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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科37巻6号

1982年06月発行

雑誌目次

特集 乳癌の縮小根治手術

術後遠隔成績よりみた検討

著者: 榎本耕治 ,   池田正 ,   藤原潔 ,   久保内光一 ,   小林英之 ,   洪淳一 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.938 - P.942

はじめに
 乳癌の根治手術はHalstedのRadical mast—ectomyを標準とすると,PateyのConservative radical mastectomy,次いでAuchinclossのModified radical mastectomy,さらにSimple mastectomy,Subcutaneous mastectomy,Qu—adrantectomyと縮小される(図1).
 一方,縮小手術の内容として,大小両胸筋の温存か切断かということの他に,同じ定型的根治手術のなかでも,1)皮膚切除範囲の縮小,2)皮下脂肪織の剥離範囲の縮小,3)リンパ節特にApical groupのリンパ節郭清範囲の縮小,植皮術の減少等がある.いずれの縮小手術の術式を選択するにしても,既存の治療成績に劣つては意味がない.

縮小根治手術の限界とその根拠

病理組織学的検討より

著者: 森本忠興 ,   北村宗生 ,   西本研一 ,   井上光郎 ,   園尾博司 ,   原田邦彦 ,   井上権治

ページ範囲:P.887 - P.895

はじめに
 乳癌の基本術式としてはHalsted1),Meyer2)によつて確立された定型的乳房切断術が長い間行われてきたが,近年,乳癌の早期例の増加に伴い,これらの症例に対する手術術式としては国の内外を問わず胸筋温存あるいは乳頭温存など,その縮小化傾向がみられる3).しかし,現在の乳癌治療体系の中で外科治療が主役をなし,しかも癌の治癒のほとんどは根治的な初回手術がなされた時においてのみ可能であることを考えた場合,手術の縮小化は慎重を期さねばならない.
 本稿では著者らの教室で従来より行つてきた乳癌の局所周辺ならびに乳管内進展の様相についての多数切片標本による病理組織学的検索結果をもとに乳癌縮小根治手術の限界について検討を加えてみる.

定型的根治手術成績の検討より

著者: 渡辺弘 ,   福田護 ,   金杉和男 ,   山口晋 ,   長島隆

ページ範囲:P.897 - P.902

はじめに
 乳癌の手術には,部分乳房切除術から拡大乳房根治術まで,多くの種類の手術法がある.その中で,Halsted,Meyerにより確立された定型的乳房切断術は,乳癌の標準術式として,今日まで広く使用されてきた.本術式は,乳腺のみならず,それを包む皮膚,皮下脂肪組織,筋膜および大・小胸筋を腋窩リンパ節と共に一塊として切除する方法で,今日でも最も信頼できる乳癌術式として高く評価できる.しかし最近,乳癌の早期症例が比較的多くなるにつれ,早期症例に対しては,胸筋を保存する非定型的乳房切断術でも十分に根治性が得られる,との報告が多く見られるようになつた.一部では,極端な縮小手術である部分切除で十分とする意見さえある.しかし,乳癌早期症例に対する一部の縮小手術の成績が,定型的手術と差がないことだけから,簡単に縮小手術を首肯することは,局所のより高い根治性を求める腫瘍外科医にとつて,厳に慎しまなければならない.
 われわれは,国立がんセンターと聖マリアンナ医科大学第1外科において定型的乳房切断術を施行した症例の5年生存率,10年生存率,リンパ節転移や再発の状況を分析し,縮小根治手術の限界とその根拠を検討した.

大・小両胸筋温存術式の適応

私はこうしている

著者: 泉雄勝

ページ範囲:P.903 - P.907

はじめに
 近年,世界的な傾向として,またここ10年来本邦においても,問題とされてきた乳癌の縮小手術については,およそ次の2つの流れに分けて考えることができる.その一つは乳癌の早期症例において,腋窩郭清は必要であるが,そのために胸筋の切除がすべて不可欠ではないとするもので,今一つは郭清も乳房切除範囲も含めて,侵襲を少なくし,これに放射線照射の援用を受けて,手術を縮小しようというものである.わが国での外科医の考え方の大部分は前者の範囲にとどまるものといえよう.すなわち,胸筋を温存する手術のみで,完全治癒を期待出来るものを適応として選ぶということである.
 広義の非定型手術には,①大・小両胸筋を温存して,乳房・腋窩の両組織を切除郭清するもの(Br+Ax),②大胸筋は温存して,小胸筋は切除するもの(Br+Ax+Mn手術),③小胸筋を温存して,大胸筋を切除するもの(Br+Ax+Mj)などが含まれるが,狭義のmodified radical mas—tectomyと呼ばれるものが,①のここで述べる両胸筋温存術式である.いずれにせよ冒頭に述べた理由で,これらの手術の評価に当つては,1)根治性(治癒)への期待と同時に,2)術後の美容あるいは機能保持ということが根底にあると思われる.従つて,これらの手術の,乳癌の手術としての可否や,いかに行わるべきかということよりも,いかなる症例に行われるべきかということが最大の論点となろう.

