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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科37巻4号

1982年04月発行

雑誌目次

特集 レーザーと外科

レーザーの創傷治癒にあたえる影響

著者: 吉野肇一 ,   磯部潔 ,   山藤和夫

ページ範囲:P.459 - P.465

はじめに
 1960年にMaiman1)がルビー結晶から初めて発振させることに成功したレーザー光は,近代科学技術の最大の発見の一つとされている2).レーザー(Laser)はその原理を表わす,"Light Am—plification by Stimulated Emission of Radiation(放射の誘導放出による光増幅)"の頭文字から命名された.
 レーザー光は,通常の光に比し著しく波長が揃つており(単色性),波の位相も揃つているので,きわめて可干渉性(干渉して大きなエネルギーを出し得る)に富んでいる3).具体的な事例をあげると,出力わずか1mWのHe-Neレーザー光は太陽よりも明るいし4),立体像を再現するホログラフィーはレーザー光の可干渉性によるものである5)

レーザーメス

一般外科への応用

著者: 葛西洋一 ,   佐野文男

ページ範囲:P.467 - P.472

はじめに
 レーザーは昨今,医学領域の各分野で広く応用されつつあるが,なかでもレーザーメスは外科系各科の手術に新分野を開拓しつつある.とくに実質性臓器の手術には,レーザーメス特有の効果があげられることもその評価を大きくする理由になつている.しかしながら,一方では,レーザー光の特徴を十分に活用した利用法の確立にはいまだ多くの問題がある.したがつて現状では手術効果の点でレーザーメスに過大の期待をかけたための不満なども少なくないように思われる.
 ここでは,組織に接触することなく切開・止血・凝固が可能で,また高熱を発することにより組織を焼灼・炭化・蒸発させることができるCO2レーザーメスを中心に,一般外科領域における応用に関して著者らの経験と見解をのべる.

脳外科への導入

著者: 滝澤利明

ページ範囲:P.473 - P.479

脳外科用レーザー手術装置の開発
 現代の脳外科は1926年に米国のCushing1)がはじめて電気メスを臨床に導入した時に始つたと言つてよい.脳外科手術は出血との不断の闘いであるから有効な止血手段なくしてはどのような小さな手術も不可能である.有効な止血手段とは迅速,確実にして侵襲の少ない止血法であるが,一般外科と異なつてその解剖学的特殊性から結紮や止血鉗子は用いられない.従つて熱凝固を行う電気メス,双極電気凝固器が主要な武器であり,その他に止血クリップ,オキシセルワタ,ジェルフォーム,10%高調食塩水などが用いられている.
 1960年に米国のMaiman2)によつて開発されたルビーレーザー以来,種々のレーザーが開発されたが,それらのうち1965年に米国のPatel3)により開発されたCO2レーザーが脳外科領域に最も適したレーザーであり,これにYAGレーザーが補助として用いられる.

形成外科への応用

著者: ニムサクンナロン ,   谷野隆三郎 ,   長田光博

ページ範囲:P.481 - P.486

はじめに
 形成外科においては,主として体表面の変形を取り扱うため,常に美い仕上りを要求され,そのためにはatraumaticな操作が極めて重要である.したがつて,止血鉗子で不用意に挾み,電気メスで止血を行う場合,創縁の損傷が過大となり,atraumaticと言うにはほど遠いものになつてしまう.また,止血が不十分であると,術後出血による血腫の形成は感染を招く恐れがあり,手術結果を著しく損なうことになる.
 CO2レーザーメスは,その止血効果を最大の利点としており,形成外科領域においても,血管腫などの易出血性腫瘍の手術や,巨大脂肪腫など大量出血の予想される手術に対して主に用いられ,さらには腫瘍細胞の転移防止を目的として皮膚悪性腫瘍にも応用される.

