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REPORT FROM OVERSEAS
米国における超音波診断(その3)—膵臓の手術への応用
著者: 町淳二1
所属機関: 1イリノイ大学医学部外科学教室 2ウェストサイドV.A.病院外科
ページ範囲:P.1561 - P.1567
文献購入ページに移動膵臓の手術は,膵臓の炎症性疾患と合併症,腫瘍,外傷などがその対象となるが,これらの手術は,術前の検査や診断と術中の所見をたよりにして実施される.一般の手術にも言えることであるが,ことに膵臓の手術では,その手術の合併症や死亡率を考えると,組織へのアプローチや術式の選択などを,きわめて慎重に考慮すべきであり,そのためには,術中に,十分に必要な情報を得ることが大切である.術中に情報を得るには,胆道系の手術では,術中の胆道造影が比較的安全にしかも簡単に,多くの情報を提供することから広く使用されている.しかし,膵臓の手術では,術中の膵管造影は,手技や合併症の点から,また,術前のERCPによつて同じような情報が得られていることから,その使用には限度がある.これに対し,最近,膵臓の術中の画像診断の一つとして,術中超音波が注目されつつある.
術中の超音波法について初めて報告したのは,Schlegelら(1961年)で1),腎結石の存在部位を決定するのに超音波法を応用した.1960年の前半に,A-modeによる超音波が,術中の検査として使用されたが2-4),解析力(resolution)の点や,amplitude spikeの判別の困難さから,一般にはあまり応用されなかつた.これに対し,B-modeを用いた術中検査は,CookとLytton(1977年)が5),腎切石術中に腎結石の検索に用いたのが初まりといえよう.その後,B-mode超音波法を術中に応用した報告が増加しつつあるが,これを膵臓の手術に初めて使用したのは,LaneとGlazer(1980年)であり6),彼らは,5例の膵臓の腫瘍を正常の膵臓の超音波像と比較することによつて,術中の超音波法は,術前の検査結果と比べて腫瘍の診断上よりよい情報を提供するであろうと記述している.
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