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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科37巻11号

1982年11月発行

雑誌目次

特集 末梢血管障害の非侵襲的検査法

超音波

著者: 宮澤幸久 ,   瀬戸山隆平 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1633 - P.1643

はじめに
 超音波診断法(Ultrasonography)は,Bモード表示装置の開発・実用化,さらにgray scale echographyの導入,高速走査方式の開発,装置の改良により,解像力に優れた断層像が得られるようになり,本検査の臨床応用を幅広いものとした.
 血管病変の超音波診断についてみると,初期には主として腹部大動脈瘤についての有用性が報告され1-7),その後,大腿・膝窩動脈瘤などの末梢血管病変を検査の対象とし,良好な成績が示された8-14).さらに,頸動脈病変や15),血行再建術に伴う病態における超音波像も報告されるようになつたが14,16,17),これら欧米の報告は,主として手動接触走査法(manual contact scan)による断層像であつた.近年,高速走査方式の一種である電子走査方式(電子スキャン)が開発され,急速に臨床の場に普及し高い評価を受けている18-21).電子スキャンは手動走査型のものに比べると,実時間(real-time)で活動画像が得られること,操作性,再現性に優れていることなどから,血管系の描出にはより有用であり,本稿でもリニア電子スキャンによる末梢血管疾患の診断的意義について述べることにする.

CT(computed tomography)

著者: 早川宏

ページ範囲:P.1645 - P.1652

はじめに
 CT(computed tomography,コンピュータ断層撮影)のもつとも大きな特徴は,生体の軸方向の横断像がえられることである.おおよその血管は体軸方向に走行しており,かつ血管はCTにおける造影剤の増強効果(contrast enhancement,CEと略す)が高く,その病変の読影は容易かつ正確に行うことができる器官の一つである.したがつて,本稿では末梢血管疾患におけるCTの有用性,その適応や限界について述べる.

脈波

著者: 佐野文男 ,   中西昌美 ,   葛西洋一

ページ範囲:P.1653 - P.1659

はじめに
 従来より循環系の指標としては血圧が主に用いられてきたが,近年のエレクトロニクスの発展にともなつて血流測定の技術が大幅に進歩し,また単に血流測定ができるというだけではなく,非観血的にあるいは無侵襲的(noninvasive)に血流を測定する志向がなされている.これらの中で脈波の計測(plethysmography)は最も古くからある手法の一つで,Glisson1)により1622年に報告されているが,その後種々の改良が加えられ,現在では末梢血管疾患の診断や治療に広く利用されている.
 Plethysmographyなる語はもともとplethysmos(increase)とgraphein(write)というギリシャ語を語源とし,ある身体部分の血流にともなう容積変化を記録することを基本概念としている2)

アイソトープ

著者: 塩野谷恵彦 ,   平井正文 ,   太田敬

ページ範囲:P.1661 - P.1667

はじめに
 末梢血管障害のRI診断法は多方面にわたつているが,大別すれば血管病変の形態学的診断と機能的診断となる.

サーモグラフィ

著者: 岩谷眞宏 ,   大橋重信 ,   重松宏 ,   瀬戸山隆平 ,   盛岡康晃 ,   佐々木勝海 ,   宮田良 ,   森岡恭彦 ,   三島好雄

ページ範囲:P.1669 - P.1675

サーモグラフィの基礎
 1.サーモグラフィとは
 サーモグラフィとは,物体の温度分布を図や写真などであらわす方法である1)
 現在,サーモグラフィとしては,赤外線放射温度カメラによる皮膚表面の二次元熱画像を得る方法が一般的であるが,他にも液晶サーモグラフィ2)が実用化されており,また体内深部から出るマイクロ波を検出して深部の熱画像を得るマイクロ波サーモグラフィ,超音波の温度差による伝導時間の違いを利用する超音波サーモグラフィ,電子スピン緩和時間から温度情報を得るNMRサーモグラフィなども研究されている3)