私はこうしている

著者: 武田清一

ページ範囲:P.909 - P.913

はじめに
 乳癌の根治手術術式として,大・小胸筋を切除し,リンパ節を郭清する術式が定型手術として一般に広く行われている.しかしながら最近,早期乳癌症例の増加に伴い,これに対する手術術式として胸筋を温存するPatey1),Auchincloss2),Madden3)などの非定型手術が行われる傾向にある4).教室では以前より,症例を選んで,大・小胸筋を温存する手術を行い好成績を挙げているが,本稿では,われわれが行つている大・小胸筋保存手術の治療成績と,その適応について述べる.

私はこうしている;大胸筋横切後縫合法

著者: 高橋勇

ページ範囲:P.915 - P.923

はじめに
 すべての乳癌に対して,画一的な手術術式が,はたして妥当であるかどうかということについて,著者は,従来から深い関心を抱いていた.とくに近年のように,早い時期に乳腺の腫瘤に気付き,早期に乳癌の診断も可能になつてきた現状や,全身麻酔の十分な管理下で行う手術操作の容易さなどを考えれば,100年も前の術式をそのまますべてに行う必要があるであろうか.症例についても,近年はTNM分類による病期別の仕分けがなされていることからも,その進行度に応じた適切な術式が考慮さるべきであろう.進行癌であれば,時には定型乳切のみならず,拡大乳切が選ばれてもよいであろうし,一方,非浸潤性の乳癌であれば,定型乳切は過大であり,単乳切や時には乳腺切除のみでもよいと考えられる症例も存在する.従つて,比較的早期の乳癌には,この中間的な術式の選択があり得る.これがすなわち非定型乳切であり,縮小手術であると思われる.
 このような観点から,著者らは,乳癌の病期別に手術術式を選択することに決めて実施しているが,このうち,とくに著者が縮小乳癌根治手術として行つている,大胸筋を横切開大し,小胸筋はそのまま保存してリンパ節を郭清した後,再び大胸筋を縫合して保存する方法,すなわち,大胸筋横切後縫合法による大小両胸筋保存乳癌根治手術の術式について詳述する.

小胸筋切除・大胸筋温存術式の適応

私はこうしている

著者: 深見敦夫

ページ範囲:P.925 - P.930

はじめに
 乳癌根治手術症例の5年,10年生存率を癌研の症例でみると,表1のごとく次第に向上して,5生率は1966〜1970年81.4%,1971〜1975年82.4%,10生率は1966〜1970年70%である.この成績向上の要因の大部分は表2のごとく,Stage Ⅰの症例の増加によつている.このように,手術後,救命され,長期にわたり通常の社会生活を営み得る症例の増加の結果,乳癌の外科療法の考え方が,ただ単に救命だけに焦点をしぼるのではなく,術後の患者の生活の質的な方面,すなわち,術側上肢の運動,浮腫あるいは胸壁の著しい変形の軽減,さらに,将来の乳房再建術の難易も考慮した手術術式が,とくに早期乳癌治療症例には配慮してもよい時期に来ていると考えられる.欧米では5),今世紀の半ばごろより,定型乳房切断術以外の縮小手術が芽生えて来たが,本邦で,これらの術式に関心が向けられたのは最近である.癌研外科では1974年より,trialとして積極的に大胸筋保存根治乳房切断術を採用して来て,表3のごとく,1980年には70.3%の症例にprimary caseの根治手術として本手術を行うに至つた.今回はこの術式の中,Patey手術について,われわれの行つている方法を報告したい.

