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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科38巻1号

1983年01月発行

雑誌目次

特集 よくみる肛門部疾患診療のポイント

知つておきたい肛門の病態と生理

著者: 坂部孝

ページ範囲:P.17 - P.22

はじめに
 臨床外科医の日常診療において,肛門疾患に対しては多種多様な治療法が行われているのが現状であるが,生命に直接関係するような重篤な疾患がほとんどないので,ややもすると軽視されがちであるのも事実である.
 肛門疾患と常に密接な関連を有しているのは排便であるから,少なくとも排便によつておこる生理的変化とそれによる種々の病態とを理解して,肛門疾患の診断にあたることは重要であると考える.

外来でできる肛門疾患の治療

著者: 細谷万夫

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 外来で出来る肛門疾患の診療ポイントとの課題であるが,筆者は肛門部疾患の約80%前後は外来通院治療で,処置出来るものと考えている.高度の脱出痔核(脱肛),深部痔瘻,高度直腸脱,肛門腫瘍等を除いて大半は外来治療(手術も含めて)が可能と思われる.
 表1は本院来院患者—初診者—の1981年分の疾患分類表であるが,内外痔核,肛門血栓症(血栓性外痔核及び内痔核)及び裂肛(見張り疣の著明でないもの)等はすべて非観血的保存療法で軽快しており,この3者は全体のほぼ50%以上を示している.脱肛及び痔瘻患者は手術的に処置しているが,手術後帰宅,通院治療を行つている.表でみる残り数%,即ち高度痔瘻,脱肛,直脱の強い症例及び腫瘍等は,やはり入院治療が必要であり,専門病院に依頼しているが,かかる症例は年間30例前後である.

緊急処置を要する肛門疾患

著者: 吉田鉄郎

ページ範囲:P.29 - P.37

はじめに
 肛門疾患では緊急に処置しなければ患者が死亡するといつた疾患は少ない.しかし激しい苦痛を訴えて来院し,適切で迅速な治療を求められるcaseは多い.
 強い肛門部痛を訴えるものとしては,内痔核脱肛嵌頓,直腸脱脱出嵌頓,直腸肛門周囲膿瘍,裂肛などがあり,激しい肛門出血を示すものには内痔核よりの出血があるが,これは出血性素因や血液疾患等の合併症のないものではそれ程大出血とはならない.しかしながら痔核手術後の出血は時には大量に出てショック状態となる事あり,これこそ緊急に処置しないと危険である.但し下記の疾患による大腸からは出血もかなり鮮やかな赤い色調の事もあり,疑わしい場合には内視鏡による肛門〜大腸の検査を必要とする.すなわち大腸憩室症,潰瘍性大腸炎,Angio dysplesia(Haemangioma),若年性大腸ポリープなどである.止血法としては,①ガーゼタンポン圧迫法.②結紮止血.③創の閉鎖.④局所止血剤アビテン Avitene ⑤接触性赤外線コアグレータがある.また排便障害(糞便栓塞)はイレウス様症状を示し,仙骨麻砕の下に,摘便を要することもある.肛門直腸内異物,糞便内異物,肛門から挿入された異物では思いもよらない物を入れる事あり摘除に苦労する事がある.肛門直腸外傷,刺杭創,分娩時外傷などでは時期を失せずに適切な処置が必要である.

肛門手術の麻酔法

著者: 竹馬浩

ページ範囲:P.39 - P.44

はじめに
 肛門手術は狭い視野の中でデリケートな操作を要求されるが故に,その麻酔法の選択にあたつては
 (1)十分な肛門括約筋の弛緩
 (2)確実な無痛効果と安全性
 (3)肛門部の所見ができるだけ正確な状態で把握できること
などを考慮に入れなければならない.
 従来,肛門手術の麻酔に関しては,局麻か腰麻が比較的無批判に行われ,手術時間や手術体位との関連において,より安全で合理的な麻酔法の選択に対する関心が不足している感があるようだ.

