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文献詳細

雑誌文献

臨床外科37巻6号

1982年06月発行

文献概要

外科医のための臨床輸液問答・5

尿の見方—その2—

著者: 長谷川博1 和田孝雄2

所属機関: 1国立がんセンター外科 2慶大医学部内科

ページ範囲:P.953 - P.958

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尿滲透圧と予後の関係
 和田 せつかく尿の話になつたので,先生がお作りになつた「尿滲透圧と電解質濃度,urea濃度の関係」という図表(前号にも掲載)を説明して頂けますか.
 長谷川 この図は,尿滲透圧は,尿中の電解質のツブとureaのツブの総和に等しい—という事を実証しようとしており,点がほとんど45°の線の近辺にあります.タテ軸が実測した滲透圧,ヨコ軸がそれぞれ別個に測定したNa.K.Cl.ureaのmEq/l値ないしmOsm値の総和です.この図で私が主張したいことは,Na.K.Clとureaとが,滲透圧の枠の中でシェアを奪い合つているということです.この考え方および事実は,電解質バランスとN代謝,あるいは老廃物排泄と尿中電解質濃度との関係を,臨床的に使いこなすカギだと思つています.塩分が尿中にたくさん出るとureaが出なくなりAzo—temiaになり易いのです.反対に尿中電解質の総和を少なくする努力をすると,たとえ腎障害のある手術患者でも,Azotemiaを起こさないですむのです.この輸液の概念を実戦に役立たせる時に,一つだけ眼をつぶつて了解して頂きたい計算があります.それは,N濃度g/dlを滲透圧mOsm/kgに換える暗算です.すなわち,尿中N濃度(正確にはurea-N濃度(28g/lという濃度を滲透圧に換算するには,①urea分子の中にはNが2個入つている.
②Nの分子量は14,2個のNで28である.③urea 1モル中には28 gのNが含まれている——つまり,ureaの1モルないし1000mOsm/kgの液1lには28gのNが入つていると解いてきます.いま,1lの水の中にureaが7g溶けていると,滲透圧は250mOsm/kg(1000×7/28=250)になります.このN濃度7g/lというのは,1日尿量1lで,その中の老廃物N量7gという,控え目に水をのむ健康人のありふれたパターンです.それはともかくとして,Nバランスと電解質バランス・滲透圧バランスを同じスケール(mEq/l〜mOsm/kg)でタシ算ヒキ算する基礎ができました.一口に言えば, 尿中N濃度=尿滲透圧一(Na+K+Cl)       mOsm/kg  mEq/lというヒキ算を時々刻々の尿について暗算してゆくと,その患者の尿毒症的な予後の良否が見当がついたり,サジ加減的な軌道修正をする根拠がつかめたりするのです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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