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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科38巻11号

1983年11月発行

雑誌目次

特集 胃・十二指腸潰瘍

成因と病態に関する最近の知見

著者: 川井啓市 ,   井口秀人

ページ範囲:P.1563 - P.1567

はじめに
 消化性潰瘍は良性疾患でありながら,治癒と再発を繰り返す独特の自然経過や,患者数の多さからみて,通院治療,入院による時間的・経済的損失は大であり今なお重要な疾患である.
 これまでにレントゲン,内視鏡検査などの診断法,各種刺激剤および採液方法による胃液検査法の進歩や,さらには近年の消化管ホルモンに関する知見の飛躍的増大や治療薬としてのH2—recep—tor antagonistの登場などによる病態生理学上の研究も著しい進歩をみせている.しかし,消化性潰瘍の成因に関しては現時点でも不明な点が多く定説はないといえる.しかも成因を論ずる上で問題を複雑にしているのは,同じ潰瘍と言いながら十二指腸潰瘍もあれば胃潰瘍もあり,またその発生場所もさまざまで,その上,急性潰瘍と慢性潰瘍とが同じ消化性潰瘍というcategoryの中に含まれている点である.

内科的治療とその限界

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.1569 - P.1573

はじめに
 近年,消化性潰瘍に対する薬物療法の進歩により,多くの病院において手術症例が以前にくらべこの10年来目立つて減少していたが,さらにヒスタミンH2—受容体拮抗剤という,いわば革新的治療薬の出現により,今や消化性潰瘍には外科的治療はほとんど不必要になつたのではないかという期待が生じていた.しかし,一方,本剤による治療後の再発問題が登場して来るに伴い,ヒ・H2—受容体拮抗薬にしても,必ずしも外科的手術に代りうる薬剤では無さそうであるとする認識が広まつて来た.
 そこで,外科的治療が依然として必要であるとすればどのような状態においてその適応があるのであろうか,すなわち内科的治療の限界は,どこにあるのかということで本主題(表題)が筆者に与えられたようである.従つて,その答えは,従来の手術適応1)に対し,現時点での手術適応を比較し,そこに何らかの相違点が生じているとすれば,それが現時点における内科的治療法の限界ということになろう.以下に筆者の考えを述べる.

内視鏡的止血法

著者: 竹本忠良 ,   大谷達夫

ページ範囲:P.1575 - P.1579

はじめに
 消化管出血のなかでも,上部消化管からの出血は日常の臨床においてしばしば遭遇する病態である.このさい出血部位とその状態を迅速かつ的確に診断するとともに,急性出血症状に対する適切な治療を行うことがきわめて重要であることはいうまでもない.
 最近では,上部消化管全体が1本のスコープで観察できるpanendoscope,それも細径のものがひろく普及してきたために,上部消化管出血に対する緊急内視鏡診断も容易に行えるようになつた.緊急内視鏡検査による出血源の的確な診断・観察が終われば,引き続いて直ちにその治療が行われなければならない.さいわい,内視鏡直視下に施行する高周波焼灼止血法,レーザー止血法,高張Na-Epinephrine液局注療法,純エタノール局注療法,clot coating法などの非観血的治療法がずいぶんと進歩してきた.

手術適応と術式の選択—ストレス潰瘍

著者: 松原要一 ,   武藤輝一 ,   田宮洋一

ページ範囲:P.1581 - P.1585

はじめに
 脳疾患や肝・胆道疾患などの手術後に見られる消化管出血は,多くが胃・十二指腸の急性粘膜病変からのもので,組織学的に急性潰瘍とよばれ,慢性(いわゆる消化性)潰瘍とは明らかに異なり,いわゆるストレス潰瘍として知られている.予後は原疾患が重篤で潰瘍発生に因果関係のある合併症のあるものが多く,また潰瘍の成因が複雑なこともあつて極めて不良である1-5).すなわち保存的あるいは手術的に止血されても原疾患あるいは合併症で失うことが少なくない.したがつて手術適応の決定は必ずしも容易でないが,ここでは著者らがこれまでに経験した症例の治療成績を紹介し,本症に対する手術適応と術式の選択について最近の考え方を述べたい.

