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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科37巻10号

1982年10月発行

雑誌目次

特集 新しい抗生物質と外科 Editorial

最近の抗生物質の開発状況

著者: 桑原章吾

ページ範囲:P.1468 - P.1469

 近年の抗生物質の臨床適用は,主としてβ—ラクタム群とアミノ配糖体群に集約され,また両群の開発も極めて活発である.ここ2〜3年の両群の開発状況を概観してみよう.

対談

新しい抗生物質の使い方

著者: 石崎高志 ,   相川直樹

ページ範囲:P.1470 - P.1487

 相川 今日は外科領域の新しい抗生物質の使い方について話をするということになりました.まず,臨床薬理のほうで基礎的な知識の豊富な石崎先生に,私ども臨床外科医が知つていなければいけないということをお聞きし,かつ抗生物質のトピックというようなものと合わせて話していきたいと思います.
 外科の場合には術後の感染予防,あるいは,術後感染の治療として抗生物質を使うわけですけれども,今日行われているような抗生物質の使い方は,日本独特のような気が私はするんですけれども,いかがでしようか.

消化器外科と抗生物質 感染を防止するにはどうするか

上部消化管手術

著者: 石引久弥 ,   相川直樹 ,   三吉博 ,   奥沢星二郎 ,   内田博

ページ範囲:P.1489 - P.1494

はじめに
 消化器手術後に発生する感染症には多くのものがある.その主体は手術野の細菌性感染症であり,その予防および治療には抗生物質を中心とする抗菌剤による化学療法が大きな役割を果している.最近の数年間に開発,臨床導入されてきたペニシリン系,セフェム系抗生物質は従来弱点となつていたグラム陰性桿菌に対する抗菌特性が飛躍的に向上し,しかも致命的な毒性を示す頻度も無視しえるほど低率である.
 このような現状を表面的にうけとると,抗生物質は外科領域でも極めて安易に,十分な適応を考慮せずに抗生物質を使用する風潮をもたらしやすい.手術後の感染症の対策の基本は手術手技自体にあることをあらためて認識すべき時点でもあるし,新旧の抗生物質の特性を理解した適正な化学療法が特に望ましい.

下部消化管手術

著者: 中山一誠 ,   秋枝洋三

ページ範囲:P.1495 - P.1499

はじめに
 人体最大の漿膜である腹膜(peritoneum)に種種の原因により炎症が生じた腹膜炎(acute peri—tonitis)は化学療法,抗ショック療法,輸液,麻酔の発達,進歩により,以前に比較してその救命率は上昇をみたが,依然として重篤な疾患の一つであることには間違いはなく,一度適切な治療を誤ると,その救命は困難となる.本稿の主題である,下部消化管手術後の感染を防止するにはどうするかは,下部消化管手術後の腹腔内感染症の予防と治療をどのように行うかということになる.

肝・胆・膵手術

著者: 品川長夫 ,   真下啓二 ,   中村明茂 ,   三宅孝 ,   石川周 ,   高岡哲郎 ,   由良二郎

ページ範囲:P.1501 - P.1507

はじめに
 いかなる手術であつても,いかに抗生物質などによる化学療法が進歩しても,術後感染を完全に予防することは不可能である.近年,感染に対してより防御能力の低下した症例に対してもより大きな手術侵襲が加えられるようになつてきており,術後感染の背景因子はより複雑化してきている.消化器外科領域において,ことに肝・胆・膵の手術については近年におけるその進歩発展は他の分野に比較し著しいものがある.
 肝・胆・膵手術後の感染は他の消化管手術例,特に下部消化管手術例と比較しその頻度は高くはない.しかし黄疸など肝障害,腎障害および各種の臓器障害を術前より伴つている症例が多く,ひとたび感染を併発するとその治療は容易ではない.術後感染の効果的な予防対策は手術成績に直結するものであり,合目的々な方法がとられなくてはならない.ここでは肝・胆・膵手術後の感染について,その発症要因,分離菌などについてふれるとともに,予防的抗生物質投与について教室の成績を中心にしてその実際について述べる.