レーザーの内視鏡への応用—適応と限界 YAGレーザーによる治療

消化器

著者: 渡辺豊 ,   鈴木博昭 ,   酒枝俊郎 ,   川村統勇 ,   神山正之 ,   永田卓司 ,   高橋宣胖 ,   久富沖 ,   長尾房大 ,   下田忠和

ページ範囲:P.489 - P.493

はじめに
 レーザーの医療への応用はかなり早い時期から試みられているが,内視鏡を介した消化器疾患に対するレーザーを利用した治療法はそれよりもかなり遅れてはじめられている.すなわち1960年Maiman9)がはじめてルビーによつてレーザーの発振に成功して間もなくの1963年にはMcGuffがレーザーによつてメラノーマの治療を試みており(Ketcham7)による),さらにその翌年の1964年に行われたFirst Annual Conference on Biologic Effects of Laser RadiatonではKlein,McGuff,KetchamおよびMintonらによつて腫瘍のレーザー治療に関する研究が報告されている(Fed. Proc., 1965より).それにもかかわらずレーザー内視鏡の出現がおくれたのはファイバースコープ用にレーザーを導光する方法がなかなかみつからなかつたからであり,アルゴンイオンレーザーやNd-YAGレーザーをガラスファイバーや水晶ファイバーで導光する方法が開発され,レーザー内視鏡が実用化されるようになつたのはMaimanから15年もたつてからである.
 1975年Fruhmorgen3)によつて最初に臨床的にレーザー内視鏡が行われ,以後,Fruhmorgen4)はじめKiefhaber8),Dwyer1,2)およびSilver-stein12-14)らによつて研究が進められてきたがここでわが国は著しい遅れをとつてしまつた.ただし彼等の研究は主として消化管出血に対する止血を主眼としていて消化器腫瘍の治療に関する研究は少なく,また最近になつてはじめられたばかりのようである.わが国のレーザー内視鏡はその出発が著しく遅れ,止血についての実績は欧米と比較して非常に少ないが,欧米で軽視されていた腫瘍の治療に関心が集中してしまい,その面では欧米を追越してしまつたというのが実状のようである.これは欧米と比較してわが国では重症消化管出血が少なく,逆に胃癌が多いという人種的な特殊事情があることと,わが国では胃癌診断について高度の技術をもつている人が多いこととも関連があろう.

呼吸器

著者: 雨宮隆太 ,   於保健吉 ,   山田隆一 ,   大谷高義 ,   平良修 ,   早川和志 ,   和田哲明 ,   新妻雅行 ,   滝沢延彦 ,   田原真 ,   小川一平 ,   早田義博

ページ範囲:P.499 - P.504

はじめに
 気管・気管支に腫瘍や肉芽組織が増生するに伴い,気道狭窄による呼吸困難が起こつてくる.このような症例に対し,教室では1980年3月より気管支ファイバースコープ下にYAGレーザー光を照射するEndoscopic YAG laser surgeryを行つてきた.本法は開胸手術に代わり,あるいは開胸手術前の治療法として気道内病変を除去し,気道の拡大と換気障害の解消を得ることが出来る.本法は新しい治療法であるため,未だ全国に普及せず,少数の施設で行われているにすぎない.しかし,交通機関の発達した現在,本法の適応となる患者は全国からYAGレーザー治療を行つている施設に転送され,死の恐怖から蘇つている.本文では,著者らが経験した症例の気道のEndo—scopic YAG laser surgeryに基づいてその治療適応と限界について検討した.諸氏の気道内病変治療の参考になれば幸いである.