私はこうしている

著者: 山本泰久 ,   岩藤真治 ,   酒井邦彦 ,   石原清宏 ,   庄達夫 ,   田口忠宏 ,   西律

ページ範囲:P.931 - P.937

はじめに
 1903年,Halstedが定型的乳房切断術を発表して以来,乳癌根治術は縮小あるいは拡大され今日に至つている.1969年,Haagensen,Miller,Kaae,Handley,Butcher,Dahl-Iversen,Wi—lliams1)らの10年におよぶ国際共同研究の結果,縮小手術と拡大根治術の間に差がみられないことが発表された.また1976年,スイスの国際乳癌学会でもいろいろな角度から乳癌の治療が再検討され,反省期に入つたように思われる.わが国でも1978年以後,症例に応じて縮小手術,定型的根治術,あるいは拡大根治術を行うことの重要性がしばしば検討され,数多くの論文が発表されている2-9).最近では部分切除,乳房切除後の形成術などの報告もみられ,むしろ混迷期に入つた感さえある.
 縮小手術と定型的根治術の違いは,胸筋を保存するか否かということで,リンパ節郭清を十分に行うことに変りない.ただAuchinclossの手術は大小胸筋を保存するため,筋間筋膜や小胸筋付着部内側のリンパ管に癌細胞が取り残される危険性があり,リンパ節転移が3個以上ある場合は,Pateyの小胸筋除去手術あるいはそれ以上の手術が望ましいと考えられる.この論文はすでに拡大根治術を行つたStage Ⅰ,Ⅱ症例406例をT,Nと転移リンパ節nについて検討し,retrospec—tiveに縮小手術の限界について考察した.

カラーグラフ・5

高アミラーゼ血症ならびに胃外性圧排像により発見された粘液産生性膵体部早期癌

著者: 高木國夫 ,   竹腰隆男 ,   大橋計彦 ,   丸山雅一

ページ範囲:P.881 - P.885

 膵癌の治療成績は,きわめて不良であつて,予後不良な膵癌の治療成績の向上には,何をおいても,癌が膵内に限局し,転移をみとめない切除可能な膵癌を発見して,治療することで,癌の治療の原則—早期発見・早期治療も膵癌にあてはまることである.近年の膵診断技術の進歩は目覚しいものがあるが,膵癌の早期診断はきわめて困難であつた.近年,膵癌の早期診断に努力がなされ,直径2cm以下の小膵癌が報告されて来ている.われわれも,膵癌の早期診断に努力し,直径2cm以下の小膵癌の分析ならびに膵癌の新しいERCP分類(本誌1月号に掲載)により,膵癌の早期発見のスクリーニングに,血清,尿アミラーゼ高値例,胃外性圧排像(本誌3月号),ならびに超音波検査による主膵管の拡張(本誌2月号)が有効であることを報告した.
 膵癌と一括して言われた場合,Ductal Carcinomaが大部分であるが,われわれのERCP分類の中でⅢ型は粘液産生性の主膵管内癌であつて,切除率も75%と高く,4例中3例は病変が膵内に限局し,転移をみとめない早期膵癌であつた.術後2年以内であるが再発をみとめていない.

histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・5

ドゥソーの時代

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.947 - P.950

□現代の外科アカデミー
 前回フランスの王立外科アカデミー創立について書いたが,ちようど印刷にかかつている最中に,築地の国立がんセンター外科の長谷川博先生が,フランス外科アカデミーの会員に選ばれ,パリでその推挙式が行われたとのニュースをきいた.1月27日のことである.
 このフランス外科アカデミーは1731年に創立された王立外科アカデミーの流れをくむ権威のあるものである.毎年1月の総会ですぐれた外科の業績をあげた人々を新しい会員に迎えるが,正会員・名誉会員・外国人会員とそれぞれに定員があつて,正会員と名誉会員の選挙によつて推挙されて決定されている.