感染をおこしたらどうするか

腹膜炎,腹腔内膿瘍

著者: 酒井克治

ページ範囲:P.1509 - P.1513

続発性腹膜炎
 今日われわれが遭遇する急性腹膜炎のほとんどすべては続発性急性腹膜炎であり,その原因には,(1)外傷に由来するもの,(2)腹腔内臓器の疾患に由来するもの,(3)手術後の感染などがあげられるが,本稿では化膿性疾患に続発する腹膜炎および術後感染として発症する腹膜炎について述べる.また術後腹膜炎においても,その原因は単一ではなく,縫合不全,腹腔内遺残異物,手術時の腹腔内汚染,臓器損傷などがあげられる.
 今日,腹膜炎時の病態生理の解明,麻酔法の進歩,輸血・輸液の発達,静脈栄養の導入,さらに診断技術の進歩,抗生剤の普及により,腹膜炎の罹患率・死亡率はこの40年間に著しく減少した.ことに抗生剤の発達・普及は腹膜炎時の敗血症の発生を予防し,死亡率の減少には大きく貢献した.

胆嚢炎,胆管炎

著者: 谷村弘 ,   小林展章 ,   日笠頼則

ページ範囲:P.1515 - P.1520

はじめに
 胆道系の感染症は,大きく分けて,胆嚢炎,胆管炎,肝膿瘍,胆汁性腹膜炎があるが,急性胆嚢炎は胆嚢摘除術により根治せしめ得るし,また胆汁性腹膜炎も緊急ドレナージ手術の対象となる1).また,胆管炎のうち,もつとも激症型である急性化膿性閉塞性胆管炎では,疑診が生じたら直ちに,PTCDあるいはT-tube挿入など体外への胆汁誘導路の外科的作製が不可欠である2).このように外科的処置が必須であるとはいえ,胆道感染症は,胆道系の解剖学的な関係からとくに難治性になりやすく,胆管内圧の上昇に伴つて,容易にエンドトキシン・ショック,敗血症を併発し,致命的となる危険性が,他の部位の感染症に比較して,高いという特徴があり3),診断と同時に適切な抗生物質を早期から十二分量投与しなければならない.しかも,胆管炎の多くは,発熱,黄疸,疼痛などの急性炎症を繰り返し,単発性に比べ予後の悪い多発性肝膿瘍を形成するので,慢性胆管炎に対してもまた膿瘍形成前に十分な化学療法を行い,その発生防止に努めるべきであろう4)

呼吸器感染症

著者: 藤村重文 ,   仲田祐

ページ範囲:P.1521 - P.1527

はじめに
 近年麻酔や術後管理等の進歩により,悪性腫瘍をはじめとして各種疾患に対する手術適応が次第に拡大されつつある.最近の手術患者の特徴は,ひとつには高齢者が多いことであるが,それらの患者では加齢による各種臓器の機能低下がみられるのみならず,呼吸,循環,血液,免疫,代謝系等の慢性疾患を伴うこともしばしばである.
 手術適応が拡大されつつある反面,術後合併症が発生し,その対策に難渋することもしばしばであり,なかでも術後肺合併症は重篤なことが多々ある.

尿路感染症

著者: 大川光央

ページ範囲:P.1529 - P.1533

はじめに
 化学療法の進歩は,感染症の治療に大きく貢献したが,一方では種々の抗菌剤に対する耐性菌の増加をもたらすなどの変貌をも来たした.近年,高齢者や重症者に対しても手術適応が拡大されたこととも関連して,尿路と直接関係を有さない消化器外科領域においても尿路感染症(以下,UTI)が問題となつてきている.その最大の原因は,消化器外科術後患者においてしばしば間歇的あるいは持続的導尿による尿路管理が必要とされ,このカテーテル操作がUTIを惹起するものと考えられる.カテーテル操作に伴うUTIは,院内感染の一種とも考えられ,原因菌の多くは種々の抗菌剤に対して耐性化傾向の強い,いわゆる日和見病原菌であるのが特徴である.
 本稿では,消化器外科術後の尿路管理の主体をなしている留置カテーテルによるUTIに焦点を絞り,テーマの趣旨とは若干はずれるかもしれないが,感染予防対策について述べるとともに,UTI発症の際の化学療法についても触れたいと思う.

新しい抗生物質の評価

セフェム系

著者: 斎藤篤

ページ範囲:P.1535 - P.1538

はじめに
 最近,開発のめざましい抗生剤のなかでも,特にCephem剤は種類の豊富さや基礎的な面でのユニークさの点でPenicillin剤やAminogly—coside剤のそれをはかるに凌駕するものがある.本系剤は抗菌spectrum,抗菌力,β—lactamase安定性などから世代分類がなされているが,ここでは現在市販されている第二世代以降の製剤について,以下,内科の立場でこれらの評価を行つてみたい.

