応儀成二 ,   尾崎修武 ,   原宏 ,   森透

ページ範囲:P.1311 - P.1314

はじめに
 抗甲状腺剤の出現により,術前準備としての甲状腺機能の正常化に関する問題点は解決されたかに思えたが,臨床上では幾つかの間題が残されている.すなわち,抗甲状腺剤による副作用である.
 最近,われわれはプロピルサイオウラシル(PTU)および1—メチル−2—メルカプトイミダゾール(MMI)の両剤が副作用のために使用不可能な症例において,β遮断剤であるプロプラノロール(Prop.)単独投与による術前コントロールを試みたが,本剤による術前準備における問題点を検討し報告する.

直腸に原発した「び漫浸潤型」大腸癌の1例

著者: 上村卓良 ,   米村豊 ,   ,   島弘三 ,   北村徳治 ,   渡辺騏七郎

ページ範囲:P.1315 - P.1318

はじめに
 び漫浸潤型大腸癌,いわゆる大腸のlinitis plastica型癌は,その特異な病理組織所見のみならず,極めて予後が悪くその病態と治療について最近注目をあびるようになつてきた.われわれは,過去10年間に2例の大腸linitis plastica型癌を経験したが,このうち直腸原発性linitis plastica型癌と考えられる1例は,その組織型が高分化型腺癌であり,粘膜下のlymphangiosis carcinomatosaのみが著明な極めて興味ある症例と考えられるので,若干の文献的考察を加え報告する.

後腹膜にみられたきわめてまれなCastleman Lymphomaの1例

著者: 吉川成章 ,   浜田建男 ,   長尾和治 ,   金子文秀 ,   松本英世

ページ範囲:P.1319 - P.1323

はじめに
 1956年Castlemanら1)がmediastinal lymphnodal hyperplasia resembling thymomaとして発表したいわゆるCastleman lymphomaは,胸部においては既に多くの発表がなされたが,後腹膜に発生したものの発表は極めてまれである2)
 われわれは後腹膜腫瘤として腫瘤摘出術を行ない,組織学的に本症であつた1例を経験したので内外の報告例について統計的観察を行なつた.

左腋窩リンパ節転移を伴なう挙上胃に発生した癌の1手術例

著者: 奥島憲彦 ,   高田忠敬 ,   福島靖彦 ,   今泉俊秀 ,   佐藤裕一 ,   大橋正樹 ,   鈴木衛 ,   原田昌弘 ,   上田哲哉 ,   島田幸男 ,   中迫利明 ,   室井正彦 ,   井手博子 ,   遠藤光夫 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.1325 - P.1331

はじめに
 食道癌の治療成績は近年とみに向上し,根治手術後の長期生存例も少なからず経験するようになつてきている.しかしながら,長期生存例のfollow up中注意すべき問題点の1つとして他臓器重複癌の発生があげられる.最近われわれは,胸部食道癌根治手術後8年経過し,胸壁前挙上胃管に胃癌の発生と左腋窩リンパ節転移をみ,切除し得た症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1255 - P.1255

SURGERY—Contents, July 1981 Vol.89, No.7 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は,施設\22,100,個人\15,600です。雑誌は,ST. LouisのMosby社より,直送いたします。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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