泌尿器

著者: 岡田清己 ,   朝岡博 ,   天谷龍夫 ,   尾上泰彦 ,   小川成海 ,   岸本孝

ページ範囲:P.505 - P.508

はじめに
 レーザーが医学領域に導入され,診断ないしは治療の手段として用いられたのは最近のことである.泌尿器科領域においても1966年以来1),レーザーに関する多くの基礎的実験,臨床的経験が発表されてきた.レーザーという武器そのものが若く,今後新しいレーザーが開発される可能性は十分にある.それ故,医学部門での臨床応用もさらに拡大するものと考えられる.しかし,現在用いられている各種のレーザーのうち,泌尿器科領域において最も期待されているのは,アルゴン(Ar)ないしはNd-YAGレーザーを用いた内視鏡手術(以下,TULS,Transurethral Laser Surgery)である.一方,電気メスによる経尿道的手術(以下,TUER,Transurethral Electro Resection)はすでに完成した手術術式である.TUERには大きな利点もあるが,欠点もあり,その欠点をカバーするような手術法の開発が望まれていた.このことからも,レーザー外科,特にTULSは泌尿器科医にとつて非常に興味ある手術法と考えられる術式である.いままで種々の疾患に試みられているが,今回は膀胱腫瘍に対する経尿道的レーザー手術に関し文献的考察を試みNd-YAGレーザーを用いた自験例に関して検討を加える.

色素レーザーによる診断と治療

消化器

著者: 奥田茂 ,   三村征四郎 ,   大谷透 ,   今西清 ,   竜田正晴 ,   一居誠 ,   三嶋博昭 ,   石黒信吾

ページ範囲:P.509 - P.516

はじめに
 レーザーは今世紀最大の発見の一つに数えられ,光学器械である内視鏡への応用は無限であるといつても過言ではなかろう.既にYagあるいはアルゴンレーザーの強力なエネルギーによる蛋白・熱凝固作用は緊急内視鏡による止血法あるいは腫瘍・結石・異物などの新しい破壊方法として実用化の段階に入つている.
 私達は発振するエネルギーは小さいが任意の波長を得ることができる色素レーザーを内視鏡に応用し,波長の特性を利用して癌の新しい診断ならびに治療の方法を開発することを目的として研究をすすめている.色素レーザーは最近ようやく実用化したもので諸外国でも内視鏡への応用は未だなされていない.

呼吸器

著者: 加藤治文 ,   小中千守 ,   小野壽太郎 ,   沢裕幸 ,   西宮克明 ,   松島康 ,   篠原秀樹 ,   斉藤誠 ,   伴野隆久 ,   新妻雅行 ,   会田征彦 ,   早田義博 ,   會沢勝夫

ページ範囲:P.517 - P.522

はじめに
 腫瘍親和性光感受性物質を用いた腫瘍の診断,治療は1900年のRaab1)の報告に始まる.1940年代,ポルフィリン2)を用いた癌の診断治療の可能性が報告されて以来多くの興味が持たれたが,精製,装置に問題があり,人体での応用は遅れた.1960年,Lipson3)によりHematoporphyrin Derivative(HpD)が開発された.HpDは腫瘍への親和性が一層強く,さらに励起光線として1970年後半にレーザー装置が導入されたことにより,この分野は急速に開発されようとしている4)
 光感受性物質には多くのものがあるが,腫瘍に親和性のあるものでなければならなく,現在のところHpDが最も適している.

アルゴンイオンレーザーによる診断と治療

消化器

著者: 崎田隆夫 ,   福富久之 ,   川北勲 ,   中原朗 ,   加藤大典

ページ範囲:P.523 - P.526

はじめに
 レーザー光の熱エネルギーを利用した内視鏡への応用はYAGレーザーをはじめとして現在さかんにおこなわれている.一方,診断面への応用はいまだきわめて少ない.
 著者らは,胃粘膜分光分析にアルゴンレーザー光を導入し,より精度の高い分光分析を試みようと現在研究中であるが,この基礎研究中に胃癌患者の手術胃にアルゴンレーザー光を照射して観察したところ,癌の浸潤に一致して螢光の存在を発見するところとなつた.