外科医のための臨床輸液問答・5

尿の見方—その2—

著者: 長谷川博 ,   和田孝雄

ページ範囲:P.953 - P.958

尿滲透圧と予後の関係
 和田 せつかく尿の話になつたので,先生がお作りになつた「尿滲透圧と電解質濃度,urea濃度の関係」という図表(前号にも掲載)を説明して頂けますか.
 長谷川 この図は,尿滲透圧は,尿中の電解質のツブとureaのツブの総和に等しい—という事を実証しようとしており,点がほとんど45°の線の近辺にあります.タテ軸が実測した滲透圧,ヨコ軸がそれぞれ別個に測定したNa.K.Cl.ureaのmEq/l値ないしmOsm値の総和です.この図で私が主張したいことは,Na.K.Clとureaとが,滲透圧の枠の中でシェアを奪い合つているということです.この考え方および事実は,電解質バランスとN代謝,あるいは老廃物排泄と尿中電解質濃度との関係を,臨床的に使いこなすカギだと思つています.塩分が尿中にたくさん出るとureaが出なくなりAzo—temiaになり易いのです.反対に尿中電解質の総和を少なくする努力をすると,たとえ腎障害のある手術患者でも,Azotemiaを起こさないですむのです.この輸液の概念を実戦に役立たせる時に,一つだけ眼をつぶつて了解して頂きたい計算があります.それは,N濃度g/dlを滲透圧mOsm/kgに換える暗算です.すなわち,尿中N濃度(正確にはurea-N濃度(28g/lという濃度を滲透圧に換算するには,①urea分子の中にはNが2個入つている.
②Nの分子量は14,2個のNで28である.③urea 1モル中には28 gのNが含まれている——つまり,ureaの1モルないし1000mOsm/kgの液1lには28gのNが入つていると解いてきます.いま,1lの水の中にureaが7g溶けていると,滲透圧は250mOsm/kg(1000×7/28=250)になります.このN濃度7g/lというのは,1日尿量1lで,その中の老廃物N量7gという,控え目に水をのむ健康人のありふれたパターンです.それはともかくとして,Nバランスと電解質バランス・滲透圧バランスを同じスケール(mEq/l〜mOsm/kg)でタシ算ヒキ算する基礎ができました.一口に言えば, 尿中N濃度=尿滲透圧一(Na+K+Cl)       mOsm/kg  mEq/lというヒキ算を時々刻々の尿について暗算してゆくと,その患者の尿毒症的な予後の良否が見当がついたり,サジ加減的な軌道修正をする根拠がつかめたりするのです.

Q & A外科医のための統計学・5

平均値の差の検定—対応のある場合

著者: 草間悟 ,   杉田暉道

ページ範囲:P.961 - P.967

□対応のある場合とはどういうことか
 草間 今回は対応のある場合の平均値の差の検定について勉強したいと思います.杉田先生,実例でこれを説明していただけませんでしようか.
 杉田 わかりました.まず対応のある場合とはどういうことか説明しましよう.この方法をpaired t-testともいいます.すなわち,同一の人についてある処置を行い,その前後の血液中のある測定値を比較するとか,現在のある測定値とそれから半年後の測定値とを比較する場合があります.そしてこのような対象者を何人か集めた2つのグループ間には関連があるので,これを対応がある場合といいます.

外科医の工夫

経腰的大動脈造影法における合併症軽減の工夫—側孔針の使用と超音波誘導下穿刺法について

著者: 藤原等 ,   松永裕司 ,   十九浦敏男 ,   岩井武尚 ,   紺野進 ,   鈴木宗治

ページ範囲:P.969 - P.975

はじめに
 腹部大動脈以下の血管病変の描出には,今日,主としてそけい部から行うSeldinger法と,経腰的大動脈造影法(Translumbar aortography,以下TLA)があることは良く知られている.われわれはSeldinger法に次いで第二選択としてTLAを採用してきたが,合併症の検討からその安全性を高めるために2点を工夫したので報告する.

臨床研究

Malignant atrophic papulosis(Degos disease)の1例—本邦報告例と新しい治療法について

著者: 八木田旭邦 ,   石川貴久 ,   伊藤久 ,   小野美貴子 ,   北島政樹 ,   立川勲 ,   相馬智 ,   林至 ,   中條知孝 ,   長島正治

ページ範囲:P.977 - P.983

はじめに
 Malignant atrophic papulosis1)は,Degos病とも呼ばれているが,極めてまれな疾患で,欧米も含めて80数例の文献的報告をみるのみである.
 主として,皮膚と腸管が特異的に冒され,腸管の穿孔による腹膜炎で死亡する難治性疾患である.本症は原因不明の疾患で,その治療法も見出されていない.われわれはウロキナーゼおよびProstaglandin I2が,臨床的に有用であるとの示唆をえたので,文献的考察を加えて報告する.

臨床報告

われわれの経験した気管憩室の1例

著者: 蔵本純一 ,   西平哲郎 ,   丹正義 ,   芦沢一喜 ,   葛西森夫 ,   酒井信光

ページ範囲:P.985 - P.988

はじめに
 臓器の憩室の中で消化管の憩室がごく一般的であるのに比べて,気管・気管支の憩室は極めて珍しく報告例も少ない.最近われわれは,胸部食道癌切除手術中に,偶然に気管憩室を発見し切除する機会を得たので紹介し,現在までの本邦報告例16例と合わせて文献的考察を加えて報告する.

