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文献詳細

雑誌文献

臨床外科37巻2号

1982年02月発行

特集 食道静脈瘤手術

緊急手術の時期と適応—肝硬変症例における経胸的食道離断術を中心に

著者: 吉田奎介1 武藤輝一2 塚田一博2

所属機関: 1新潟大学医学部中央手術部 2新潟大学医学部第1外科

ページ範囲:P.175 - P.182

文献概要

はじめに
 肝硬変による食道静脈瘤出血,とくにその急性期の処置はしばしば困難であり,その治療方針については種々議論の多いところである.アルコール性肝硬変症例を主な対象とした欧米での緊急シャント手術の直接死亡率は22〜80%1-6),大きなseriesでは40%以上の高率を示すものが多く,一方,食道静脈瘤結紮術7-10)や食道離断術11,12)などの直達手術も,シャント手術と変らない手術死亡率と高い術後再吐血率の問題を含んでいる.本邦では緊急手術を数多く経験した施設が少ないが,杉浦ら13)(東大第二外科)の62例(非肝硬変を含む)の東大二外科法では12.9%の死亡率であり,肝硬変のみについての小山14),そしてわれわれの経胸的食道離断術の成績は死亡率おのおの26.3%,15%で,それぞれの施設の待期あるいは予防手術のそれに比して著しく高率である.このような事実から,吐血急性期の緊急手術はできるだけ避け,保存的処置による止血の後待期手術を行うのが原則である.ただし,諸報告に見る手術死亡率は,その施設の医療機関としての性格や"緊急"の基準などによつて左右される面が大きく,これにこだわつて症例の選択を厳しくすることは正しくないであろう.むしろ,吐血を来たした肝硬変症例の悲惨な予後をまともに直視した上で治療方針を考えて行くべきである.近年,非手術的止血法として内視鏡的硬化15-18)(塞栓)療法や,経皮経肝的塞栓療法19,20)が注目され,これらが確立された場合には食道静脈瘤出血の治療体系は大きく変貌すると思われる.われわれもその方向に沿つて検討を進めているが,長い目での評価は今後に残されており,現時点ではriskを侵して緊急手術に踏み切らざるを得ない場合も少なくない.われわれは従来の保存的止血法の限界を念頭において,止血可能な症例に無闇に手術をしないことと,止血不能な場合には時期を失しないことを原則として,今日まで30例余りの緊急手術を行つて来た.その経験に基づいて保存的止血法の問題点,手術の適応などについて述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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