レーザーによる治療

呼吸器

著者: 三橋重信

ページ範囲:P.527 - P.531

はじめに
 耳鼻咽喉科領域における炭酸ガスレーザー手術の応用は,1968年,Jakoの犬声帯に対する顕微鏡下喉頭内手術の実験を礎とし,1972年Strong,Jakoが初めて喉頭疾患に応用したのを嚆矢とする.
 教室においては1974年,国産初の顕微鏡下に炭酸ガスレーザー手術が可能な第1号試作機を開発して以来,基礎実験をふまえ,器械の開発とともに臨床応用例も200例を超えるに到つている.臨床応用例においては喉頭直達鏡を挿入し,顕微鏡下に病変部を拡大してレーザー手術を行うendolaryngeal laser mic—rosurgeryがその大半を占めており,その臨床的有用性は従来の方法に比し明らかに高く次第にその価値も認められてきた.

カラーグラフ・4

高アミラーゼ血症で発見され,胃体部の胃外性圧排像を呈した無黄疸の膵頭部癌

著者: 高木國夫 ,   竹腰隆男 ,   大橋計彦 ,   丸山雅一

ページ範囲:P.451 - P.456

 胃と膵とは密接な関連を有し,前回は膵体部癌による胃外性圧排像を呈した症例を供覧したが,この胃外性圧排像は膵体尾部に発生した癌による所見であつて,診断困難な膵体部癌のひろいあげに有用である.しかし,この腎外性圧排像は,膵体尾部癌のみでなく,膵頭部癌においても認められている.膵頭部癌では,十二指腸あるいは,胃下部に変化がおこるのは当然であるが,膵頭部に病変がありながら,十二指腸や胃下部に変化をみないで,胃体部に胃外性圧排像がみとめられる点は,両者がはなれているのに,一見奇異に感ぜられる.膵頭部癌と胃体部の胃外性圧排像との間には密接な関連がある.膵頭部の癌発生により,主膵管の狭窄や閉塞がおこり,病巣より末梢膵の主膵管の拡張とともに,膵組織の萎縮,それにひきつづいておこる線維症,すなわち癌による主膵管の狭窄や閉塞にもとづく末梢膵の二次的膵炎により,胃体部小彎や大彎に胃外性圧排像が発生するわけであり,また膵体尾部に発生した慢性膵炎によつても同様の所見が見出されるものである.胃体部の胃外性圧排像は,膵体尾部癌そのものによるのみでなく,膵頭部癌の二次的膵炎や,膵体尾部の慢性膵炎によつても起こりえるものであり,膵の異常をチェックするに当り,アミラーゼ値の上昇とともに,胃X線検査時の胃外性圧排所見が有用であることを示している.

histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・4

外科アカデミー創立の前後

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.537 - P.540

□植物園の外科
 18世紀に入る前にもう一つ触れておきたいことは,教育の場についてである.セーヌ川左岸で,現在サルペトリエール病院やピティエ病院の並んでいる「病院大通り」の西隣りに植物園がある.一見医学との関係はなさそうに思えるが,1626年に発足した当時は王立医学植物園という名のついた施設であつた.はじめ植物学と化学の講座がおかれた.
 前回少し述べたように,パリの医学部と対立関係にあつた南仏のモンペリエでは1593年に医学部が植物園(図2)を作つており,講義のための円形講堂や博物館を付設していた.パリでもこれに習つて国王ルイ13世が作ろうとしたが医学部の反対にあい,結局医学部とは無関係に王立の医学植物園としてスタートした経過がある.そして1673年には解剖と外科の講座が設けられて,解剖学のピエール・ディオニス(Pierre Dionis,1643〜1718)が活躍するのである(図3).ディオニスは「植物園で行つた外科手術講義録(1707)」を出版し,外科的臨床解剖学の基礎作りをした人といえる.このように医学部以外にも新しい医学教育の場がいくつか出てくることが17世紀の特徴でもある.