左上肢に発生したproliferative fasciitisの1手術例

著者: 江崎卓弘 ,   荒谷清司 ,   佐伯和利 ,   由茅宏文 ,   広瀬総三 ,   佐々木幸治 ,   永末直文 ,   小川勇一郎 ,   浜田忠雄 ,   東龍雄

ページ範囲:P.989 - P.992

はじめに
 軟部組織腫瘍のうち,線維肉腫,横紋筋肉腫,脂肪肉腫などの悪性病変と鑑別すべきものとしてprolifera—tive fasciitisがあり,これに関する病理学的報告は散見されるが,その臨床,特に診断についての記載は少ない.
 最近われわれはこのproliferative fasciitisを術前診断し,摘出術をおこなつたので,これについて若干の文献的考察を加えて報告する.

同側乳腺に原発性乳癌と転移性卵巣ディスゲルミノームとが合併した1例

著者: 桧垣健二 ,   桑田康典 ,   柏原瑩爾 ,   藤本英雄 ,   松岡順治 ,   黒瀬匡雄 ,   西山宜考 ,   南波晋 ,   岡本司 ,   大朏裕治 ,   篠崎洋二

ページ範囲:P.993 - P.997

はじめに
 乳腺の転移性腫瘍は,稀な疾患で本邦において現在までに80例の報告があるのみである.そのうち卵巣腫瘍の乳腺転移例は極めて少なく,卵巣ディスゲルミノームの転移例は内外の文献を調べてもこれまでに報告がない.われわれは最近,妊娠を契機として急速に進行した,原発性乳癌と卵巣ディスゲルミノームの乳腺転移とが同時に右側乳腺に存在した巨大腫瘍を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Abdominal Anginaの1治験例

著者: 池沢輝男 ,   前田正司 ,   中神一人 ,   早川直和 ,   仲田幸文

ページ範囲:P.999 - P.1002

はじめに
 Abdominal anginaは主として動脈硬化により腹腔動脈・上下腸間膜動脈が徐々に狭窄・閉塞し,慢性腸管虚血を招来することにより症状を呈する疾患であるが,これを術前に診断し血行再建術を施行した例は,本邦ではまれなものと思われる1).最近われわれは動脈硬化によるabdominal anginaの1手術例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

出血性副腎偽嚢胞の1手術例

著者: 内田道男 ,   岩佐裕 ,   根本浩介

ページ範囲:P.1003 - P.1006

はじめに
 副腎嚢腫は稀な疾患とされている.最近われわれは初め肝,胆嚢または腎周囲の炎症疾患と思われる症状を呈した出血性副腎偽嚢胞の1例を経験したので報告する.

大腸ファイバースコープによるS状結腸捻転症の非観血的治療

著者: 佐々木明 ,   武田功 ,   長江聡一 ,   榎本正満 ,   鷲田晢雄 ,   中川潤 ,   井出愛邦

ページ範囲:P.1007 - P.1011

はじめに
 S状結腸捻転症2例に対し,大腸ファイバースコープ(以下,CFと略す)を用いて非観血的治療に成功した.後に待期的S状結腸切除および端々吻合を行い良好な結果を得たのでここに報告する.あわせて治療方法について若干の文献的考察を試みた.

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文献抄録

著者: 柵瀨信太郎 ,   西尾剛毅

ページ範囲:P.945 - P.945

Stage Ⅱ(T1N1M0)乳癌の予後・乳癌に於ける腋窩転移の評価
 Prognosis in Stage II(T1N1M0)Breast Cancer/Axillary Micro- and Macrometastases in BreastCancer/Paul P. Rosen, et al.:Ann. Surg., 194(5):576-591, 1981.
 〈目的〉乳癌の予後は,腫瘍の大きさとリンパ節転移の程度に大いに関係することは認められている.著者らは,早期癌と考えられるT1乳癌(腫瘍直径が2cm以下のもの)症例について,種々な点について(特にリンパ節転移との関係)分析を行つた.
 〈対象〉N. Y.のCancer Memorial病院で,1964年から1969年までの6年間に治療を受けたT1乳癌の症例は524例であり,このうち142例(27%)に腋窩転移を認めた.これらをA:腫瘍径が1cm以下でリンパ節転移のないもの.B:腫瘍径が1〜2cmでリンパ節転移のないもの.C:腫瘍径が2cm以下でリンパ節転移が1つのみのもの.(TNM分類ではT1,N1a,M0-Stage Ⅰに相当すると考えてよい.)D:腫瘍径が2cm以下でリンパ節転移が2コ以上のものに分け,その各々について分析を行つた.経過観察期間は平均10年間である(表,図参照).

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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