手術適応と術式の選択—高位胃潰瘍

著者: 榊原幸雄 ,   府川光之 ,   安藤道夫

ページ範囲:P.1587 - P.1592

はじめに
 高位胃潰瘍の定義については一定した見解が得られていない現状にある.外科領域においては,一般に幽門側広範囲胃切除術の切除線(大井の切除線)より噴門側に位置する潰瘍1)や胃癌取扱い規約のC領域または術式からみて胃潰瘍の外科的侵襲にあたり通常の胃部分切除術では不適当な高位の胃潰瘍2)などとされている.著者らは,従来よりDemel線3)(胃半切除線)より上部に位置する潰瘍を一応高位胃潰瘍として取り扱つてきた.
 消化性潰瘍の手術適応については,いわゆる難治性潰瘍のみならず,出血,穿孔,通過障害などの合併症を伴う症例でも,その程度や経過により必ずしも全てが絶対的適応になるわけでもなく客観的な一定の基準を設定することは非常に難かしい.しかし,高位胃潰瘍ではいくつかの病態生理学的な特殊性もみられるので,これらを考慮しつつ手術時期を逸しないように注意すべきであろう.

手術適応と術式の選択—吻合部潰瘍

著者: 白鳥常男 ,   金泉年郁 ,   桑原和一 ,   村田省吾 ,   森本洋一 ,   酒井一雄

ページ範囲:P.1593 - P.1597

はじめに
 消化性潰瘍に対する手術療法として,広範囲胃切除術がまず広く普及し,その後は,胃切除後症候群の改善を目指す術式が種々開発され現在に至つている.消化性潰瘍の手術治療の中で,特殊な条件のもとに発生する吻合部潰瘍を検討することは,その治療に対してはもちろんのことであるが,吻合部潰瘍の発生論上,さらに一般の消化性潰瘍の成因を探る点からも有意義なことである.
 そこで,与えられた吻合部潰瘍に対する手術適応と術式選択のテーマついて,自験例ならびに文献学的に吻合部潰瘍の検討を加え,論ずることにした.

手術適応と術式の選択—Zollinger-Ellison症候群

著者: 杉山貢 ,   土屋周二

ページ範囲:P.1599 - P.1605

はじめに
 近年,radioimmunoassayの進歩と普及により,各種の消化管ホルモン,なかでもgastrinの血中濃度が容易に測定出来るようになり,Zollinger-Ellison症候群(以下Z-E症候群)の診断に有力な手段となつた.今回,本症候群の本邦報告例の集計結果と自験例より病態・診断・治療方針(手術適応と外科療法)について述べる.
 1955年,Zollinger & Ellison1)は膵島性非β細胞腫を合併した2例(女性)の難治性消化性潰瘍を報告し,以下の特徴的所見をあげている.①大量の胃液(酸)分泌がある.②通常の薬物および外科治療では潰瘍の再発をみる.③膵島性非β細胞腫が存在する.またその発生と病態を"ulcerogenic humoral factor of pancreatic islet cell origin"に起因すると述べている.EisemanとMaynard2)(1956年)はこれらの3徴候を有するものをZollinger-Ellison症候群と命名した.

十二指腸潰瘍に対する迷切術の遠隔成績

選択的近位迷走神経切離術(SPV)

著者: 青木照明 ,   秋元博 ,   長尾房大 ,   羽生信義 ,   間中正章 ,   高山澄夫 ,   高野哲

ページ範囲:P.1607 - P.1610

はじめに
 選択的近位迷走神経切離術(以下,選近迷切術)は,1957年,Griffth-Harkins1)によるpartial gastric vagotomyの実験的研究に端を発し,1964年,Holle-Hart2)によるSelective Proximal Vagotomy(with pyloroplasty)として臨床応用が試みられた,一方,1970年,Amdrup-Jensen,Johnston-Wilkinsonらによる,parietal cell vagotomyあるいはhighly selective vagotomyがwithout pyloroplastyのかたちで臨床応用が報告された.わが国では,1970年,田北によるwith minimal distal antrectomyの報告が最初である.爾来,十有余年,内外の消化器外科医の関心を集め種々検討3,4)され今日に至つているが,技術的にもほぼ確立し,術後愁訴,再発率等を含め,長期遠隔成績が検討されるべき時期にいたつている.
 われわれの教室では1971年よりat randomに本術式を幽門狭窄のある症例にはwith pyloroplastyとして,狭窄のないと考えられた症例にはwithout pyloroplastyとして十二指腸潰瘍症に施行してきているので,そのうち,5年以上を経過した症例の遠隔成績を報告する.