治療法の動向—痔瘻—括約筋温存術式

著者: 岩垂純一 ,   柳田通 ,   岡田光生 ,   隅越幸男

ページ範囲:P.45 - P.50

はじめに
 今まで痔瘻の手術においては全瘻管を切開し開放創とする切開開放術式(Lay open法)が主に行われてきた.この術式は根治性の点からは,確実なものであつたが全瘻管を切開開放するために瘻管の括約筋を貫通する部位,深さによつては括約筋の侵襲は大きなものとなり,したがつて術後の肛門の変形,変位,そして時には肛門機能障害までも生じることがあつた.
 そのため,より少ない手術侵襲で痔瘻を手術できないかとの考えより種々の括約筋温存術式が工夫され試みられてきたが,ともすれば根治性の点で完全とは言えなかつた.

治療法の動向—痔核

著者: 松田保秀 ,   綿引洋一 ,   加陽直美 ,   浜辺昇 ,   守谷孝夫

ページ範囲:P.53 - P.57

はじめに
 痔核は腫瘍ではなくて良性の静脈性変化であり,過剰な上皮や粘膜下諸組織を伴い,弾力線維が著明に減つた静脈塊であつて,静脈瘤性に内腔が拡大したものと定義されている1).しかも人間以外の動物には無いのが特徴で,長年にわたる排便時の怒責習慣が第一の原因であるという.痔核治療の歴史的流れと,最近の動向について簡単に述べ,現在主流となつている痔核の結紮切除術について,私共の方法を中心に紹介したい.

治療法の動向—裂肛

著者: 佐々木茂雄

ページ範囲:P.59 - P.65

はじめに
 裂肛は内痔核,痔瘻と共に最も多い肛門部疾患で,私の肛門科外来を訪れる患者の22%が裂肛を有する患者である.その中で裂肛のみのものは6.9%と割合に少なく,内痔核と合併しているものは,12.7%と比較的多い.つまり裂肛患者の約半数が内痔核を併発しているという事になる.その病因については,いわゆる肛門感染(Anal infection)によるという説もあり,また硬い便塊の排出によつて機械的に肛門入口部の肛門上皮が断裂する為に起こると唱える人もある.創の大きさは,大豆大〜小豆大であり,好発部位は肛門後側の歯状線より下の部分で,単発性のものが大部分で,前側に生ずるものは少なく,女性では全裂肛の10%,男性では1%である.裂肛が前後壁に集中するのは,解剖学的に,これらの部分が外括約筋による支持が少ない為と説明されている.側方に存在する裂肛は稀であり,その場合には他の場所にも合計2〜3個の創が認められ,他の基礎疾患を合併している事が多い.
 急性裂肛の特徴的な症状は,排便時の疼痛であり,多くの場合患者は,便通時に肛門が切れて痛いと訴える.出血は必発の症状ではなく,出血量はチリ紙に付く程度であり,内痔核の時の様な多量の出血はない.この時期に外来を訪れる患者は割合に少ない.創は新鮮で浅く,ピンク色を呈し,後述する肛門括約筋の攣縮もあまりなく,大部分は保存療法で治癒する.

後障害の予防と対策

著者: 荒川広太郎

ページ範囲:P.67 - P.72

はじめに
 肛門部疾患に限らず外科的治療には多かれ少なかれ苦痛をともなうものである.これを患者の側からみると,手術後の苦痛を何らかの異常経過と結びつけて,悲観的に考える傾向がある.「出血が多いが大丈夫だろうか」とか「どうも痛みの様子からして手術がうまくゆかなかつたのではあるまいか」など,漠然とした不安に悩むものである.著者の経験では肛門手術後の患者のほぼ半数の人々が,この種の強い不安を持つていると推定される.
 一方医師は,これらの症状の大部分を単なる一過性の生体反応であり,患者の杞憂であると受けとめている.そして患者に,その不安は術後の治癒過程の一症状に過ぎないことを繰り返し説明し,苦痛を解消しようと努める.このように患者と医師のコミニュケーションが,術後の不安を取り除き理解と協力が得られる方向に進む場合は,患者の苦痛が少なく実際の障害もわずかで,術後の経過は概ね良好である.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・1

食道表在癌

著者: 板橋正幸 ,   廣田映五 ,   飯塚紀文 ,   平嶋登志夫

ページ範囲:P.14 - P.15

 食道癌の予後は,国内および世界的にみて良いとは言えない.ちなみに我国の食道疾患研究会の全国的統計によれば切除食道癌例全体の5年生存率は30%以下である.その理由は,臓器が解剖学的に手術の困難性を伴い,術後合併症を伴い易い臓器であることもあるが,問題は発見が遅く,進行癌が多い事であろう.従つて早期の癌発見が切望されるわけであるが,上記研究会の食道疾患取扱い規約によれば,食道癌で,癌巣が粘膜および粘膜下層までに局限しているものを「表在癌」と呼び,そのうちリンパ節転移がない例を「早期癌」と規定している.
 本供覧症例が,早期あるいは表在癌発見の一助となれば幸甚である.