ペニシリン系

著者: 島田馨

ページ範囲:P.1539 - P.1541

はじめに(図)
 ABPCの欠点である抗緑膿菌作用のない点を補つたのがCBPCである.CBPCは,ABPCの6位の側鎖のNH2基がCOOH基に変つているだけであるが,抗緑膿菌作用と抗変形菌作用が増強された.このCBPCの成功がきつかけとなつて,同様の抗菌スペクトラムを持つペニシリンが幾つか開発されたが,SBPC(sulbenicillin)とTIPC(Ticarcillin)がその代表的なものである.SBPCはCBPCのCOOH基をSO3H基に変えたものであり,TIPCはCBPCの6位の側鎖のphenylがthiophenに変つたものである.

アミノグリコシド系

著者: 河村信夫

ページ範囲:P.1543 - P.1546

はじめに
 アミノグリコシド(以下,AGsと略記)は,副作用としての聴器毒性および腎毒性のため,その使用法がむずかしいと考えられており,今日の開発の方向は①毒性の少ないもの,②特殊な抗菌力を有するもの,③少量投与で効力をあらわすもの,に進められている.またその投与方法も静注や腹腔内投与,局所洗浄,軟膏用としての使用,さらに髄液腔内使用等が考えられつつある.
 今回は「新しい」というタイトルが附されているので,MICM(ミクロノマイシン),Siso(シソマイシン)と,今後発売予定のFOM(フォーチマイシン),Netil(ネチルミシン),HBK(ハベカシン)について,その各々の特徴を論じようと考えるが,筆者は泌尿器科医であるので「泌尿器科からみた外科的感染症に対する抗菌薬について」という意味で,以下に目を通されることを希望する.

カラーグラフ・9

切除不能な膵体部癌—開創照射と胃切除(B-Ⅱ法)

著者: 高木國夫 ,   竹腰隆男 ,   大橋計彦 ,   丸山雅一 ,   金田浩一

ページ範囲:P.1459 - P.1464

 膵癌の治療成績向上には,切除可能な膵癌の発見—早期発見,早期治療が最も有効なものであつて,本シリーズで,切除可能であつた早期膵癌,進行膵癌をのべて来たが,現実には診断がついた時点で,すでに切除不能な進行癌にしばしば遭遇し,その対策には,頭をなやますものである.われわれも,1969年にERCPを臨床的に用いて以後,10年間に遭遇した膵癌はほとんどの症例が診断のつく時点で切除不能で,開腹しても試験開腹に終つたことが多い.進行して切除不能な膵癌では,臨床的にもつとも多くみとめられる上腹部痛,頑固な背部痛や食欲不振になやまされることが最も多い.体重減少が10kgから15kgと一般の病気では考えられない程である.
 切除不能な膵癌に対して,当院放射線科で放射線による外照射により,疼痛の軽減を来したりして,稀であるが,照射後7年生存した症例の経験もある.開腹して直接病巣に放射線をかける開創照射は,膵癌巣にある程度組織学的にも癌巣の壊死を来し,疼痛の消失をみとめている.しかし,進行した膵癌では,膵頭部癌による十二指腸浸潤や膵体部癌による十二指腸から空腸起始部にわたる浸潤がしばしばみとめられ,通過障害を来している症例が多い.開腹時,単に病巣に直接照射するのみでなく,同時に胃切除を行つて,Billroth Ⅱ法で吻合を行えば十二指腸から空腸起始部の通過障害を避けることが出来る.両者の意味で放射線科と外科との協調による切除不能な膵癌のPalliationとして,開創照射と胃切除を行つている.この術式は,麻酔科,放射線科,外科の協調のもとに,放射線治療室で胃切除と開創照射を同時に行つている.

histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・9

下半身の外科の進歩

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.1549 - P.1552

□診断と手術適応
 前回,気管切開・甲状腺・乳腺の外科をとりあげて,19世紀前半の外科技術を検討してみた.
 この時代,診断という点からすれば,特殊な検査法があるわけではないから,視診上の異常や触診でふれる硬結・腫瘤といつたものが問題にされたのであつた.手術適応ということになると,外傷・化膿創を別にすれば,創の感染による予後の悪さが,適応の範囲を拡げさせなかつたし,決断にはかなりの勇気が要つたのである.したがつて平和な街の中でよりも,戦場のようなのつぴきならぬ環境の方が思いきつたことが出来たのである.戦争が外科に貢献したのは,外傷の患者を増した以外に,適応の範囲を拡げるという実験外科的な点もあつたのである.