選択的胃迷走神経切離術+幽門洞切除術(SV+A)

著者: 渡部洋三

ページ範囲:P.1610 - P.1614

はじめに
 迷走神経切離術(迷切術)が本邦で行われるようになつて30年以上経過したが,現在主として行われている術式は,選択的近位迷切術±ドレナージ手術と選択的胃迷切術兼幽門洞切除術(SV+A)である.われわれは1,2),1967年以来Gil—espie & Kay3)による薬物迷切を用いた迷走神経機能検査を十二指腸潰瘍症例に応用し,迷切の適1応を決めてきた.すなわち薬物迷切による減酸効果により,幽門洞切除術(幽切術),SV+A,選胃迷切兼幽門形成術(SV+P)の3術式を行つてきたが,幽切術の適応となる例が最近少なくなつてきたこと,およびSV+P例に高頻度に再発がみられたことなどの理由により,最近われわれは十二指腸潰瘍の全例にSV+Aを行つている.SV+Aはこのほか共存潰瘍,幽門輪近接潰瘍,MAOが20 mEq以上の胃潰瘍に適用されている.
 本稿では1960年から1982年までに教室で手術が施行された十二指腸潰瘍症例のうち189例のSV+Aを,330例の広範囲胃切除術(広胃切)および24例のSV+Pと対比し,その遠隔成績について述べる.

コメント

著者: 武藤輝一

ページ範囲:P.1614 - P.1616

はじめに
 現在,本邦で十二指腸潰瘍に対し施行されている代表的な迷切術式は①選択的近位胃迷切術(SPV)と②選択的胃迷切兼幽門洞切除術(SV+A)である.本誌上では青木講師,渡部講師がそれぞれの成績を披露しておられる.1961年よりSV+Aを施行し,1973年よりSPVを併せ行つて来た施設として前2施設の成績を参考に考えを申しのべたい.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・10

胃神経線維腫

著者: 廣田映五 ,   菊池史郎 ,   板橋正幸 ,   中鳥孝 ,   小黒八七郎 ,   平田克治

ページ範囲:P.1561 - P.1562

 非常に稀な疾患である胃神経線維腫の1症例を呈示する.
 症例(0-13423)42歳,男性.

文献抄録

乳腺疾患に対する吸引細胞診の診断価値

著者: 榎本耕治

ページ範囲:P.1619 - P.1619

 最近注目されているfine needle aspiration cytologyを乳腺腫瘍の診断に応用した場合の診断率およびその臨床的意義を検討した.
 1977年から1981年までの5年間に著者等の診療所を訪れた乳腺疾患の患者1,410人(うち,多発性腫瘍をもつもの208人)に吸引細胞診を行い,1,680枚の標本を作製し検討した.固形腫瘍の場合は22ゲージ針,嚢胞の場合は20ゲージ針をディスポーザブルの注射筒に接続し吸引した.得られた組織片をスライドガラスに塗擦しH.E.染色を行い,嚢胞の場合は液体を50%アルコールで固定し遠沈し,沈渣をスライドガラスに塗擦し,パパニコロフ染色を行つた.

新形影夜話・10

術者の責任感

著者: 陣内傳之助

ページ範囲:P.1620 - P.1621

 医師としてもつとも欠くべからざる条件は責任感である.細心の注意をもつて一分の隙もない処置をとることは,生命を預かる医師にとつては当然のことである.なかでも外科医には直接生命の危険に曝される手術ということがあり,その上これは常に数人のチームによつてなされるものであるから,自分一人の問題ではなく,チームの一員の失敗でも術者が責任をとらねばならない.この点,内科系の医師となると,自分一人単独で患者の診察,治療を行うことが可能であるので,自然立場が違つてくる.すなわち内科では一人一人の自己の責任で自分の思うような治療ができるが,外科では術者を中心とした一致協力がなければ,いい手術はできない.したがつて外科医にはおのずからチームの一人一人に協調の精神がなくてはならないし,術者には助手を手足のように使いうるあたかもシンフォニーの指揮者のような統率力が必要となつてくる.
 もちろん,必要な場合には参加している各員の衆知を集めることもないではないが,これは術前のカンファレンスでほぼ方針は決つていることが多い.それでも手術の途中で思わぬ所見に遭遇したり,不慮の事故が起こつたりすると,術者は各メンバーの意見を聞かねばならぬこともある.しかし,協議の結果,方針の決定は,術者自身が毅然とした態度で全責任をもつてなすべきものである.