座談会

後障害からみた肛門疾患診療のポイント

著者: 竹馬浩 ,   岩垂純一 ,   高野正博 ,   伊藤良一 ,   荒川広太郎

ページ範囲:P.74 - P.86

 この座談会に糾合された先生方は,勿論この領域におけるエキスパートであり,昨今の肛門疾患診療の在り方についても一家言をお持ちの方々である.そして,なにより第一線で診療に携わつておられる実地医家である.
 ここで開陳された,さまざまのノウハウは各氏の豊富な経験と,多くの患者から学びえた生きた教訓といえよう.

新形影夜話・1【新連載】

外科医たる者の心構え

著者: 陣内傳之助

ページ範囲:P.94 - P.96

 私が医学部を卒業して,どんなことから外科をやることになつたかということから書き始めてみたいと思う.
 当時,私の家にはとても開業するだけの資力はなかつたので,勤務医として病院勤めをしようと思つたわけである.それにはしかるべき病院の院長になるのが最高の地位だから,なるべく病院収入を多く挙げて発言権のもてる診療科,すなわち内科か外科のいずれかを選ぶのがよいと先輩が教えてくれた.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン【新連載】

変形性膝関節症の治療;とくに週一度の関節内ステロイド注入の是非について

著者: 伊勢亀富士朗 ,  

ページ範囲:P.97 - P.97

 A;変形性膝関節症はさまざまな病態からなり,この病態の一つ一つを根気よく除去することが治療の向上につながつて行く.
 変形性膝関節症は1:4で女性に多く,82%が肥満を示し,89.5%は内反膝を呈し,かつ57%に下腿内捻を伴う.不安定膝は42.5%にみられ屈曲伸展障害も70.5%で高い.不顕性靭帯損傷と半月損傷は各々34%でベーカーのう腫の発生も23%である.特発性滑膜出血は1.2%,関節水腫は13.6%で多くはない.軟骨病変は膝蓋骨の中央と外側関節面での病変が83.3%で多く,次いで大腿骨の30°から60°の接触面の病変が66.7%を示し,脛骨病変が52.9%でこれに次ぐ.

文献抄録

先天性食道閉鎖症における大腸間置法—通常の食道経路(後縦隔)を用いたWaterston法の変法

著者: 伊川廣道

ページ範囲:P.98 - P.98

 〈目的〉先天性食道閉鎖症でギャップが長く,一次的根治手術が不可能な場合に,一般には結腸を用い胸骨後または胸腔内を通し吻合する術式が行われている.著者らは成人において多く用いられている経後縦隔術式を初めて先天性食道閉鎖症に対して用い検討した.
 〈対象〉過去5年間にSouthampton General Hos-pital (Southampton,U.K.)のWessex Regional Centre for Paediatric Surgeryで治療を受けた先天性食道閉鎖症94例のうち77%に一次的根治術が行われ,結腸移植は33例に行われた.そのうち本術式によるものは16例あり,その手術時年齢は7カ月から5歳,平均18カ月であった.

画像診断 What's sign?

"foot-ball" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.101 - P.101

 腸管穿孔に際してみられる腹腔内遊離ガスは急性腹症の腹部単純像の読影に際して,まず第一にチェックを要する項目の一つである.典型的な症例では立位正面像で横隔膜下,側臥位正面像では挙上された側の側腹部に沿つて三ケ月状(meniscus shaped)の遊離ガス透亮像を認める.背臥位正面像における遊離ガスの所見は上記の水平X線束(horizontal beam)による撮影の所見に比べて一目瞭然というわけではない.背臥位の場合,遊離ガスは腹腔内の最上部である臍周囲の腹腔中央部に集まる傾向がある.この時,肝の鎌状靱帯がその両側を遊離ガスで挾れることにより肝上部の脊柱のやや右側を縦走する線状陰影として認められることがあり,腹部中央の透亮像と併せて"foot-ball"signと称される.
 すなわち,両腰部が外側に膨隆し中央に腹腔内ガスの透亮像を持つ腹部をアメリカンフットボールのボールに,肝鎌状靱帯をそのseamに,肋骨をlacingに例えているのである.

