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文献詳細

雑誌文献

臨床外科38巻1号

1983年01月発行

特集 よくみる肛門部疾患診療のポイント

治療法の動向—裂肛

著者: 佐々木茂雄1

所属機関: 1大阪肛門病院

ページ範囲:P.59 - P.65

文献概要

はじめに
 裂肛は内痔核,痔瘻と共に最も多い肛門部疾患で,私の肛門科外来を訪れる患者の22%が裂肛を有する患者である.その中で裂肛のみのものは6.9%と割合に少なく,内痔核と合併しているものは,12.7%と比較的多い.つまり裂肛患者の約半数が内痔核を併発しているという事になる.その病因については,いわゆる肛門感染(Anal infection)によるという説もあり,また硬い便塊の排出によつて機械的に肛門入口部の肛門上皮が断裂する為に起こると唱える人もある.創の大きさは,大豆大〜小豆大であり,好発部位は肛門後側の歯状線より下の部分で,単発性のものが大部分で,前側に生ずるものは少なく,女性では全裂肛の10%,男性では1%である.裂肛が前後壁に集中するのは,解剖学的に,これらの部分が外括約筋による支持が少ない為と説明されている.側方に存在する裂肛は稀であり,その場合には他の場所にも合計2〜3個の創が認められ,他の基礎疾患を合併している事が多い.
 急性裂肛の特徴的な症状は,排便時の疼痛であり,多くの場合患者は,便通時に肛門が切れて痛いと訴える.出血は必発の症状ではなく,出血量はチリ紙に付く程度であり,内痔核の時の様な多量の出血はない.この時期に外来を訪れる患者は割合に少ない.創は新鮮で浅く,ピンク色を呈し,後述する肛門括約筋の攣縮もあまりなく,大部分は保存療法で治癒する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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