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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科38巻12号

1983年12月発行

雑誌目次

特集 プラスマフェレーシス

プラスマフェレーシスに使われる機器・装置および置換液

著者: 阿岸鉄三

ページ範囲:P.1703 - P.1711

はじめに
 プラスマフェレーシス(plasmapheresis)は,元来,全血から血漿成分を分離することを意味し,医療的意義としては分離した血漿,あるいはその分画を成分輸血として利用することにある.
 しかし,最近では病因関連物質を含む血漿を分離して廃棄し,健常な血漿成分で置換する血液浄化法としての治療用プラスマフェレーシス(thera—peutic plasmapheresis)の意味で使われていることも多い.この場合には,実際上,血漿交換と同意語である.

治療への応用—膠原病

著者: 荻田忠厚 ,   高橋孝喜 ,   吉沢久嘉

ページ範囲:P.1713 - P.1717

はじめに
 近年免疫学の進歩により,多くの疾患の病態に免疫異常の関与していることが明らかにされて来た.とくに自己免疫の概念が生まれてからは,免疫複合体やある種の抗体が疾患の進行上有害に作用することが示されている.これらの自己免疫疾患と呼ばれる疾患群の発症原因については不明のことが多く,かつ難治でしばしば薬物療法に対し抵抗性を示す.そのため病態に有害に作用すると考えられる諸物質を除去することにより,疾患の進行を阻止しようとの意図で血漿交換療法(Plas—ma Exchange,PE療法,Plasmapheresis)が試みられるようになつて来た.
 このPEにより有害因子を除去しようとする考えはとくに新しいものではないが,治療に積極的に試用されはじめた背景には医療機器の開発により血漿分離が比較的容易に行われるようになつた点が寄与しているものと考えられる.

治療への応用—肝疾患

著者: 山崎善弥 ,   飯塚一郎 ,   和田達雄 ,   井上昇 ,   与芝眞 ,   藤原研司

ページ範囲:P.1719 - P.1725

はじめに
 血漿交換は急性肝不全の治療として,Leopore1)(1967),Sabin2)(1968)により臨床応用が試みられた.交換輸血に比較すると,全血の代りに凍結新鮮血漿が用いられるので,①補充液の入手が簡単である.②アンモニアの上昇がない.③赤血球不適合や血小板抗体など血液学的問題が少ない.④ショックが起こりにくい等の点で優れている.これが当時普及しなかつたのは,その操作が面倒で困難であつたからである.
 最近,膜分離方式による血漿交換法3)が開発され,従来の遠心方法に比し,簡便で操作が容易で効果的に血漿交換ができるようになつたので,広く何処でも施行されるようになつて来ている.血漿交換は従来の膜や吸着材を用いる血液浄化法では除去できない蛋白結合毒物,高分子病因物質の除去が可能で,同時に肝障害で不足する凝固因子などの補給が出来るので,現在のところ,最も期待できる実用的な肝補助法と考えられる.

治療への応用—腎疾患

著者: 塚田隆 ,   田島惇 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.1727 - P.1731

はじめに
 血漿交換療法(plasmapheresis;plasma ex-change)を臨床上初めて用いたのは,1963年のSolomon,Fahey1)である.彼らはマクログロブリン血症の治療に応用した.1975年,Lockwoodら2)によりGoodpasture症候群に対し血漿交換が施行され,それ以降種々の腎疾患の治療にも応用されてきた.
 これまでに血漿交換の応用が報告された腎疾患の一覧を表1に示す3).ループス腎炎(SLE腎症),急速進行性糸球体腎炎(RPGN),Goodpas-ture症候群,原発性糸球体疾患,多発性骨髄腫における腎障害(いわゆるmyeloma kidney),移植腎拒絶反応など数多くの疾患の治療に応用されている.その効果は主として循環血液中ないし組織に沈着した抗基底膜抗体やimmune complexの除去に基づいていると考えられているが,依然その詳細な機序は不明である.血漿交換は概念的には古くからあるが,臨床への応用という見地からはまだ新しい試みである.血漿交換の腎疾患への適応については,抗原,抗体,免疫複合体が複雑にからむ腎の免疫疾患や移植後拒絶反応,異常蛋白が血中に増加する高粘度症候群(hyperviscosity syndrome),悪性腫瘍における免疫異常,蛋白と結合する薬物の中毒などが考えられている.