ディジタル血管撮影

著者: 板井悠二 ,   蜂屋順一

ページ範囲:P.1677 - P.1683

はじめに
 生体の血管系を形態学的に把えるには血管造影に勝る検査法はない.このことは末梢血管障害においても同じである.しかしながら一部静脈系を除き,末梢血管の造影は動脈造影によらねばならず,動脈への穿刺,造影剤注入が不可欠である.このことは患者への侵襲と危険を伴い,また術者の手技を要求する.血管性病変が存在する際はさらに危険度が増し,手技もより高度となる.
 経静脈的造影剤の投与は手技,侵襲性の点で遙かに容易に臨床応用ができ,危険性はもつぱらヨード造影剤そのものによる.経静脈的に動脈造影をする試みは1939年のRobb & Steinberg1)以来なされてきたが,造影剤の稀釈に妨げられ,肺動脈,大動脈,頸動脈2)の一部を除き,確たる成果はあげ得なかつた.

Editorial

重要なベッドサイドの診察

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1630 - P.1632

はじめに
 従来,末梢血行障害の検査法としてもつとも広く行われ,また実地臨用上もつとも価値が高いとされている方法はいうまでもなく血管造影法であるが,最近コンピュータ断層撮影(CT),超音波断層法(US),核医学検査(RI)の改良,進歩はめざましく,患者への負担がほとんどないことから,非侵襲的(non-invasive)検査法として広く血管疾患の診断に用いられるようになつた.当初,これらの非侵襲的検査法は診断の第1段階としてのスクリーニング検査であつたが,今日ではDoppler血流計などによるankle pressure indexを始めとして,血行再建の適応の有無,再建後の患者の経過観察などにも好んで用いられるようになつている.
 本特集ではnon-invasiveな新しい検査法が末梢血行障害の診断という面において,今日どのような位置にあるかを明らかにする目的で,各領域のエキスパートにお願いして,その利点,欠点,適応,問題点,将来への展望などについて論じていただいた次第である.

カラーグラフ・10

膵癌と黄疸

著者: 高木國夫 ,   竹腰隆男 ,   大橋計彦 ,   丸山雅一 ,   金田浩一

ページ範囲:P.1621 - P.1626

 切除可能な膵癌の発見に,スクリーニングとして,アミラーゼ高値,胃X線所見における胃外性圧排像をチェックし,これら異常所見を示すものに,積極的にERCPを行うことの有効性について症例を供覧した.しかしながら,日常診療において,黄疸が発生して,発見される膵頭部癌が数多くみとめられている.黄疸の発生を示す膵頭部癌がどのような癌であるか,切除可能であるかの点についてみると,我々の過去6年間の膵頭部癌62例中に黄疸を呈して見出されたものが30例と多い.さらに,これら症例は,切除可能な症例から,切除不能な症例まで含まれている.種々の検査で切除可能と判断されて,開腹した症例には,27例中19例と切除率がかなり良好であつた.しかしながら,切除された膵頭部癌は多くが膵頭部の後面に位置し,膵被膜に浸潤したものがみとめられ,たとえ,膵頭部前面に位置しても,黄疸をひきおこす症例では,病巣がかなりの大きさを示して,膵被膜に浸潤している.黄疸を発生した膵頭部癌で膵被膜内に止まるものは,総胆管近くに発生し,むしろ乳頭部近傍のものである.
 我々の黄疸を呈した膵頭部癌で切除したものをみると,膵被膜に及んでいないものがわずか2例にすぎず,そのうち1例は,粘液産生癌で産生された粘液が主膵管壁を破つて膵頭部後面で総胆管を圧排した特殊型の膵癌で他の1例は直径3cmの比較的小さい癌であつた.

histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・10

知られざる外科の著名人たち

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.1685 - P.1688

□再び歴史の流れにのつて
 このところ3回ほどは時代を追つて外科史を展開する方式でなく,病院の歴史や臓器別の手術手技といつたことを中心に述べてきた.場所もパリにこだわらず各国に及び,時代についてもかなり自由に前後させ,このシリーズのテーマである「外科の夜明けまで」という時代の限界をはるかに通りすぎて20世紀近くまで筆がすべつた部分もある.
 しかし,こうすることによつて多数の身近な外科医の名に接することが出来,現代の外科との結びつきも明らかに出来たように思われる.このように後の時代と比較することによつて,19世紀中期の「外科の夜明け前」の時代を浮彫りに出来るのではないかと考えたのであつた.

