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文献詳細

雑誌文献

臨床外科37巻2号

1982年02月発行

文献概要

histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・2

フランス王家と外科

著者: 大村敏郎1

所属機関: 1川崎市立井田病院手術室

ページ範囲:P.243 - P.246

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□外科医と伝染病
 16世紀は解剖の世紀と呼ばれるくらい解剖領域に大きな進歩があつた.ベザリウスことアンドレ・ベザール(AndréVésale,1514〜1564)の「ファブリカ」(De corporis humani fabrica,1543)がその代表的なものであり,レオナルド・ダ・ビンチ(Leonardo da Vinci,1452〜1519)の業績も忘れてはならない.すぐれた観察力と描写の能力が解剖学を科学にまで持上げたといえる.医学にとつて大切な基礎であるが,まだ生理学や病理学が確立していない時代であるから,すぐこれが内科的医療に役立つというわけにはいかなかつた.だが外傷を中心とした外科に寄与する所は多かつた.解剖と外科は一体になつて進歩し,臨床に役立つたと考えてよいのである.アンブロアズ・パレ(Ambroise Paré,1510頃〜1590)の場合がよい例である.
 外科医の需要は戦争のために高まつていた.王家も領主たちも有能な外科医をかかえていることで,兵士の士気にまで影響を与えたようである.そして需要を高めたもう一つの理由に疫病の流行があつた.それはコロンブス(Christophar Colombus,1451〜1506)一行がアメリカ大陸からもち帰つてヨーロッパに広めてしまつた梅毒であり,時々猛威をふるつて人口をすつかりへらしてしまうペストであつた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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