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文献詳細

雑誌文献

臨床外科38巻12号

1983年12月発行

文献抄録

重症患者の輸液管理をめぐる諸問題

著者: 遠藤昌夫1

所属機関: 1慶応義塾大学医学部外科

ページ範囲:P.1763 - P.1763

文献概要

 重症患者の輸液管理においては,刻々と変化する循環血漿量,組織間および細胞内液量に対応した処置がとられねばならない.しかし,それぞれの水分区画における水・電解質の移動,特に血漿と組織間区画におけるアルブミンを中心とした水の移動などに関しては未だに不明の点が多い.これらの点を背景に,最近の重症患者に対する輸液管理の指標を述べる.
 体液減少性ショック(hypovolemic shock)に対する輸液では,外傷や消化管からの大量出血に際し,血漿区画と同時に組織間区画をも補正するために,大量の細胞外液型の輸液が必要となる.ショックの初期治療において低下した動脈圧は,常に補正輸液量の不足を示すので,動脈圧の正常化を目標に輸液を行うのが良く,肺動脈圧や肺動脈楔入圧(PWP)の測定までは必要ない.管理上最も重要な時期は,大量の輸液によってショックを離脱した後に到来する.この時期には大量の水と電解質が血管内から組織間および細胞内区画に逸脱する.そして,しばしば中心静脈圧(CVP)やPWPの上昇と肺内ガス交換の効率の低下,および心拍出量,血圧の低下や尿量の減少を招来する.この状態の治療法としては輸液量を増加すべきか,利尿剤を使うべきかの判断が難しい.この指標としては,心左室1回仕事系数(LVSWI)/PWP比および乳酸加リンゲル液500 mlの試験輸注が有用である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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