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臨床報告
胆嚢摘出術後に大量腹腔リンパ漏を併発した1例
著者: 小田切弘人1 江口環禧1 長谷川洋一1 佐々木忠1 太田実1 吉雄敏文1 亀谷寿彦1
所属機関: 1東邦大学医学部第1外科
ページ範囲:P.1595 - P.1599
文献購入ページに移動リンパ管の破壊による漏出で生ずる乳び胸水,乳び腹水そして乳び尿は,時に臨床上経験することがある.その原因は先天異常,外傷,医原性,結核,リンパ腫および癌腫などの悪性腫瘍とその転移などが考えられる.医原性に生ずる場合は,心大血管や食道の手術および後腹膜臓器の操作を必要とした手術で,胸管や太いリンパ集合管の損傷を来たした術後に生ずるのが大部分である.胆石症に対する胆嚢摘出術は最も普遍的なものであり,さらに総胆管切開や胆管癌に対する根治手術など肝十二指腸靱帯内の手術操作は一般によく行われ,そのための合併症は,肝固有動脈や門脈および胆管の損傷によるものは散見するが,この部のリンパ管損傷による合併症の発生はほとんどみられない.しかし今回われわれは,胆嚢摘出術後に1日約4lにおよぶ腹腔リンパ漏を生じた1症例を経験したので,その病態等に若干の考察を加え報告する.
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