速報

フランス外科学会だより

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.1688 - P.1688

9月20日から4日間,パリの新医学部で第84回フランス外科学会が開かれた.会長はこの「外科史外伝」の中でも取上げたことのあるジャン・クロード・パテル教授(Jean Claude Patel)である.(2月号参照)
 ちようど,パリ滞在中の筆者はパテル教授の招待の形でこの外科学会に参加したので,雰囲気の一部でもニュースとしてお伝えしたい.歴史にたずさわる者は現代においても当事者にはならないが,ジャーナリストとしての機能を持ちたいものだと考えている.

学会印象記

国際消化器外科学会第7回世界大会—〈上部消化管を中心に〉群を抜く我が国の成績(早期胃癌),他

著者: 武藤輝一

ページ範囲:P.1689 - P.1691

 本年9月6日から9日まで新宿の京王プラザホテルで国際消化器外科学会第7回世界大会が慈恵医大 長尾房大教授の会長の下で開催された.一般演題347,ワークショップ119題,ポスター67題,映画45題のほか,消化器外科で問題点の多い6題についてのパネルセッションがあり,さらに早朝7時15分から15テーマに分れて専門家を中心にbr—eakfast meetingが行われた.世界の40カ国から1400名近くの方が出席し優れた報告と熱心な討議が行われ,学会事務当局(慈恵医大第二外科教室)の皆さんの御努力により前二回の本大会に比べ本来の姿をとり戻したように感じた.またWel—come Reception や Sayonara Ba—nquetを通じ諸外国の知人,友人と話合えたのも有難い機会であつた.

外科医のための臨床輸液問答・9

栄養輸液

著者: 長谷川博 ,   和田孝雄

ページ範囲:P.1693 - P.1699

1.その背景
 和田 最後に,いまお話にも出た栄養輸液のことです.栄養輸液の本もたくさん出ていますが,一般の人を少し恐ろしがらせているという面があるように思うんですが….厚いりつぱな本が出ると,却つて非常にやりにくくなつてしまうというか,学問的な感じがして近づきにくいような感じがするんですけれども,そのへんのところで実用的な考え方をもう少し論じてみたいと思います.
 私はたまたま素人なものですから,高カロリー輸液は一体どうなつているんだろうと思つてちよつと調べてみたんですけれども,要するに,普通の人が経口でとつている量を入れてやろうという考え方ですね.

臨床研究

小腸肉腫8例の臨床的検討

著者: 宮司勝 ,   斉藤滉 ,   早乙女勇 ,   木下仁一 ,   川上義弘 ,   坂口敏夫 ,   足立武則

ページ範囲:P.1701 - P.1707

はじめに
 小腸肉腫は比較的稀な疾患であるが,近年その報告例数は増加の傾向にあり1),胃や大腸の検査法がほぼ確立されて来た現在,小腸の悪性腫瘍の診断にも関心を持つことが必要となつて来た.われわれは8例の小腸肉腫の症例を経験したので,主に臨床的知見について検討し,併せて文献的考察を行つたので報告する.

臨床報告

保存的に治癒せしめた特発性食道破裂の1例と本邦107例の検討

著者: 森正樹 ,   野田尚一 ,   鹿野奉昭 ,   加藤哲男 ,   大西韶治

ページ範囲:P.1709 - P.1712

はじめに
 特発性食道破裂は,1724年Boerhaaveが初めて剖検例を報告したのに始まり,比較的稀な疾患である.本邦では,1935年吉田15)の剖検報告以来,1981年末まで106例の報告がある.本症の多くは外科的治療が必要とされ,保存的に救命し得た報告は少ないが,われわれは保存的治療例を経験したので,われわれが集めえた本邦106例とあわせて若干の検討を加えた.