外科医のための臨床輸液問答・8

外科の輸液の特性

著者: 長谷川博 ,   和田孝雄

ページ範囲:P.1555 - P.1559

1.輸液のスピードについて
 和田 次に,輸液の速度について一言ふれておきたいと思います(表1参照).普通,外科で使われる輸液の速度というのは,非常に早いという場合にはどのくらいの調子で入れるのですか.
 長谷川 これはいろいろあると思うんです.輸液量が体重当り1時間当りで何mlという速度もあるし,ブドウ糖がper kg,per hourで何g入つていくという速度もあります.それから,病態に応じた速度,つまり麻酔をかけているときの輪液速度と,心臓が弱いとか,おなかが張りかけているような人に入れる速度と,みんな違うと思うんです.

REPORT FROM OVERSEAS

米国における超音波診断(その3)—膵臓の手術への応用

著者: 町淳二 ,   ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.1561 - P.1567

はじめに
 膵臓の手術は,膵臓の炎症性疾患と合併症,腫瘍,外傷などがその対象となるが,これらの手術は,術前の検査や診断と術中の所見をたよりにして実施される.一般の手術にも言えることであるが,ことに膵臓の手術では,その手術の合併症や死亡率を考えると,組織へのアプローチや術式の選択などを,きわめて慎重に考慮すべきであり,そのためには,術中に,十分に必要な情報を得ることが大切である.術中に情報を得るには,胆道系の手術では,術中の胆道造影が比較的安全にしかも簡単に,多くの情報を提供することから広く使用されている.しかし,膵臓の手術では,術中の膵管造影は,手技や合併症の点から,また,術前のERCPによつて同じような情報が得られていることから,その使用には限度がある.これに対し,最近,膵臓の術中の画像診断の一つとして,術中超音波が注目されつつある.
 術中の超音波法について初めて報告したのは,Schlegelら(1961年)で1),腎結石の存在部位を決定するのに超音波法を応用した.1960年の前半に,A-modeによる超音波が,術中の検査として使用されたが2-4),解析力(resolution)の点や,amplitude spikeの判別の困難さから,一般にはあまり応用されなかつた.これに対し,B-modeを用いた術中検査は,CookとLytton(1977年)が5),腎切石術中に腎結石の検索に用いたのが初まりといえよう.その後,B-mode超音波法を術中に応用した報告が増加しつつあるが,これを膵臓の手術に初めて使用したのは,LaneとGlazer(1980年)であり6),彼らは,5例の膵臓の腫瘍を正常の膵臓の超音波像と比較することによつて,術中の超音波法は,術前の検査結果と比べて腫瘍の診断上よりよい情報を提供するであろうと記述している.

臨床研究

末梢動脈閉塞性疾患に対するプロスタグランジンE1経中心静脈持続点滴投与法

著者: 松前孝幸 ,   井出誠 ,   小泉雅典 ,   鈴木正徳 ,   西連寺完茂 ,   俣野一郎 ,   渡辺晃

ページ範囲:P.1569 - P.1575

はじめに
 バージャー病,閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈閉塞性疾患の治療は難しく,従来より各種の手術的,保存的療法が行われて来た.しかし,何れも病態に対する根本的治療とはなりえず,耐えがたい疼痛,組織壊死のため最終的に四肢切断を余儀なくされる例は少なくない.動脈閉塞性疾患の治療は,糖尿病,高血圧症などと同様に,一生,長期にわたる管理が必要との認識に立たなければならない.患者の社会復帰の目的には,手術療法のみでは限界があるため,いわゆる保存療法として,血管拡張剤,抗凝固剤,線溶酵素剤,鎮痛剤,高圧酸素療法などが併用されている.
 以前はこの疾患に対し卓効ある薬剤がなかつたが,最近プロスタグランジンE1(以下,PGE1と略す)が画期的な薬剤として注目されている.われわれは,今回PGE1投与法の新しい試みとして,動脈閉塞性疾患患者に中心静脈より持続点滴療法を行つた.この方法は,今後手術療法とあいまつて患者管理の有力な手段として推奨すべき治療法と確信するに致つたので,ここにわれわれの成績を報告する.

臨床報告

食道嚢胞の1例

著者: 藤井久丈 ,   石黒信彦 ,   滝川豊 ,   萩野茂 ,   大野進 ,   広野禎介 ,   高橋洋一 ,   高柳尹立

ページ範囲:P.1577 - P.1581

はじめに
 食道良性腫瘍は頻度の低い疾患であり,そのうち食道嚢胞はさらに稀で食道腫瘍全体の0.5〜2.5%1)を占めると言われている.今回われわれは食道嚢胞とりわけ気管支性嚢胞という珍しい1例を経験したので報告する.

急性腹症を呈した巨大後腹膜血管腫の1例

著者: 遠藤健 ,   豊島宏 ,   武村民子

ページ範囲:P.1583 - P.1587

はじめに
 後腹膜腫瘍は比較的まれな疾患であり,なかでも血管腫の占める割合は非常に少ない.今回急性腹症の診断にて開腹し,術後に後腹膜血管腫と判明した1例を経験したので報告する.