外科医のための臨床輸液問答・4

体液欠乏とその診断

著者: 長谷川博 ,   和田孝雄

ページ範囲:P.543 - P.548

1.脱水症の歴史
 和田 脱水症というのは,輸液というとすぐ出てくるので,私はこういう教科書的な話はあまり好きではないんです.けれども輸液という以上は,液が足りないから入れるということだから,ある程度脱水症というのは話として出て来ざるを得ないとは思います.しかしこれはどうなんでしようか.私は先生に比べると一時代若いので,そのへんの事情はもう一つわかりませんが.輸液というのは脱水症から始まつているんですか.
 長谷川 コレラの脱水症から始まつているんじやないでしようかね.

Q & A外科医のための統計学・4

平均値の差の検定—対応のない場合

著者: 草間悟 ,   杉田暉道

ページ範囲:P.549 - P.556

□あるデータを代表する値のいろいろ
 草間 条件を一定にして実験あるいは調査を行つても,得られる結果は一例ごとに異なつており,なかなか一定の値になり難いことはよく経験することです.このような場合平均値を計算してある条件下の値を代表させることは日常よく行われております.
 このような一群のデータを代表とする値として平均値のほかに中央値,最頻値(流行値,並数,モードなどともいわれる)などがあります.また平均値のなかには,もつとも頻繁に用いられる算術平均のほか幾何平均(対数平均ともいわれる),調和平均,加重平均などがあります.先ずこれらの値の意味,統計学上の意義などをお話しいただきたいと思います.

臨床研究

弁膜症手術後の低心拍出量症候群(LOS)発生に関与する因子の検討—最近の25例から

著者: 近江三喜男 ,   古川昭一 ,   小田達郎 ,   江里健輔 ,   毛利平

ページ範囲:P.559 - P.564

はじめに
 弁膜症手術の成績は近年,診断,治療の進歩,手術手技の確立,心筋保護法の改良などにより安定したものとなつている.しかしながら,未だhigh risk症例を手術する機会も多く,それに伴う術後の低心拍出量症候群(LOS)は心臓手術には不可避の問題として残されている.われわれは,術前,術中の諸因子を分析し,術後LOSの発生に関与する因子,特にhigh riskおよび非high risk症例について,LOS発生の基盤となつた因子の相異を検討したので若干の考察を加えて報告する.

肝障害時の術後アミノ酸輸液

著者: 浜崎啓介 ,   三村久 ,   小長英二 ,   田中紀章 ,   上田祐造 ,   大原利憲 ,   小林敏幸 ,   折田薫三

ページ範囲:P.565 - P.571

はじめに
 1968年Dudrickの報告1)以来,各種の栄養素を総合的に静脈内に投与する完全静脈栄養法(TPN)が術後管理に広く用いられ良好な成績が得られている2,3).これらの経験から長期絶食時などの侵襲による体蛋白代謝異常とその時投与されるアミノ酸とくに分枝鎖アミノ酸の体蛋白異化抑制効果が注目されるようになつた4,5).一方,肝硬変合併肝癌や高度の肝障害のみられた消化管,膵,胆道系疾患の患者では,術後血中アンモニアが高くなつたり,消化管出血などの合併症により蛋白制限の必要にせまられることがある.このような場合には肝疾患に伴うアミノ酸不均衡は改善されず,また従来のアミノ酸輸液を投与した場合には肝性脳症を惹起する恐れがある6,7)
 Fischerは,血中遊離アミノ酸レベルと肝性脳症の関連性について検討し,フェニールアラニン(Phe),チロジン(Tyr),トリプトファン(Trp)など芳香族アミノ酸の増加とロイシン(Leu),イソロイシン(Ile),バリン(Val)などの分枝鎖アミノ酸の減少を報告した.そして,芳香族アミノ酸を少なくし,分枝鎖アミノ酸を多くした特殊組成アミノ酸輸液すなわちフィッシャー液(FO−80)を作製した8)(表1).われわれは,わが国で作製されたFO−80と同一組成を有するGO−80(以下,フィッシャー液と記す)を肝障害患者の術後管理に用いその結果について検討したので報告する.