外科医のための臨床輸液問答・11

症例による電解質の見方〈その2〉

著者: 長谷川博 ,   和田孝雄

ページ範囲:P.103 - P.109

外科医と血液ガス
 和田 今回は代謝性アシドーシスのことを実例を通して学んで見たいと思います.

Report from overseas

米国における超音波診断(その4)—血管外科への応用

著者: 町淳二 ,   ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.111 - P.118

はじめに
 近年,血管外科の進歩はめざましいが,これは術前,術中,そして術後の診断技術の発達に負うところが大きい.ことに術中おいては,血管のreconstructive sur-gery直後に,手術部位の血管の検査が重要である.すなわち,血管外科の術後合併症(bypass graft後の血管の閉塞やcarotid endarterectomy後の神経学的な合併症1,2)など)の原因となるintimal flaps,strictures,thrombiなどの,いわゆるvascular defectsの検索である.これらのvascular defectsは,術直後には血行動態的に不明瞭なために3),Doppler超音波検査などのflow studiesでは検出できないこともある.また,術中の血管造影は,現在,vascular defectsの検出のための最も有用な診断方法となつているが4-9),この方法にも合併症,riskがともない,また,適応範囲にも限度がある10-12)
 さて,超音波法はsmall parts scannerの開発改良によつて13),血管外科の領域では,arteriosclerotic plaques14,15),aneurysmal dilations16,17)の検索や,動脈内径の計測14,18)などに応用されている.

臨床研究

超音波検査法による結節性甲状腺腫の診断—成績と分類

著者: 川口英敏 ,   上村邦紀 ,   木本明博 ,   金光敬一郎 ,   田中道宣 ,   後藤平明 ,   渡辺栄二 ,   平岡武久 ,   宮内好正

ページ範囲:P.119 - P.124

はじめに
 甲状腺は体表に近い臓器であるため触れ易く,したがつて疾患の診断には触診法の有用性が強調されてきたが,経験を含め個人の能力に左右されるなど客観性に乏しいのが欠点である.
 形態学的な検査法としてのシンチグラム(I,Tl,Tc)は核種の甲状腺への取り込みの状態により甲状腺疾患の診断には有力な情報を与えてくれるが,腫瘍の良悪性の鑑別には今のところ確かな検査法とは言い難い.その点,最近の装置の改良により鮮明な画像が得られるようになつた超音波検査法は,甲状腺腫の輪郭や内部構造の状態をかなり正確に表現するためその有用性が再び注目されている.

橋本病と悪性腫瘍の合併例の検討—その診断の難しさについて

著者: 原田種一 ,   谷口達吉 ,   中西由理 ,   平塚正弘 ,   高橋達雄 ,   大向良和 ,   妹尾亘明 ,   大塚信昭

ページ範囲:P.125 - P.130

はじめに
 過去において,すなわち1950年代の後半に,橋本病が代表的な自己免疫疾患として脚光を浴びる以前では,橋本病(本論文では狭義のびまん性甲状腺炎を意味する)に対する認識が薄く,甲状腺癌との鑑別が難しかつたため,手術が強行されていた時期があつた.
 しかし橋本病に対して切除術を行うと,術後甲状腺機能低下症に陥ることが多く,最近では診断技術の進歩に伴い,組織診断のための試験切除以外は手術の対象とはされていない.ただ,悪性甲状腺腫が合併していると考えられる症例は例外である.橋本病に腫瘍が合併している場合,腫瘍の存在が橋本病によつてマスクされているため,その診断が難しく,手術を行うべきか否か判断に迷う場合が多い.そこでわれわれの経験例を検討し,腫瘍合併例の診断の困難性について述べてみたい.

