文献詳細
特集 人工呼吸管理のPit fall
人工呼吸管理中の上部消化管出血
著者: 松木久1 磯部茂1 大坂道敏1 土屋嘉昭1 田宮洋一2 武藤輝一2
所属機関: 1日本歯科大学外科 2新潟大学医学部第1外科
ページ範囲:P.361 - P.367
文献概要
人工呼吸管理中の症例に時折みられる上部消化管出血の中には,もともと胃潰瘍や十二指腸潰瘍を有するものが,人工呼吸を要するような状況になつて同部から出血をきたす場合もありうるが,多くはストレス潰瘍ないしは急性粘膜性胃病変の範疇に属するものに由来する.その出血程度はまちまちであるが,一般に重篤な全身状態にあるため,治療としては保存的療法にたよらざるをえない場合が多い.
呼吸不全と消化管出血との関連について,Ha—rrisら1)はR.C.U.入院患者98例中20例に高度の消化管出血が認められたと述べている.そして部位的には胃が多く,しかもこうした場合の予後は極めて悪いことより,重度呼吸不全患者に対し予防的な制酸剤投与を推奨している.Aranhaら2)も,人工呼吸器使用中の患者で一般外科的に重要な三大合併症として,消化管出血,麻痺性イレウスおよび腸間膜の血行不全をあげ,このうち出血性胃炎ないしストレス潰瘍からの消化管出血は,強力な内科的療法によつてある程度避けられ,保存的療法が無効の場合,止血のために外科的処置が必要となる場合もあることを指摘している.
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