小児腸重積症における再発とその治療

著者: 大塩学而 ,   矢田貝凱 ,   大沢二郎 ,   滝吉郎 ,   細谷亮 ,   三輪智久 ,   篠田正昭

ページ範囲:P.573 - P.576

はじめに
 小児腸重積症は術前術後の全身管理の向上などにより極めて良好な救命率を示すようになつた.しかし小児腸重積症の原因については不明な点も多く,このために再発防止あるいは再発例に対する治療方針には意見の分かれる点が多い.このような点に関し,過去8年間182例の小児腸重積症の経験をもとに検討を加えた.

臨床報告

動脈側房室弁閉鎖不全,VSD,PSを伴った修正大血管転換症(Cardell B4)の手術治験例

著者: 豊増弘幸 ,   星野芳弘 ,   古賀道弘 ,   青柳成明 ,   小須賀健一

ページ範囲:P.577 - P.582

はじめに
 修正大血管転換症(以下,CTGAと略す)は,種々の合併奇形を有することが多く,外科的治療上注目される疾患のひとつである.
 われわれは,47歳の女性で,内臓錯位を伴つたCardell分類1),B4,Van Praagh分類2),situs inversus,D-loop,D-transposition(IDD)のCTGAにPS,VSDおよび動脈側房室弁閉鎖不全を合併した症例を経験し根治手術を行つたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Embolizationおよび肝動脈結紮にて治癒せしめえた肝破裂の1例

著者: 須藤峻章 ,   白羽誠 ,   石山堅司 ,   竹本雅彦 ,   浅川隆 ,   河村正生 ,   梅村博也 ,   久山健 ,   田村健治

ページ範囲:P.583 - P.586

はじめに
 肝破裂の治療としては,ドレナージ手術1),肝縫合法2),resectional debridement3),肝切除術4-6),肝動脈結紮7,8)など手術療法がおもにおこなわれているが,肝破裂では,大量の出血を伴い,肝機能は障害されており,とくに肝右葉を切除することは多大な危険性を伴うものである.
 私達は,最近某病院にて肝摘後肝右葉に被膜下破裂を来し,ドレナージ手術を施行したが出血がとまらず,本院に緊急入院し,angiographic embolizationにて出血のコントロールを行い,次いで肝動脈結紮にて治療せしめえた1例を経験した.肝破裂にembolizationを施行したのは本邦第1例目であると考えられるので若干の文献的考察を加えて報告する.

穿孔性腹膜炎をきたしたCrohn病の2例

著者: 大崎俊英 ,   香川茂雄 ,   高倉範尚 ,   石川純 ,   成末允勇 ,   坂本昌士 ,   田中早苗 ,   大朏祐治 ,   岩藤隆昭 ,   松田和雄

ページ範囲:P.587 - P.591

はじめに
 Crohn病の合併症としては,狭窄,瘻孔形成,出血等があるが,穿孔は稀である.われわれは穿孔性腹膜炎をきたした典型的Crohn病の2例を経験したので報告する.

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文献抄録

著者: 西尾剛毅 ,   柵瀨信太郎

ページ範囲:P.536 - P.536

Technetium-99m PIPIDAを用いた肝胆道シンチによる急性胆のう炎の診断
 Diagnosis oflAcute Cholecorstitis Using Hepatobiliar Scan With Technetium-99m PIPIDA/Michael, T. Bennett, et al.:The AmericanJournal of Surgery, 142:338-343, 1981.
 著者らは急性胆のう炎の早期手術の重要性に基づき,その診断法の一つとしてTechnetium-99m PIPIDA®(paraisopropylacetanilideiminoacetate)を用いた肝胆道シンチによる診断の正確さ,安全性を検討した.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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