甲状腺分化癌術後の甲状腺ホルモン内服によるTSH抑制療法について

著者: 森秀樹 ,   三村孝 ,   原田種一 ,   伊藤国彦 ,   井出道也 ,   大井俊孝 ,   清水一雄 ,   庄司佑

ページ範囲:P.131 - P.134

はじめに
 甲状腺分化癌のなかには,その増殖がThyroid Stimurating Hormone(以下TSH)に依存するものがあり,現在術後再発防止のため甲状腺ホルモン内服によるTSH抑制療法が広く行われている.TSH抑制療法は,1937年Dunhill1)により始めてその有効性が報告されてから,数多くの報告がみられる2-4).われわれも甲状腺分化癌術後の症例には,原則として再発防止の目的で甲状腺ホルモン内服によるTSH抑制療法を行つている.しかし,その効果については未だ一定の見解は得られていない.
 そこで今回,術後10年から15年を経過した症例を対象として,生存率および再発率の面から,TSH抑制療法の効果を検討した.

食道癌・胃癌患者における腹腔動脈近傍のリンパ節転移超音波診断

著者: 吉中平次 ,   西満正 ,   黒島一直 ,   田辺元 ,   馬場政道 ,   加治佐隆

ページ範囲:P.135 - P.143

はじめに
 癌の外科治療において重要な課題の1つは,術前に癌の進展状況をいかに正確に把握するかということである.術式の選択,approachの方法,郭清範囲,根治術の可否,合併療法が必要か否かなど,多くの問題が"癌のひろがり"によつてきまる.
 一方,エレクトロニクスの進歩とともに.CTをはじめとする画像診断技術の発達は著しく,これらの癌進展術前予知への応用とその意義は近年注目されるところである.超音波検査法も,実時間表示の電子スキャン装置の普及などによつて,その診断領域が消化器系の疾患においても肝・胆・膵疾患のみならず胃腸管の癌診断にも拡大され,腫瘍自体の検出のほか周囲臓器への浸潤,肝転移,リンパ節転移など,とくに胃腸管壁外の進展波及に関する情報を無侵襲で得られることでその意義が報告されている.

臨床報告

妊娠期発症し術後組織学的検索で癌と診断された先天性胆道拡張症の1例

著者: 島野吉裕 ,   四宮洋一 ,   深井泰俊 ,   堀田敦夫 ,   菊川政男 ,   吉川高志 ,   桜井隆久

ページ範囲:P.145 - P.149

はじめに
 先天性胆道拡張症は稀な疾患ではないが妊娠期に発症する先天性胆道拡張症は比較的稀であり,さらに癌化を伴つた場合は極めて稀な症例と言えよう.最近著者らは妊娠36週目頃に腹痛,発熱並びに黄疸を主訴として発症した先天性胆道拡張症に対して出産後PTC Drain-ageを行い黄疸軽減後のう胞摘出術を施行した.しかし摘出標本の組織学的診断が乳頭状腺癌であつた21歳の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

同時性食道多発癌の1例

著者: 須田誠 ,   西平哲郎 ,   栗谷義樹 ,   北村道彦 ,   蔵本純一 ,   葛西森夫

ページ範囲:P.151 - P.153

はじめに
 食道多発癌は,術前の詳細な内視鏡検査や術後の標本の検索により,時折遭遇する疾患である.しかし,その大部分の症例は主病巣と副病巣との距離が5cm以内にとどまるものであり,かつ主病巣に比べて副病巣が小さく,粘膜内にとどまるものである.
 最近,われわれは,CeとImの両者に同時に進行癌を有し,両病巣間の距離が13cmと離れており,組織学的にも,一方は高分化型扁平上皮癌,他方は腺表皮癌を示した興味ある食道多発癌を経験したので報告する.

後腹膜Leiomyoblastomaの1症例

著者: 向井晃太 ,   見市昇 ,   細羽俊男 ,   高橋侃 ,   小笠原長康 ,   成末允勇 ,   坂本昌士 ,   元井信

ページ範囲:P.157 - P.160

はじめに
 1962年にStout1)は胃筋腫の中の特異的な組織型を持つ一群の腫瘍をLeiomyoblastoma(平滑筋芽細胞腫以下本症)と名づけた.本症は胃に好発する平滑筋腫瘍であり,胃以外の発生は稀である.われわれは腹部腫瘤を主訴として来院し,術後,後腹膜に発生した本症であることが判明した1例を経験したので報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.93 - P.93

SURGERY—Contents, December 1982 Vol.92, No.6 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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