画像診断 What sign?

"tit","shoulder" etc.

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1623 - P.1623

 肥厚性幽門狭窄は,通常2〜8週の新生児に噴水状嘔吐,吐乳を主訴として発症する疾患である.肥厚した幽門筋を"オリーブ"腫瘤として触れ,腹壁に蠕動を認める症例は臨床的に診断可能であるが,発症年齢,臨床所見などが非典型的な症例では画像診断が有用な診断情報を与える.腹部単純像では胃の拡張を認める.上部消化管造影所見は特徴的であり,胃の蠕動亢進にもかかわらず造影剤の幽門通過遅延がみられ,肥厚した幽門筋により幽門の狭窄,延長がみられ,さらに胃幽門前庭部,十二指腸球部への圧排による変型を認める.すなわち幽門管の狭窄,延長は細い糸状の"string"signとして,また幽門管が肥厚した幽門筋によつて二分された場合には電車の線路状の"tramtrack"signがみられ,幽門管の入口は鳥の嘴状の"beak"signが認められる.肥厚した幽門筋の圧排により幽門前庭部には丸味をおびた"pyloric shoulder"がみられ,その口側に蠕動が到達することにより"pyloric tit"が現われる.十二指腸球部底部の圧排は,"きのこ"状あるいは"傘"状(mashroom-likeまたはumbrella-like)の変型がみられる.

クリニカル・カンファレンス

胃・十二指腸潰瘍の治療をどうするか

著者: 久保田譲 ,   西崎統 ,   牧野永城 ,   伊藤正幸 ,   西尾剛毅 ,   石川陵一 ,   武藤輝一 ,   阿部令彦 ,   出月康夫 ,   岸田明博

ページ範囲:P.1624 - P.1635

 院外のゲスト3人が加わつて行われた聖路加国際病院(東京)の早朝カンファレンスを収録,掲載させていただいた.
 今回の主題は"胃・十二指腸潰瘍の治療をどうするか"である.

学会だより

MEDINFO 83に参加して

著者: 中村清吾

ページ範囲:P.1636 - P.1636

 去る8月22日より27日にかけて,オランダのアムステルダムにおいて,第4回医療情報国際会議(MEDINFO 83)が開かれた.近年のコンピュータを中心とする情報技術の発達に伴い,医療の分野でも,効率よい医療情報の活用が叫ばれるようになつた.
 前回までの会議では,医事会計業務へのコンピュータの応用が中心となつていたが,今回は臨床部門への応用も,少しずつではあるが登場してきた.外科領城でも,いくつか演題が発表されていたので,簡単に紹介する.

外科医のためのマイコン・ガイド・4

術前・術後の輸液輸血メニュー—メニュー4:高カロリー輸液

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.1637 - P.1643

はじめに
 高カロリー輸液法(IVH)は,完全静脈栄養法(TPN)とも言われるように,経口経腸栄養が不可能あるいは不十分な症例,経消化管栄養ではカロリー不足になるような症例,消化管栄養では原疾患を悪化させるような症例,小児の特殊症例などに用いられる.最近では,肝不全や腎不全など原疾患に伴う代謝異常の改善を目的とした治療法にも利用されている.
 今回は,完全静脈栄養用輸液の処方にちなんだマイコン利用法をのべる.そのプログラミング法では前回までの初歩的アプローチから脱却して少し考えねばならないレベルへ進みたい.今までは,マイコンがなくても理解できたと思うが,これからはマイコンがない場合は他所のを借りてでも実際に入力すると理解が深まると思う.

臨床研究

早期食道癌9例の検討

著者: 黒島一直 ,   末永豊邦 ,   加治佐隆 ,   末永博 ,   川崎雄三 ,   吉中平次 ,   馬場政道 ,   田辺元 ,   四本紘一 ,   門松民夫 ,   福元俊孝 ,   松野正宏 ,   西満正 ,   島本福雄

ページ範囲:P.1647 - P.1653

はじめに
 近年,消化管二重造影法や内視鏡検査の進歩にともない微細病変の発見が可能となり,食道においても早期癌の報告が見られるようになつた.わが国の早期食道癌の報告は1966年,山形1),中山2)らの発表以来,鍋谷の全国集計3)によると1979年までに177例を数える.
 教室では1972年11月から1982年12月までの約10年間に早期食道癌9例を経験したので若干の考察をくわえ報告する.なお本文は食道癌取扱い規約4)にもとづき記載した.