治療への応用—悪性腫瘍

著者: 小玉正智 ,   角田冨士男 ,   谷徹 ,   上原鳴夫

ページ範囲:P.1733 - P.1742

はじめに
 悪性腫瘍に対する血漿交換療法は1976年Br-owneら1),Herseyら2),Israelら3)によつて行われたのが最初と考えられている.以前より指摘されている様に,担癌生体は細胞性あるいは体液性免疫抑制物質を有しているが,悪性腫瘍に対する血漿交換療法の目的は,それらを除去することによつて細胞性,体液性免疫機能の回復を計り,抗腫瘍効果を上げようとする考えが一般的である.
 われわれの施設,滋賀医科大学第一外科に於いても1982年5月より1983年2月までの10カ月間に切除不能胆嚢癌,胃癌再燃による癌性腹膜炎,結腸癌転移による転移性肝癌,胃癌転移による転移性肝癌,乳癌再発による癌性胸膜炎及び肝転移を伴う切除不能膵癌の6症例に対し血漿交換療法を合計40回施行し,切除不能胆嚢癌症例では腫瘤触知不能となり(irradiation併用),乳癌再発による癌性胸膜炎症例では胸水消失(OK−432,Ta-moxifen,ADM併用)をみ,胃癌再燃による癌性腹膜炎症例を除く他の5症例ではすべて自覚症状の著しい改善をみたので,血漿交換療法施行前後の諸検査値の変動を中心に,施行法,臨床効果について考察を加えた(表1).

治療への応用—拒絶反応

著者: 大坪修 ,   高橋郁夫

ページ範囲:P.1743 - P.1747

はじめに
 腎移植の成績は近年特に改善されてきているものの,拒絶反応を起こしてしまつた場合,その治療法としては,ステロイドの増量のほか,強力な方法はいまだに開発されていない.細胞障害性反応で,血管変性を主とする拒絶反応は,ステロイドの大量投与にも反応し難く,予後が悪く,80%は拒絶されてしまう.この拒絶反応で主体となるのは,移植抗原に対する細胞障害性の抗体であるが,これを除去できれば,拒絶反応の進行が予防できるのではないかという期待は納得がいく話である.
 一方,good pasture syndromeやrapidly progressive glomerulonephritisに対して,血漿交換が有効であることより,腎移植の拒絶反応時に,ステロイド抵抗性の場合,この血漿交換が多くの人により試みられた1-9).これらの中で最初は,拒絶反応に対する血漿交換は有効であるという報告が多かつたが,control studyなどが行われ,その有効性を疑問視する報告も多くなつてきている.

Editorial

プラスマフェレーシスの現況と将来

著者: 太田和夫

ページ範囲:P.1700 - P.1701

1.プラスマフェレーシスとその歴史
 プラスマフェレーシスという言葉をしばしば耳にするようになつた.これは血漿を意味するplas—maと,ギリシャ語で除去(withdrawal)を意味するαψαιπειν(apheresis)を組合わせたものであつて,1914年,人工腎臓の開祖として名高いJohns Hopkins大学のAbelが作つた言葉である.
 この言葉の語源からも明らかなように,プラスマフェレーシスは血液より血漿成分だけを除去する技術を意味しており,彼はこれを尿毒症犬に用いてその症状の改善をみているのであるが,その後,1944年頃よりTuiらはこれを輸注に用いる血漿を採取する目的で使用するようになり,さらに1956年頃になると,Tullisらが連続して血漿を採取できる遠心分離器を作り,輸血部を中心としてプラスマフェレーシスが広く行われるようになつてきた.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・11

胃平滑筋肉腫—潰瘍形成を伴う胃内型

著者: 廣田映五 ,   上野正見 ,   板橋正幸 ,   北岡久三 ,   小黒八七郎

ページ範囲:P.1696 - P.1697

 胃原発の肉腫は約2%であり,そのうちの約1%は筋原性肉腫であり,大部分は平滑筋肉腫である.その1症例を呈示する.
 症例 62歳.男性.