3年の間隔をおいてS状結腸癌と胃癌に罹患し手術した血液透析患者の1例

著者: 船木治雄 ,   大田早苗 ,   広瀬脩二 ,   石田秀世 ,   小出桂三 ,   神谷直紀

ページ範囲:P.1589 - P.1593

はじめに
 血液透析が一般に広く施行されるようになつてから,これを受けている患者の発癌の問題がクローズアップされてきている.
 われわれは透析を開始して6年目にS状結腸癌に罹患し,これを手術して3年後胃癌に罹患し,再度手術を施行して成功した珍しい症例を体験した.ここにその経過を報告し,血液透析患者の消化器外科手術の問題点について述べてみたい.

胆嚢摘出術後に大量腹腔リンパ漏を併発した1例

著者: 小田切弘人 ,   江口環禧 ,   長谷川洋一 ,   佐々木忠 ,   太田実 ,   吉雄敏文 ,   亀谷寿彦

ページ範囲:P.1595 - P.1599

はじめに
 リンパ管の破壊による漏出で生ずる乳び胸水,乳び腹水そして乳び尿は,時に臨床上経験することがある.その原因は先天異常,外傷,医原性,結核,リンパ腫および癌腫などの悪性腫瘍とその転移などが考えられる.医原性に生ずる場合は,心大血管や食道の手術および後腹膜臓器の操作を必要とした手術で,胸管や太いリンパ集合管の損傷を来たした術後に生ずるのが大部分である.胆石症に対する胆嚢摘出術は最も普遍的なものであり,さらに総胆管切開や胆管癌に対する根治手術など肝十二指腸靱帯内の手術操作は一般によく行われ,そのための合併症は,肝固有動脈や門脈および胆管の損傷によるものは散見するが,この部のリンパ管損傷による合併症の発生はほとんどみられない.しかし今回われわれは,胆嚢摘出術後に1日約4lにおよぶ腹腔リンパ漏を生じた1症例を経験したので,その病態等に若干の考察を加え報告する.

原発性虫垂癌の13例

著者: 河野良寛 ,   木村秀幸 ,   片岡和男 ,   間野清志 ,   浜家一雄

ページ範囲:P.1601 - P.1604

はじめに
 原発性虫垂癌は比較的稀な疾患であり,術前診断は困難で予後も不良なものとされている2,10).われわれは過去20年間に13例を経験したので,本邦報告例を合わせ,若干の文献的考察を加えて報告する.

膀胱上ヘルニアの1症例

著者: 片岡卓三 ,   藤井祐三 ,   畑尾正彦 ,   高橋勝三

ページ範囲:P.1605 - P.1607

はじめに
 腹部手術の既往がないイレウス患者を診察した時,頻度は少ないとはいえ,内ヘルニアによる場合があることは忘れるべきではない.膀胱上ヘルニアは内ヘルニアの中でも特に稀なものである.われわれは今回,膀胱上ヘルニアの1例を経験したのでここに報告する.

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文献抄録

著者: 栗原博明

ページ範囲:P.1547 - P.1547

癌に対する部分的な高熱療法
 Regional Hyperthermia for Cancer/H. W. Baker, P. A. Snedecor & J. C. Goss, et al.:Am. J. Surg., 5(143):586-590, 1982.
 近年,臨床化学の進歩に基づく臨床研究の発達や種々の装置の技術的開発により,高熱療法(hyperthermia)が脚光をあびている.高熱療法の理論ないし長所は,(1)実験的に癌細胞は正常細胞よりも熱に弱いことが示されており,さらに低酸素状態やpHの減少で,この性質がより著しくなる.(2)多くの腫瘍が正常組織よりも熱を吸収することが,実験的にも臨床的にも示されている.この原因は,正常組織は血流を増加させることによつて熱を放散することができるのに対して,腫瘍はこの機能を欠いているからである.(3)放射線照射の効果は,高熱下で増強する.その理由は,照射に強いS期の細胞が熱に弱いことと放射線によつて死にかかつた細胞は高熱温では回復しにくい.(4)(3)と同様の効果が化学療法においても認められている.(5)部分的な高熱療法の副作用はほとんど認められていない.(6)高熱療法はくり返し行つても安全である.(7)高熱療法には発癌性はない,などである.そこで部分的な高熱療法を臨床的に用いた.

雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1548 - P.1548

SURGERY—Contents, September 1982 Vol.92, No.3 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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