臨床報告

プロ野球投手にみられた腋窩動脈閉塞の2症例

著者: 近藤三隆 ,   加藤量平 ,   北川茂久 ,   加藤真司 ,   倉橋忠司 ,   加藤好包 ,   寺沢利昭 ,   数井秀器 ,   矢野孝 ,   内木研一 ,   土岡弘通

ページ範囲:P.1655 - P.1658

はじめに
 外傷性四肢血管損傷の一型として,動脈閉塞が発症することは少なくないが,慢性外傷性血管損傷の結果,血栓を形成するものは稀である.われわれは,反復する投球動作という慢性的な微小外傷が原因と考えられる,腋窩動脈閉塞の患者を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

広汎な腹腔内転移を認めた虫垂カルチノイドの1例

著者: 杉山恵一 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   近藤哲 ,   安井章裕 ,   堀明洋 ,   山田育男 ,   広瀬省吾 ,   深田伸二 ,   宮地正彦

ページ範囲:P.1659 - P.1663

はじめに
 カルチノイドは消化管上皮に存在するKultschitzky細胞から発生する腫瘍で,その多くは消化管に発生し,なかでも虫垂に発生頻度は高いが,虫垂原発のカルチノイドは良性のものが多く,広汎な転移を来たす例はきわめてまれである.今回われわれは開腹時,広汎な腹腔内転移を認めた虫垂カルチノイドの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

尿管瘻を形成したCrohn病再発の1例

著者: 永瀬敏明 ,   田沢賢次 ,   笠木徳三 ,   鈴木康将 ,   坂本隆 ,   櫛渕統一 ,   宗像周二 ,   麓耕平 ,   真保俊 ,   田近貞克 ,   阿部要一 ,   唐木芳昭 ,   伊藤博 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.1665 - P.1668

はじめに
 Crohn病は,口腔から肛門までの消化管のどの部位にも発生しうる慢性炎症性肉芽腫性疾患で,腹部に瘻孔を形成することはよく知られている.われわれは,初回手術で腸結核の診断のもとに回盲部切除術をうけた後,その回腸結腸吻合部に尿管瘻を形成した極めてまれなCrohn病再発例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

悪性リンパ腫による小腸穿孔の1症例

著者: 大石明人 ,   上辻章二 ,   瀧藤尊照 ,   山本政勝 ,   上田恵 ,   森井外吉

ページ範囲:P.1669 - P.1673

はじめに
 頸部悪性リンパ腫として入院してきた患者が,入院後4日目に空腸の悪性リンパ腫の穿孔によつて突然死亡した.この剖検症例を経験したので,小腸悪性リンパ腫診断上のアプローチに関して,文献を参照して若干の意見を述べたい.

Burkittリンパ腫の1例

著者: 金井昌敦 ,   丸山俊之 ,   富永秀次 ,   大島昌 ,   永井完侍 ,   中川宗一 ,   田中道雄 ,   神山隆一 ,   野間宏

ページ範囲:P.1675 - P.1678

はじめに
 1958年にBurkitt1)がアフリカの特定地域に多発する悪性リンパ腫を報告して以来,世界各地からBurkittリンパ腫の散発例が見られ,わが国でも1969年の大星らによる第1例の発表以来,現在までに約30例の報告がある.著者らは最近腸重積にて発症した4歳男児のBur—kittリンパ腫を経験したので,多少の考察を加えて報告する.

アフリカで感染したと思われるオンコセルカ症の腫瘤摘出例

著者: 吉村裕之 ,   近藤力王至 ,   赤尾信明 ,   大西義博 ,   坪田宣之 ,   井門慎介 ,   宮脇晴夫

ページ範囲:P.1679 - P.1681

はじめに
 近年,コレラやマラリアのごとき輸入感染病(寄生虫病を含む)が問題になつている折柄,今回著者らはアフリカ滞在中に感染したと思われるオンコセルカ症(on—chocerciasis)の1例を経験した.本例は日本人の感染として最初の症例と思われるので,概要を報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1618 - P.1618

SURGERY—Contents, Octber 1983 Vol.94, No.4 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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