クリニカル・カンファレンス

プラスマフェレーシスの実際

著者: 東仲宣 ,   井上昇 ,   伊藤克己 ,   山崎善弥

ページ範囲:P.1748 - P.1760

 血漿を分離して病因関連物質を廃棄し,健常な血漿成分で置換する,いわば悪玉のみを取り去り,善玉を再利用しようとするプラスマフェレーシスが治療法として脚光を浴びつつある.
 血液外科学とも言えるこの分野は,遠心式,膜濾過型血漿分離装置の発展に伴い,その適応は大きく拡がつている.

文献抄録

重症患者の輸液管理をめぐる諸問題

著者: 遠藤昌夫

ページ範囲:P.1763 - P.1763

 重症患者の輸液管理においては,刻々と変化する循環血漿量,組織間および細胞内液量に対応した処置がとられねばならない.しかし,それぞれの水分区画における水・電解質の移動,特に血漿と組織間区画におけるアルブミンを中心とした水の移動などに関しては未だに不明の点が多い.これらの点を背景に,最近の重症患者に対する輸液管理の指標を述べる.
 体液減少性ショック(hypovolemic shock)に対する輸液では,外傷や消化管からの大量出血に際し,血漿区画と同時に組織間区画をも補正するために,大量の細胞外液型の輸液が必要となる.ショックの初期治療において低下した動脈圧は,常に補正輸液量の不足を示すので,動脈圧の正常化を目標に輸液を行うのが良く,肺動脈圧や肺動脈楔入圧(PWP)の測定までは必要ない.管理上最も重要な時期は,大量の輸液によってショックを離脱した後に到来する.この時期には大量の水と電解質が血管内から組織間および細胞内区画に逸脱する.そして,しばしば中心静脈圧(CVP)やPWPの上昇と肺内ガス交換の効率の低下,および心拍出量,血圧の低下や尿量の減少を招来する.この状態の治療法としては輸液量を増加すべきか,利尿剤を使うべきかの判断が難しい.この指標としては,心左室1回仕事系数(LVSWI)/PWP比および乳酸加リンゲル液500 mlの試験輸注が有用である.

新形影夜話・11【最終回】

外科医は常に前向きの姿勢で,チャレンジ精神を失つてはならぬ

著者: 陣内傳之助

ページ範囲:P.1764 - P.1766

 私の日頃から崇拝している外科医は,何といつてもわが華岡青洲先生である.先生は,中国の古い外科医で約二千年前にすでに腸吻合や摘脾をやつていたという有名な華佗(中国の魏の国220〜265)の再来と仰がれ,その名声は全国に知られ,その門人の数は1,300余人を算し,広く全国にわたり,門人のなかつた国は大隅と壹岐だけであつたという.先生はただ医学のみならず儒学に通じ,経史はもとより老荘百家に通暁し,自らは質朴を旨として寝食を忘れて研鑚に没頭し,慈善の志深く,貧人を憐み,近隣にて先生によつて生計を営むもの数十戸に及んだという.
 先生の非凡さは,その当時すでに"人の治療し能わざるものを治療せんことを目途とし,人の治療し能うものを治療し得ざるを終生の恥辱と心得べし"と唱えられたことによつても計り知ることができよう.また,医法においても"内外合一","活物窮理"を強調,すなわち,内外合一とは"外科を志すものはまず内科に精通せざるべからず,いやしくもこれを審かにしてこれが治方を施さば外科において間然あるなし.内外を審査して初めて刀を下すべきものなり"と教え,また活物窮理とは,"医はこれ活物窮理にあり,人身の道理を格知して後,疾病を審かにするにあらざれば,すなわち極致に至ること能わず,それ夫々の道,本活物なり,必ず膠柱して之を論ずることなかれ,湖漆をもつてこれを推すときはその理にそむかざるもの稀なり.察せずんばあるべからず"と(現代語に訳そうと思つたが,誤訳してはいけないのでやめる),当時から基礎医学に通ずる必要のあることを説き,その識見は今日の医学から考えても敬服に値するものであり,後世の医人・医学者の仰いでもつて模範とすべき偉人である.

画像診断 What sign?