胃のLeiomyoblastomaの1治験例と本邦における96例の文献的考察

著者: 江崎友通 ,   中谷勝紀 ,   宮城信行 ,   白鳥常男 ,   高橋精一 ,   丸山博司 ,   小西陽一

ページ範囲:P.1713 - P.1718

はじめに
 1960年Martinら1)は組織学的にbizarreな特徴を示す胃の平滑筋腫を‘tumeurs myoïdes’として6例を報告し,さらに1962年Stout2)は同様の組織像を呈する69例の腫瘍を総括してLeiomyoblastoma(Bizarre Leiomyoblastoma)と名付けることを提唱した.本邦では1964年に吉田3)が報告し,その後1965年に久保ら4)が3例の本腫瘍について詳細に報告して以来,現在まで90数例の報告がおこなわれ,比較的まれな疾患とされている.
 今回著者らは,胃前庭部小彎の粘膜下腫瘍として腫瘍摘出術を行い,術後組織学的にLeiomyoblastomaと診断した1症例を経験したので本邦における本症例96例の文献的考察も加えて報告する.

赤痢アメーバ性大腸炎に合併した多発性肝膿瘍の1治験例—本邦3年間29例の文献的考察

著者: 山本克彦 ,   深井泰俊 ,   白鳥常男 ,   荒木恒治

ページ範囲:P.1719 - P.1723

はじめに
 本邦におけるアメーバ性肝膿瘍は近年比較的稀れな疾患であり,膿瘍の多くは右葉に単発性に占拠するものとされている.今回著者らは肝両葉に多発性に膿瘍を形成した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

S状結腸の壊死穿孔を伴つた虚血性大腸炎の1治験例

著者: 大島昌 ,   丸山俊之 ,   金井昌敦 ,   坂本真 ,   平山廉三 ,   広川勝昱

ページ範囲:P.1725 - P.1729

はじめに
 虚血性大腸炎は1963年にBoley1),また1966年にMarston2)が報告した.本邦では1972年,山城の発表3)以来,近年報告例が増加している.
 虚血性大腸炎は腸病変の面から,1)一過性病変,2)潰瘍狭窄形成性病変,3)壊死穿孔性病変の3型に分類されているが2,4,5),壊死穿孔性病変の予後は他と比較してきわめて悪い.われわれはS状結腸に発生した壊死穿孔性病変の1例を経験し,幸い救命し得たので報告する.

腹膜炎後に発症した破傷風の1例

著者: 猪野満 ,   武内俊 ,   嶋野松朗 ,   田中隆夫 ,   相馬宏樹 ,   森達也 ,   藤田正弘 ,   宮城島堅

ページ範囲:P.1731 - P.1733

はじめに
 外傷後に発症する破傷風は,稀に経験するが,著者らは最近,腹膜炎後に発症した重症破傷風の1例を経験したので報告する.

Topics

H2—receptor antagonist(Ranitidine)の上部消化管出血に対する止血効果の臨床的検討

著者: 長尾房大 ,   竹本忠良 ,   青木照明 ,   鎌田武信 ,   川井啓市 ,   城所仂 ,   木村健 ,   崎田隆夫 ,   杉山貢 ,   鈴木茂 ,   土屋周二 ,   戸部隆吉 ,   長町幸雄 ,   並木正義 ,   平塚秀雄 ,   水島和雄 ,   武藤輝一 ,   渡部洋三

ページ範囲:P.1735 - P.1742

はじめに
 上部消化管出血は,緊急に治療対策を要する場合が多い疾患であるが,種々の出血原因のなかでも,慢性消化性潰瘍,急性胃粘膜病変(Acute Gastric Mucosal Lesions:以下AGMLと略す),あるいは,いわゆるストレス潰瘍によるものが多い.
 これらの上部消化管出血に対する保存的治療法としては,全身管理とともに,局所的止血として各種の止血剤,制酸剤,抗コリン剤などが試みられているが,その止血効果は必ずしも十分なものとはいえず,しばしば緊急手術に頼らざるを得ないのが現実であつた.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1692 - P.1692

SURGERY—Contents, October 1982 Vol.92, No.4 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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