文献詳細
臨床研究
術後における一過性心筋梗塞様心電図についての臨床的検討
著者: 佐々寛己1 水口一衛2 蜂須賀喜多男3 山口晃弘3 磯谷正敏3 近藤哲3 堀明洋3 安井章裕3 山田育男3 広瀬省吾3 宮地正彦3 深田伸二3
所属機関: 1大垣市民病院第1内科 2大垣市民病院集中治療室 3大垣市民病院外科
ページ範囲:P.1261 - P.1267
文献概要
近年外科学や麻酔学の進歩に加えICUを中心とした術後管理体制の完備が背景となつて手術人口も高齢化が著しい.このため術中術後に循環器疾患を併発する機会が高くなり,とりわけ急性心筋梗塞はその予後の面からも術者の重大な関心事とされてきた.急性心筋梗塞の診断は自覚症状,心電図所見及び血清酵素により下されるのが普通であるが,術後の症例に関しては鎮痛剤の使用や創部痛の為,患者自身典型的な胸痛を訴えることは少なく術後に心電図を撮影しなければ見逃す場合の多いことが予想される.また術後の心電図でST上昇や異常Qを示し,明らかに急性心筋梗塞と考えられるものが経過を追つてみるとその心電図所見が一過性であり,また血清酵素の上昇も極く軽度の場合が多いとする事実も指摘されている1).
以上の如く手術に際して遭遇する急性心筋梗塞は通常経験されるものとはかなり異なつた様相を呈する点で非常に興味を抱かせるが,大切なのはこれが実地臨床面でいかなる臨床的意義を有しているかという点である.この課題を検討するため,今回著者らは術後の心電図で一過性の心筋梗塞様所見を呈した16例の成績をまとめ,①この心電図変化がはたして心筋壊死に基づくものかどうか,②心筋壊死だとしたら通常の急性心筋梗塞と発生機序に関して相違があるか否か,また③その臨床的意義はどうかという点を中心に考察を加えた.
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