"corkscrew" appearance

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1767 - P.1767

 胎生期に完了すべき中腸の270°反時計回りの回転が起こらないか,途中で停止することにより起こる中腸の回転異常の症例では,腸管膜根部の後腹膜への付着部位の幅が狭いことから,この部分を茎とした腸管の軸捻が起こり易い.中腸軸捻の約80%は新生児期に起こり,胆汁性嘔吐・下血など急性症状で発症し,腸管壊死を伴うものでは腹膜炎,ショックを呈する.腹部単純像では胃および十二指腸の拡張をみるが,嘔吐直後のものでは正常像を呈する場合もある.臨床的に本症を疑つた場合は腹部単純像で典型的な所見がみられない場合にも時を移さず消化管造影が行われるべきである.上部消化管造影では近位十二指腸の拡張がみられ軸捻をおこし狭窄を呈する近位小腸管が螺旋状に描出され,これがコルク栓抜きに類似していることから"corkscrew" appearanceと称される.注腸では病変の直接描出はできないが,回盲部の位置異常がみられ,臨床所見とあわせて診断が下される.

Topics

CO2 Micro-Bubble Embolizationによる肝癌,特に門脈内腫瘍栓治療の試み—俗称:冷やし缶ビール動脈内注入法

著者: 島村善行 ,   長谷川博 ,   山崎晋 ,   幕内雅敏 ,   角本陽一郎

ページ範囲:P.1768 - P.1772

はじめに
 Transcatheter Arterial Embolization(TAE)は切除不能な肝癌に対して著明な延命効果があることは近年よく知られており,目本における草分けであり,かつ最多数の治療経験をもつ山田らによると,1年生存率は44%であると報告されている1).しかしこのTAEは門脈内腫瘍栓に対しては効果が期待薄である.特に門脈本幹ないしは右枝本幹にまで腫瘍栓が伸展してきている場合には,原則的には適用外で禁忌とすら考えられている。その理由は,動脈塞栓術で血行が遮断された場合には,既に門脈も腫瘍栓で塞栓遮断されているため,広範な阻血性壊死による肝不全が起きる危険が大きいからである.
 このようなTAEの適用を阻む壁を打破するには,門脈内腫瘍栓を壊死に陥らしめるような,今までとは次元の異なる方法論の開発が必要であつた.著者らはこの点につきCO2 micro bubble embolization(俗称:冷し缶ビールの肝動脈内注入法cool beer therapy)を開発したので報告する.

臨床研究

癒着性腸閉塞症に対するBlanco-Benavides法の経験について

著者: 紙田信彦 ,   佐々木喜一 ,   岡崎護 ,   木嶋泰興 ,   立之芳源 ,   黒川博之 ,   朝田農夫雄 ,   斎藤寛文 ,   原田伸 ,   郡良文 ,   渡会敏之 ,   田中公啓 ,   関口昭彦 ,   山口善友

ページ範囲:P.1773 - P.1776

はじめに
 腸閉塞症状を頻回に繰り返す癒着性腸閉塞症は,腹部外科医を悩ます疾患の一つである.こうした患者に対する手術として,Noble法1),その変法2),Child法3),Intestinal Splint法4-6)などが行われて来ている.Blanco-Benavides法7)(以下B-B法)もその一方法である.
 著者らは1980年より,高度の癒着性腸閉塞患者に対し,B-B法を施行し,良好な結果を得て来たので,若干の考察を加え報告する.

乳癌における脈管内侵襲(リンパ管侵襲,静脈管侵襲)の意義

著者: 木村盛彦 ,   佐藤和雄

ページ範囲:P.1777 - P.1781

はじめに
 乳癌の予後に関与する因子については,種々の面から多くの研究がなされている,特に腫瘍径,リンパ節転移度,組織型,脈管内侵襲などは予後と密接な関係にある組織学的諸因子として良く知られている.
 なかんずく,乳癌組織内における脈管内侵襲は予後に関与する重要な因子であるとするTeel & Sommers(1964)1)らの報告以来,多くの研究がなされている.脈管内侵襲にはリンパ管侵襲と静脈管侵襲があるが,この観点から,これまでの報告をみると,乳癌の予後との関係を,静脈管侵襲を中心に検討したもの1-5),リンパ管侵襲について検討したもの6),両者を一括して検討したもの7,8)などに細分されるが,いずれも乳癌の予後と密接な関係にある事を指摘している.

臨床報告

腸間膜脂肪織炎(Mesenteric Panniculitis)の1例

著者: 田村利和 ,   原田雅光 ,   川人幹也 ,   川原弘行 ,   和田大助 ,   高井茂治 ,   武原正夫 ,   古味信彦 ,   山下裕 ,   宮武昭三郎

ページ範囲:P.1783 - P.1786

はじめに
 腸間膜脂肪織炎(mesenteric panniculitis)は腸間膜脂肪織に選択的に発生する極めてまれな非特異性炎症性疾患1)で,その原因,診断法および治療法は未だ確立さされていない.最近,われわれは回腸末端部腸間膜に限局してみられた本症の1例を経験したので若干の文献的考察を報告する.

悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histocytoma)の1例

著者: 一戸兵部 ,   星信 ,   田中淳司 ,   石川惟愛 ,   永井一徳 ,   木村正方

ページ範囲:P.1787 - P.1793

はじめに
 軟部悪性腫瘍(悪性軟部腫瘍,軟部肉腫,soft tissue sar-coma)は,骨,造血器,リンパ節を除く間葉組織(me-senchymal tissue)性の軟部組織に原発する悪性腫瘍で,その種類も多く,組織像も多彩である.病理組織学的診断で確定されるが,病理学的にも困難を伴うことがあり,臨床的経過観察が重要となる.比較的稀で,整形外科的疾患であつても,第一線の一般臨床外科医は,経験する疾患である.
 最近,病理組織学的に悪性線維性組織球腫(malig-nant fibrous histocytoma)と診断された軟部悪性腫瘍の1症例を経験したので報告する.

気管支内脂肪腫の1治験例

著者: 山下良平 ,   村中幸夫 ,   宮下徹 ,   宮永盛郎 ,   鹿熊一人 ,   村田義治 ,   伊藤広 ,   渡辺洋宇 ,   石川義麿

ページ範囲:P.1795 - P.1799

はじめに
 肺の良性腫瘍は比較的頻度が少なく,なかでも気管支内脂肪腫はきわめて稀れで,本邦では現在までに6例が報告されているにすぎない1-6).今回われわれは,右中間幹気管支に発生した気管支内脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

固有肝動脈と上腸間膜動脈が同時に急性閉塞した1例

著者: 松原了 ,   神徳純一 ,   加陽直実 ,   小谷野憲一 ,   阪口周吉

ページ範囲:P.1801 - P.1804

はじめに
 急性腸間膜動脈閉塞症は,近年次第に増加の傾向にあると思われるが,腹腔動脈領域の閉塞は少ない.今回われわれは,腹腔動脈と上腸間膜動脈とが共通幹を有する特殊な解剖学的条件の下に,固有肝動脈の完全閉塞と上腸間膜動脈起始部の不完全閉塞とが同時に発生した極めて稀な症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

経皮経肝的胆嚢鏡(PTCCS)後にカテーテル挿入部皮下に癌着床を認めた胆嚢癌の1例

著者: 伊藤誠二 ,   山川達郎 ,   飯泉成司 ,   三芳端 ,   広沢邦浩 ,   加藤一富 ,   白鳥隆 ,   川端啓介

ページ範囲:P.1805 - P.1809

はじめに
 閉塞性黄疸に対する診断ならびに治療上,Percutaneous Transhepatic Cholangiodrainge(PTCD)は,今日第1選択手技として,広く応用されその有用性に関しては数多くの報告がなされている.一方PTCDの合併症としてよく報告されているものには,感染や,ドレナージカテーテルの閉塞,あるいはPTCD施行時の胆汁漏出,出血,胆道減圧ならびに,内圧上昇ショックなどがあるが,悪性疾患に対するPTCD後,瘻孔を介して皮膚転移を来たしたと言う報告は少ない1-4)
 今回の症例は,PTCDに加えて,PTCCS(Percutaneous Transhepatic Cholecystoscopy)が,施行されたがために5カ月後,カテーテル挿入部皮下に転移巣をきたした胆嚢癌症例であるが,今回の報告はその頻度などにつき文献的考察を加え報告するとともに,この様な合併症のあることも念頭におく必要のあることを喚起するものである.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1794 - P.1794

SURGERY—Contents, November 1983 Vol.94, No.5 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

「臨床外科」第38巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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